東雲月虹
ハヤカワ先生の作品の中で一番好きかも、と思いました。客観的に見るととても甘酸っぱい恋愛だけど、主人公である新の気持ちはいつも不安定で。最初は男同士で付き合うことへの周囲の目線に対する恐怖、そしてそれが解消されると、今度は正太朗の気持ちを失う日が来ることへの恐怖。いつも真っ直ぐ想いを向けてくる正太朗に比べると、新ばかりが不安になっていて落ち着きがないように感じるかもしれないですが、私は新の方がより…
津田の兄が絶妙に苛々を煽ってくるようなキャラで、特に飲み会前後の彼の態度に途中で読むのを挫折しそうになりましたが、津田が兄のことを自分の中で折り合いを付けるのには必要なシーンだったんでしょうかね。なんだかんだで互いにブラコンを拗らせている津田兄弟。兄が津田に独占欲に近い感情を持っているのと同時に、津田も兄に対して羨望とも嫉妬ともつかない複雑な感情を抱えている。子供から大人へと変わっていくこの時期…
遠藤が確かに前巻に比べて、大分分かりやすいキャラになってきたように思います。俯くと髪に隠されてしまうけど、それでも以前よりずっと感情が表に出やすくなったんじゃないかな。一方で津田は、やはり鈍感なままだし、遠藤の気持ちを察することも神崎に手伝ってもらわないとできないというポンコツぶり。千葉が傍から2人を見ていて苛々する気持ちは十分過ぎるほど分かります。
お互い相手しか眼中にないくせに、いつ…
ハヤカワ先生独特の流れるようなコマ割り、説明的な部分の一切ない非常に感覚的な心情描写やキャラクターの台詞などは、他の作家さんではなかなか見られなくて、素敵だなぁと思うんです。でも、今回は残念ながら、最初から最後まで肝心のメイン2人に魅力を感じることができませんでした。
まず、攻めの津田に関しては、受けの遠藤に恋愛的好意を抱くまでの過程がかなりあやふやな気がするし、自分が彼を好きになってい…