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あえて読者に行間を読ませるように多くを描かない作品もあるかと思いますが、この作品では私は山中先生がそういう意図を持っていたようには思えず、ただ心情描写が不足していたように感じてしまいました。アラブの王子である攻めと、借金を背負って人身売買オークションにかけられ王子に買われた受けという王道の設定を用いる分、重厚感や淫靡さを出さずに先生独特の爽やかで軽い雰囲気で描くことで、典型的なアラブものとは一線…
題材はとても良かったと思うんですが、主人公の感情の表面を撫でただけで終わってしまったような気がします。これだけ壮大な設定なのに、どこにも感情移入を深くする余地がなかったというか。この作品は、現代と250年後の未来、さらにそこから250年後の未来、と3つの時間軸があります。ですが、どの時間軸でも説明と、主人公とその想い人の話を他人事のように聞かされているだけのような気分でした。1巻という短さの中に…