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1巻2巻も十分濃かったんですが、前作までは、結局私は傍観者的立ち位置から抜け出すことができなかったんですよね。それがこの3巻で、當間家の抱える闇や典彦の恐ろしいほどの執着に一気にぐっと引き込まれ、やっと自分がこの作品の本当の魅力に浸れたような気がしました。さち子と育郎が2人の間にある境界線を互いに改めて認識し、理解した上で夫婦を務めるようになるところや、典彦がそこまで育郎に入れ込みながら、彼に當…
育郎が結婚し、當間家に新たに女性が招かれることとなった2巻。女性に欲情しない育郎は当然妻を抱くこともありません。酔っ払ってふらふらの状態で帰宅した育郎を典彦は妻に預けようとしますが、育郎の裸すら見たことのない彼女は下の世話をするのに躊躇し、結局典彦が育郎に用を足させます。こうして見ると、以前失禁していた蘭蔵も、泥酔して使用人に放尿を見られている育郎も、実は似たようなものなんじゃないかと思いました…
退廃した空気と熟れ過ぎた果実のような重苦しい甘さの漂う作品でした。育郎の兄・蘭蔵に囚われていた父、蘭蔵に奪われた父の愛を使用人・典彦に求めた母、精通を迎えた育郎に手を出し始める典彦、典彦からの愛撫を期待してしまうようになる育郎、そして、父亡き後新たに自分の世話をすることになる郵便局員だった西浦を絡め取ってしまう蘭蔵。どの関係性も禁断であり、不毛。静かにどろどろしているような、独特の後味の悪さがあ…
でりこ先生だから、大いにエロを期待しちゃったんですが、そういうのでは無くて。大いに笑える方でした。笑えるんだけど、もの哀しいっていうのかしら。哀愁漂うおじさまたちをどうぞ笑い飛ばしてやって下さい、といった感じです。「正直さは時に猛毒だと知りたまえ。」とか。日常会話でおよそ使わないであろうかという言い回しや、もって回った遠回りな言い方で、いじいじとくだくだしく、時にはヒステリックに語るおじさまたち。…