chikakumaco
この、表紙の典彦の表情が恐ろしい。
最初に一読した際はあまりの惨さに目を覆いたくなるばかりでしたが、最新刊が出たので渋々読み返す事に…。そして思い返せば、この頃まだ「坊ちゃん」である育郎は、まだ典彦の愛情を信じていたのですね。憐れ。典彦の閨での戯言、「愛しています。」にただ縋って。縋り付くしか無くて。
しかし、典彦はただ育郎の全てが欲しいと言い、その全てとは身体や愛情では無く、怒りや憎しみ 全…
父の訃報で中退せざるを得なかった育郎の大学生活が垣間見られる冒頭。
ここで今後 活躍してくれるんでは、と期待される人物、学友の飯田が登場。
時代感もある服装で 髪を伸ばし、チャラいが、「その時代」らしい一般のちょっとイケてる大学生。
育郎を名家の子息と知り、最初は遊ぶ金をたかる為に近付くが、育郎の閉じられた心と他者を寄せ付けない清廉な魅力に興味を抱く。飯田は娼家で女を抱きながらふと、美しい育…
最新巻、現在4巻目を読了したので。おさらい読みです。
そうか。この1巻は幕開けで、実に巧みに登場人物を浮き上がらせていく。
昭和は戦後。旧家にあったかもしれない、江戸川乱歩や横溝正史のような陰鬱なトーンで描かれていく舞台。
先代当主が愛した白痴の子、蘭蔵。妻を顧みる事なく、その美しい子供に執着する当主。
苦しさのあまり狂って行く妻。両親に愛される事なく育つ息子、育郎。その愛情に飢えた無垢の…
あわわわ。私もすっかりこれが最終巻、いよいよの完結編だと早とちりしておりました。
典彦の妄執は 育郎さんの身体を蹂躙するだけでは飽き足らず、その身を失脚させ、寄る辺の無い暗黒に突き落とし、なお「壊れて行く様を見たい」と追い詰める。
ただ自分だけに縋りつくしか生き様がない程にと、奸計を張り巡らせ 周囲を巻き込んで狂わせて行く。
たった一人、育ちが良く、その素直な心でもって 育郎を支えたいと願っ…