BL作品に「めっちゃ恋愛でした」ってレビューはどうなんだ、というツッコミはさておき。
端的に言うと、淡泊で美人の受けが最強イケメンプレイボーイ攻めと恋愛する話です。恋愛する話です。恋愛する話です。(大事なことなので三回)
恋愛感情に無理がないのがとても良かったです。
駆け引き、というかいわゆる「押して駄目なら引いてみろ」がほとんど無意識の上に行われる辺りもラブだな~と思いました。
2人とも超絶美形モテモテで、片や淡泊、片や下半身ゆる男という一見逆のような2人ですが、恋やら愛やらを求める男とそれを遠ざける男のラブ。恋愛観の差が2人のセックスへの意識の差を作るのかなあなどと思いました。
地の文を含め、全体的に言い回しが何となく気障な感じです。私はそれが好きでした。
2006年発行なので完璧にバブル崩壊後の作品ですが、そこはかとなくバブリーな感じがするのは私の考えすぎでしょうか。それもまた良かったです。
現代日本が舞台なのにどこか現実感がなく、しかし感情が自然に流れる良い作品でした。
私は日本語訳の原作を読んでから、DVDで字幕版、吹き替え版の両方を見ました。
原作と違うところもありましたが、素晴らしい映画でした。アカデミー脚色賞というのは原作付きの映画に与えられる賞らしいのですが、本当に最高の出来映えでした。原作を壊さずに『映画』を完成させるその業に本当に驚きました。
まずは、海や湖のシーンなど、とにかく映像が美しいです。スクリーンで見たかった! 何故もっと早く知らなかったんだろう……。続編があるらしいのでその時は必ず映画館に行きたいです。
イタリアの大自然はもちろんのこと、後半にエリオとオリヴァーが二人でイタリアの都会にしばらく宿泊する場面では、街の雰囲気が自然のそれとはまた違った美しさを醸し出しています。都会なりの汚さがありますが、二人が共にいる街としてすごく美しいんです(伝われ)。自然も街も異なる美しさで流れる作品です。
ストーリーは概ね原作通りですが、キャラクターが数人削られていることと、二人のその後が描かれていないことが恐らく最も大きな違いです。
内容は概ね
大学教授を父に持つエリオのイタリアの家には、毎夏父の生徒が一人やって来ます。今年やって来たのはオリヴァー。彼は今までと同じくただ夏と同時に来て夏が終わると帰る客人のはずでした。しかしエリオは、オリヴァーに惹かれていき……?
という感じです。
エリオとオリヴァーは二人ともいわゆる「インテリ」っぽくて、気が合うか否かという点はさておき話を弾ませるための知識は同じくらいあります。
エリオは楽器が得意でよく楽譜を書いています。映画の中ではピアノやギターを弾くシーンがあります。友達はいるけれど少しシャイで、どちらかといえばインドア派。
一方オリヴァーはアメリカから来た若者で、かなり遊び慣れている様子。ダンスが上手くて賭け事もやります。
原作はエリオの視点で話が進むので、映画にてエリオから見えないオリヴァーの表情が描かれていたのがすごくよかったです。オリヴァーの余裕のなさが映像で直接語られています。
それから、両親が良かったです。頼れる両親です。キャラクターが減った分この二人の役割が増えたっぽいです。ママがフランス語(違うかもしれない、うろ覚えです)のお話を読んでくれるシーンは吹き替え版と字幕と両方見てください。見てくださいお願いします。
個人的に好きなシーンはオリヴァーが帰る前に二人で行った都会の街のホテルの部屋で二人が戯れるシーンです。めちゃくちゃ仲が良い……。尊い……。
印象的なシーンはエリオがアプリコットでナニをするシーンです(詳細は見てください)。その後が原作とちょっと違うんですがこれはこれでいい。本当に映像化してくれてありがとうございます。
原作のアプリコット推しを引きずってくれてるのが良かったです。ありがとう。
私は原作を読んで二人の最後を知った状態で見ていたので後半に行けば行くほどマジでしんどくて泣きました。ラストのエリオの涙……本当にしんどかった……。暖炉を見つめてただ静かに涙を流すエリオが本当に美しい……。しんどい……。
あとオリヴァーを見送ったあとエリオが駅から家に電話をかけて迎えを呼ぶシーンがありますがそこもマジでしんどいです。
原作と違って「その後」が描かれないエリオとオリヴァーだからこそ、このラストの別離が強く印象づいていることがすごくしんどいです。
「君の名前で僕を呼ぶ」と言うのが二人にとっての青春の象徴であって、二人はこの恋と共に未来を生きるのだと思います。二人のたった一瞬の恋がこのイタリアの夏に詰まっているということがあまりにも美しい。
エリオ役ティモシー・シャラメ氏の涙がすごいです。涙の種類が多い。エリオの涙に種類が多すぎる。本当にすごいです。
吹き替え版オリヴァーの津田健次郎さんは、「合うのかな……?」と思っていたのですが杞憂でした。あまりにもオリヴァーです。最高にオリヴァー。吹き替えを見たあとには最早オリヴァーは津田さん以外考えられないです。最高にオリヴァーです。大好きです。
続編をやりたいみたいな話があったりなかったりしているらしいです。あったらいいなぁ。
原作を読んだ人は映画を、映画を見た人は原作を見てほしい作品です。本当に原作も映画もいいです。それぞれ違うところに良さがあります。
語彙力を蘇生させることができなかったので言葉足らずなレビューですが、本当に素晴らしい映画なので少しでも興味がおありでしたら是非見てみてください。
これは個人的に「凄く好きなやつ」でした。いいですね、この愛と優しさに包まれた攻めの腹黒さというか執着というか……。
前作「恋愛未経験」は未読なのですが、かなり楽しめました。単体で読めると思います。
受けの一弥が直情型猪突猛進タイプなのに対して、攻めの小金井はじっくりねっとりしつこいタイプでしょうか。それがベッドシーンにもあらわれています。私は焦らしていくスタイルが好きなのでそれもとても良かったです。
二人とも割と自分の心に正直ではあるので、似ているところによって惹かれて、違うところに落ちていく感じです。とても好き。
あと小金井さん(攻め)のスケッチ癖萌えます。
なんだかんだ言ってもラブラブなので安心して読めます。
小金井さんの幼馴染みという女性が一人、彼のマネージャーとして登場しますが、彼女は既婚者で特に恋愛絡みでないひとです。彼女もとても良い味を出しています。本当に超カッコいい女性ですので是非彼女にも注目してみてください。