そこぬけに明るくて、まわりに愛されて上手に生きてきた、どこか飄々としていた皆川くん。
わかりやすいようで捉えどころのなかった皆川くんの人間らしいところが垣間見られました。
打ちのめされて落ち込んで、吐き出してちょっと浮上したり。
「緊張」という斬新な感覚を生まれて初めて味わってみたり。「お前のほうがよっぽど斬新だよ」とはまさに。
お相手のなっちゃんこと名和田くんと、お互い相手に刺激されて意識して、すこしずつ成長していくふたりがよかったです。
出会うまでは持つことのなかった感覚や感情にそれぞれ戸惑って、向き合って、消化して。
名和田くんにはこの先ぜひ皆川くんをたくさん振り回していただいて、またお互い初めての感覚をたくさん味わってくれたらいいなと思います。
そして相馬さん。
どんな極悪人だよ、と最初は思いましたが、ただただ仕事に、仕事だけにまっすぐな人でした。
やり方は独裁国家に違いないし、善い人とは言えないけれど、名和田くんの言葉を大事に大事にしてきたんだと思うと心にくるものがありました。
以下個人的な蛇足のようなもの。
評価に関しては、気持ちとしては萌と中立の間くらい。
1作目で初めて一穂作品に触れて、読みやすくはあるけれど主役カプに馴染めない、うーーーーんと思いながら前作までを読みました。
今作はスピンオフということでそこは大丈夫かなと思ったのですが、そして今作のカプは文句なしの萌なのですが、やっぱりうーん。
キャラに馴染めないというより、たぶんこの方の台詞回しや言葉選びが苦手なんだと思います。
「ちな」「とりま」ってネットスラングじゃなかったのか…。若者言葉をリアルに書いている、といえばそれまでな気もするのですが、話すことを仕事にしている人間が、公の場でないとはいえそんな言葉遣い…?
個人的な感覚なうえ作品そのものに関してのことでもないので、シリーズ通して絶賛の嵐の中ここに書くのも申し訳ない気がしますが、だからこそ、の気持ちも込めて。
初めて一穂さんの作品を読みました。
人気作ということで期待が大きかったのですが、期待しすぎたかな、と。
表と裏。本音と建前。
国江田のような二面性は、多かれ少なかれ誰しもが持っているんじゃないでしょうか。
素を隠して、自分自身で作り上げた「対外的な国江田計」を守り抜くことは容易ではない。努力の人だと思います。
が、心の声の口汚さと唯我独尊っぷりに引いてしまい、特に前半は読み進めるのがしんどかったです。
とてもじゃないけど、国江田かわいい!とは思えなかった。
悪い意味で、反抗期の子供がそのまま大人になったような印象というか。
そんなふうにすっきりしないまま読んでしまったせいなのか、都築との関係もいまいち両者の気持ちが追えず…。
終盤の皆川との一悶着、「他人と分け合うなんて気が狂う」「俺だってそうだよ」のやり取りに、いつの間にそんなに想い合っていたの、と思ってしまいました。
1度読んだからこそ見えるものもあるかなと思うので、一旦リセットして再読してみようと思います。
文章自体は読みやすかったし、皆川くんのその後が気になるので、番外編は読みたい…。