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最上の告白シーン

1巻から置い続けて早4年、とうとう高校生編完結です。おめでとうございます、ありがとうごさいます!

ドMヤンキーからオラオラヤンキーくらいにマイルドになった鹿嶋ですが、
4巻になってもまだ痛みを求めること自体はやめようとしてない…というか、
ドMという性癖は「当たり前にあるもの」として治すとか治さないとかじゃない感じに落ち着いていて凄く安心しました。

実はこの話が長く続くにあたって、一番変わって欲しくなかったのはそこなので。
「痛いことより気持ちいいこと」を見つけて、喧嘩してボコボコにされてヨガる姿が減ったのは個人的には問題なし。気持ちによって人間は変わるから。
でも、ドMって性癖ごとなかったことにされたら、それは鹿嶋という存在の否定になってしまうんじゃ?と思ってました。
だから、ドMのまま、真田のことが好きで真田とのセックスが痛みより気持ちいいものとして鹿嶋の中にある今が、一番納得のいく落ち着きどころです。
毎度バランス感覚のよさに舌を巻いてます…絶妙…

あと、タイトルにも書いた通り、告白シーンが凄くストレートで真っ直ぐでよかったり。
付き合うとは何か=相手を自分のものにしたって証明→それを欲しくないのか、と真田が鹿嶋に問いかけるところ、あまりにさなかしらしくてちょっと泣けるくらいよかった…。
付き合ってると勘違いしてめちゃくちゃ変になってた真田に付き合いたくない…って思う鹿嶋の説得力も凄かった(笑)

改めて1巻から読み返すと、文化祭とか修学旅行とか夏休みとか停学とか高校生らしいイベントほぼ網羅してて驚きです。4巻の重み。

大学生編では新キャラも沢山出そうですが、願わくば安易な当て馬が出ませんように…と祈ってます!
とにかく、最高の高校生編完結を有難うございました。これからもついていきます。

(余談ですが、電子は完全白抜き。紙のコミックスは白海苔でかなり薄めの修正なので、細部まで見たい人は紙推薦です)

メトロ コミック

本郷地下 

「この先」が無いからこそ素晴らしい

ドットブルーム!!!(信頼の雄叫び)

今年、というか今年度のドットブルームはトバしてる。
「あちらこちらぼくら新装版」「マイリトルドギー」「向こうの人」「リンクアンドリング」と来て「メトロ」!!
どれも読み応えがあって、作家の色が完璧に出ている。
レーベルの色より作家の色を優先しているな、と思えるのがこのレーベルで、それが翻ってレーベルの色になっているんだろうなと。
ちるちるユーザーのようなディープ層にも、SNSで情報収集するライト層にも響くような設計の作品ばかりでそれがまた凄い。分かりやすくエロ一辺倒じゃないというか。(念のため言っておきますがエロ一辺倒も大好きです)
あとなんか、レビューしたくなる作品を作るんだよな〜〜まんまとレビューしちゃってるし!!

で、今回のメトロ。
あらすじ諸々はすでに語られまくっているので割愛させていただくとして、何が凄いってこのラストだと思います。
帯にもある通り「君の命令で、君を抱く」というところからの始まりだった二人。けれど最後には、忍が投げ捨てようとした命を水葵が拾って「いらないなら僕がもらう」「僕のために生きろ」と物凄く力強く言うんですよ。
初めての命令の時は、それはほとんど拘束力を持たないただの「懇願」にすら思えたのに、最後の水葵の言葉はしっかりと「命令」だった。
だから忍も観念した…観念「できた」んだと思います。
それほどの幸福を与えられてしまったら最後、惚れるしかないし、お望み通り水葵に命を明け渡すしかないんですよ。
もとより忍には「絶対に許されないことをした」という自身の負い目がある。(水葵がそれを許したとて事実は変わらないし変えてはいけないと思う)

で、普通なら、ここから「先」を描きたくなるものだし、描かせたくなるものだと思う。
もっとイチャイチャラブラブしてほしい!続編欲しい!という気持ちを呼び起こすことを、間違いなく作り手はわかってると思うんです。散々そういう意見って、ほかのタイトルとかでも見てきたと思うし。実際、マジでなんでこの先見せてくれないの!?これからじゃん!?と思う作品だってあるし。

でもこと「メトロ」に関してだけ言えば、私はこの終わりが最高に美しいと思う。もちろん描き下ろしも含めて。むしろ描き下ろしがあって本当の終わりかな……。
改めて、この先二人がどんな人生を歩んでいくか、という未来について、物凄く想像の余地を残してくれている作品だと思います。
作家がその先を描いてしまったら、実質終わってしまう物語を、私たちの想像力に任せて“続かせてくれている”のが本作であるように感じました。
見たいところは余すところなく見せてくれてるしなー。二人の出会いと、濃厚なセックスと、最高にアツい告白と。全部見れた!ありがとう!!
そしてきっと、作り手側も「全部見せた」って思ったからこそ、ここで終わってるんだと思います。あとは皆さんのご想像に任せますよと。
翻ってそれは、「二人の未来はまだ無限に広がっているんですよ」というメッセージとして受け取ることが出来るんですよね。
それってめちゃくちゃ嬉しいことだよなー……

……と思うのはファンの贔屓目かもしれないんですが(笑)。
でも私はそう思えたので、この結末に物凄く満足しているし、それをどうしても伝えたくてレビューしたのでした。

あとこれはちょっと余談ですが、「痴漢」って現実では最悪だけど創作物としては相当キャッチーじゃないですか。でもあらすじでも帯でも一切「痴漢」って言葉を使ってないところに、「それだけじゃないからな!!飛び道具だけで勝負すると思うなよ!!」みたいなレーベルの本気みたいなものを感じました……(笑)
これも想像だしファンの贔屓目なんですが。
なんかそういう、作家や物語に対する「誠実さ」、好きだな!

ということで、次の新刊も楽しみですし、本郷先生のことずっと応援していきたいと改めて思うのでした。既刊の「世田谷シンクロニシティ」もまた別ベクトルで最高なので是非!

愛とは何か。

メインカプ5話+スピンオフ1話の6話構成で、すべて表題作。
スピンオフのカプはもちろんのこと、メインカプの育み紡ぐ愛にじんわりと涙しました。

つゆき先生、言葉選びがとにかく素晴らしくて……
攻めである別所くんが、蒔田くんのことを好きだと自覚したとき、二人を絆ぐアイテムであるぬいぐるみを捨てようとするんですね。
でも思いとどまって「最低な奴にだけはなるな…」と自分に言い聞かせる。
これ、これですよね。
相手を想う=自分を想う。相手に嘘をつかない=自分にも嘘をつかない。
愛ってそういうことだと思います。

蒔田くんのセリフも素晴らしいです。
別所くんからの不意打ちのキス(未遂ですが)をされそうになったとき、別所くんが動揺して放った「男同士とかありえないし」という言葉に対して、
「君が何を否定しても構わないけど、僕はそう思わない。僕はさっきの…嫌じゃなかった」
って、別所くんの発言をまるごと否定するわけではなく、でもちゃんと自分の気持ちを伝えるんですよ…。
こんなに言葉がきれいな大学生なかなかいない。だからこそよりいっそう美しく感じる一言でした。

どちらにも思いやりがあって、優しくて、穏やかで、だから本編ラストも描き下ろしも、あたたかい涙が流れてくる。
読めてよかったな、これからもずっと幸せでいてほしいな、そう思う人たちでした。

スピンオフの藤司と久長も最高なので、藤司が久長を落とすまでを読みたいなあ。
またこの二人も別所蒔田ペアとは全然違う意味で紆余曲折ありそうで、それを一冊かけて追いかけたい気持ちでいっぱいです。

ボーイズラブって、時折ハッとさせられるような、かなり根源的なことを教えてくれることがあって、だからやめられない。
才能の宝庫なんだよなあ……。

これからも大切にしたい一冊です。

エモーショナルとはこのこと

web連載のときからずっと追っていたこの作品。一冊になるのを心待ちにしていました。
「なるさや」の愛称で親しまれるイケメン俳優と、
SNSに会社や同僚の愚痴を書き込んでは憂さ晴らししてるのコミュ障のサラリーマン。
出会うはずのない二人が、SNSを通して偶然出会うところから物語は始まります。
とりわけ上手いわけでもない絵を描いて、落書きと称して写真撮ってアップする受け。
いいねの数は1個か2個がせいぜいで、その感じも、凄くリアル。
最初こそ、なんだこいつ!と思うような受けなんですよ。
ひねた性格で、妙に言葉数の多い喋り方、妹にもウザがられっぱなし……。
でも、そんな受けが、攻めと出会ったことによって、優越感を満たすかわりに、
なんだか物凄く可愛くなってしまうんです。
攻めが何を考えてるか分からないから、振り回されてモヤモヤして、
優越感とか言ってる場合じゃなくなる。
攻めも攻めで、受けに対して分かりづら〜〜〜〜く気持ちを募らせていくのが、
ファンタジーな設定なんだけどめちゃくちゃリアル。
意味なんてないようなコマも、全部意味があって、散りばめられた伏線がすっと回収されていくのも、大仰じゃなくて気持ちいい。
感情がガンガン揺さぶられて、セリフ一つに一喜一憂して、その全てが、超エモい。
ラスト、たまらなく幸せになりました。最高でした。有難うございました!

上野先生の作品が、ずっと読める世の中であってほしいなと思います。

受け入れてもらえることの歓び

レーベル買いですが、近年で一番泣いたのが同レーベル「転じて恋と生き」で、二番目に泣いたのがこちらです。レーベルと相性が良すぎる。

「恋をするのは女の子なのに、性的興奮を覚えるのは男だけ」という、なんとも難儀な性癖の持ち主である高史(たかふみ)。
高史には、その体質を理解してくれている彼女・舞が居る。
そんなある日、高史がバイト先で気になっていた男・深町と寮と同室になり、体の関係を持ってしまう。
深町は深町で片想いの相手・貴文(たかふみ)がおり「セックスしただけ」「利害の一致」と高史を一蹴するが…。

なんといっても必然性のある「シンクロニシティ」を高史と深町の二人が引き起こすのが、運命的でロマンチックですごーく良かったです。
ともすればかなりLGBTQに寄ったお話になりそうなところを、このファンタジックな設定がちゃんとBLにしてくれてるのが嬉しかった〜。
そんなシンクロニシティを重ねる中で、二人が徐々に惹かれあっていく姿が、劇的でなく、ゆっくり静かに語られていくのが素敵です。
語りすぎず、語らなすぎず、ものすごくいい塩梅でした。
考える余地を残して欲しい時って少なからずあるので。

個人的に、深町が高史とセックスをする時に、「たかふみ」と言うのが切なくてとても良いな…と。
合法で、ノンケの片想い相手の名前を口にすることが出来るんだもんなあ。(いや合法もなにもないんだけど)
本人の意識的にはそれがあったんだろうと勝手に思っています。
なので、最後に描かれる、お互いの気持ちを発露させてしまうセックスの際、「これが最後」って気持ちで「たかふみ」と口にしたんじゃないかなあとか…
二回言ってるから、そこには高史も含まれてるんじゃないかなあとか…色々、こう、色々想像させられました。
こんなに切なくなるセックスシーンなかなか無い…。

それを踏まえての、貴文が深町に言った「男が好きなのは治らないのか?」「病院とか行った方が」という言葉、
これはヘテロセクシャルの人間が「自分の性指向が正しいから、良かれと思って」言ってることで、悪気が無い分、
それがどれだけ…どれだけの人間を傷つけてると思ったんだよ…!!!と読みながらマジ切れしそうなところでの、高史の(こちらの気持ちを代弁してくれる)激昂でまず号泣。
そこから、深町が高史に贈った言葉で更に追い討ちのように号泣……。

この物語で最も言いたかったこと、大事なことって、間違いなく「どんな自分でもいいんだよ」ってことなんだと思います。
誰よりも自分で自分を責め続けていた高史にとって、「そのままでいい」「でも、変わったっていいんだ」という、深町からの言葉が、どれだけ救いになったかと思うと…もう…思い出し泣きしそうなレベルなんですが…。

この言葉、きっと高史だけでなく、たくさんの人の心に届いていくんだろうなと思います。
私もなんだか思い当たることがありすぎて、だからこそ救われました。

色々と悩み多き人生でも、捨てたもんじゃないなと、心から思える。そんな作品です。
全部読み終わってからカバーと帯を見ると、また泣ける。
あ〜〜……よかったね……高史………。

高史と深町、舞や貴文、物語に登場した全ての人々の幸せを祈っています。



すでに語り過ぎているのですが、追記です。
私はこの作品がBLとして発表されたからこそ、知ることができ、手に取ることが出来ました。
本郷先生が、BLとしてこの作品を描いてくださったことにただただ感謝です。
自分がBLを好きでよかった、そして先生がBLを好きでいてくださって、本当によかった、と思ったのでした!

最高のエロコメディ

とにかく最高でした。最高でした…!!

原作ファンゆえに、ドラマCD化が最初から決まってるどころか全サにしちゃうところに結構本気で驚いてたのですが、
正直全サとなると…製品版と比べてクオリティは…?と思ってました。普段申し込みする全サや、同梱版のドラマCDって分数が短かったり、音質が…だったりで、どうしても経費削減を感じるんですが。(そうでないものも沢山あるのは勿論承知の上で!)

なんか、凄かった……。
製品版で再販とかしなきゃダメでしょという感じのクオリティでした……。採算取れてる気がしない。
個人的な話ですが、同タイミングで真夜中ラブアライアンスのドラマCDも届きまして、それも当然ながら最高の仕上がりだったんですが(そっちもレビューしたい)、
なんかもう遜色ない仕上がりでした。簡ロマ。もはや怖い。

脚本が原作者の瀬森先生であるからか、「あーここ聴きたかったな!」とか「ちょっとここ端折りすぎ…?」と思うところが全然なく、その時点でホスピタリティがかなり高い。
なんと言っても、エロいセリフがかなり追加されていて、音声化って部分を最大限に活かしていたなと思います。

ハメ撮りのシーン、原作では色々終わった後に鹿嶋が寝てる真田の弄って「いい声…」ってもはやどっちが攻めなんだ…?ってセリフがあって最高なんですが、
そこに「手コキ気持ちーですかァ?」って煽りセリフが追加されていて、もうそれだけでこのCDには価値がありました。
ありすぎるくらいありました…。

古川さんのこれでもかというほどの低音ボイスがエロい喘ぎ声になった時のギャップも、
佐藤さんのめちゃくちゃにテンション高い演技からド攻めスイッチ入る瞬間も、
増田さんのキャッピキャピボイスからお兄ちゃんな一面が見える瞬間も、
全部理想…というか、もはや当て書きだったのでは…?と思うぐらいそのまんまでした。

3話と描き下ろしがカットされてるのは残念だったのですが、とはいえそれでも67分収録ということで、めちゃくちゃボリューミー。
いつか製品版になった時は(信じてます…)、2枚組でガッツリと聴きたいな。今でも十分すぎますが…。
3話の「お前、俺に会えてよかったよ」という鹿嶋のセリフが大好きなので、いつか古川さんのボイスで聴きたいです…。

原作ファンとしては、紙ジャケが全面描き下ろしだったのも嬉しすぎました。スリーブ?部分にもミニキャラがいて死ぬほど可愛いです。グッズにしてほしい。
リーフレットなどが入っていない分、先生からのコメントペーパーが封入されていて、それも超可愛いイラスト付き。本当に隅々まで、ファンサービスが行き届いているなぁと感じました。

2巻もぜひCDにしていただきたいんですが、製品版でガッツリ聴かせて…!と思うばかりです。1巻&2巻で3枚組とか?無理ですか…?
従兄弟の翔くんとその恋人のスピンオフも始まったということで、こちらもCDになりそうだなと勝手に思ってます。というかなって欲しいです…。

本当に全サとはとても思えないクオリティ。
今回手に入れられなかった人のための救済措置などもあればいいなと思いつつ。やっぱり製品版じゃないですか…?

圧倒的画力と暴力的性癖

アタミさんがQpaさんで描いて面白くないわけない……と安心しきって手に取りましたが、やっぱり面白くないわけありませんでした。

この一冊で、ある一分野における性癖はほぼ網羅されてしまったのでは?という印象すら受けるレベルの濃厚ぶり。

強面風の男が身につける似合わないランジェリーや、美しい男が女装をして更に美しくなり、挙句バリタチ…など、「これが欲しかった」を全て押さえている最高の一冊です。

全ての話が実は繋がっているという構成も、それ嫌いな腐女子いないよ……っっと突っ伏するやつですし、最後の最後に幼馴染&オネエ&強面受けが出てくるなんて、和洋中フルコースを一周ずつ堪能した後に、最高級スウィーツバイキングが用意されているようなもの。
一冊でこれだけの満腹感を得てしまってゆるされるのだろうか……と不安にすらなりました。
それぐらい、本当に心の底から大好きだと思える作品ばかりです……。

しかも今後続くとのことで、そんなに嬉しいことがあっていいのかと、ここでも突っ伏。
Qpaさんは追いかけられてなかったのですが、とうとう定期購読の時がやってきたな……と背筋が伸びる思いです。
これからの展開も心から楽しみにしつつ、2巻と言わず3巻、4巻と続いていきますように。

本当に、この作品のキャラクター達に出会えてよかった〜と心から思うのでした。

イロモノ?いいえ、運命BLです!

他にもレビューしたいと思う作品は沢山あるんですが、ずっとずっと発売を楽しみにしていたこちらの作品を最優先で……!!

細かいあらすじなどは他のレビュアーさんが書かれていらっしゃるので割愛させていただくとして。
連載当初から追いかけていた簡ロマ(と略すらしい)がやっとコミックスに!本当に嬉しいです。
本誌の中では珍しく頭をスッカラカンにしても超楽しく読めるタイプのお話で、コミックスのあとがきによると「.Bloomのエロ担当」と任命されていたようで、なるほどね!と納得しました。
こちら、とにかくキャラ萌えが激しく、設定も一癖あって、好きな人はほんっとーに好きな作品だと思います。
ドMヤンキー受けやイケメン不憫攻めは勿論のこと、男前受け、オカン攻め、ケンカップル、バカエロ、ドタバタコメディ…あたりが気になる人は多分好き。多分。

・受けの幸ちゃんはダウナー系で自分が気持ちいいことしか考えてないタイプ
・攻めの亮司は(幸ちゃんの前だけでは)アッパー系で幸ちゃんの奇抜(?)な行動に振り回されるタイプ。
=全然ちがうタイプの二人だからこそ、いい具合に凹凸がハマっちゃった感じ。
幸ちゃんは、基本的に他人に興味がなく、痛けりゃなんでもいい!喧嘩したい!という思考回路だったのが、亮司と出会ったことによってどんどん(無意識に)甘え始めるようになり。
亮司は亮司で、幸ちゃんの顏以外興味ないとか言いつつ、他の男のところにいかれたくない!と妄想し自分で自分の首を絞め、他の男(従兄弟)と喋ってるところを見たら激しくイラき、振り回されつつも最終的にそれが嫌じゃない感じが凄くある。
付き合ってないどころかお互いに向く恋愛感情に気づいてすらいないのに、なんか2話以降終始惚気られているような気分に……。
二人とも高校生なので「らしさ」もそこそこにあり、怒らせようと思ったら失敗したり、喜ばせようと思ったら失敗したり、そういう過程を経て更に距離が近くなっていくのがたまらなく可愛い!

二人して普通じゃないからこそ、二人だけの時は「ヘンタイ!」と罵り合いながらも、素の自分でいられるのかも。
幸ちゃんはいつだって素だけど、普段そんなに人と話さないし、亮司は基本的に自分の性癖を隠してるので。
そう思うと、他の方も言うように「運命」を強く感じるし、そういう運命BLが太古の昔から好きな自分としては、やはりツボでしょうがない。

とか真面目なこと言いつつ、描き下ろしの「鏡に映る幸ちゃんのエロい顏」を「二人で見る」フェチエロっぷりには、頭がグズグズになりました。エロい……という感想しか持てなくなる。
カットなどで小ネタが挟まれてる構成もものすごく好感が持てて、愛が詰まってるなーと。こういうところ凄いデビューコミックスっぽい。何様だという感じなんですが…。

大々的にイロモノー!な感じで売り出されてはいますし、確かに設定他かなりイロモノ枠なんですが、運命BLとしても凄く読み出があるなぁと思います。
出版社からの「売るぞ……!!」という気概も含めて(笑)大満足な一冊でした。

しかも初コミックスにしては珍しく番号付き&スピンオフ予定もあるということで、今後もずっと追いかけていこうと思います。
長くなってしまいましたが、期待値補正つけつつ神評価で!

「僕の兄というのは、本当に素晴らしいひとなのだ」

レーベル買い。新レーベルにして安心感抜群の.Bloomコミックス、連番を見るにこちらが4冊目らしい。(3冊目は同日発売のライクアシュガー。こっちも最高だった…)

正直なところ、久松先生のデビューコミックスであるロストワールドエンドロールは、ちょっと合わないな、と思っていました。(面白くないわけではなくて、合わないという程度なんですが)
で、もし私と同じようなこと思ってる方がいて、このコミックス気になるけど、どうしようかなーと思っている人がいたら、全力で「とりあえず読んで」と言いたい。
テイストも世界観も全く違うので、同じ作者なのか?と思うほどです。レーベルが違うとこんなにも描くものが変わるのか……と驚いたりも。

これは雑誌で読んだ人間にしか分からないかもしれないからあえて書くんですが、掲載順が雑誌とコミックスで変わってるんですよね。
コミックス1話目→ハロー・グレイ・ナイトシェード 前編(雑誌では3話目)
2話目→ファンファーレが聴こえるか(1話目)
3話目→はらぺこのメメント・モリ(2話目)
4話目→ハロー・グレイ・ナイトシェード 後編(4話目)
って感じで、表題作前後編がコミックスでは最初と最後に置かれている。
このギミックが本当に最高だった……。
前編のあとすぐに後編が始まるのとでは、印象が全然違う。
というのも、ファンファーレもはらぺこも、なんとなくハローグレイと世界線が繋がっているのが分かるから。
特にはらぺこは、ハローグレイの虎汰のセフレとして登場した和が主役だし。
なので、実質4話編成の、表題1本の作品のような感覚に陥るんですよね。
しかも描き下ろしでは、がっつり全キャラ登場して「やっぱり繋がってたんだ!」という確信が持てる作り。これ、考えられてるなー……と素直に感動しました。

・ハロー・グレイ・ナイトシェード
高級料亭の嫡男である兄弟が、それぞれに似た孤独を抱えて生きていく中で、歪んでしまった兄を、それでも愛した弟が魂レベルで救っていくお話。
とにかく、弟の嘉一が健気すぎて泣ける。
めちゃくちゃいい子だし強い子で、兄を救うことによって、同時に自分も救われたんだと思う。
前後編でそれぞれ視点が変わるのも、二人がどのように生かされ、どのように傷ついてきたのかがよく分かる構成でとても良かった。
描き下ろしではラブラブな二人が見れるのも本当に嬉しいし、大きくなった嘉一も可愛すぎる〜!黒髪敬語健気受け、たまらない。

(それと、作中では強く明言されていないんですが、血が繋がった兄弟モノは本当に貴重です……。義兄弟も好きだけど、本当に血が繋がってるからこその苦しみ、最高です)

・ファンファーレが聴こえるか
初心でかわいい高校生たちの青春グラフィティ、なんだけど、
そこにめっちゃ可愛くて強い女子が絡んだり、双子の片割れ(受け)が超絶ブラコンだったりと捻りが沢山で楽しかったー。
調べたところこれが商業デビュー作のもよう。久松先生自身の初々しさも反映されているのか、爽やかで気持ちの良い作品。
あと、あれ!?と思って見返したんですが、後半の光貴と淳介のやり取りにがっつり修正が入っていて、より説得力のあるお話に。
今の絵柄で二人を見れたのも嬉しかった!

・はらぺこのメメント・モリ
虎汰のセフレである和のお話。「愛着」というテーマで描いたとはにわかには信じがたい(褒めてる)作品。
ビッチでどうしようもない母親を持つ和は、中学卒業のタイミングで捨てられる。
そこから、自分の家を持たずに色んな人の家をフラフラしていたところ、めちゃくちゃお金持ちっぽいおじさまに声をかけられて、一緒に住むようになる……。身体でお返ししようかと思いきや?
……と、一見するとすごーくありふれたお話のようで、妙に全体に漂う雰囲気が不穏でドキドキソワソワする。
そしてその予感は、満開の藤棚を前に大喜びする和の様子あたりで確信に変わるんですよね。1回目に読んだ時と2回目に読んだのでは、表情が全く違って見える。
ラスト1p、ゾクゾクします。和くん……。

どれもこれも1話や2話分とは思えない濃密な作品。カバーの幸せそうな、しかしどこかさびしげな雰囲気も相まって、完成度すごいな…という印象の一冊でした。
一読の価値、あると思います。

雪と松(1) コミック

高橋秀武 

画面から漂う、壮絶なまでの美。

これは紙で、インクで、自分の目で見なければ分からないような壮絶さかもしれない。
トクボウは漫画もドラマも楽しませて頂きました。
そんな先生が満を持ししてのBLデビューということで、.Bloom相変わらず攻めてるな、と関心するこのごろ。
とにかく、色んな人に読んでもらいたい。そして、この世界に取り込まれて、逃げられなくなって欲しい。
漫画作品としてのレベルが高すぎて、上手い感想が出てこないほど。
プロの漫画家さんに「漫画がうまい」ということは、声優さんに「声がいい」と言うのと
同じレベルで失礼なのでは……と思いつつも、ひたすらに、ひたむきに、漫画が上手い。
最低限の効果音、最低限のセリフ、静謐な世界観。
そこから一転して、クスリと笑えるようなほのぼのした空気も存在していて、
重くなりすぎない、そのバランス感覚は思わず唸ってしまうレベル。
それは長きに渡って青年誌の第一線で活躍されてきたからこそ出来ることなんでしょうね。
「漫画」のことを知り尽くした人の漫画ほど気持ちいいものはないですね。

技術と感性の話に寄ってしまったのですが、この漫画は間違いなくBLでして、
BLじゃなくていいのに〜という感想とか一切抱かせません。それがまた凄い。
BLで描いてくれてよかったー! 雪さんも松庵先生も兄貴も大好き! と素直に思う。
ボーイズラブだからこそ物語が動いているし、だからといって所謂「お約束」が連発されるわけでもなくて、その匙加減も絶妙。
アーティスティックにいきすぎて、読者と突き放しかねないぐらい完璧な「画」なのに、
日本人が慣れ親しんできた「人情」をメインに描いてくれているからなのか、
ずっと寄り添ってくれているあたたかさもある。

あー、書けば書くほど、「読んで!」としか言えない。自分の無力さ……(笑)。
本当に素晴らしい作品でした。漫画として、BLとして、読めてよかった。
2巻も楽しみにしています。願わくば、末永く続くことを祈って。