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女性Sakura0904さん

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未来が見えない2人だと思ったけれど……

 阿部先生の作品はどれもシュールな雰囲気が漂っていますが、なかでも将太はとびきりシュールな受けだと思いますね。彼の過去も含めた上で。ここまで性的行為に積極的なのは、無意識のうちに過去の数々の行為の上書きをしているつもりなのか、それとも本当に詩郎とできるのが嬉しくて仕方がないのか、私には最後まで半々なようにも見えました。別に前者が含まれることが悪いこととは思いません。後者の気持ちが少しでもあり、詩郎もそれを重々承知の上なら、第三者に咎める資格などないと思いますし。むしろ詩郎のような男がこんな子供に本気でハマってしまうことに驚きましたが、身内も公認のようですし、あくまでラブコメ作品としてその辺は深く考えずに楽しめばいいのでしょう。

おいおい大丈夫か?

 生意気な男が調教される展開は好きですし、詩郎の見た目や性格も好みなのですが、如何せん将太になかなか萌えを見出せず……(笑)。『月と太陽』『華と楽』も読んだので彼のことはそれなりに知っているつもりでしたが、可愛げのない性格が一転、詩郎に対してオメガバースか!?と思うほど突如発情し、好き好きとそれこそ猫のように懐く変わりっぷりについていけませんでした。生徒に誘われるがまま手を出す大学教授はもちろんいけませんが、それを利用する方もする方なので、将太に同情できる点も特にありませんし。詩郎に懐柔されたというより、勝手に縋るようになったという感じなので、下剋上というわけでもなく。あれだけ生意気だった子がここまで自分の好意をあけすけに表に出せるというのはすごいギャップですが、可愛いと思えるようになるには私には道のりが遠そうです。

誰彼構わず紹介しない、のも独占欲よね

 前巻とタイトルが変わっているのにスピンオフではなくメイン2人は続投というのは珍しいですね。なんだかんだこの2人の空気感が好きだったので、嬉しいです。ページ数が多いですが、相変わらず藤男のノリが軽く、そこまで重いシーンもないのでさくさく読めます。ただ、前巻ではまだ藤男の美春への気持ちが遊びの延長線上なんじゃないかという可能性もわずかに残されていましたが、この巻でそこはしっかり払拭されるのでちゃんと読み応えもある続編でした。のらりくらりと生きていそうな藤男の深層心理が垣間見え、美春に対して執着していることが分かって安心しました。

表紙のイメージ通り

 ところどころシリアスな雰囲気のシーンはありつつも、ほぼ何も考えずに読めるエロ多めの作品です。藤男がAV男優の経験があり、今はプロデューサーをしていることもあって、性的な関係になるまでが早く、美春も流されやすいので気持ちが通じ合うまでにたくさん濡れ場があります(笑)。社畜で会社や社会に居場所がなかった美春が、やっと見つけた居場所で美春にいいようにされるのが、ちょっと可哀想で可愛くて。でも本人は快楽を上手く捌け口にしているので、抱かれる才能があるとも言えるでしょう。なんだかんだ最後は気持ちが通じ合ってハピエンなので、安心して読める作品です。

イルカの耳骨 コミック

 

時系列の問題かな?

 特にファンタジー要素はないものの、灼先生らしい不思議な雰囲気が漂っていました。個人的にはちょっとストーリーに入りにくいな、と。千晃と浅見、浅見と宝の今までの関係性がほとんど掘り下げられないので、それぞれのことをあまり知らないまま、宝という第3者も交えて一気に話が進んでいくんですね。難しい話ではないので理解はできるけれど、読者としてどこにも思い入れがないのでずっと傍観しているような気分で、やっと千晃と浅見が想いを遂げられても喜ぶ気持ちが薄かったです。

浬の長年の片想いを成就させてあげたいけれど

 人間の真海と人間界に紛れている人魚たちのぶっ飛んだラブコメで、おげれつ先生節が効いていました(笑)。このページでメインが唯一濡れ場のあった真海×汐音になっていますが、今後ここが恋愛に発展することは恐らくなさそう。他の3人はそれぞれ真海といい雰囲気になることがあり、個人的にはどこも気になります。幼馴染で面倒見のいい人間の浬、少しミステリアスで見た目が綺麗な人魚・ルイ、真海のバイト先の雇い主である人魚・洋。誰が本命の受けになっても楽しめそうです。ヤリ部のようにずっとコメディ調でハーレム状態が続くような長編を予定されているのかもしれませんね。

こんなにも愛おしいと思える攻めはなかなかいない

 一般文芸としても出版されているだけあって、BLのお約束的な要素がほぼない、非常に読み応えのある作品でした。と同時に、我々BL愛好者が物足りなさを感じる懸念もなく、男同士の関係性の萌えがこれでもかと詰まっています。改めて木原先生の心情描写の緻密さと、あらゆる面で現実的な部分を注視し、けっして過度に美化したり省いたりして書くことのない創作への真摯な姿勢が素晴らしいなと感じました。

 喜多川は堂野の何にこんなにも取り憑かれてしまったのか。ありがとうという言葉をたくさん言ってほしい、と子供っぽい直截な欲求を口にする彼でしたが、本当に罪を犯した人かどうかというよりも、堂野の心根が、今まで自分に関わってきた大人たちとあまりにも違うことを肌で感じ取り、最初から気にかかっていたのでしょうか。また、親しい間柄でさえ損得を考えて動くことはあるけれど、刑務所という冷たい空間の中で堂野は自分の存在だけで救われ、感謝を示してくれる。無条件の愛に触れたことがない彼は、まず堂野の無条件の自分への好意に途轍もない快感を覚えたのかな、なんて思いました。

 子供の何かを吸収するスピードは速いものですが、堂野の情を根こそぎ自分のものにしようという喜多川の執念は凄まじく、ちょっとやそっとでは頽れません。その周りを一切顧みないひたむきさは、彼が子供のままであることを堂野に強く印象付けます。それはもちろん「いい歳なのに未熟」「社会の常識が分からない」というネガティヴな捉え方もできます。一方で、「ほとんどの人間が成長と共に持つようになる諦念や妥協がない」「大人の世界に染まらない純粋な心のまま世界を見ることができる」というポジティヴな面もあります。堂野は喜多川の後者の部分を徐々に愛おしいと思い始める自分に気付き、刑務所でも再会後も、その感情が愛なのか何なのか悩むことになる。

 出所直前に芝に自分の今後を伝えず、出所後は結婚し子供も持った堂野の選択は、彼がどこまでも普通の人なんだなということをよく表しています。BL作品の登場人物だからって、刑務所で知り合った同性と添い遂げる覚悟なんて持てない、女性に欲情しなくなったわけでもない、妻子を養う生活に不満や疑問もない、ごくごくありふれた男性。安易に雰囲気に流されず、喜多川との関係を一度は断つことを選び、再会後もすぐ絆されたりせずに妻子を裏切ることのなかったその真面目さは、冴えない彼の唯一と言っていいほどの美徳でした。そんな彼が、喜多川との関係においてのみ、太陽や月のように輝く存在となる。そしてまた、彼にとっても喜多川の脇目も振らない一途な感情は、単調で時々絶望に落ち込む人生の中で、一定の光を保って温かな希望を見せてくれる、かけがえのないものなんだろうと思います。この2人の出会いは数ある物語の中でも私にとって忘れがたい、尊いものとなりました。

◆Holley NOVELS版『檻の外』レビュー追記
 講談社文庫の『箱の中』には続編である『脆弱な詐欺師』『檻の外』まで収録されているのですが、旧版『檻の外』に収録されていた書き下ろし『雨の日』『なつやすみ』がなかったので、旧版も買って残り2編を読みました。

 『雨の日』はあとがきでも仰られているように担当編集に甘い話を求められて書かれたということもあり、BL色が強めでした。これは確かに一般レーベルでは出しにくいかもしれませんね。でも、刑務所というしがらみや麻理子という縛りのない、今度こそ本当に自由を手にした2人の濡れ場や会話は、些細なありふれたものでもとても愛おしく感じられました。

 『なつやすみ』は麻理子と浮気相手の息子である尚視点の話。片親の子のもう1人の親に会いたいという気持ちは痛いほどよく分かります。母と父ではやはり与えられる愛情にニュアンスがあって、子供はどちらも欲しいもの。喜多川や堂野が尚を連れ去ったわけでもなく、穂花との接し方から2人が子供の前でいちゃつくような男ではないと分かっているだろうに、ずっと感情的な麻理子には正直嫌悪感を抱きました。浮気相手との子を図太く認知までさせておいて、いざ堂野と尚が親子らしくなったら凄まじい拒否反応を示す。男に愛想を尽かした女性の現実だとは分かっていても、彼女に共感はできませんでした。だって、彼女の裏切りを知るまでは堂野も喜多川も彼女を裏切っていませんでしたから。

 でも、彼女の言う通り尚は幸せな子供だったと思います。喜多川の大らかな愛情と、堂野の丁寧で優しい愛情に包まれて、毎年夏の数日間だけ積み重ねていった2人の父親との思い出。そして、尚と触れ合うことで喜多川と堂野も穂花を亡くした痛みを和らげることができただろうし、男2人の生活でも子供を持ったような気持ちになって、お互いいろんな辛い経験をしてきたけれど人生そんなに悪くないなと思えるようになっていただろうと思います。麻理子や田口とは別に、尚には確かにもう1つ家族があった。他人に理解されずとも、この3人だけが分かっていればそれでいい。喜多川の隣には最後まで堂野がいてくれて、けっして悲しい終わりではなかったと、私は一片の疑いもなく信じています。堂野と尚の関係がいつまでも続くように祈りました。

あらゆる面でバランスがとれている

 今回は波乱はなく、大学生活終盤の2人の日常を追うようなストーリーでした。歯痛で情緒が不安定になる楢崎、野良猫を追いかけてしまう寺島、お互い可愛らしいですね(笑)。寺島の行動力のあるところはとても魅力的だけれど、大切な人を悲しませないように自身を危険に晒すような行為には慎重になってほしいです。この件でも、卒業旅行のタイでの夜の会話でも、それぞれがいかに真剣に相手とのことを考えているか、改めてよく分かりました。大学生なんてまだまだ子供だけど、そういう言葉が出てくる2人は恋愛に関してはかなりレベルが高いところにいると思う。時々長年連れ添った夫婦のようにも感じるくらいです。一方で、楢崎の溺愛ぶりもずっと変わらなければ、寺島も毎回新鮮に照れるし、相手へのときめきが冷めることもなく理想のカップルだなぁと。社会に出るこれからの2人も応援したいです。

ありえない、なんて断言できないから

 楢崎も寺島もそれぞれ厄介な問題を抱えたまま始まった9巻。昔終わったと思っていた出来事がまったく予想もしない方向から芽を出してくることってありますよね。別に楢崎は何も悪いことはしていないのだけど。でもやっぱり、一度は関係を持った人と何度も会うのはいい気はしないかも。寺島の嫉妬が見えなくて寂しかったのだとしても、みのりにはまた別の想い人がいたのだとしても、一連の流れにはちょっともやもやしてしまいました。

 一方、寺島の方も教え子の柊真に「懐かれる」を通り越して好意を持たれてしまい、あまり他人を責められる状況でもなく。彼の警戒心のなさは十分理解できるんです。歳が離れているし、そんなに会う頻度も多くない塾の講師と生徒の兄弟という関係性だし、そうそう同性を好きになる奴なんていないだろう。でも、確率の問題じゃないですもんね。講師と生徒の身内という関係性だからこそ線引きはきちんとして、相手が女性でも男性でも、子供でも大人でも、恋人が不安になるような隙はつくらないよう努める。パートナーがいるということはそういうことなんだ、と私もはっとさせられました。喧嘩をしたわけでもなく、お互い1人で悩んでいただけだったけれど、また一段と絆が深まった巻だったと思います。

ブルスカファンなら買うべし

 本編の同人誌として出されていた作品の総集編ということで、濡れ場多めというか、メイン2人の話は100%濡れ場だったかも? 本編はなんだかんだ毎回波乱があって、よくよく振り返ってみると蜜月期間的なところって少なかったかもしれません。そこを補完するのに買って損はない1冊だと思います。あんまり濡れ場が続くと胸焼けすることもあるけれど、この2人を包む空気感ってあまりどろっとしてないというか、汁気も少ない静かな雰囲気の中でじわりと汗が滲む、そんな描き方なのでまったくそんな心配もなく。最初から最後まで楢崎の寺島を可愛い可愛いとひたすら溺愛する様子と、彼の1つひとつの動作に感じて蕩ける可憐な寺島を楽しめました。