前半が社員旅行、描き下ろしの温泉編と軍港デートを挟んで、後半は安達が自分の気持ちを自覚する。
少しずつ安達の気持ちが変化して、2巻の最後で気持ちを自覚する場面がぐっとくる。恋愛経験がないことがコンプレックスで、だせーよなと自虐する安達にそんなことはない、好きな人の初めてを一緒に経験できるなんて嬉しいと思うと話す黒沢。
『もしそれが俺だったらめちゃくちゃ嬉しい
安達の初めてが全部俺なんて絶対絶対全部大事にするのに』
ずっとコンプレックスだったことを丸ごと受け止めて肯定してもらえたらそりゃあ好きになるよな、と納得しかない展開だった。黒沢の気持ちが本当にピュアで純愛で、一途に安達を想い続けているので報われることを願わずにいられない。
・本編
両片思い同士の甘酸っぱいルームシェア編かと思いきや。黒沢の六角への嫉妬、安達が気になる会社の女性藤崎さんの正体、誤解から黒沢への自分の気持ちを疑う安達、そこへ黒沢が安達に告白をする。ラストでぐぐっと進展して二人がついに!
安達が黒沢への気持ちを疑い始めた時はこれまで少しずつ少しずつ進展してきた関係が0に戻ったような気がしてハラハラしたけれど、もともと女性が恋愛対象で藤崎さんのこと気になってたことを考えれば一時的でもそちらへ気持ちが向いてしまうのも仕方ないのかと納得。それでも魔法で心の声を聞くまでは気付かなかった黒沢の内面に触れて少しずつ惹かれていって、黒沢の存在が大きくなって、これまで積み重ねてきたエピソード全てが空港での告白につながったんだなと思うと感慨深い。
まだまだ続くそうで次巻はデート(予告より)。今後日常にどう変化があるのかとても楽しみ。ぜひ致すところまで続いてほしい。
・六角編
六角から見た安達と黒沢の話。安達の名前を間違えるのはわざとじゃなく本当に名前覚えられていなかった。ポジティブな子の思考回路ってすごいなと感心したw
・14.5話どこで寝るか問題
本編14話と15話の幕間。安達の家に黒沢と六角が泊まるが客用の布団は一組のみ、さあどうする?という話。安達と黒沢それぞれの交錯する思惑とそれに気づかない六角。黒沢の考えてることが正直すぎて、安達のツッコミのキレも良くて笑った。
・柘植編
宅配員のことをほとんど知らないと思い悩む柘植。出先で偶然会って、思わぬ共通点からかけた言葉が彼に響く。宅配員の名前が判明してちょっとだけ進展?宅配員と六角につながりがあって、今後本編に絡んでくるのか?こちらの二人も気になる。
基本的に1巻に沿った内容で、途中黒沢が安達を好きになったきっかけの描き下ろしがうまく組み込まれてる(痕つける妄想はなかった)。描き下ろし2.5話(お泊りの朝ごはん)とバレンタイン編は収録なし。状況を説明するセリフやモノローグがちょこちょこ追加されているけれど、特に違和感なくすんなり聞けた。
安達は最初阿部さんだしちょっと声が高いかな?と思ったものの聞き進めるうちに気にならなくなったし、原作の黒沢の気持ちを知ってわたわたしてる様子がよく出ていて可愛かった。膝枕シーンでは安達の優しさが前面に出ていて、ああこれは黒沢が惚れるのも無理はない…と納得。
黒沢は思っていたより声が低めで落ち着いた感じで、この声この話し方は仕事ができるイケメンだ!と思わずにいられない。課長に焼肉優待券もらった時の心の声はテンション高く安達との対比も相まって面白すぎたし、他にも安達に向ける愛情深さや時折切なさも感じられてまさしく黒沢だった。
柘植の理屈っぽい話し方、宅配員のちょっとヤンキーっぽいけど根はやさしくて素直になれないのが分かる話し方もイメージぴったりだった。タイミングよく入るナレーションも絶妙。
封入特典の描き下ろし8Pコミック小冊子は、安達と黒沢がお互いの声について思うこと。SideAとSideKで4Pずつ。SideAは黒沢を意識する安達が可愛く、SideKは黒沢の妄想が炸裂していて面白かった。
笑いあり萌えあり、原作に忠実なつくりだと思うので、原作が好きな人は買って損はないと思う。原作未読でも何をやってるか分からず迷子になることはないと思うのでキャスト好きの人、きゅんとする話が好きな人も聞いてみてほしい。ただエロを求めている人には勧めない。エロは全くなくそれがこの作品の良さなので。
今作もお仕事シーンが面白く、栄、設楽、奥(初登場キャラ)が仕事を通じて関係を築いていく様子が活き活きと描かれ、だからこそ中盤で起こる事件に胸が締め付けられ、鉛を飲み込んだような重苦しい気分になる。
終盤では計、竜樹、深、錦戸さんとこれまでのシリーズに出てきた旭テレビ縁の面々が勢ぞろい。一作目で計が「ザ・ニュース」初回を見事にやり切った時のように読んでいてワクワクした。思わず笑ってしまう会話も健在。本編最後の人事通達はなるほど!という感じで、巻数重ねてるシリーズだから次があるか分からないけどまだ展開できる布石になりそうな…?
イエスノーシリーズが好きで全部持っている中でもこの作品はかなりお気に入り!
シリーズ初のスピンオフ、イエスノーシリーズも竜起のキャラクターも好きなのでもちろん楽しみ、でも計と潮の物語は前作で一段落なのかなと思うと寂しさもあって。やや複雑な心境でしたが、読み始めたら面白くて一気に読み終えてしまいました。
竜起と深が仕事を通して成長していく様子が良いです。竜起と深目線で物語を読んでいるので、二人がキツイこと言われてると「何なのこの人!?」と思ってしまいますが、キツイことを言う人がただ嫌な奴で終わらないのが面白いところ。キツイ発言にはちゃんと理由があって、それが分かった時にそういう意味だったのかと納得させられてしまう。竜起と深が凹んでから前に進んでいこうとするところが読んでいて清々しかったです。陽気な竜起が国江田さんに凹まされたのは、巻を重ねた今だからこそのエピソードだなと思います。1巻目の国江田さんも竜起の代打を上手くやるだろうけど、竜起を悔しがらせて成長を促すような仕事ぶりには何となくならなそう。
竜起と深が少しずつ距離を縮めていく様子ももちろん良かったし、相馬さんだったり、1巻目からちょこちょこ出てる設楽さんだったり、サブキャラも魅力的。計と潮でも、竜起と深でも、全く新しいカップリングでも良いので何かしらの形でまたシリーズの新しいお話がまた読めたら嬉しいな。
「おうちのありか」後のお話が3編。「おうちのありか」の諸々を乗り越えて二人の関係は盤石になったんだなあと感慨深いです。
・ロマンチックモード
計がリポーターをする北海道ロケに、錦戸さんの手伝いで潮も同行します。船酔いも何のその、根性見せる国江田さんはさすがの一言。潮の作品に対する錦戸さんの感想が興味深くて、そのあたりの会話から何か話が展開されていったりしないかな、そこに計が絡んでたら面白いなと妄想が膨らみます。
・オアシス
潮、再び計の実家へ。計母が潮を息子のように思ってるんだろうなと感じられる場面や、潮が計の両親に仕事の話をする中で「おうちのありか」で負った傷が癒えていく様子にほっとします。計は一緒に住んでることを隠そうとしていたけど母にはバレバレだったし、最後カマをかけられてあっさり引っかかっちゃうのが面白かったです。
・ばらいろポップ
賞をもらった潮がホテルでセレモニーに出席することになります。気乗りしない潮に甘えられ、ホテルの部屋で待つことにする計。潮が部屋に戻るころにはすっかり酔っぱらって、いつもより大胆に誘ってベッドシーン突入。計の朝ごはんの件の発言が可愛くて可愛くて、悶え死ぬかと思いました。
これまでの文庫本、同人誌であまり触れられてこなかった潮の家族や育った環境にスポットが当たっています。何かあるんだろうなとは思ってましたが、思いのほかシリアスで途中どうなるんだろうとハラハラ。それだけに終盤の計の啖呵が痛快でした。1~2巻は仕事を頑張る計の姿に感じるものが多く親近感が湧く物語でしたが、3巻は話のスケールが大きくてこれまでとはちょっと違った印象。でも大事なものを守るために頑張る計がかっこよかったです。
仕事面ではアナウンサーとして欲が出てきて、周囲の人との関係の築き方にも変化が出てきた様子。もし次があるなら仕事面での更なる成長物語を読んでみたいかな。
「イエスかノーか半分か」が大好きで、また計と潮の話が読めてうれしい。「sugar me」、「bitter me」ともに潮×計で計視点でした。
・sugar me
職場の後輩の結婚式、式を中座してお仕事からの潮との逢瀬…のはずが、寝起きの潮が甘い笑顔で計を「国江田さん」と呼ぶものだから、計は混乱してつい国江田さんとして振る舞ってしまう。潮の言動が計の記憶と食い違い、普段ならしないようなデートに誘われ、一体潮はどうしてしまったのか。不思議な雰囲気で話が進みます。最後には種明かしをして元通り。
結婚式では計の心の中での悪態や、上司2人の長い長い祝辞に対する竜起をはじめ旭テレビの人たちの反応が笑いのツボをぐいぐい押してきます。デートでは普段とは違うシチュエーションだから聞けること、言えることがあるんだなと、会話がなんだか新鮮でした。
・bitter me
「sugar me」の続き、計が熱を出して潮が看病する話です。同人誌「なんにもいらない」では潮がインフルエンザにかかってましたが、その話と比較するのも興味深い。坐薬から予想通りの展開、ごちそうさまでした。(計を休ませてあげて!と思わないでもないんですけどねー苦笑)