pixivの試し読みからこの作品に触れました。「高校生同士でこんなにエロくていいの?!」とはじめは及び腰に。エロは好きなんだけど小心者なわたしは電子書籍の本棚にも、ましてやリアル本棚にも迎え入れていいものかと数日葛藤しました。
しかし試し読みでも分かる作品の奥深さ、そしてオメガバース特有の甘さを忘れられなかった!リアル書店で購入し、いまはどっぷりとこの世界にはまっています。
とにかく甘やかなラブが読めます。
お互いが相手を求める描写、相手を慮る優しさと聡明さ、バックボーンにある寂しさゆえの胸を絞られるような切なさ。この作品はエロだけじゃない、ラブが詰まっています。
ストーリーも絵柄も好きだけどエロは苦手だなと迷われているそこのあなたに、ぜひオススメしたくレビューを書いた次第です。続編があればぜひ読んでみたいです。
夕映先生初読み。表紙とちるちるのレビューランキングにランクインしていたことをきっかに手に取りました。一学年違いの再会ものオメガバースです。
受けでβの中谷日和(なかたに ひより)視点で描かれる今作。攻めは中高の先輩で子役から今をときめく若手俳優へと成長していくα・清住章吾(きよずみ しょうご)。
日和は自身がβ男であることから、一途に好意を寄せてくれる清住からの言葉や愛情を真に受けようとしません。「αには運命の番(Ω)が存在する」と、βである自分との関係を冷めた気持ちで否定しようとするのです。
わたしは否定ばかりの日和をなかなか受け入れられませんでした。
日和はずっと清住のことが好きなのに、なぜその気持ちや不安を本人へ伝えきれなかったのか。読んでいて煮えきれない部分がありました。
相手とは釣り合わないと悩む劣等感から逃げを選ぶことはとても人間らしく、尊重すべき点であるとも思いますが、もう少し日和の想いを覗いてみたかったです。
誰よりも運命を信じているのに、自分が結ばれている赤い糸には自信を持てなかった日和。二人がもっと衝突して想いをさらけ出すようなシーンがあればと思ってしまいました。
作中に出てくる植物の名前は美しいものばかりでした。花や緑に学のないわたしもそのみずみずしさや鮮やかさを想像するのが楽しかったです。
この甘さを待っていたんだよ~~~~と満足のできるお話でした。大団円を迎える名シリーズ、今なら一気に読めますよ!を謳い文句に、最終巻のレビューをさせていただきます。
私は相手のことを思ってうっとりする、という描写が好きです。しかも「におい」でうっとり、なんてお互いに歩み寄らないとたいていは分からない。寄り添って、心を許して、好きな人のにおいを堪能する……仲睦まじすぎて恥ずかしくなっちゃいます。
このシリーズはそんなお話です。最初こそは性格真反対な鷹目に対して理不尽な想い(とちょっとずつ膨らむモヤモヤ)を抱いていた千里ちゃんですが、難事件を経てようやく気持ちを確かめ合うことができました。
一難去ったあとのあまあまなシーンは、私の中で5本の指に入る名シーン。千里ちゃんがすごくかわいい。なんのひねりもないですが、ただただかわいいのです。
キスをねだる。相手の首筋にすい寄る。気持ちよさを素直に言葉にする。私たちの萌えポイントを惜しみなく筆にのせてくださった榎田先生には頭が上がりません。これまで理性的だった攻めの鷹目のタガが外れてしまうほどのかわいさなのです。
それも、淫らという感じではなく、鷹目だけに見せる恥じらいや大胆さと言った印象でした。なので読んでいるこっちが恥ずかしくなってしまう。頼りなく縋ってしまうほどの愛情がじわじわと滲み出ていて、気持ち良い読み心地でした。
帯にある「クローズドゲイ×オープンゲイの年下攻エモーショナル・ラブ」の見出しに惹かれて購入しました。
クローズド、オープン、ってまた難しい設定なんだなとうきうきしながら読み始めましたが、まず自分の先入観に反省しました。
みなさんはクローズド、オープン、と言う言葉を見るとどのようなイメージを浮かべますか?私は今作のテーマであった「ゲイであることを公表する生き方か、しない生き方か」の方ではなく、「オープンリレーションシップかどうか」の方だと勘違いしていました。
なので、倫と伊東の悩ましいすれ違いも拍子抜けしたまま読んでしまい、二人のもどかしさをうまく感じとれませんでした。実際、生き方として正反対だと思っていた二人だったのに、やんわりと信条を折半しているような結末にも納得できませんでした。
物語全体が明るめでコミカルなところもあり、気軽に読める一作ではあります。倫の生業であるデザインや部屋を彩る雑貨、二人を惹き合せた植物に至るまで、空間の叙述にも魅力がありました。
ゲイ同士のお仲間見極めポイントの描写なんかは、安西先生なんでそんなに詳しく知っていらっしゃるんだろう……!と心を躍らせながら読んでしまいました。
安西先生の作品を手にしたのこれで3度目です。デビューから2作目の「好きで、好きで」は今でも尾を引くほどの大好きなお話。何度も読み返しています。
新進気鋭な先生には期待ばかりが膨らんでしまっていて、今回は自分の独り歩きに喝です。
ちるちるさんからの懸賞プレゼントを利用し、電子書籍にて購入。初じめての電子書籍な上、読み慣れない海外ミステリで、BLと銘打っていなければ途中で挫折していたかなと思います。
まず登場人物たちの会話のテンポについていけない。皮肉に皮肉に、ジョークにジョークの掛け合いで、君たちの会話の本題はどこなんだと嘆くばかり。直截的な感情表現や描写にもキョトンとなるしかなく、BL小説しか読んでこなかった私には難物でした。
ただ読み耽るにつれて唸らされたのは、最後の犯人発覚シーンです。主人公・アドリアンが本当に必要としているのは誰の助けなのか、それがようやく表われ始めていた所が良かったのかと思います。意志ある男性が相手に弱みを見せる瞬間は何ともそそられるものです。
また、どんな相手であっても人に執着されるほどの魅力を持つ受けは好きな要素の一つ。単に受け、ではなくゲイセクシュアルの彼、として読み解くこともでき、なんだか賢くなれた風でもあります。
そして、アドリアンの儚げな印象は草間さかえ先生のイラストにも影響されました。美しいです。
評価は中立となりましたが、この巻だけではアドリアンのその後が分からずじまいなので、次巻も読むつもりです。次は必ず書籍で購入します。
前作「ふったら~」は大人気作ですが私の中では刺さるものがなく、おのずと今作にも手が伸びていませんでした。何度か冒頭を読みかけては本棚に戻し、また読み直してはの繰り返し。ようやく読破しました。とてもよい読後感です。
引き込まれればとんとん拍子でした。さすがの一穂文学。冒頭で何度か挫折してしまうのは、やはり叙情的な、無限に広がりそうな作品世界の中で迷いそうになったからと思います。
人それぞれと思いますが、私は一穂先生の作りこまれた繊細な文章には果敢にぶつかっていきたいタイプです。何も考えたくないから物語に耽るのではなく、何かを見つけ出したいから、考えたいから読み込んでしまう。相手の気持ちを慮れるやさしい人たちを見失わないように、自分も動き出したくなるような感覚が好きです。その流れが決して面倒ではなく、楽しいからやみつきになるんですよね。
今作でも、受けの柊や攻めの和章が葛藤する場面で心を打たれました。一瞬の行動でも、その戸惑いの中には不安や苦しさを抱えている。自分らしさに抗えない、芯の通ったキャラクターにまた出会うことができました。「ふったら~」をもう一度読もうかと思います。
一穂先生の作品の中でも特に好きなお話です。
運命的な出会いと別れが二人の人生を変え、再び巡り逢わせる原動力にもなっている。一穂先生の綴られる物語が、BL小説の枠にとらわれない、切なさと苦さを含んでいるのだと再確認できた作品でした。
とにかく切ない描写が多いです。和久井(攻め)視点で進む物語だからこそ、結末を知っていくにつれて、あの時の有村さん(受け)の気持ちって……と馳せる苦さがあります。主役二人は長い間離れ離れになるのですが、再会を見届けることができて本当に良かったです。
お互いが想い合っていた分だけ、相手を優しさで包み込める関係って素敵ですよね。どうしてもこの人でなくてはならなかったのだと、読む度にじんわりきてしまいます。
切なさを拾い上げて、それが痛みであってもあたたかさであっても、パートナーと共有していける姿に感動しました。「好きだ」と伝えられるきっかけとして、再会した二人には思い返せることがたくさんあるのでしょうね。ぜひ続きが読みたいです。
ある目的があって海辺を歩いていた攻めの宗清、目的を見失いかけた儚げな声で宗清を呼び止めた受けの泉。出会いまでの複雑さと恋に落ちるまでの優しい掛け合いに涙が出ました。
泉と宗清、それぞれの家族、幼馴染、と一穂先生ならではの広い世界観で二人にとっての大きな転機が描かれています。
一穂作品って登場人物が多いように思います。しかもそれぞれが物語の鍵を握っている。何重にも交差する登場人物たちの想いが、二人の結びつきをより強く、くっきりと浮き上がらせていたのが印象的でした。
「青を抱く」というタイトルも物語の糸を引いています。泉と宗清の会話は最後まで堅いような気もしますが、合間にのぞくくだけたやりとりに“らしさ”を感じました。
余談ですが、フルール文庫の文字組み(16行×38字)が好きです。ザ・文学という雰囲気が引き立てられていませんか。他文庫よりゆるやかな文面がこの作品にも合っているような気がしました。
凪良先生の作品を読む度に、人間とはこれほどまでに相手のことを考えられるのか、自分の感情を殺すことができるのかと、自らの浅はかさを思い知らされます。
相手のことを思いやれる人の生き方が綴られていて、こんな風に物事を捉えられたらなと望んでしまいました。
受けの仁居と攻めの国立がそれぞれに抱える痛みを吐露し、和らげ、理解していく様はなんとも切なく、二人が寄り添いあっていく所以を感じとることができます。
「愛が欲しければ、愛しすぎない方がいい」と過去のトラウマで恋情をせき止めている仁居が、エピローグで国立に告げたある台詞が特に印象的でした。私の好きな恋愛ってこれだ~~~~~と万歳するほど。我慢だけで自分を律しようとしていた人が、不器用にも想いを口にする姿にきゅんとしました。
読後は涙にあふれ、読み返しても胸を熱くされる凪良作品は、なんだかこころの体操をしているようで好きです。普段使い慣れない琴線を揺さぶられ、それが心地いいのだと思います。
購入から半年経ってのレビューです。一日で読んでしまった気がするのですが、読了後の評価は萌×2。今読み返すと中立かなと思います。
暴力の世界で生きる、受けの辻が世界をどう俯瞰しているのか。俯瞰しているようで地べたを這い回っている面も描かれていて読み入ったことは記憶しています。
ちるちるの情報では標準的なエロ度だそうですが、私にとってはエロエロでした。タイトルである【threesome(スリーサム)】は「3人組、3つからなる、3重の、転じて、3人で行う性交、3P」の意味を持つそうです。前編となる短編もエロをテーマとした「erotica」内に収録されており、今作もエロと3Pの、嗜好の先端を研ぎ澄ましたかのような物語でした。(ちなみに前編は未読です)
私自身エロと3Pは苦手とする領域でした。しかし榎田先生×円陣先生でヤクザものとなると、目の前のぎらついたハードルにも興味が湧いてしまいます。結果として、自分の好みや選書について考え直すきっかけになったのですが。
重くシリアスな展開、カバー裏までもが美しい挿絵、そちらは満足できました。しかし、再読の兆しがなさそうなので今の評価は中立です。3人の関係性に入り込めなかったのが大きな理由かと思います。