主人公である俳優の桐原は義理の父でもあり、恩師でもある大瀧監督を亡くしたばかり。
休業に入って半年、桐原の元に映画のオファーがくる。メガホンをとるのは大瀧監督の孫で…
この撮影を通じて恋がはじまるのかと思いきや、なかなかはじまりません。なぜなら、桐原がたびたび亡き大瀧監督のことを「最愛の」という言葉をつけて思い出すので。
大瀧監督の養子でありながら「愛人」と噂された桐原、彼に憧れを持つ、大瀧の孫で新進監督の光嶋。
芸能BLなので、折々に混ぜられる映画やテレビの仕事の描写が上手くて、桐原と光嶋がどんな人間性なのかというのが語られていくのがとても面白い。仕事を通じてゆっくりと距離が近づいて…これBLだよね?と心配になるほどゆっくりとだけれど、桐原が大瀧に寄せていた思いに自分の中で区切りをつけ、新しく芽生えた気持ちと、仕事への思いを振り返り、見つめ直すためにはこのくらいのスピードが必要かなと思いました。
もう私はこのままブロマンスで終わっても良いですよという気持ちで読んでましたが、ちゃんと想いは交わしあうし、ハッピーエンドです。
愛のない結婚生活を送っていたスバルの夫が亡くなったところから物語がはじまる、死に戻りとしてはとても珍しいスタートのしかた。
夫のエイダンから愛情を向けられたことはなく、愛人もいるはずなのに「愛する妻へ」というカードと指輪を見つけて、なぜ?どういうこと?と思っている内に死んでしまう…走馬灯のように過去を思い出していく中に、読者にいろいろなヒントが散りばめられていきます。散りばめられているだけで、犯人はまあわかんなかったんですけど…
エイダンは実はスバルが好きだったんじゃないかなあ、というのだけは!ちゃんと!!わかりました!!
結婚式の真っ最中に死に戻って、夢じゃないかと思ってる内にどんどん甘々な雰囲気になっていくのがよかったです。お互い心のうちを出し合って、誤解も解けて。
そして2人とも命を落としてしまう未来を回避するために力を合わせていく。
表紙のイメージとは違ってSFな世界観と特殊設定でのお話なので、ちょっと慣れるまで混乱しましたが、たぶんSFチックな挿画だったら読んでいなかったと思う。
切ない苦しい過去から一気に甘くなる感じ、とっても好みでした!
溺愛、というかさらに上の執着溺愛でした。
物語の悪役令息に転生しちゃったから、死亡エンドを回避するために動く…というテンプレですけど、転生前の性格がよかったからか、上手く立ち回るというよりは領地や家族を思って行動する良いお兄ちゃんになってた。
そこへもう一人、物語の展開を知る人物=主人公が現れて…
「もし、どこかに世界の教本があったとしても、従う義理が俺たちにあるか?」
っいうセオドアの台詞がとても好き。
自分は自分の物語を生きる。どんな人生でも自分自身が自分の物語の主役なんだ、と思わせる言葉。サミィと同じくらい胸が高鳴りました!
前半に一行出てくる、前世の祖父の元を訪れた青年。
妙に気になっていましたが、後半しっかり回収されていたのもよかった!わたしもそう思う!
もしかしたらリオを救うために遣わされたのがサミィ=敬人だったのかもしれません。
とっても甘い台詞もよかったけど、ときどき溢す変態みあふれるおかしな台詞もよかった。
今回はテーマがテーマなので、ラブコメ調のお話が多かったです。ほのぼの系もあり。
紳士的なイメージでいざ会ってみたら想像と全然違う!とか、出会ったときはあんなにそっけない…冷たいのにここまで甘くなっちゃうの?性格変わってない?な攻め、はたまたスパダリイケメンだと思ってたら意外な弱点があったり、えっ?精霊さまなのにお料理上手なんですか?ってびっくりしちゃったり、かわいい姫枠だったのに急に男を意識させる仕草で受けを翻弄したり…
現代ものから異世界ものまで、いろいろな場所のいろいろなタイプの攻め様を堪能できました。
ああ〜もうちょっと…もうちょっと続き読みたい…と思ったお話も。
5話あるので、平日の眠る前にひとつずつ読んでいくのも良さそうだなあと思いました。
全てを手にした王者のような振る舞いのライハルトと、何も持たず身体も心ボロボロのミカ。
その特性から身体の傷はすぐに治るけれども、心の傷はなかなか治らない。居場所がやっとできたミカにどんどん降りかかる災難。
序盤はライハルトの態度もひどいので、とにかくミカが不憫。読んでいて苦しくなってしまうくらい。
それでも無自覚ながらもライハルトの見せる好意にどんどん距離が近づいていってからの…!
猫化してしまったミカを見て後悔するライハルトと、そこからの愛ある行動、そして自分を見失ってしまったミカが過ごす白い空間…この辺りに物語の良さがぎゅっと詰まってる。
無事ミカを取り戻したライハルトはもう最初の面影がないくらいでろでろのとろ甘!すごく好きで愛おしいって雰囲気が行間から漂ってきます!
本編の読後感は明るい未来を予感させて。
おまけの番外編は甘くて切なくて、涙なしには読めませんでした…
とにかく最高の一冊!挿絵も素敵なので紙書籍がないのがほんとに残念。