木原作品ということは大前提で、いまさらそこに関しては書きませんが思いっきりネタバレありなので注意してください。
この話は手(特に右手)がキーワードですよね。
作中で河瀬(攻)が柴岡(受)に「俺のこと、好き?」と問いかけるのに対して柴岡が「君の右手が、一番好きだ」と答えるシーンがあるんですが、なぜ右手なんだろうと思いながら先が気になりそのまま読みすすめたんです。
確かにそれまでにも右手の甲にキスをするシーンはありました。
そしてラストシーンにきて柴岡の「いつも君は私の手を引く。だから…助けてもらえるんじゃないかと勘違いする」ではっとしました。
読み終わってから急いで読み返すと、最初にあるじゃないですか!手を引いてもらうシーンが!
それまでも健康的でうらやましい(?)という気持ちはあったようですが、このシーンで柴岡が恋に落ちたとわかって絞り出すように涙が出ました。
その後も探せば出てきます右手が。
最後の最後でも、右手の下の砂をさらうという状況が何かを表しているんでしょう。
それにしても木原先生の作品にしては珍しくずっと河瀬だけの視点だったのが印象に残りました。
この作品は柴岡視点を書いてしまうと成り立たない話なので必然ですよね。
ちなみに河瀬が柴岡を好きになるのも当然な流れだと私は思いました。
ですが河瀬から気持ちが返ってくることなど微塵も期待出来なかった、勘違いすることさえ自分で許せなくなってしまうような柴岡のこれまでの人生がとても辛かったです。
追いかけてくれる河瀬に出会えて本当に良かった。
死ぬほど続きが読みたいけれど、まずはハッピーエンドで良かった。