※若干ネタバレ注意です
ヤマシタトモコと聞いて即決で買った本作。
万人受けはしないかもしれないけれど、万人に薦めたくなる傑作だと思います。
あらすじは上に書かれている通り。全5話に書き下ろしのおまけ漫画6Pという構成です。
登場人物はみんな個性的で魅力的です。
ヒロイン十和子は、ヤクザに命を狙われても生きることを諦めない気丈な女の子。泣いても震えても心は折れない様が格好いい。
ヤクザ紛いの浅黄は、田貫のことが好きなゲイで、冷めた態度や物言いとは裏腹に作中で一番優しい人。十和子を守るために全力を尽くします。
法律屋の田貫は、Mのペシミスト(自殺志願者)で自ら怪我をする無気力人間。恐らく最も緊張感のない人。
保険屋の射立は、拝金主義で要領よし、余裕ある悪徳サラリーマン。・・・だったのが十和子に心動かされ。
ヤクザの狐文は、血を好む変態ではあるけれど浅黄を好きな気持ちは真剣そのもの。伝え方が歪んでても切ない。
さらにもう一人、クライマックスで登場するラスボス的存在:狐文の父(社長)もこの物語に必要不可欠な存在ではないかと。見事なまでの悪役で、私は逆に魅力を感じました(ビジュアル的にも渋くて素敵でした)。
“死にたがりに捧ぐ”
帯の宣伝文句です。読んだ後に心から納得しました。
物語が進むにつれ、生きたいと強く願う十和子に感化されていく大人たち。
クライマックスで田貫は十和子に問います――生きる意味はなにかと。
十和子の答えを、ぜひ皆さんに直接読んで確かめてほしい。
本当に素晴らしい作品でした。