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受けが男前

問題提起的な事案が少ない代わりに感情描写が豊かで、元々しっかりとした人物像の受けのフィンレイの心の揺れがとても分かりやすく、読み手の心を揺さぶる様に描かれているなと思いました。
勿論攻めのフレデリックの感情の変化も同様です。

フレデリックは民にも慕われている有能な領主だけど、兎に角フィンレイが出来過ぎなほど人間的に素晴らしく、受けにしておくのが勿体ない!
フレデリックに嫁がずあのまま母親の実家で過ごして大人になって、気立てのいいどこぞの娘さんと結婚したとしても幸せな家庭を築いていたんだろうなと思うのに、そんなフィンレイにずっと恋心を抱かれて、嫁いできてからも一生懸命夫のために動いて、笑って泣いてしてくれるとか堪りませんね。

猟銃は最後にああ使う為にあったんだなと納得しましたが、個人的な感想で申し訳ないですが狩った後の動物の描写で苦手な部分がありました。そこだけが唯一マイナスな気分になりましたが、続編も出ているようなので読んでみたい位には楽しかったです。

優しい俺様獅子

ずっと気になっていて今頃になってやっと読書出来た作品。

表紙絵のイメージでは受の喜祥が攻のラシードに攫われたりオークションで買われたりして手籠め(?)にされちゃう感じかと思っていたけど全然違っていて(オークションは半分正解?)、良い裏切りに思い切り万歳しました。

李丘先生特有のセリフと地の文の言い回しとユーモアさが上手く融合していて凄くバランスの良い一冊。

ラシードが思っている程傲慢ではなくちゃんと喜祥の考えを理解して動いている所がきゅんとします。
始めラシードも喜祥も相手を好きと言う気持ちはないまま近くに居て、ラシードについては兎に角種族の繁栄に喜祥が必要なだけだったけど、じゃなくなって喜祥自身を欲する様に気持ちが移っていく流れがなかなか濃密で。
二人の気持ちが通ってからのラブシーンは激しくて、燃え上がりが物凄く伝わって照れてしまうぐらい素敵でした。

唯一(牝の穴)と言うのがBL的にどうなのかなと引っ掛かりましたが、分厚くて読み応えがあってストーリーも好みでした。

人魚の国から年下のイケメン王子

書店で表紙に惹かれて手に取ったのですがタイトルとあらすじを見て即買いしました。

ファンタジー要素のあるBL小説の中でも人魚設定は多くないのか余り見掛けませんでしたが、好みと興味と珍しさで購入して読んでみました。

最初は受の観崎歩は普通の人間だと思っていたので、攻の人魚王子エドヴァルドが言うフェロモンというものが、歩から無意識に出ているフェロモンをエドヴァルドだけが感じて引き寄せられたのかなと思っていました。エドヴァルドが歩を牝と呼んで両性具有だと言うので、だからかなと。
でも違って歩自身も知らなかった、認めなかった人魚だと自覚してからストーリーに面白さが増していきます。

発情して意思に関係なく尾鰭になってしまう足をどうにかしたくて人魚の国に行きますが、そこで歩の意思から逸れた状況に陥っていくのに反発しながら、逆に段々エドヴァルドに心惹かれていってしまう葛藤が凄く伝わって、ハラハラドキドキします。エドヴァルドが嫉妬しいなのも可愛い。

最終的にはハピエンですしラブシーンは人間同士、人魚同士があってとてもエッチです。
末永くお幸せに!

評価はちょっと甘めかなと迷いましたが、設定が好みにドンピシャだったのと描写が丁寧で凄く纏まった一本のストーリーだったので。表紙絵もデザインも挿絵も含めて好きです。
こういう王道ファンタジーも良いですね!

タイトルの意味

ショコラ文庫の同時発売のもう一冊と一緒に購入。

受の怜王目線が強いストーリーだけどふっと攻の東屋視点になったりするのにも違和感なく、すらすらあっという間に読めた作品でした。

怜王がゲイ設定なので東屋に対する行動と言動に違和感なく、それに対するノンケの東屋との距離の近づき方も凄く自然。東屋の性格が尖っていて言葉足らずだから良かったのかな。

ストーリーは大きな盛り上がりはなく割と極日常の流れなんだけど、だからこそノンケ×ゲイのカップリングのリアリティさが伝わって、東屋の心がじわじわ怜王に侵食されていく様子に読者目線ながらシメシメなんてほくそえんでしまいました。

東屋が自分の気持ちに気付いて失ってしまった怜王を探し回るところが最大の盛り上がり場面で、ラブシーンより興奮したかも。

レビューされている方も書かれていますが成長物語ですね。
心の成長としては特に東屋のかな。

タイトルの意味ですがずばりではなくひっそり二人を見守っている月のさりげない描写が美しかったです。

表紙カラーの配色が私的に嵌りました。凄く綺麗ですし、口絵では金髪ではない怜王が見れたのも良かったです!