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女性ポッチさん

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完結編ではありません

世迷いさん原作、りゆま先生コミカライズの「かわいいきみ」の2巻目。
今巻で完結かなと思いましたが、まだ完結していません。世迷いさんが描かれた原作も拝見しましたが、原作で描かれている部分については今巻で完結しているので、今後は原作にないエピソードに突入するものと思われます。

ということでレビューを。前巻ふくめたネタバレがあります。ご注意ください。




DKのナホにはイケメンの幼馴染・カナがいる。
いつもナホに「可愛い」という言葉を投げかけてくれる優しい幼馴染を、ナホも大切に思っている。イケメンのカナが「可愛い」といってくれる自分は可愛いはず。そう信じ込んで今まで過ごしてきたが、高校のクラスメートやカナの友人たちのセリフから、「自分は可愛いどころか、むしろモブ顔なのでは…?」と気づいたナホは…。

というところまでが描かれていた1巻。
2巻は、カナの友人たちの言動から自分はカナから離れた方がいいと思ったナホはー、というところからスタートします。

所々で描かれている描写から、カナはナホに対して恋愛的な意味での執着心を抱いているのだろうと。そう読み取れる部分はたくさんあります。それがりゆま先生の可愛らしい絵柄で紡がれていくので、ドジっ子なナホと、そんなナホに惚れ切っているカナ、というほのぼのなストーリーになっていてもおかしくない。

なのに、ほんのりとシリアスムードが漂う。
理由は二つあると思いました。

一つは、ナホが「自分を可愛い」と信じ切っている痛い子だから。
そしてもう一つは、カナの無表情。
ナホの天然さに対して、カナの感情が読み取れない。カナの表情から彼の感情が読み取りづらいんです。

ナホは高校生なわけで、カナが喜んでくれたという理由だけでお礼に折り紙で折った鶴を渡し続けている。それに対してカナの友人たちはナホに白い目を向けるわけですが、んー、確かに高校生にもなって鶴を渡し続けるナホはちょっと天然ちゃん、というかはっきり言ってしまうと痛い気はするんですよね。

ただ、それを本当にカナが喜んでいる感じならいいのですが、ナホの行動に対してカナが無表情なのでナホへの想いが読み取りづらい。

終盤、カナと想いを通じ合わせたナホ、ということで濡れ場もありますが、そこから一気に甘々展開になっていくのですが、そこもなんかしっくりこない、というか。カナの友人のアオイ、ハクサともに、ナホに対して辛辣だった態度が急にフレンドリーになるのも「?」となってしまった。急展開すぎる感じ。

ただこの辺りはお好みかなとも思います。甘々になって安心した、と思われる方も少なくないんじゃないかなと思いますので。

今作品は、ナホとカナの恋の成就の物語というよりは、ナホの成長物語だったように思います。今まで彼の世界は「カナ」だけで成立してしまっていた。が、彼が自分を客観的に見ることができるようになったことで友人もでき、世界が広がっていく。

カナが、その執着心からナホを囲い込んできたようにも読み取れ、そこには萌えしかない。原作はすでに完結していますが、今後どのようにストーリーが展開していくのかも気になります。

まだ続く作品なので、完結してから読む派の方はしばしお待ちを。
ただ、ストーリーとしては一旦の完結を見せてはいますので(原作はここで終わり)、まず読まれてみてもいいかな、と思います。


ドラマ化、おめでとうございます!

「好きやねんけどどうやろか」が実写ドラマ化されるにあたり新装版として刊行された今作品。

加筆・修正はないように思います。昔からお綺麗な絵柄だったんだなあ、としみじみ思ったりもしたわけですが、旧版との大きな違いは「好きやねんけどどうやろか 2024Ver.」が収録されている点でしょうか。分量としては12P。甘々な栄枝くん×久志さんのお話が堪能できます。

ということでレビューを。旧版の方にもレビューはありますが、一応内容をさっくりとさらったレビューを書こうと思います。




四国から大阪に転勤してきたリーマンの久志が主人公。
実は、ちょっぴり大阪弁が怖くて苦手だったりする。みんな良い人だとわかってはいるが。

そんな彼の最近のお気に入りは小料理屋「たまえ」。久志の勤める会社が造っている日本酒やみりんを使ってくれている小料理屋だ。何より、店主の栄枝が造る料理はどれもおいしい。栄枝とも気持ちのいい関係を築けていると思っていたが、そんなある日、栄枝から告られてしまってー?

というお話。

久志はバツイチ。
とある理由で妻(今は「元」妻だが)から離婚を切り出され、以来、これからは一人で生きて以降、そう思っていた矢先の出来事だった。

久志は結婚歴があることからも推測できるようにノンケさん。
対して栄枝はゲイ。
「子ども」という、いわゆる一般的な夫婦であれば避けては通れないバックボーンを上手に生かした展開のお話です。ちょっぴりセンシティブな因子ですがシリアスにしすぎない内容で、すれ違いながら、戸惑いながら、二人が少しずつ心を通わせていく、ほっこりと温かなストーリーです。

今作品は2CPのお話が収録されています。
後半は「食わず嫌いはあかんやろ」。小料理屋・たまえを舞台にリンクしているお話です。

「たまえ」の常連客の中津さん。
潔癖症の彼には苦手なものがたくさんある。野菜もその一つだ。子どものころにキャベツにくっついていた青虫を見て以来、「野菜」そのものが苦手。

が、そんな中津さんに目を付けたのが要。
「たまえ」の店主の栄枝の先輩にして、「たまえ」に野菜を卸してくれている八百屋さん。あの手この手で、自分が扱っている野菜を中津さんに食べさせようとする要だが…?

今作品は関西弁が重要なファクターになっているお話でして。
関西人らしいギャグとポンポンとテンポのいい話し方、そこからイメージできる人物像。明るく、前向きな人物。要(栄枝もそうですが)を、そういう人物として読者に見せています。

一方、それぞれのお相手の久志と中津さん。
相手のペースに飲まれそう…、に見えながら、栄枝しかり要しかり、相手をきちんと尊重しているので強引すぎる展開にはならない。

シリアスすぎず、コミカルすぎず、ストーリー自体非常に王道。
誤解を恐れずに言うならば、非常に万人受けするお話じゃないかと思います。

旧版をお持ちの方に向けて特筆すべき点は、新装版にあたり加筆された「好きやねんけどどうやろか 2024Ver.」の情報でしょうか。

時系列としては本編終了後。
甘々な恋人同士の2人、という軸のお話です。

仕事が終わったらうちに来てほしい。
そう、久志から言われた栄枝は、仕事終わりに久志の家へと赴くが、そこで栄枝が見たものは…。

最初から最後まで甘々。
糖度たっぷりな1冊でした。

何はともあれ、TVドラマ化おめでとうございます。
楽しみですね!

攻めさんがカッコよすぎて。

作家買い。
レオナさんの描かれるスーツイケメン。もう、さいっこうにドツボなんです。
そんなイケメンさんが主人公と聞いたらこれはもう買わずにはいられません。ということで発売日を心待ちにしていました。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。





35歳、優秀で見目麗しいリーマン・辻。
親から英才教育を受け、さらに姉妹に囲まれて育った彼は生粋のドルオタだが、「30過ぎた男のドルオタはキツい」と姉と妹の2人から言われたことで最近オタ活を自重している。推し活動を制限している彼の目下の癒しは、最近入社してきた新人の御幸くん。辻さん好みのアイドル顔に、「あざとい」と言わしめてしまう可愛い仕草。そのすべてが辻の癒しとなっているのだった。

が、御幸くんの歓迎会の日に、飲みすぎたという御幸くんを介抱しようと自宅に連れ帰った辻さんだったが、こともあろうに御幸くんの方から押し倒されてしまってー?

えっとですね、辻さんという男性はめちゃカッコいいです。
見た目もですが、その中身がですね。
仕事ができて、部下に対する配慮もパーフェクト、人に迷惑をかけず自身の稼ぎの中で推し活を楽しむという、オタクの鑑のような人物です。

ゲイではない辻さんが、御幸くんからのアプローチにもきちんと答えを出そうとする誠実な男性でもある。

が、それゆえに、というか、受けの御幸くんがツボに入らず。
辻さんへのアプローチの理由、自分の可愛さが分かっているからこそのあざとい仕草、言動。仕事は一生懸命頑張っているというのは分かりますが、いや、それ社会人として当たり前だしなあ…。という。

完全に好みの問題だと思いますが、受けちゃんがどうにもこうにもツボに入らず残念でした。

ストーリーとしては、王道の展開といっていいじゃないかな。
当て馬くんの登場とか、辻さん×御幸くんのすれ違い、からの恋の成就。
それをリオナさんの描かれる絵柄で紡がれていくので、良い意味で王道の良さが生きている作品ではあると思います。

受けちゃんがツボに入らな過ぎて評価で悩みましたが、反対に攻めの辻さんは個人的ドストライク攻めさん。ということで、ちょっぴりおまけして☆3つで。

それにしても、こんな兄ちゃんがいたら嬉しすぎる。
一緒にオタ活したら楽しそう!息子をドルオタにした辻さんの母ちゃん、GJです。

めっちゃハートフル。

高岡先生の新刊は、タイトルからも推測できるように「人ならざる者」のお話。
高岡先生はドシリアスだったり痛みを伴う作品も描かれますが、今作品はほのぼので人の温かさを感じるお話でした。




主人公は21歳、絶賛就活中の周。
が、彼の元に届くのはお祈りメールばかり。実はちょっぴり焦っている。

そんなある日、祖父から電話がかかってくる。その電話のために一歩歩みを止めたことが幸いとなり、事故に巻き込まれずに済んだ。そして、果たして祖父の電話の内容は、祖父が持つアパート「花咲荘」の大家になるために田舎へ帰ってこないか、というものだった。なかなか就職が決まらない周は、その誘いに乗って花咲荘の101号室に大家として入居することにするがー。

そこで、周は出会います。
自らを「座敷童」と名乗るイケメンさんに。座敷「童」と呼ぶには大人な彼に、彼の住まう部屋の号数にちなんで「イチ」と名付け共に暮らし始めるけれど。

普通の人には見ることのできない座敷童、もといイチを、周が見ることができるのはなぜか。

周の祖父、曾祖父から繋がれた絆が、周の代で花開くことになったわけですが、理由はそれだけではなく。その「理由」にびっくりさせられたというか、高岡先生の張られた伏線、あるいはギミックにしてやられた感がありました。さすがベテラン作家さまと思ってしまう。お上手です。

とはいえ、今作品の軸は、妖と人間が共存できるか、という部分だったような気がします。イチだけではなく複数の妖が登場しますが「怖い」というよりは種族を超えた愛が描かれています。

高岡作品なので、いつシリアスに振り切るのか、いつ痛いお話になるのか、と思いつつ読み進めましたが、読み終えてみると非常にハートフルな一冊。「イチ」が、とにかくめっちゃイケメンです。見た目だけではなく、その中身が。周のためだけに、彼は奮闘する。

妖、というか、神、というか。
そういう存在が攻めさんという設定のお話はBL作品では珍しいものではありませんが、その多くはスパダリ感マシマシなキャラが多いように感じています。が、今作品の攻めさん・イチはですね、おぼこいっていうでしょうかね。恋というものに慣れていない。ただただ、周を守るために。そんな彼の一途さとか一生懸命さが可愛いしカッコよかった。イケメンなんですが、座敷童という設定を裏切ることのないピュアさが詰まっています。

先述しましたように今作品にはイチのほかにも妖が数人登場しています。スピンオフもかけるんじゃなかろうか、いえ、むしろ書いてください!というナイスキャラなので、正座して続編、あるいはスピンオフ作品を切望しています。

ほのぼので最高。

市ヶ谷先生の新刊は、先生らしい、といっていいでしょう。オジサマが主人公のお話。アンソロ「センセイ・コレクション」に収録されていた市ヶ谷先生作品と同じタイトルだなあ…、と思って手に取りましたが、そちらの作品が0話で、その後を描き下ろした1冊まるまる同じCPのお話です。

元消防士の清嗣と、元三ツ星レストランのシェフの修志のお話。



幼馴染の二人。
ぞれぞれ別の道を歩いていた二人がとあるゲイバーで再会し、そこからお付き合いがスタート。交際ののち、養子縁組で同じ戸籍に入った彼らは30年共に過ごしてきた。

という、30年経ったふたり。
という状況のところから物語はスタート。

養子縁組してて、一緒に住んでて、でも彼らがゲイで恋人同士ということを知っている人は彼らが本当に信頼している人しか知らない。

というバックボーンを持つ二人ですが、とにかく仲睦まじいです。
30年という、決して短くはない歴史を振り返る形で、彼らの過去や現在の状況を読者に見せる展開。

「今現在」がおじいちゃんだからなのか、二人の濡れ場はなし。
過去の描写にも描かれていないので、あえての濡れ場なし作品なんだろうと思います。が、濡れ場なんぞなくても二人がともに歩んできた時間はひたすら優しく温かなものだったのだろうと。二人が気づいてきた信頼関係や愛情は確かなものなのだろうと。そういう部分がきちんと読み取れて非常にハートフルなお話でした。

二人がまだ子供だった時に、清嗣の家の隣に修志が引っ越してきた、という過去を持つ二人。元気溌剌で友人も多い清嗣と、引っ込み思案で自分に自信が持てない修志。全く異なる性格の2人は、でも仲良くなっていく。修志は人から愛されることになれておらず、それはなぜなのか、という部分も過去の描写で描かれているので、じんわりと二人の関係性とか付き合ってからの様子とか、そういったものがきちんと読み取れるところが素晴らしいです。

主人公がオジサマ(年齢の描写はありませんが、おそらく70前後かと思われる)であることに加え、イケメンさんの濡れ場もないし、BLでは王道のイケメンさんというのも登場しません。

が、じんわりと心にしみわたってくる温かさとか古き良き隣人との関係とか、人の優しさとか。そういったものがそこかしこに詰まった1冊。

ただ、読み手によっても受け止め方は異なりそうだなと思いました。
恋の成就の過程とか、あるいはイケメンさんのあんなこんな濡れ場が読みたいのよ、という方にはやや不向きか。ワタクシは婆だからでしょうか。じんわりきましたねえ。

あと、修志が元シェフということもあって料理を作る描写が多いです。
「生きる」ということはすなわち「食べる」ことでもあって、リタイアした二人のお話だからなのか?家で一緒に料理を作ったりするシーンが多い。これがまた良いスパイスになっていてほのぼのするのですが、それゆえに飯テロを食らいます。腹ペコの時は読んだらモロに食らいます。ご注意あれ。

あと個人的ドストライクキャラは修志のお姉さん。
カッコいいです。見た目も、中身も、その生きざまも。

市ヶ谷先生の描かれるオジサマは妙な色香があるというか。
が、今作品はほのぼの。読後、心がほっこり温かくなりました。心に栄養が欲しい時にぴったりの、そんな優しい1冊です。

バカップル、のお話かと思いきや。

笠井さんホイホイされてお買い上げ。
名倉さんというとほのぼので温かなお話を書かれる作家さまのイメージが個人的に強いのですが、今作品もそのイメージを損なうことのないほのぼの系なお話でした。





主人公は、1000年という長い歴史を持つ大国・ヴェステルルンド王国48代目国王に就いたばかりの若干18歳の若き国王であるユリウス。祖先にエルフの血筋があるその名残を強く受け継いだのか、線の細い体に金髪に白い肌を持つ美貌を誇る青年だ。

父を早くになくした彼は国王だった祖父に大切に愛され次期国王として学びを深めてきた。祖父が亡くなり、悲しみに暮れながらも祖父と同じように国を守るべき善き王になろうとしている。

そんな彼が新たに国交を始めようと狙いをつけたのが隣国のアフティオ王国。
新興国で、祖父は国交を持つことを望まなかったが、ユリウスは同じく代替わりしたばかりという新国王のアルマンドに親近感を抱き会ってみたいと望んだのだった。

果たして会ってみたアルマンドは、めっちゃかっこよく、逞しく、ユリウスは好感を抱くが…?

というお話。

ユリウスの統べるヴェステルルンド王国は、資源も豊かで闘いを望まず、穏やかで豊かな地。そして、箱入りで育てられたユリウスはもう「おぼこい」という形容詞がぴったりのホンワカな性格の持ち主。が、決して無能ということではなく、臣下たちを信頼し常に気を配ることのできる王なのです。

一方のアルマンド。
一言でいうなら「チャラ男」って感じでしょうか。若くきれいな女性に目がなく、その身分でありながら女性遊びがやめられない。国民たちとの距離も近く国民たちからも慕われる王ではあるが、いかんせんヤリチンで「国王」という身分に執着していない、こちらも一般的な王とはちょっと毛色が異なる男性。

その二人は、出会ったその瞬間にお互いに一目ぼれ。

おいおいおい。
曲がりなりにも一国の王がそんな腑抜けで大丈夫なのかい?
と思わず心配になってしまうくらい、キャッキャウフフな感じで序盤ストーリーが動いていくのです。

が、そのほのぼのな雰囲気はとある出来事を介し一変していきます。
臣下たちを心から信頼しているユリウスですが、実は…。

最後の最後まで誰が裏切り者かわからない。
もしかしたらあの人か?それともこの人?もしかしたら、裏切り者は何人もいるのか?

そんな状況に陥りつつも、まあ、お約束ですよね。
アルマンドがいますから。

王と王の恋、ということで、お世継ぎ問題とか色々出てきますが、ベースはほっこりほのぼの。こんなほのぼのな王がらみのお話がいまだかつてあっただろうか、と思ってしまうハートフルなお話。

歴史が古く、臣下たちを信頼することでお互いの信頼を築き上げてきたヴェステルルンド王国。
新興国で、まだできたばかりの国であるアフティオ王国。
そのバックボーンがきちんと生きていて、最後丸く収まるところはさすがベテラン作家さまというべきか。

暴力シーンとか、人を殺める、傷つける、といった描写は若干ありますが、アルマンド×ユリウスの恋といった部分に関しては初めから最後まで一貫して甘々。読後は心がほっこりします。まっさらだったユリウスが、百戦錬磨のアルマンドにあの手この手で翻弄されていくさまはとってもエロ可愛かったです。

甘さと、権力争いといった全く趣の異なるベースが上手にミックスされた、そんな1冊でした。

笠井さんの挿絵は今巻も神。
線の細い、けれど芯のしっかりしたユリウスと、男らしい色香満載のアルマンド。褐色の肌がまた良い。
タイプの異なる二人のイケメンさんたちがとにかく麗しく見ごたえがありました。

もう一声欲しい。

前作『春雷と蜜』がめっちゃ良かったので作家買い。
前作とは異なり、ラブコメの様相を見せる作品でした。

自分にコンプレックスを抱える青年が、自分をまるっと受け入れてくれるデザイナーと出会い、そして恋をし、自分のことも好きになっていく。簡単にあらすじを書いてしまうならばこんな感じでしょうか。

受けのまひるは本当に可愛いんです。見た目もだけど、その中身が。
好きなものを笑われたことをきっかけに素の自分をさらけ出せなくなっていた彼が、自分をモデルとして見出してくれた陽平のために奮闘し、そしてそれは恋にもつながっていく。

一方の陽平の方はというと、彼は自分の好きなものを好きと言える強さを持つ男性。そんな彼が見つけた、自分の作った服をまぶしそうに見つめてくれる男の子・まひるに心惹かれる気持ちは理解できる。

ただ突っ込みどころも多かったな、という気も。

陽平はもともと依頼していたモデルが来れなくなり、代わりにまひるをスカウトするけれど、そもそも陽平はすでに人気のあるブランドを立ち上げているデザイナー。その彼が、いきなり身元も素性もわからないその辺にいた男の子をモデルとして起用するのだろうか、と、まずそこが引っ掛かりました。

まひるはすごく可愛い顔をしている、という青年ですが、モデルに必要なのって顔面偏差値ではなく身長とかスタイルなんじゃないのかなあ…。中性的、ジェンダーレスという部分がキモだったのだろうか。

まひるがイメージに合っているからと言ってずっと起用し続けるのもよくわからないし、初めからまひるに執着している様子が見えるけれどそれが「なぜ」なのかわからないので話に入りこめない。陽平はモテるし、恋人がいた時もあったけれど、長くは続かないという設定でしたが、それなら陽平の方が重すぎて…、というのもしっくりこなかった。むしろ、恋人に執着せずに、それにあきれ果てた彼女が彼の元を去っていった、という方がストーリー的に合ってないかな。

面白くないわけでも萌えないわけでもないのだけれど、今一つツボに入りきらない感じ。設定とストーリー、キャラがちぐはぐな感じがする、というのか…。

が、まひるの、天然ワンコちゃんぶりとか、過去のトラウマとか。
陽平のスパダリっぽい感じとか。
可愛いんですよね、すごく。まひるが自分でかけていた枷を外して外の世界に飛び出していくさまは爽快。「まひる」という自分を生きなおしている感じがしてすごく応援したくなる。それを精神的にサポートしてのが攻めさん、という構図で、お互いになくてはならない存在になっていく過程もいい。

デザイナーとモデルというキラキラな世界を描いた作品で、でもキラキラ過ぎない、等身大なCPのお話。そのキラキラを描き切れる劣情先生の麗しい絵柄もいい。前作に比べて綺麗さが上がっていて、これからどれだけ綺麗な絵柄になっていくのかも楽しみ。

ただ、もう一声欲しい感が否めなかったのが残念。が、痛い展開になることもないし可愛いお話で(まひるが当て馬さんを蹴散らすシーンはめっちゃ笑いました)、さらりと読むには楽しめる1冊かな?というのが個人的な感想です。

萌え、は無い気がするが。

初出は1994年。
1997年に、文庫化されて刊行された今作品。旧版は未読ですが、1994年の吉原作品でしょ?絶対痛いお話じゃん…。レビューを拝見しても痛い話って分かるじゃん…。

と思っていた今作品。
なのになぜ買ったのか?それは、見てください、この表紙を!

抗えない!

笠井画伯がレーターさんとか、もう買っちゃうじゃん。
というわけで手に取った今作品。ネタバレ含んだレビューです。苦手な方はご注意下さい。




母一人子一人で、母に育ててもらった和也(中学2年生)が主人公。
が、そんな母が、再婚したいと一人の男性を連れてきた。母の人生、と受け止める和也だったが、そんな彼の元に一人の美貌の少年が現れる。

母親の再婚相手の男性の息子の玲二だった。
はっきりとした嫌悪感を示され戸惑う和也ではあったが、玲二とは無関係、のはずだった。が、玲二が彼の母親と軋轢を抱え、和也の住まう家に越してきたことから二人の関係は始まる。

あからさまな敵意を向けられてはいたが、気にしなかった和也。が、そのバランスはある日突然崩れてしまう。両親がそろって事故死してしまったのだ。和也が大学生の時だった。家を出て行こうとした和也に、玲二はいきなり襲い掛かりー。

というお話。

初めに書いてしまいますが、今作品は読み手を選ぶと思います。
ほのぼのな、甘々なお話が読みたいときは回れ右。
痛い話が苦手な方にも不向きです。

そして、今作品は女性に対する、そして受けの和也に対するレイプ表現があります。苦手な方は注意されてください。女性(彼女が誰なのかはぜひ読んでみてください)に対する性暴力の描写は細かくはありませんが、和也に対する描写はかなりえぐいものがあります。さすが吉原作品です。

今作品の主人公は和也ですが、圧倒的な存在感を見せるのは玲二の方です。

壮絶なまでの美貌、圧倒的強者のオーラ、良心のかけらも持たない残酷性。
和也に並々ならぬ執着心を見せますが、その理由がさっぱりわからない。愛情、ではないと思う。でも、憎しみだけでも、ないと思う。その理由がわからないので、はっきり言っちゃうと玲二がかなりヤバいやつに見えます。

和也という男の子はですね、じっと耐える子でもないですし、理不尽をそのまま受け入れる子でもありません。いやなことは嫌とはっきり言える強さを持つ男の子です。が、それが、新たな波乱を呼びそう…、な気もします。カッコいいんですけれども。

今作品の登場人物が割と皆さんクズが多いというのか。
読んでいてほっこり描写は皆無と言っていいでしょう。評価で悩むなあ…。萌えはないんだよなあ…。面白い、というか吉原節炸裂で、今のこのご時世、こういうダークな作品はなかなかお見掛けできない稀有な作品ではあると思います。

その希少性と、笠井さんの挿絵に萌えたので、ちょっぴりおまけして星3つで。

ドシリアス、なのにコミカル。

作家買い。
九重さんといえばモフモフ、あるいはファンタジー色の強い作品を書かれる作家さまのイメージが個人的に強いのですが、今作品もそのイメージを損なうことのない作品でした。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。




神さま、が、人間界を管理している世界。
人間たちは自分の欲のままに人を傷つけ、殺し合い、奪い合う。
あまりの醜さに、そんな人間たちの世界を壊してしまおう、とするのが、この世界を作った神さまであるチヌイ。

滅ぼされる側の人間の一人である山荷は、神の怒りを鎮めるための生贄として選ばれ捧げられるがー。

山荷、という男の子は、まさに薄幸ちゃんです。
九重さんの描く薄幸ちゃんて、本当に可哀そうな身の上で読んでいてちょっぴり萎え萎えになることもありますが、山荷もそう。男たちの外道っぷりに、チヌイでなくても滅してやろうかと思ってしまうほどです。

あっさりと人を殺めるチヌイですが、そんなチヌイに何とか笑ってほしくて奮闘する山荷だけれど…?

バックボーンとしては、もう、はっきり、しっかりドシリアスです。
ドシリアスな設定のお話なのに、ストーリーとしては非常にコミカルです。その大きな理由の一つが、山荷の性格。彼は亡き父の言いつけである「いつでも笑顔を」をモットーにしているからでして。でも、子どものころから客を取らされていた山荷には大人の男を喜ばれる術は「自分の身体」しかないと思っている。自分の命も身体も厭わない自己犠牲の塊でありながら、でもいつもニコニコしているので、見方によってはちょっと怖いかもしれません。

そのシリアスさとコミカルさが、さながらジェットコースターのように心を揺さぶってくるのです。

そしてチヌイの方も。
神であり、彼の思い一つですべてを滅することもできる。
が、そうなってしまったのには理由があってー。

切ないのにドシリアスなのに、コミカル、というアンバランスさが今作品のキモでしょうか。

山荷のもともと着ていた服はとある事情でなくなってしまい、彼はフルチンです。そんな彼に、チヌイは衣類を与えますが、この服がさー、誰チョイス?というダサさです。笑えます。

個人的に、九重さんのほんのりと漂うシリアスさとかダーク感は結構好きなのですが、今作品はそれがちょっと振り切れてるなー、という感じ。苦手な方はもしかしたらとことん苦手かもしれません。

あともう一点言わせていただけるのであれば、山荷には泣いてほしかったなと思いました。いつも笑顔の彼ですが、それはもちろん彼の性格もあるのだろうとは思います。でも、悲しかったり辛かったりすることもあるはずで、チヌイの前だけでは、心の底にある物をぶちまけて欲しかったな、と。

山荷が薄幸ちゃんなので彼救済のお話なのだと思って読み進めましたが、今作品はチヌイが救われるお話なのだと。読後、そんな風に思いました。

西野作品×複数攻め、オメガバもの=エロと甘々のてんこ盛り。

作家買い。
西野さん×ラバーズ文庫、ということでそれはもうエロエロなんだろうと。そう推測していましたが、タイトルからも推測できるように複数攻め、そしてオメガバースもの、という、これぞ西野作品といえる1冊だったように思います。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。



獣人と人が共存する世界。
そして、アルファ、ベータ、オメガという3つの性も存在している。という世界観のお話です。

狐の獣人である那桜は7年前に事故で両親を亡くしてしまう。
那桜を引き取ってくれる親戚が現れない中、那桜を引き取ると名乗りを上げたのが白川家の三人だった。両親、そして姉ができた那桜だったが、白川家の面々の目的は那桜の実家を乗っ取ることだった。

食べるものも満足に与えられず、発情期には一人で耐えることしかできず、まるで召使のような扱いを受ける那桜のひそかな楽しみは、清掃の仕事で見かける二人のアルファの獣人たちを眺めることだった。

薄幸な身の上でほのかな恋心を抱くことがわずかな心の支えだった那桜だが、ある日白川の父からとある人物との婚姻をあてがわれることに。それに抵抗し家を飛び出す那桜だったが、運悪くヒートを起こしてしまう。そんな彼を助けてくれたのはひそかにあこがれていた獣人の弦と隆将の二人でー?

というお話。

ヒートを起こしたオメガちゃんと、そこにいるアルファたち、ということで、まあお約束といえるでしょう、メタメタに抱かれてしまうわけです。よくあるお話、ですが、今作品に色を付けるのは、那桜の薄幸さと、彼の出自と、そして初回のセックスで弦、隆将の二人にうなじを噛まれてしまうことでしょうか。那桜の意志は関係なく、しかも出会ってすぐ。そのタイミングで、「番」となってしまう三人。という、テンポの速いお話です。

んー、紆余曲折経て番になる、というお話を所望される方にはやや不向きかな?
少しずつ恋心を育てていき、お互いの気持ちが固まってからの番成立、ではないので、恋の成就という部分に重きをおく方には肩透かしを食らう作品かと思われます。

西野作品×複数攻め、ということで、受けちゃん、服を着る間もないんじゃないの?とか思いつつ読み進めましたが、なかなかどうして、エロに重きを置いた作品ではありません(あくまで「西野作品にしては」という注釈が付きます)。

那桜の養父母との確執がきちんと書かれているからでしょうか。

すんごい胸糞な義家族なので、もっとコテンパンにやっつけてほしかった感もありましたが、弦と隆将の二人がとにかくスマートです。タイトルに「野獣」とついていますが、全然野獣ではありません。イケメンでアルファでお金持ちで。BLにおけるスパダリとはまさに彼らのこと、といえるハイスペック男子ですが、やることなすこと那桜ファーストなので終始甘々です。

スパダリ男子に愛され愛でられ幸せになる薄幸受けちゃん、という王道ながらも萌えをわしづかみにするお話で、序盤こそ那桜の薄幸さに切なくなりましたが、後半はもうさながらシンデレラストーリーです。

幸せと糖度が120%のお話でした。