ドルオタで半引きこもり不登校の侑史ですが、そこにオタクの"痛さ"は感じはなくて
なんとなくずっと切ないような苦しいような空気感を漂わせている、そんな彼のキャラに惹かれました。
推しである『ほたるん』への愛はしっかり感じるのになんとなく熱量は低めに映り、
そして航輝にもいまいち踏み込めないでいるのはなぜなのか?
自然とその部分を知りたいと思わせてくれるようなストーリーになっていて、
普通の高校生活とは違うことが起こる彼らの世界にもするっと入り込むことができました。
侑史が不登校になった理由やほたるん推しになったキッカケは終盤までは明かされないのだけど、
そこに至るまでをずるずる引っ張るような展開ではないので
最後の最後まで新鮮に楽しめたのが良かったです。
久住や羽山、ほたるんも良い意味ですごく存在感があり、脇キャラもとても素敵なお話でした。
同じような世界線で生きているけれど美醜の価値が違うという、ほんのり異世界的だけども実世界ともリンクしている部分のあるストーリー。
ものすごく面白かったです…!
夢物語なようで、でももしかしたらまったくあり得ないこともないのでは…?と、
そんなことを考えてしまう展開にグイグイ引き込まれていました。
どっからどうみてもイケメンな高見原を不細工だとする、入れ替わった先の世界の基準は理解しがたいものがありましたが。
外見だけにとらわれない絆がふたりの間に生まれていくので、切なさに引っ張られることなく読むことができました。
初読みの作家さんでしたがテンポがすごく好みで一気読み!読みやすかった〜
スピンオフもあるそうなので、そちらもぜひ読んでみたいと思います。
日常の中には組み込まれてこないエピソードが満載ですごく面白かった…!
でもそんなオカルト色強めな『非日常』ばかりではなく、乾と愁が少しずつ心を通わせていくところにはBLらしいドキドキがしっかりあって
見どころたっぷりなストーリーにグイグイ引き込まれました。
"いとし子"として愁がやっていることや乾の身に起きる呪いを起因とした不運の数々は
常識的には説明し得ないことばかりなのだけど
元を辿っていけば人間の情や欲にぶつかるという、
いちばん怖いのは人間だな…。みたいなゾクゾク感もたまらなく良かったです。
これまで知らされることなくいとし子として縛られてきた愁はすごく不憫でしたが、
乾との出会いで未来が明るいものになっていくのを見守れたのは読み手としても救われました。
憎みきれない存在の陵も良いキャラでした。
赦されないことをした事実は消えないけれど、彼が抱えてきた苦悩を思うとどうしても責められない…!という気持ちに。
最後まであえてその想いを明かさずにいたのもストーリーにはまっていたなと思います。
そして。ガチでゾクッとするラストシーンがめちゃくちゃ良かった…!
ふたりの恋愛部分はもちろん、オカルト的な余韻もものすごく楽しめた作品でした。
とても近くに存在している、3つの片想いを描いたお話。
その距離感をうまく表現している表紙もすごく良かったです。
どれもうまい具合にバランスを保っているように見える恋だけれど、交わりそうで交わらない距離感で過ごす彼らの日々にはやっぱり切なさが滲んでいます。
それぞれの視点で好きな相手への想いや自分の気持ちの変化が明かされていくたびに心が揺さぶられて、本当に苦しかった…。
先生がテーマとしていた『地獄の片想い』、まさにそれでした。
でもそんな地獄の中にいるからこそ、周りに流されたり諦めたりせずに3人ともきちんと自分自身を見つめているんですよね。
揺るぎない想いを持ちながらも自分の変化と向き合っていく、そんな彼らの強さにも胸を打たれました。
苦しくなる場面の数々に何度も胸がギュッとなりましたが、彼らが悩んだことはひとつもムダにならない未来が待っていて。
実る恋も届かない想いもまるごとキラキラ輝いているような、めちゃくちゃ素敵な恋愛群像劇でした。
描き下ろしの『3年後』もすっごく良かった。
有島にも幸せが待っていてくれたらいいなと思います。
暑くなるとホラー系のお話が読みたくなる。ということで(?)
なにやら不穏な言葉が並ぶ帯に惹かれて手に取りました。
事故に遭った後聞こえるようになった"声"に悩まされ、人間らしい生活を送れないほどになっていく歩。
"視える"体質の新川が助けてくれるまでのその日々はオカルト&ホラーなことばかりでしたが
ふたりが協力してホナミを成仏させるまでの日々にはそういう部分はあまりなく、
ホラー系を期待して読んだ身としてはほんのり物足りなさを感じてしまいました。
でも一緒に過ごす中で気持ちが変化して、
それぞれが恋を自覚していく様子は微笑ましく
BLとしての展開には満足でした。
新川の心配をよそに自分の思うまま突っ走る歩の危機感のなさには何度もハラハラさせられ、
もう少し自分の立場をわかったほうがいいのでは…?と思う部分も多々あって。
もう少し歩のキャラにハマれたらストーリーの見方も変わったのかなと思いました。
作品のあたたかさが伝わる表紙が本当に好きで、毎回表紙を見るのも楽しみにしているシリーズです。
爆弾おにぎりを一緒に頬張る穣と豊にほっこり癒され、早速ほのぼのした気持ちに。
前巻終わりの流れから、穣の就職が無事に決まって豊との同棲編が見れたりするのかな?なんて思いつつ読みましたが…
"日常"というものはそんなに簡単には進んでいかないものだな。と、改めて実感させられた『おかわり 2 』でした。
上田家と過ごす日々の中で強くなっていく豊と
日に日に成長していく種の姿はすごく微笑ましくて、何気ない一つひとつのやりとりに微笑ましさを感じます。
そしてふとしたときに見える葛藤を抱えたままの穣の胸の内にはピリッとした痛みがあり、
切なかったり感動したりというメリハリのある展開に、もう涙腺ゆるゆるです(笑)
全部がうまくいくことなんて少なくて、でも悪いことばかりが起こるわけでもなくて。
そんなままならないように思える毎日でも小さなキッカケは転機になるし、支えがあれば乗り越えられる困難もあるんですよね。
身の回りにある『当たり前』をもっと大切にしよう。と、穣と豊に教えてもらえた気がしました。
この先もふたりはどんな成長をしながら変わらぬ日常を送るのか?楽しみでしかたないです。
今作もたくさんあたたかな気持ちにさせてもらえて本当に嬉しかった…!
また彼らに会えるのを楽しみにしています。
家事代行サービスでわざわざ司を指名してきた藤谷の意図が読めず、
何か裏があるのでは?とちょっぴり疑いつつ読み進めましたが。
彼自身には疚しい気持ちはまったくなく、
明かされたふたりの繋がりも司の心を軽くさせてくれるもので
少しずつ距離が近付いていく様子と司の心境の変化をただただ微笑ましく見守ることができるました。
司が性嫌悪と接触嫌悪になったキッカケである母親との関係は切ないもので、やるせない気持ちにはなる場面もたくさん。
ですが彼まで心が壊れてしまう前に藤谷に出会えて良かったな。と思える展開なので
切なさを引きずることなく読めたかな、と。
初恋の相手との再会の苦い思い出も最終的には藤谷との幸せへと繋がっていたりと、
苦しさと甘さの配分が絶妙なバランスとなっていてすごく読みやすいお話でした。
ニコ視点で描かれている前半部分は榮を想うキラキラな気持ちごと切なさに包まれている感じで、
『ニコール』として振る舞う姿や閉鎖的な世界で肩身狭く暮らしている様子にも苦しさが募ります。
榮に対する想いだけがニコを動かす原動力なのに
それが彼に伝わらないだけではなく、
ほかの誰かを想っている感情をそばで浴び続けるだなんて、なんて悲しい片想いなんだろうか…。
ニコにとって何もプラスにならない恋に見えて
応援したい気持ちにはなれないな、と思ったほどでした。
でも榮視点になった後半部分、ニコの気持ちが離れそうになったときに客観的に彼の本心を知ることができて
長い時間好きでいたから諦められないわけではなかったとわかるとまた見方もかわったな、と。
恋に正しいも間違いもなくて、これまで過ごした友達としてのふたりの時間もかけがえの無いもので。
変化していくもの、何も変わらないものの中で
自分自身で世界を選択していくふたりの日々を見守れたのが嬉しかったです。
気心知れた友人だからといってそんな物言いはないのでは…?と思うほど、
俺様気質全開な多岐川のキャラがあまり好きじゃないかも…。と、最初は思っていたのだけど。
お話が進むと見えてくる不器用な一面がとにかく可愛くて、そのギャップに萌え。
どんどん印象が変わっていくのがたまらなく良かった…!
東元に対しての上から目線も視点を変えれば好きな人に甘えきっているようにしか見えないので
威勢良く吠えている様子もまた微笑ましく感じました。
そして、多岐川のわがままを受け入れていた東元のほうが一枚上手だったというのがこれまたイイ!
一途に想い続けた東元の粘り勝ち。お見事です。
適度な腹黒さもすごく良かった。
なんだかんだありながらも最後はめちゃくちゃ甘いところに着地していて、
幸福度たっぷりな『新婚旅行』まで見ることができて大満足でした。
拗らせまくってめちゃくちゃに面倒くさい戸原ですが、一周回るとそれが愛おしく感じる不思議。
熱量低めな杜野との組み合わせがすごく良かったので、ふたりのキャラまるごとツボでした。
自分の性指向を認められず、それを隠したいだけではなく他人まで否定しまくっている戸原。
そんな彼の言動で10年前も再会してからも杜野が傷付いてしまうのは切なかったけれど
結局は戸原自身もダメージを受けていて、あっという間に日々はかき乱されていくことに。
素直になりたいけどどうしてもなれない…みたいな、そのどうしようもなく不器用なところがじわじわ可愛く見えてきて
途中から応援するような気持ちで読み進めていました。
杜野のほうが一枚上手かと思えば戸原との恋愛に関してはそういう部分はなく、
恋愛経験はあるけれども根っこにある初々しさが見え隠れするようなやり取りに萌え。
ようやく気持ちが交わったかと思えばすれ違う様子にヤキモキさせられましたが、
それも良いスパイスとなっていたなと思います。
そして。閉じ込めていた欲望を解放した戸原と、それを開け放った杜野との絡みが本当にエロかった…!
濃厚なエロさではないんですが"解き放たれた感"に痺れてしまいました。
戸原はしっかりプライドを持ってバーテンダーをしているので、その世界についてもカクテルについても詳しく描かれていて
初めて知ることがたくさんあり、お仕事BLみたいな味わいがあったのも面白かったです。