すごく心に残っている小説です。ぬいぐるみに愛着を持っている方なら、こちらのお話は少なからず心に刺さると思います。あらすじなど、ポッチ様が詳しく書いてくださっているので、私の方は長くなりますが感想のみを…。
まず、メイとくまの関係に心が揺さぶられました。幼少時に心を傷つけられ、喋ることができなくなったメイと、メイの代わりに言葉を発するくま。無表情で無口なメイに対し、くまは天真爛漫で賑やかで、メイをいつも力づけてくれます。本当はくまの言葉はメイが発しているので、不思議な感じなのですが…。私は元気いっぱいで可愛いくまが大好きでした。
メイとくまが一心同体であるのは、読者にはよく理解できるのですが、事情を知らない第3者にとっては気味が悪く困惑しますよね…。それもわかるのですが、心がきれいで純粋なメイとくまが邪険にされるのは読んでいて辛かった。
施設に保護されたメイは、年上の斎賀さんと出会います。メイのこともくまのことも受け入れて接してくれる彼のことを二人は大好きになり、そして斎賀さんは唯一無二の人になります。二人に優しくする人が現れて私の心も救われました。
その後、斎賀さんと何年も離れ離れに…。メイにとってまた辛い日々だったのですが、再会を祈り、生きがいにします。そして運命の再会(歓喜)!!大人になった斎賀さんの頼もしさといったら、まさにヒーロー!!斎賀さんとメイは心を通い合わせます。
斎賀さんはメイとくまが一心同体であると理解し、見守り、助けます。そしてメイは自分の存在を肯定していくようになります。対照的におとなしくなっていく、くま。そう、斎賀さんのおかげでメイは本来の自分を取り戻していくようになるのです。
そして、斎賀さんもまた、メイとくまの存在に救われ、メイの伯父への恨みや復讐への執着が薄れていくのです。いつしか、お互いにかけがえのない存在になります…。
自分よりも斎賀さんの幸せを祈るメイとくま。本当に気持ちが優しいですよね。そして守られているだけではなく、自分も斎賀さんを守りたいと行動に移せる、強い心も持っています。
幼少時に深く傷つけられたメイの心を慰めたのは、ぬいぐるみのくまでした。本来のメイは明るくておしゃべりで賢く、強い子。くまの存在があったからこそ、メイの精神は壊れずに守られていた…。辰哉がくまを引き裂き、一度メイの心は壊れますが、立ち直れたのは斎賀さんがそばにいてくれたから…。
くまとのお別れは悲しかったのですが、ちゃんとメイのなかにいる、と感じることができたラストは感動的で、心にぽっかり穴が空くことがなく、救われました。
メイの腹話術?や、10代後半の男の子が常にぬいぐるみと一緒など、客観的に「??」と感じるところはあるのですが、それはそれ、です!
また、くまを引き裂いた辰哉には殺意がわきましたが、メイに振り向いてほしくて必死だったのは伝わり、メイと同じで、嫌いになれませんでした。続編があるようなのでこちらも読んでみたいです。
私は、このお話をBLというよりヒューマンドラマとして読みました。
そして単話配信版の表紙のくまがすばらしく、大好きです。十字架やベスト、ピンクのお花など細かい所まで描かれ、本当に愛らしくて生き生きしています。小椋先生、ありがとうございます。