受けの武田がとても可愛かったです。
ツンツンして気の強い男っぽいキャラの受けが、徐々に攻めのことが好きになり、抱かれることに葛藤しながらも受け入れていくという、BLでは王道のお話です。葛藤の背景に母親と妻がいるのですが、そこも描かれていて深かったです。また受けの武田のキャラや心情の変化が、これでもかと丁寧に、でも無駄をそぎ落として描かれていて完成度がすごかったです。西田ヒガシさんの作品では多く描かれているテーマですが、ある意味1つの到達点となる作品のような気がしました。
武田は、外見はガッシリ目の体格で短髪で男っぽくてカッコいいです。既婚で、頑張ってカジノ会社社長に成り上がり裕福でオフィスは恵比寿っぽいところにあり、郊外にマイホームを持ち、一見バブル時代の成功者のような感じです。
表面上は、
・男らしく強くあるべき。仕事をして女を抱き、妻と子供を持って、マイホームを持つのが理想。
・ツンツンしていて負けず嫌い。男としてのプライドがあって子供っぽくて乱暴なところも。女扱いされるのは嫌、女に弱いところを見せるのも嫌。
というキャラですが、内面の深いところで無自覚な満たされない思いを抱えています。
・とても傷ついている。(幼少時の母親との別れ、子どもが作れない、不妊治療、EDなど)
・自分より大きな母親的な存在に甘えたい 愛されたい 身を任せたい。(マザコン?)
・セックスでは抱かれたい
これがEDや妻との不和に繋がり、カウンセリングに通っています。
一方攻めの鍋島は、武田とは真逆のタイプで、外見は長髪で穏やかな雰囲気で少し女性的です。お坊ちゃんで学歴優秀の研究者だけど、無職でボロアパートに一人暮らしをしています。男だけど母性的なところもあって家事もこなします。性格はヘタレですが、人の傷ついた気持ちに敏感で、王子様のように女性を守りたいロマンチストです。実は男っぽい部分もあって追いつめられると攻撃的になったりします。
武田は鍋島に出会って、仕事や家庭や趣味など接することが多くなり、ぶつかり合いながらも仲良くなっていきます。深層意識では母性のある鍋島に惹かれ始めるのですが、表面の意識では男に抱かれるなんて考えられないという真逆の力が働いている状態になっていきます。ただ体は正直で、特に性欲は深層意識との結びつきが強いので、鍋島に迫られたり襲われたりしているうちにEDだった武田のモノが勃つようになってきたりします。
惹かれ合う過程で、武田にとってなぜ鍋島でなければならなかったのか、なぜ妻の和美とは好きなのにうまくいかなかったのかが描かれています。鍋島に対しては遠慮なく本音が言えて、ケンカもできて、弱音も吐けて居心地がよさそうです。最終的に武田はようやく自分の本心に気付いて、鍋島に想いを告白します。ここの場面すごくよかったです!武田は鍋島にバスタブの中で抱かれますが、バスタブとお湯は母性の暗喩のような気がしました。母のように甘えられる存在に身を任せ、ようやく体も心もセックスができた武田の姿が、萌えと感動で忙しく、とてもよかったです。できればもう少しページ数を割いて頂けるとありがたいです。
「母性」がこの作品の重要なテーマになっていて、西田ヒガシさんの別の作品「エースの休日」は「父性」がテーマになっていて、対になっているような感じがしました。
ストーリーもとてもよかったですが、武田のキャラが魅力的で可愛かったです。特に武田はショックなことがあったとき何事もなかったように振る舞ってやり過ごしているのですが、その場面が可哀そうで可愛いです。
・鍋島のアパートに行って、外から婚約者を見たとき
・生き別れた母親の調査結果を見たとき
・「もう俺には必要ないんだな」のとき
あと要所要所の、決めゴマとなるところの武田の絵が素晴らしかったです。表情や体全体から感情が伝わってきて、特に印象に残ったのは以下のところです。
・「好きです、ムチャクチャにしたい」と言われたとき
・「俺とセックス」のとき
このような感じで武田の一人のシーンがとても魅力的でした。大勢に囲まれていても愛する人とセックスしていても、人はいつも本当の意味では一人であることが表現されているところがこの作品の好きなところです。だからこそ自分が本当に求めるもの、自分らしくいられるものを選ぶことが大切なのかなと思いました。
あと細かいところですが、妻の和美と鍋島が少し似ています。多分武田の別れた母親とも似てるのではないかと思います。二人の髪型と服の色合いが同じ場面がいくつかあって、武田のパートナーという役割が、妻の和美から鍋島に入れ替わることを暗示しているような気がしました。
・冒頭の、紅茶のおいしいカフェ(恵比寿?)で妻の和美と鍋島が出会ったところ
・妻の和美が自宅で武田に初めて、鍋島をハウスキーパーとして紹介するところ
・最後にもう一度、自宅近くのカフェで妻の和美と鍋島が話をするところ
他にも鍋島の母親や婚約者の詩織についても鍋島側の意味がありそうですが、そこまで追い付かず…
武田の可愛さがすごくて、このような作品が読めてよかったです。ありがとうございました。
SM・調教もので、プレイはハードでエロいのに恋愛は不器用で可愛いという、すごく好みの作品でした。
受けの都宮は最初ツンツンして、攻撃的でSっぽい感じですが、同僚の市川に調教されてしまい、快楽でグズグズになり、、、どんどん溺れて可愛くなっていきます。特に市川を好きになった後の都宮が可愛いかったです。ツンデレになり、自分から照れながら求めたり、市川の期待に応えたくて言いなりになってしまったり、ジタバタしている不器用な感じが可愛いです。
攻めの市川は都宮とは真逆の物静かなS気質で、普段は地味ですがメガネを取ると美形になり、都宮を絶妙に攻め続け、いい仕事をします。
絵は表紙のイメージ通りすっきりした感じです。エロ描写が多いですが、二人のその時の関係が出ていて全部のエロ楽しめました。序盤のSM重視の刺激を与えられるセックスと、終盤の相手を求めて感じるセックスの違いなど堪能させて頂きました。どっちも好きです。またプレイ内容も多種多様でSMの道具もたくさん出てきます。二人の体が筋肉質で男っぽいので拘束具がすごく似合ってて、しばらく眺めてられます。絡みのポーズもきれいです。
あと色んなプレイをしながらも心が徐々に近づいていく感じがあってよかったです。できれば完全にくっついてイチャイチャしているところが見たかったです。
エロ重視かと思って読み始めたらキャラ・ストーリー・絵・体も好みで、うれしい驚きでした。ありがとうございました!
チャラくてやんちゃな男がバーで会った初対面のサラリーマンに監禁・強姦されるという短編ストーリーです。
冒頭の、謎だらけで「一体何が起きているのか?」と訳も分からず監禁・強姦されるところが、緊迫感があってよかったです。そしてその後の展開もよかったです。見知らぬ相手の正体が明らかになり、体の反応が変わっていき、ぶつかり合って、最終的に互いに求めているものが相手にあったということが分かります。スピード感があってゾクっとしました。
最終的に結ばれるところも、ダークでエロい雰囲気のままでよかったです。こういう雰囲気と絵の感じがすごく合ってると思いました。監禁・強姦ものはもともと好きなのですが、二人だけの密室の雰囲気、キャラ、筋肉質な体の描写など、かなり自分の好みに合っていてうれしいです。
また作者の方のSNSに続編(3ページ)も少し掲載されていて、そちらはぐっと明るい雰囲気の二人が読めて新鮮でよかったです。明るい系でも暗い系でも続編があれば読みたいです。ありがとうございました!
1回読むだけで100m走ったようになりました。絵、セリフ、モノローグが必然で、読んでいくとどんどん話の世界に入り込んでいける感じです。
話の軸となっているのは親の仇を好きになってしまい葛藤するという不幸な話なんですが、主人公二人の立場、想い、性格が生き生きと描かれていて、重たいところも正面から描かれているので、作品の雰囲気はむしろ軽くて明るい感じがあります。また、江戸時代の家や庭や門の感じや、食事の風景なども情緒があって、二人が一緒に暮らしながら好きになっていく過程はじんわりします。
クライマックスとなるのは二人の仇討ちの試合のシーンなのですが、迫力がすごいです。剣を振る体の動き、感情の熱さ、傷つく体、流れる血、交わす言葉など。。。二人とも完全に集中しています。本気になる二人はここで初めて見れるのですが、剣を振るのも腕だけではなく体全体で振っていて、また二人の流派の違いも分かるし、達人と感じさせる凄みもあり、これを絵で魅せてくれるなんてすごいです。
試合ですべてをぶつけ合った後に、最後にようやく二人が結ばれてよかったです。そして二人が旅立って、一緒に歩いていく場面が幸せそうでうるっときました。さらにイチャイチャしている二人も見れてよかったです。強いて言えばもっと見たかったです。
「すごい」ばかりの感想ですが、このような作品が読めてよかったです、ありがとうございました!
何度も読み返してしまいました。辰見の変わっていく様が素晴らしかったです。
辰見は、表面的な快楽と他人との勝ち負けを意識して生きていて、モテてセックスするけど、満足できず次から次へと相手を変える中毒のような状態です。勢いはあってヘラヘラしてるけど、本当に求めるものは自覚しておらず手に入れていないので、寂しさを抱えていてキレやすいです。本当に求めるものは「自分だけを強く求める人から愛される受け身のセックス」ということが後々分かってきます。
戌井は逆に、オタクなので、世間の価値にとらわれず自分の本当に求めるものを追求していて、穏やかさとブレない芯の強さがあります。ただし他人との関わり合いにおいて、他人の感じ方に配慮することが苦手です。辰見のことが好きすぎるほど好きです。
この二人が出会って恋愛することで、どんどん変化が起きてきます。
辰見は、渋々という形で戌井とのセックスに応じますが、自分だけを求める戌井、自分が受け身になるセックスという、本当に求めていたものを経験して、体の方から徐々に満たされる反応をします。また自分が主体的になる今までのセックスができなくなってきます。
戌井は、辰見に思いをぶつけるだけでは傷つけてしまうことを学んで、辰見の感じ方に配慮する付き合い方を学んでいきます。服装に気を使うところなんかも辰見が教えてくれます。
何度も二人がセックスをする場面が出てくるのですが、少しずつ辰見が受け入れる部分が広がっていくのが、プレイの内容・体位・表情・事後の過ごし方などに表れていて、セックスの違いをここまで描いてくれてありがたいです。堪能させて頂きました。
そして、辰見はようやく自分の求めていたものを認めるのですがここがすごくよかったです。その後、自分から戌井に愛情表現をするように頑張っていきますが、慣れていない感じが可愛いくて萌えるところが多すぎます。
最後に十数年後の二人が見れるのですが、真逆の個性だった二人が一緒の時間を過ごすことで似た雰囲気が出てきています。また、辰見がすごく穏やかで色気があってカッコよくなっています。余計なものがそぎ落とされて本来の魅力が出ているような感じで驚きました。
他者との関わりを通して、自分が本当に求めていることを知ること、自分の枠を越えていくことが表現されていて、このような作品が読めて本当によかったです、ありがとうございました!
個性の違う対照的な二人が出会い、少し暗い感じの家で一緒に暮らし始めます。二人とも欠けている部分があってそれが異なっているのですが、日々の生活の中で互いの存在に癒されていく、というところが描かれています。
この日常の描写を、エンゾウさんの魅力的なBL男子と日本家屋の雰囲気で読めてよかったです。料理をしたり、一緒にご飯を食べたり、お茶を入れてあげたり、買い物に行ったり、庭仕事をしたり、シャワー浴びたり、着替えを持ってきてあげたり、ただいまとおかえりの挨拶をしたり、、ついでに庭と縁側のある生活っていいなと思いました。
そして恋愛感情が芽生えるところも互いに「これは好きになっちゃうよな」という感じでよかったです。布団の上でのエロも電子限定のエロもよかったです。ありがとうございます。