過去に出版されていた作品のようですが、今回初見です。
初めて読む作家さんですが、表紙と帯の「伝説的傑作」に興味をひかれて手に取りました。
いや~、面白かった!(まだ続刊ありますが)。
遥か昔、子供の頃に布団にもぐって懐中電灯を使いながら夜更かしして夢中でファンタジー小説を読んでいた時のワクワク感を思い出しました。
あらすじは他の方も紹介されているので省略させていただきます。
ファンタジーなので、主人公は約200歳の寿命をもつが少年の姿のまま成長できない(でも年齢は60歳)とか、巨大な体躯をもつ戦闘種族がいたり、海にすむ種族がいたり、色々不思議な世界観です。
ですが、それがただの「設定」ではなく、自然や人間の多様性として見えてくるぐらい細かく描かれています。
キャラクターもそれぞれ魅力的。
特に主人公は皇太子として帝王学を教え込まれながらも、追放されて辺境の地の領主となるのですが、とにかく頭と性格が良い。
頭脳明晰とか真面目というだけでなく、人として賢いという印象。
「知識」を大事にしながらも、それにとらわれすぎることもなく、自分の目でみて、きちんと人と向かい合い、人を良く見ている。
皇太子として育てられたが故のどこか抜けた感じがあるところも愛らしいです。
貧しく、雪深い、見捨てられたような土地が、この後どう変わってゆくのか。厄介な権力者たちとどう向き合っていくのか。その戦略にもワクワクします。
こんな為政者が今の日本にもいてくれたら…と思わずにいられませんでした(笑)
他の方も書かれているように、いわゆるBLのラブストーリーというわけではありませんが、一風変わった感じがして私は今のところ物足りなさはありません。
まずお話の始まりが、宮殿の浴室。
巨大な体躯の下僕が、少年皇太子の全身を、素手で丁寧に丁寧に隅々まで洗ってゆくシーンから始まります。
一言も言葉は交わしません。
宮殿最後の夜、皇太子は今までにない感覚を覚え……。
無言が効いています。
はい、少しエロいですね。萌えますね。ですが、それだけではない何かも感じます。
後から見返すと、皇太子として知識だけは大量に与えられた主人公が、初めて「人」になり、「人」と出会ったシーンにも感じます。
ここからグイグイ引き込まれました。
「体液適合者」という設定はやや違和感がありましたが、少年の体をもつ主人公への作者の母心なのか、後半に何かあるのか……
いづれにしろ続刊がとても楽しみです。
少々大袈裟ですが、こういう小説に出会うと「生きてるって幸せだなぁ」と感じます。