真砂と千郷のB・Bシリーズのスピンオフというか、前2作に寡黙な若き組長として登場した鳴神一生の七転八倒、破れかぶれの奮闘記です。ヽ(*´∀`)ノ
時間としては、B・Bの前になる作品のようです。
これまで、ちょっと謎めいた雰囲気のあった一生ですが、実は若頭・秀島へのかなわぬ想いを断ち切るため海外逃亡、もとい留学したりホント可愛い人なんです。(本人は合気道や居合の達人ですが)
一生は組長の実子だけど組を継ぐ気はなく、実力のある者(若頭)が継ぐべきだと考えている。しかし父亡き後、一時の混乱を乗り越えるため暫定的に組長の座につくことをほかならぬ秀島に要請される。
悪ぶって代償に秀島を求める一生、一途さが愛おしいです。
たとえば、甲殻類が脱皮するとき、外敵から身を守ることのできない一番危険な状態であるように、偉大な組長を失い求心力を欠いた鳴神組は今おおきな危地にある。
隣接するよその組にシマを狙われ、しかし同じ神代会系列の組長たちにも「鳴神が会のお荷物になるようなら潰す」と睨まれている状態。
ヤクザの家に生まれ育ち、留学中にも様々な国を旅しいろいろな経験をつんできた一生ですが、やはり『組長』というものは腰掛けでおさまるようなものではなく、神代会の総会の場で失態を演じてしまいます。
若さも美貌も一生には不利に働きます。「お前の若頭は挨拶がわりにお前を差し出した」という虚言に動揺してしまい、文字通り裸足で逃げ出してしまったのです。(°_°;)(; °_°)
「鳴神の名に泥を塗ってしまった!」「秀島にとって大切なのは自分じゃなくて組なんだ!」組にも戻れず、一生はそのまま家出してしまいます!ヤサグレ一生、いったいどうなるの?
ハラハラ展開ですが、天は自らたすく者を助けるというか、チャンスは努力するものに訪れるというか、家出中の一生は本当の敵を探しはじめ、ついに組の最大の危機を乗り越えます。ヽ(;▽;)ノ
拉致された秀島を救うため刀を掴み、真砂一人をお供に敵地に乗り込む一生がカッコイイです。「悪いな、道連れで」は、真砂とは互いに惚れている相手を知っている仲だからこそ出てきたセリフかと思います。
十六も年の離れた『若』に慕われ、かつては(おそらく一生のため)突き放したけれど、秀島もまた一生を愛しく思っていたんですね。海外生活で男を知ったと聞けば内心穏やかではいられないし、変わらぬ一生の想いに腹をくくればエロオヤジ全開で若い組長を翻弄します。ブラヴォ!(*≧∀≦*)
とにかく、ストーリーが目前に繰り広げられていく感覚で、引き込まれ何度も読み返してしまいました。若き組長の活躍をこれからも見ていたいなぁ。
楓子先生、お願いします!
豹に変身する人間といえば、コミック『闇のパープルアイ』とか映画の『キャットピープル』等思い出されるが、それらは豹の獰猛さや美しさ、そして他者とは異質な存在である哀しみなどを連想させる。
主人公、仁科立樹は育ての親である伯父の死をきっかけに、モロッコを訪れる。
動物学者である伯父の研究資料を整理するためだ。そして運命の人カイルに出会う。カイルは自由に豹に変身することのできる『砂漠の帝王』であり、じつは立樹は豹人の父と人間の母の間に生まれたハーフで、カイルの義弟だった。
かつて、世界のあちこちの動物園で、ライオン、豹、虎などの猫科の大型獣の異種交配が試みられたことがあった。自然界においてあり得ない組み合わせによってうまれた子供たちは、その親によってライガー、レオポン(日本でうまれたのはレオポン)、タイゴンなどと呼ばれたが、生命力が弱く、成長できても生殖能力は殆どなかった。あくまで自然に背いた存在だったのだ。
立樹も同様、性差の感じられない美しい容姿。生殖能力はなく成人した彼の命数はつきかけていたのだ。豹人としても人間としても不完全な立樹は生き延びるためには砂漠の帝王のつがいとなり、彼のエネルギーを注がれ続けなければならない。足りないものを補うために。
美しく謎めいたカイルに惹かれます。「愛など知らない」と言い切るけれど、それは彼が超越した者であったから。彼は守る者、王なのだ。
立樹に対して冷たい言葉を言っているようだけど、けっして見捨てることなく立樹が生き易いよう気を配ってやりもする。
その美しさと幻惑の能力で時に人間を従え、あやつり、彼の民と王国を守ってきた『砂漠の帝王』。けれど古代から続いてきたその王国は人間が運んできた病原菌によって滅んでしまう。
二人は最後の王と民であり、兄と義弟、他に替わる者のない運命の相手なのだ。
立樹を生きた研究資料として追う人間達。彼らにとって立樹は人間ではなく人類に紛れ込んだ異分子なのだ。悪役のような存在だったが、見方を変えれば、彼らもまた人間という種を守るための研究に取り組んでいたといえなくもない。
滅び行く種族であるカイルと立樹。彼らを哀しく思いながら、種を残すこと守ること、今現在人類を脅かす病気と戦う人たちのことまで思いを馳せずにいられないような物語だった。
宮緒さんで、まさかのコメディ!
しばらく迷っていましたが、兼守さんのカバーイラストの愛らしさに惹かれて購入。
私は『和風総本家』の豆助LOVE(^^♪
犬神使いの名門の家に生まれた主人公・旭。
先祖にまさるとも劣らぬ霊力を持っていたのに、幼い頃に最強の禍神・安綱と主従の契を結んだことが原因で、力の大半を失い役たたずの烙印を押され追放されてしまう。
付き従うのは、柴犬のすがたをした下位の犬神・行光のみ。
実は安綱は千年眠っていたため力を失っていて、旭から霊力を分けてもらっていたのだ(奪っていたとも言う)。
十六年近くかけて力を取り戻した安綱は封印されていた祠を出て、旭を追いかけてくる。
「我が君、我が君・・・どんなにこの日を待ち焦がれたことか。」
この安綱、最強の禍神にして犬神のくせに、まるでセールスマン!
とまどう旭に言葉を弄して自分を売り込むのだ。
安綱、うざいですw 旭に怒られると涙ぐみとりすがって捨てないでくれとかき口説く。
「どのようなことにでも従います。黄金の山も屍の山ものぞみのまま」(゚o゚;;
これって、脅迫と変わらないんじゃない?
こんなアブナイ奴、野放しにできないじゃないw
全く、安綱のセリフの一つ一つに吹き出してしまいました。
なのに本人、大真面目なんです。ほんとに忠犬。
旭の先祖に封じられたとはいっても、とっくに封印のちからは消えてしまっている。
でも厭世的な気分で祠に閉じこもっていたけど、大いなる霊力を持ちながら優しく愛らしい子供に出会ってフォーリンラブ!
もう世界に自分と旭しかいません!(いてはならないというか・・w)
旭は実家の家業が嫌いです。犬神を道具のように使い捨て、闇のしごとにも手を染める。
旭にとって犬神は道具ではなく、家族なのです。
ウザったい危ない安綱も、向けられる愛情は本物なので絆されてしまいます。
実家を継いだ弟が、結界を破って出奔した安綱に追っ手をかけてきます。
自身も強い霊能力を持ちながら、それを上回る兄を妬みにくんできた弟。
犬神を道具のように使役するのはもちろん、禁忌の術に手を染めます。
旭と安綱の強い絆の前にあえなく敗れるのですが、問題が解決されたわけではないのです。
続編でないかなぁ・・・
3pが嫌で、しばらく宮緒作品を敬遠していたのですが「宮緒さんやっぱりすごいな。いろんな世界を持ってらっしゃる。目が離せない作家さんだなぁ」と実感しました。
兼守さんのイラスト、安綱の胡散臭い美丈夫っぷりがサイコーです!
限りなく『神』に近い『萌2』です。
オープニングからぐいぐい引き込まれました。
しばらく『BL読めない症』でしたが、「こんな時は劇薬クラスの作品がいいかも?」と、手にとった宮緒作品、読書の楽しさを思い出しました。
*劇薬クラス:宮緒作品は私的に地雷という意味でです。
子供の頃から髪の長い女に殺される夢を見続けて女性恐怖症になった主人公、祐一。
彼が心奪われた美貌の女装家・牡丹(呉葉)は、逆に自分が女になって男を絞め殺す夢をみていた。運命のように強く惹かれあう二人。
ハッピーエンドがBLの掟、なんてこと欠片も思い出せずに読ませていただきました。
「いったいこのお話、無事に着地できるの?いずれか一人は無事には済みそうもないな」とハラハラしどうしでした。
「あなたを誰にもわたさない!」呉葉の祐一への執着は増すばかり、愛しさと狂気のような激情に心が引き裂かれそうに・・・!
それでも読んでいる私が呉葉を不気味だと思わなかったのは、もうひとり祐一に執着する女・美香の存在があったからだと思う。
エゴの塊のような彼女の心のありようの不気味さ、おそろしさ!
夢に怯え、美香に怯えていた祐一ですが、前世の呪縛から呉葉を解放し二人で生きるため踏ん張ります。男前です!
ベッドシーンのエロさは喘ぎ声なんかじゃないなと感動いたしました。(^^♪
妖艶な美女が男に入れ替わる場面、翻弄されていた祐一が呉葉を押し倒し襲いかかる場面
等、胸がトキメキます。
日曜の午後はテレビで競馬を楽しみます。馬って本当に美しい生き物ですね。
でもカラダは大きいし、馬らしい匂いもあるし、お世話はホントに大変です。
生き物に関わるということはかっこよさを追うことではではなく、『共に生きる』ということ。主人公の二人と二頭の関わりでそれが本当によくあらわされています。
馬は賢いしプライドもあります。乗り手の技量をすぐに見抜くし、人の感情もよく感じ取ります。優しくすることも、厳しくすることも必要で、それは人を育てること人とつきあうことにも通じることです。
主人公の耕太はときには若宮に反発しながらも多くのことを若宮から吸収してゆきます。
対人関係のうとましさから偽悪的な態度ばかりだった若宮も、純朴でひたむきな耕太とかかわることで心のゆとりを取り戻します。
この作品には悪い人が出てきません。耕太と関わる女の子がいますが、耕太を好きなのに間違ったアプローチをして好きな気持ちをうまく伝えられなくて、とても良い子なので読んでいてかわいそうになりました。
まあ、若宮の方に優先権あるのでしかたないですが・・もったいない( ´Д`)=3
田舎出の青年がその純朴さゆえに傷ついたり、好意を抱いた先輩との育った環境の違いゆえに悩んだりしながら一歩々々成長してゆく姿がとても清々しい作品でした。
紹介文を読んで、「ホームズとワトソン?火村とアリス?」と予想しながら本を手に取りましたが、全然違っていてどちらかといえば「みにくいアヒルの子」パターンかな?
ホント面白かったです。
受け様は有能な霊能力者を輩出してきた神社の長男。
なのに彼自身にはなんの霊感もなく、疎外感や強力な術者である弟に対する劣等感を抱いている。
自身の居場所をみつけるため、郷里を出て東京の大学に進むが・・・攻め様と出会い、幽霊退治に巻き込まれる。
好感のもてる主人公です。自身の劣等感も正直に認め、前に進もうとする公正で前向きな青年です。視えすぎるゆえに霊に怯える幼い弟をかばうやさしい兄でもありました。
ただの一般人の自分では足でまといにしかならないのに、「俺が選んだのはおまえだ」と攻め様は断言する。彼のためにも、実家の名誉にかけてもしっぽを巻いて逃げ出すわけにはいかない、なにより自分自身のために。
おどろおどろしい悪霊も登場しますが、そんなに怖くはなかったです。
正直、ホラーが苦手なわたしがサクサク読めたくらいですから・・・
個性豊かな、霊能者集団がちょっと戦隊ものみたいな感じもして、中学生の従兄弟ペアが魅力的です。彼らでスピンオフなんて面白いだろうな。
攻め様に惹かれてゆくのがちょっと早くない?と思いましたが、二人のあいだにはコントロールできない力に苦しむ攻め様が、受け様に救われたという過去の因縁もあったのです。
ラブは十分ですがエロは少ない。でもそのほうが物語のバランスが取れていいです。
自分は何者か?自分には何ができるのか?それを見つけるために人はベストを尽くさなければならない。そんなお話だと思いました。
《秘められた力》という同様のテーマで『カメレオンの呪文~魔法の国ザンス』(ビアズ・アンソニイ著)を紹介したいと思います。
誰もが魔法の力をおびて生まれる国ザンス。でもビンクには何の魔力もない。このままでは成人すれば国を追われることになる。はたしてビンクは自分の魔法をみつけられるか?またその力の意味は?
(ハヤカワFT文庫の初期の作品なので古書店のほうが見つけやすいかも。)
小説で手一杯、コミックは手を出さないようにしていますが、人気の『是』を読んでみました。面白かったぁ!
守夜と隆成のお話は、『萌え』というのとは違うストーリー自体の面白さを気に入りました。
この二人の話なら実写版でも見てみたいです。
CDは、このストーリーで子安さんなら買い!だったのですが、《初》小野大輔さん、よかったぁ(´∀`)
若者らしい傲慢さと、心に癒すことのできない傷を抱えた隆成を余すことなく演じきっておられると思います。「ああ、隆成がそこにいる!」という感じ・・
子安さんは、あの美声で抑揚をおさえて、確かに人間とは違うもの《紙》を演じておられます。
エロシーンは少ないです。(おまけバージョンがちょっとエロい位)
でも、ストーリー重視だからそこがいい。小野さんの喘ぎも、荒い息遣いで自然な感じ。
原作が面白くて、役者がよくてホント良作です!!
原作本を読んだ人間がこれを聴いたらこう言わざるを得ないだろう。
「えっ、ここでおわり?」
そうなのだ、原作本は2部構成。後編こそががキモなのだ。
クールな早瀬を形作ってきた背景、複雑な生い立ち、家族との確執
ー捨て猫をちょっと構うぐらいなら、いっそはじめから手を出すべきじゃないー
そういう早瀬の孤独。虚勢をはって生きてきた彼がついに自縛の縄を断ち切り、若宮に行かないで、そばにいて自分を愛してほしいとすがるまでー
ああ、そこまで聴かせて欲しかった!
配役がよくってホントに夢中で聴き入っていただけに、唐突な終わり方に「もしや2枚目のディスクが欠品しているのか?」とケースをひっくり返してみた(ToT)
というわけで、完全な作品であったなら文句なく《神》評価だったのですが・・・
全く、映画の『ネバーエンディングストーリー』並みのガッカリでした。
あの作品も「えっ、ここからが本題じゃないの?こんな終わり方ってないでしょ!」
てなもんでした。原作のあの涙と感動のエンディングをどうしてくれるのだ?
おまけにパート2まで作ってガッカリの上塗りしてくれちゃって・・・!
中華風宮廷恋愛劇?と思っていたらがっつりファンタジーでした。
冒頭から、吹雪の山の描写、龍の描写がとても美しく物語に引き込まれます。
秋山みち花さんの作品は数点しか読んでいませんが、とても読みやすく美しい文章を書かれるなとおもいます。
主人公の瑛鈴は、口減らしで捨てられた山中から龍王に救われる。「お前は天から墜ちたものだ」
仙女たちに預けられるが、その身はいずれ龍王の番となる運命だという。
「自分はただの人間の男の子、なんのちからもないのに・・・」と瑛鈴は悩む。
まるで、ひよこの刷り込みのように龍王を慕う瑛鈴がいじらしい。
物語はわりにあっさりと進む。天界におおきな戦が起こるが、罠だの、陰謀だの裏切りだのがあるわけでもなく、龍王の危機に瑛鈴が本性を取り戻し駆けつけることで片付いてしまう。そこは少し物足りない。
が、物語の主題を二人の絆と捉えるなら、瑛鈴の思慕も龍王の言動もすべてすんなり納得できる。
カバーイラストは瑛鈴があまりに女の子してて「趣味じゃない」と思ったけれど、挿絵はとても美しい。
綺麗なイラスト、綺麗な文章。なかなか楽しめる一冊でした。
購入を迷っていたのですが、先のお二人のレビューで購入決定!(*^^)v
私の大好きな男前受け!
でもって、敬語攻めにレイプされんの! (あ、人格うたがわれそう・・・仕方ないけど)
やくざの血をひく受け様、その血を厭い身元をかくしてビジネスマンとして成功しようとしていたけど、母の実家から迎えが・・・「組長になれ」と。
拒否すると「どうしても連れてかえる」とレイプされ・・ってここまでページ3分の1使ってるよ、この話無事終わるんだろか?
わたしの感覚ではあさひさんって設定のエロさにわくわくする作家さんなのだけど、なんだろうこの作品ぜんっぜん!エロくない!あっぱれなほどエロくない!
この二人のセックスって、ようするに主導権争いなんだわ。
攻めもクールなエリート風で、いかにもなやくざってかんじじゃなく、なにより受け様ーたとえどんな目にあおうとも絶対自分が最後の勝者になってやるという強い意志!
やくざ世界も攻め様も嫌いだけど、まずは敵を知らなければ勝負にならない。
強い大きな渦にまきこまれた受け様、でも嘆くのではなく流されるのではなく、あくまでたたかい、組織を内側から打ち壊してやると決意します。それが心を病んで亡くなったお母さんと、自分の復讐だと。
でも、皮肉なことにそんな受け様だからこそ攻め様の執着は増し、若い舎弟たちからは信頼され・・受け様はすこしずつ理解してゆきます。攻め様の誓う忠誠の意味、上に立つ者の負う義務、よせられる純粋な期待。
ホント、BLっぽい甘さのない作品でした、でもハードなやくざモノでもないし。ドライなっていえばいいかな?
とにかく主人公のまさしく女王様的嬌慢さがいっそさわやかでいい。
小路龍流さんの描く受け様がまたいい。小路さんの絵って線のほそさがちょっと苦手だったけど、この作品ではクールな力強さがあって「おおっ!」と思わされました。
ストーリー的には主人公の新たなスタートというところで終っていますが強力タッグの出来上がりなので、「こいつらなら、なんとかうまくやっていくだろうな。」と思わされました。
ほんと、いい意味で『私の知ってるあさひさんらしくない作品』でした。