ネットでの高評価を見てからの購入です。
「好きになった瞬間から、幼馴染じゃいられなくなった」
帯に書かれた文句を見てより強く心惹かれました。
男子高校生の純粋な愛の物語をずっと見守ることができる作品でした。
人物の表情の豊かさが作品へ読者を引き込む大きな力になっていると感じます。
特に目線の動きを大事にされていて、各所に"今この人物はこんな気持ちでこの子を見ている"と感じられるシーンがありました。この描写によって人物の動きのスピード感も伝わってきたような気がします。
「好きになんかなってごめん」「いつか絶対諦めるから」
カズがモトに伝えるシーンでは涙しました。豊かな表情、人物をとりまく風景などから、台詞の声色や人物の体温を強く感じました。個人的にこのシーンを見た瞬間に、カズを幸せにしてあげてほしいと強く願いました…
モトの気持ちが動くのか緊張しましたが、ラストでは2人の心から幸せそうな笑顔が見れて幸せな気持ちになりました。
カズとモト、2人がお互いを思いやっていて、とても優しい。そこに思春期という甘酸っぱい時期が重なっているからこそ心に響く作品でありました。
タイトルと表紙に惹かれ購入しました。
表紙の央志郎の表情とタイトルから、誰とも結ばれない悲恋モノかなと思いました。
読み終わった今では、それらの意味がよく分かります。
先生の描かれる線は細くて繊細で、表情が細かく描かれています。無駄な効果音などもないことから、自分で空間の音を想像させられ、より世界観に引き込まれたように感じます。常にしっとりとした空気感でした。
登場する人々が皆大人であるからか大きな賑やかな盛り上がりがあるわけではありません。色々な人生を送ってきた大人たちの恋愛。
ラストは、個人的には央志郎はもう稲村のことを好きになっていると思っているのですが、読み手によってはメリバとも捉えられるようにも感じられました。
ゆっくり2人で、それぞれの長年の恋愛を思い出に変えていけたんですね。同棲するという話を見れてとても幸せな気持ちになりました。その話をコバに打ち明けるときの央志郎の可愛さと言ったら…
キャピキャピとした明るい物語をあまり好んで読まないので、この作品の持つ大人の静かな空気感が大好きでした。好きな形のハッピーエンドでした。