人物描写や感情の表現がリアルで、小説読んだなーっと満足させられる作品です。
晴人はあまり感情を表さないミステリアスな人物として登場しますが、とつぜん「なんでそんな目で
俺のことみるの?」と英雄から指摘されます。
はじめはそれがどんな目なのか晴人にも読者にもわかりませんが、後にそれがどんな目かが語られて、
ようやく“あぁそういう事か”と、英雄のとまどいの理由に気づかされます。
小説ならではの表現で、叙述トリックが好きなわたしにはツボでした。
晴人にとっては、少年時代に憧れを抱いていた先輩との再会。
英雄にとっては、封印した過去の自分を知る人物との出会い。
未熟だった自分への後悔や、大人になって変わってしまった事への寂しさ、苛立ちなど、お互いの
複雑な思いがちゃんと伝わってきて、奥行きを感じさせる物語になっています。
人物のイメージがしっかり浮かんでくるので、この作品に挿絵は邪魔だったように思います。
たとえば、英雄の言葉足らずなセリフや態度から、モテる男独特の間のようなものをリアルに感じます。
もしかしたらモデルとなる人物がいたのかもしれません。
晴人のセクシーなのに実はストイックなキャラクターもツボでした
ゲイの男性って優しい人が多いので間違えて好きになってしまうことがあるんです。
夏希と話してるときに晴人の優しさとか、あるあると思ってしまいました。
後半の通り魔が現れるくだりは、少し強引だったように思います。
少年時代と現在の英雄が重なる素敵なシーンなので、都合よすぎな感じが残念でした。
とはいっても、全体にクオリティが高く読み応えあり。
エロは飛ばし読みしてしまうたちなので語れませんが、色気のある大人な作品だと思いました。