上下巻を読んで、最後まで読んだ一番の感想は「それでいいんだ!?」でした。
じっくり噛みしめてみれば、これもまた一つのハッピーエンドだし、そうなにからなにまで丸く収まるなんてのはありえなくって、こういう形もまあいいのかなってなりましたが。
とある青年が昔から好きだった男と本懐を遂げたあと、家に帰って目覚めてみれば見知らぬ女性と昨日の自分からの「その人が妻です」というメモを見て、事故で記憶が1日単位でリセットされてしまうようになったことを知るが、というところから始まった話ですが、引き継ぐ記憶の取捨選択によって未来が少しずつ変わっていくのはとても面白かったです。
でも、初手が「不倫じゃん......」になってしまうので(作中でちゃんと本人が反省しますが)、そういうのが苦手な人にはきついかなと思います。
本人だけが記憶をリセットし続けて、でもその周りで生きている人の中には間違いなく昨日以前の「彼」と過ごした記憶がある。
やっぱり毎日毎日、確実に交わした言葉や行為があるはずなのに、相手のどこにも残っていなくて、それでも毎日「愛する」のってめちゃくちゃ大変だよな~と思いました。
攻めの感情はもうほとんど執着みたいな愛だったけど、そのくらいじゃないと前には進めないよな......
でも前提として、二人が両片思いの状態で新しい記憶を保てなくなったところがかなり大きいので、灯さんは本当になにも悪くない。
覚悟が足りなかったようにも感じられたけど、なんでもかんでも予測した上で結婚する人なんていないし、仕方なかったんじゃないかなと思います。
幸せであってくれ、灯さん。
覚えていたいと願ったメモをたとえ相手を守るためとは言え改ざんするのは本当に優しさなのかな?それって愛って言える?というもやもやは多少ありますが、毎日リセットされるからこそ忘れていいものもあるのかな~
全部正しくないといけないわけじゃないし、すべての人間にやさしい世界じゃなきゃいけないこともないもんね。
ミステリBLの文言に惹かれて読みましたが、どこがミステリだったのか個人的にはよくわかりませんでした。
初手からこれ催眠術だろうなというのは割とわかりやすいですし、受けが見るえっちな夢が実は夢じゃなくて現実で攻めにかけられていた催眠術ってあるあるですらあったので、謎要素があまり感じられず。
わたしが勝手に過度な期待をしていただけかもしれません。
攻めの知りたい欲求の果てに、催眠術をかけてすべてを引き出そうとしてしまう悪癖を、非人道的で頭のおかしい行いだと理解しながらも、自分では制御できないのはまあわかります。
でもじゃあ、乳首の開発したのってなんで?って疑問が生じてしまい......
そこのあたりも興味の範囲だったのか、そこらへんは好きな人への性的欲求だったんでしょうかね。
受けが一生懸命でいい子で、催眠術のことが全部バレて身勝手に逃げ出そうとする攻めを追いかけて、「お前がなに考えてるかわからない」って言われたときに「当たり前だろ!」って怒ってくれて「普通は(頭の中覗けないんだから)言わないとわかんないんだよ」みたいなことを言ってくれるシーンが良かったです。
わかりたい、を拗らせた相手に、わからないのが普通だよって怒ってくれる受けでよかった。
催眠術で開発中の描写が割と丁寧でえっちだった分、両想い後にようやくちゃんとしたセックスするところが割と「これまでのおさらい」感があって、ダイジェストっぽかったのも残念でした。
もっとじっくり両想いセックスしてるところが見たかったです。
あらすじの「姉の婚約者に心惹かれて」みたいなところからどういう話運びになるんだろうとは思っていましたが、まさか結婚詐欺師とは。
序盤から攻めに裏があることは伺い知れましたし、それでも受けが攻めに救われた部分が少なからずあることも、攻めが根っからの悪人ではないことも理解できましたが、それを差し引いても、「自分の家族を騙して傷つけて金を詐取した人間のこと、こんなに好きでいられる......?」になってしまい、理解ができませんでした。
まあそういう、甘さというか、悪いことをされたという事実があっても、結婚詐欺師と過ごした時間とか言ってくれた言葉とか全部ウソだったと思いたくない、みたいな純真さが愛を勝ち取ったんだろうとは思いますが。
途中の、詐欺師を追いかけた先が治安がゴミのクラブで、そこで声をかけられた相手が奢ってくれた薬入りの酒を飲んで、性奴隷にされそうになったところを詐欺師が助けてくれるという王道展開も「でしょうね」でしかなかったです。
シンプルにわたしの好みではなかっただけなので、家庭環境のせいで性格がゆがみ切ってしまった寂しくて可哀想な男が、純粋で優しくて強い年下の男の子に追いかけられて根負けした先で、ようやく愛を知る、みたいな話が好きな人には面白いと思います。
この作者の作品は初めて読みましたが、まず絵がめちゃくちゃ好みでした。
高校生×新任教師という王道設定ではありますが、今時のゆるふわ無気力系ヤンキーが新任教師としてやってきた伝説の元ヤンにタイマンを挑むところから始まります。
そのタイマンを挑む理由も、自分は別にどうでもいいのに、友人たちに「先生とタイマンするまで一緒にお昼ご飯食べない」って言われて、ぼっち飯の寂しさに耐えられず「せんせ~お願い~俺とタイマンして~~」って感じなのもめちゃくちゃ可愛かったですね。
先生もザ教師!って感じではなく、自分にまとわりついてくるヤンキーを受け流しつつも、正直懐かれるのは悪い気はしないし、結構可愛いところもあるんだよな~って接し方に悩みつつも、攻めに絆されていくのがとてもいい塩梅で好みでした。
先生に言われたことや怒られたことを割と素直に受け取って、きちんと先生を困らせない距離感にしたり、接し方を変えたりしながらも、ずーっと先生のこと大好きで、自分の愛が一過性のものだと疑うなら好きなだけ疑っていればいいよ。俺はずっと好きだからって精神の年下攻め、この世の宝では?
最初から最後までずっと可愛い最高の作品でした!
この作者の漫画は初めて読みました。
冒頭、アプリで知り合って初めてのホテルで、セックスシーンになった瞬間背景が暗転した演出が独特過ぎてちょっと面白くなってしまいました。宇宙空間に放り出されたみたいに見えて「どこだよここは」と思ってしまい......普通にホテルの部屋の背景の方が個人的にはしっくり来た気がします。
受けが攻めとのセックスに衝撃を受けたこの表現だとは思いますが、好みではありませんでした。
割り切った関係を条件に、アプリで知り合った相手にお互いどんどん惹かれていきながらも前提条件があるからどこまで踏み込んでいいのかわからない......と悩む話です。
遊んでいるように見えて実はピュアで無邪気でありながら若さゆえの強気さ、強引さを持つ年下攻めと、経験豊富でめちゃくちゃエロい年上受けの組み合わせが好きだと面白いと思います。
高校生という若さを考えればまああれなんですけど、駅で一方的にセフレを見かけて後つけて会社と苗字と役職を知ったことを、関係を切られそうになったタイミングで本人に言うあたりとかはこえ~って感じでしたね。
両想いじゃなかったらホラーでしょ。本人がこんなんストーカーじゃんって自覚してるし、こういうことでもしないと話が動かないのは百も承知ですが......
性器の修正はゆるい方だと思いますし、経験豊富な受けの痴態は可愛かったので、エロいBLが読みたいときにはいい漫画だと思います。
セフレスタートの話のわりに、昔の男との修羅場やすれ違いによる喧嘩もなく、穏やかな展開なのも読みやすかったです。
1巻からずっと大好きですが、3巻も大好きでした。
受けが攻めと同じマンションに引っ越してきてからのお話ですが、それと同時に発表された受けの新しい舞台仕事がメインで話が進むので、半同棲状態の蜜月的な甘さを期待するとちょっと物足りないかもな?とは思いました。
このシリーズの大好きなところは、二人が同性愛者であることを理由に傷ついたり苦しんだりしないところなのですが、今回も、少なくとも「男が男を好きであること」や「芸能人が恋愛していること」が非難されたり咎められたりはしなくて、あくまで売れっ子俳優の羽山麻水と駆け出し俳優の白崎由岐が恋愛している話なんですよね。
作中で麻水が女優と噂されたり、二人が同じマンションに住んだことでファンの子が「付き合ってんのかな~」とこぼして麻水が2丁目のバーに出入りしていることを話題にしていたりはするんですが、そこで「ゲイだったら嫌だな」とか逆に「この二人だったら付き合っててもいいな」とか、想像ですら二人の関係への好悪は描かれていないバランスが心地よいです。二人の気持ち以外のことで関係がかき回されてしまうのはやっぱりしんどいので......
由岐は少しうぬぼれが足りなくて、自分なんかって卑下してしまう部分もあるんですが、麻水がそれをきちんと怒ってくれるし、怒られたことをきちんと反省して、言われたことからいろんなことに気付ける由岐だから、100%の大好きが120%にも200%にもなっていくようで、最後の「俺のこと好きなんだね」「遅いよ」にたまらない気持ちになりました。
自分ばっかり救われているような気になって、でも知らない間に自分も相手を救っていて、そうやって今はもう一人じゃないんだって気づけてよかったね......
麻水が由岐に振り回されてばかりのようにも見えますが、最初に救われたのは麻水だし俳優としても先輩だしなと思えばそこまで気になりませんし、わかりやすくヤキモチを焼いたり意地悪したりするのは麻水の方なので、最終的に二人とも可愛いな~~~になります。
もっともっと、長く続いてほしい作品です。
オメガバースは有名なものを読んだことがある程度ですが、この漫画で初めて泣きました。
α嫌いのΩが第二性の発現が遅かった幼馴染αを「自分には発情しない特別なα」として可愛がっている関係から、「本当はそんなんじゃないよ」って襲ってしまうところからただの幼馴染だった二人の関係が変わっていくお話です。
αとΩという性別や発情期というオメガバース特有の装置の上の話でありつつも、本能や欲望だけじゃない、二人がこれまで一緒に積み上げてきた時間を振り返ったときに、「αだから」「Ωだから」じゃなくて「お前だから大好きなんだ」っていうのを必死に相手に伝えようとする場面があまりにも一生懸命で、思わず泣いてしまいました。
どうしても存在する第二性の序列を、でもちゃんと周りを見て相手を知れば、αだから、Ωだからじゃなく、ほかの見方ができるよねっていうことに気づいたり、どうしようもない発情期に相手を傷つけたくなくて顔を真っ赤にしながら歯を食いしばって我慢をする姿だったり、オメガバースでありながらそれを言い訳にしないでまっすぐに向き合おうとする高校生の可愛さよ......
オメガバース好きの人にはもしかしたら物足りなさはあるのかな?と思いますが、オメガバースの発情期とか妊娠とか苦手なんだよな~って人にはぜひ読んでみてもらいたい作品です。
前作は割と今時のボーイズラブという感じで楽しく読めたので、続巻にもそれなりに期待をしていましたが、正直思ってたよりは......という感じでした。
とにかくなんかずっと誰かしらが『良いこと』言ってんな~というのが一番の印象で、そもそも今作が「同部署内」で「同性」で付き合っている、そしてこれから先も一緒に生きていくことを考えた時にどうすれば一番相手が傷つかないだろう、自分も傷つかずにいられるだろうみたいなことを元ノンケの年上受けがずーーーーーっと悩んでる話なので、ある程度は仕方がないと思いますが、マジでずっと名言みたいなことばかり言うので、どうでもいいようなささやかな日常シーンみたいなのが逆にほとんど目立たなく、終盤は完全に台詞で胸やけ状態でした。
攻めと受けは中盤ずっと喧嘩しているので、お互いに気持ちを言葉にする分人生哲学みたいな話が多かったですし、受けが同期に恋人のことをカミングアウトするので、同期たちもなんか良いこと言ってくれるし、攻めとの関係に悩んで仕事にめちゃくちゃ影響する受けを部下たちが助けてくれる時もなんか良いこと言ってくれるし......
穿った見方かもしれませんが、会話文も多く、登場人物の心情吐露が多いので、この二人に惚れ込んでいないとちょっと疲れる構成だったなと思います。
それだけお互いに真剣に自分の、そして相手の人生を考えてるってことなのかなとは思いますし、「10の歳の差」「社内恋愛(上司と部下)」「同性」というキーワードで「普通じゃない」「公表できる関係じゃない」ことに悩むカップルが好きな人にはおもしろい話だったんじゃないかなとは思います。
わたしには合いませんでした。
レビューランキング上位にあったので読みました。
表紙ではわかりませんでしたが、中身では攻めも受けも某ゲームのキャラみたいだなと思いました。
攻めキャラは特に、元キャラを見たことがある人なら少なくとも「似てるな」とは感じるキャラデザです。
好きな設定、キャラクターが一貫していて、その嗜好に忠実に描かれたのであればそれはそれで構いませんが、せめてもう少しうまく隠してほしい......
二次創作が見たくて商業作品を買う人はいないと思います。がっかりでした。
パクリと言えるほどかはわかりませんが、個人的には「その時好きな二次創作を商業に転用する人なんだな」という印象がついてしまったので、今後は買わないと思います。
そのあたりが気にならない、かつ、体格差のある男子高校生が欲望のままにお互いに触れあうのを見たい方には面白い作品なのかなと思います。
留学生との期間限定になりがちな恋を期間限定では終わらせないぞにする話ですが、いまいち受けが攻めを好きなのかわからないまま話が進むので、正直見どころはほほえましい年齢相応のセックスシーンだけです。
また、サバンナまでついてきてくれる子はいないから~とさも切なげに言いますが、なんで故郷に来てくれることをイコール本気の恋と定義してるのかも謎でした。
ほんとに好きなら住む場所くらい二人で決めろ
『鳴けない』理由はボーイズラブではよくある過去の経験がトラウマになっているものでしたが、よくあるからこそそこまで重く感じずよかったです。
個人的には攻めの味覚が異常なことも過去に起因しているのに、そこを受けが知らないまま話が終わるのがとてもよかったです。
料理の手際もよくなにかが間違っているわけではないのに味付けだけがおかしい理由はきちんと攻めの過去にあるんですが、それを受けが知る必要は必ずしもありませんし、最後に受けが攻めに「料理が不味い」と言ったことでこれから先そこから攻めの過去について受けが知る日が来るかもしれないと思うことができる流れが好きでした。
受けと出会う前の攻めがどういう人間で、なにを理由に受けとかかわりを持つようになって、どうして優しくしていたのかを読者だけが知っていて、受けはまだ知らないけど、そういうのを知らなくても自分と出会ってからの攻めを少しずつ好きになっていったその日々の方が大切なのかなと思えば、作中で描写する必要はないよなと思えました。
優しくされるだけで好きになってしまう受け、もろもろをすべて優しさでまとめるのはあまりにも危険だよ......と心配になりましたが、攻めに裏切られることもなくすくすくと幸せになってくれたのでよかったです。
碗島子先生の独特なギャグセンスが大好きなので、今回の話でも少ないながら散りばめられた碗島子節に笑わせてもらいました。