短編集なので、色々なカップルの小話を楽しめました。
どれも面白かったのですが、特にテオとオーキッドのカップルのお話が好きです。雄の竜の所有の本能が関わってこない分、すごく初々しい印象でした。
初めてギルドに来た時はリーゼに怯えて泣いていたオーキッドにも恋人か…と少し感慨深くなったりも。
リーゼが認めてくれる日が来るのかは謎ですが、この二人がちゃんと伴侶になるお話も読みたいな~。続巻で描かれてるかな?
育竜騒動では、リーゼのネーミングセンスを知れて面白かったです。ファウストはともかく、フェアリーは…(笑)
ギルドのわちゃわちゃした日常を垣間見れて楽しかったです。
あとリピン可愛い!
ドラゴンギルドシリーズの今までの巻では、ギルド全体を揺るがすトラブルが起こってきましたが、この巻ではジュストの出自とそれにまつわる問題がメインでした。
ジュスト一人を掘り下げているので、個人的にはより感情移入しやすかったです。
過去作の登場シーンを読んだ時は、ジュストはいわゆるビッチ受けなのかな?って印象を受けましたが、実際はすごく孤独で健気な子でした。
深い孤独を抱えているジュストを、攻めのフォンティーンがちゃんと包み込んであげていて良かったです。まぁ、運命の相手だと思ったら相手が子どもでもお構いなしに所有行為(さらったり、鱗つけたり、交尾したり)しようとする竜の本能には、人間の私からしたらちょっと引いてしまうものがありますが(笑) 竜だしね!仕方ない!
そしてリーゼパパ。リーゼとジュストのすれ違いのほうが個人的にはグッときました。
リーゼは昭和の不器用親父よろしく、子どもの扱いが下手。 あれはジュスト怖がるよ…。もっと優しくして~!
なんて思ったりもしましたが、不器用なりに親としてジュストのことを気に掛け続けていたんだな…と温かい気持ちになりました。
そして実は結構親バカだったんだな(笑)
呪いも解けたことだし、これからはより親子の絆を深めていって欲しいなと思いました。
面白かったです。
〈注意〉作品へのネガティブな意見やネタバレが含まれています。すべて個人的意見に過ぎませんので悪しからず。未読の方は注意して下さい。
う~ん…。
ルイ×紲のシリーズは楽しく読めたし、『咲き誇る~』なんかは最初から最後まで勢いがあって面白かったです。
その流れで読み始めた今作ですが、なんだか釈然としない内容でした。
ユーリが出会ってすぐに敵種族である魔族の蒼真にベタ惚れしてしまうことや、あれだけ同性愛に興味の無かった蒼真が簡単にユーリを受け入れるあたりの違和感は許容範囲内でした。BLだしページ数の都合もあるのかもしれないし、と。
個人的に受け入れられなかったのはバーディアンの扱いです。(そこかい)
まず、王が代わったからと言っても「ホーネット」の看板を掲げている以上、「前の王がやったことだから今の王は無関係です」とはならないはずです。トップの座を受け継ぐ際には、前の王の罪や責任も受け継ぐことになると思います。それなのに馨にしろルイにしろ、あまりに軽いと言うか…。
ひとつの種族(バーディアン)を絶滅に追い込んだこと、虐殺したことの重みを登場人物の誰もちゃんと理解していないように思えて、そこがモヤモヤしました。
(「いや、そもそも彼らは魔族なんだから人間とは価値観が違うでしょ」とツッコまれたらまぁその通りなんですが(笑))
ルイや馨や蒼真をあくまで道徳的な魔族として描くのなら、そこら辺はきちんと掘り下げて欲しかったです。
まだ18歳の馨がどこまで知らされているか分かりませんが、前王が迫害した種族であるユーリに対する態度も何だかなぁ…でした。
たとえ恋敵だったとしても、ユーリは自分たち魔族がほぼ絶滅に追い込んだバーディアンなんだぞ?その態度は無いやろ~!と。
個人的には、バーディアンの設定をあそこまで過酷で悲惨にする必要があったのか疑問です。
同族が捕獲され監禁され、生き餌にされ、果てはレイプに虐殺…。
そりゃ生き残ったバーディアンたちも捨て身の復讐にでますよ!
本当に不憫でしたし、ユーリと蒼真の恋愛を追うどころじゃない気持ちになってしまいました。
あとがきによるとバーディアンには救済が用意されているということなので、それを希望にシリーズの続編『蜜毒の罠 薔薇の王と危険な恋人』を読もうと思います。
でも、馨の恋を応援できるかどうか…。
バーディアンたちに幸あれ(涙)
まだ電子配信のみだし、読んだことない作家さんの作品ということで購入を迷ったのですが、Kindleでの評価の高さに興味を引かれ読んでみました。
結果、大大大満足の内容で、今は読後の多幸感に浸ってます。
電子のみだから評価が少ないのは仕方ないですが、ちるちる内で埋もれてしまうには勿体ない作品だと思い、拙いながらにレビューを書かせていただきます。
ちなみにこちら、オメガバース作品です。
主人公は中学生の時にオメガということでいじめにあい、以降26歳の現在まで引きこもっている彰。
彼のもとに「運命の番」を名乗る宗一郎という男が現れるところから物語が始まります。
宗一郎が勤めているのは 人間の遺伝子を解析し、AIがはじき出した運命の番をマッチングしていく世界遺伝子機構日本事務局(WGO)という国連機関。そこの仕事の一環で、運命の番である彰の社会復帰を手伝うとのこと。
強引ながら優しく、時に厳しい宗一郎に支えられながら彰は社会復帰めざして就職活動を頑張ります。
彰が予定外に発情して以降二人は肉体関係をもつようになり、彰も自分がいずれは宗一郎の番になるということを自然と受け入れていくのですが…。
オメガバース作品でたまにみられる「運命の番」がテーマとなっています。
「本能」に重点が置かれるオメガバースという世界観において、「運命」とは何を指しているのか。この作品ではそういった部分で、他のオメガバース作品ではあまりない答えを導きだしています。
とかくどくど書きましたが、ピュアな恋が好きで、オメガバースが苦手でなければとにかく読んでいただきたいです!
私なんかは読んでる最中、とくに後半からは「恋って素敵だ~」と胸がいっぱいになるような気持ちにさせられました。
純粋でまっすぐで、読んでるこっちまでつられて泣けてしまうような、ひた向きな想いが描かれていると思います。
登場人物も魅力的です。
とくに攻めの宗一郎がすごく好きです。押し掛け女房よろしく彰の世話を焼きまくるのに、夜は男っぽくなるギャップがツボでした。忠犬っぽい年上敬語攻め好きです。
読むと幸せな気持ちにしてくれる作品だと私は思います。おすすめです。
(そしてどうか書籍化しますように!)
読んでいてまず思ったのは「凄いな~!」です。本当に凄いです。
BLという一つのカテゴリーには収まりきれない、SF漫画としてかなり完成度の高い作品でした。
4つの短編が収録されていますが、どれも恐らく同一の世界が舞台となっています。そこはこの世界とよく似ているけど、少しだけ科学技術が進んでいて殺伐としている世界のようです。
どの作品にも、「クローン」や「種(血)の補完」といったものが一つの題材として盛り込まれています。
そういった舞台装置の中で描かれているのは「自分の存在の揺らぎ」に思えました。
不安定な世界で、自分の存在まで不安定な登場人物たち。だからこそ彼らは愛を求めずにはいられない。
セクピスでもそうですが、どんなに紆余曲折があっても最後には必ず愛が勝ちます。
SFとしても完成度が高いし、人間のエゴを描きながらも「愛」という部分に帰結していく物語を描ける寿たらこ先生は、本当に凄い作家さんだなとあらためて思いました。
この作品を読めて良かったし最高に楽しい時間でした。
ぜひたくさんの人に読んでもらいたい作品です。
余談なんですが…。
『GARDEN』を読んでいる最中は、宮崎駿作品が脳裏に思い浮かぶことがよくありました。漫画版の『風の谷のナウシカ』とか、PVの『On Your Mark』とか…。
押井守作品ぽさもほんの少し、あるようなないような。
寿たらこ先生って私的にはとても謎に包まれている方なので、どういう作品から影響を受けたのかなどがとても気になります。どうしたらこれだけ多彩な作品を描けるんだろう。本当に尊敬してます!もっと寿先生へのインタビュー記事とか読みたいな…。
アルク先生の作風って、本当に唯一無二だなと改めて思わされました。
日常に潜む非日常とか、現代の日本が舞台のはずなのにどこか微妙にずれているような感じとか。
もしかしたら、アルク先生はこことは違うパラレルワールドを舞台に描いているのかもなぁ…、なんて。
その不自然さのようなものがすごく病み付きになります。
以下感想のみ。
「ビター×スイート」
これも不思議な雰囲気の漂うお話でした。
一見普通のボーイ・ミーツ・ボーイだけど、主人公そっくりの青年が回想に出てきたり、主人公の幼少期にそっくりの少年がちらっと出てきたり。
主人公が読んでいる本に『夏への扉』があるのがまたなんとも(『夏への扉』はタイムトラベルを題材にしたSF小説です。)
アルク先生ってSF好きですよね絶対(^-^)
もちろんBLとしても面白いです。
クールなように見えて不器用で、近づけば近づくほど可愛い部分が見えてくる三日月くん(受け)に萌えました。
初めて店員姿で現れたときには私も鼻血がでるかと…。
お相手の村山くんも、歯の浮くようなことを平気で言うくせに、どこかつかみ所の無いような、アンバランスな雰囲気が魅力的でした。
そのアンバランスさも彼の過去を知ればしっくりきました。半分はもうこの世の人間ではないのかな~?なんて。
そんな二人が徐々に近づいて、最終的にはバカップルみたいになるのが最高です。萌え~。
「雑巾姫」
シンデレラへのオマージュ的な短編。
遊び人なふうを装って強がる受けって、やっぱり可愛いですね。攻めにバレているのがよりいっそう可愛い。
どうぞ幸せにしてあげてくださいm(__)m
「君は間違ってる」
攻めが刺されるBLにはたまに出会うけど、BL界には傲慢で薄情な男が多いのかな。
この攻めもやっぱり傲慢で薄情。自分のスペックを鼻にかけたイヤな奴でした。
そんな攻めが受けと出会って恋して変わっていく。その様子を眺めるの楽しいですね(笑)
鼻持ちならない奴がどんどん女々しく(可愛く)なっていくのにニヤニヤしました。
それと名字。攻めが大手町さんで、受けが竹橋さん、同僚が九段下さん。
思わず笑っちゃいました。こういう遊び心というか小ネタというか…好きです。
「cleaning」
童話!
『幸福な王子』とか、そういう系統の童話ですね。めでたしめでたしにはならない。
やるせない話です…。でも綺麗。
密度の高い一冊でした。アルク先生の世界に浸るにはおすすめの本です。
面白かったです!
試し読みでビビビっときたので読んでみたけど、期待通りでした。
以下感想のみ。
「ドッグハウス・スクランブル」
深海さんが可愛い!! 超ラブリー!
ショタな見た目でわりと泣き虫、でもちゃんと刑事していて萌えました。
相棒の新城とのドタバタなやりとりにほっこりします。
この漫画が描かれたのがもう15年近く前になるので、少し小道具やノリに時代を感じるけれど、萌は時代を越えますね。私的にはツボでした。
警察もの(多分)にとって超重要な「事件」のほうもちゃんと展開されていて良かったです。
個人的に心に残ったのは、新城が深海さんの弟に言った
「アンタが死のーが生きよーが他人様にはどーでもいいのヨ。みんな自分がカワイイの! まずは自分が一番大事! ――だからね、自分には自分を守る力が必ずあるの!」
という言葉が素敵だなあと思った。ハチャメチャだけどいい男だよね新城くん…。
「ダブルスコア・パニック」
ドッグハウス・スクランブルで主人公の弟として登場した深海昌紀(19)と、捜査一課の係長、工藤圭吾(38)のお話し。
タイトル通り、この二人は2倍(ダブルスコア)も年が離れてます。(でも工藤さんはもう少し年配に見える。シブいです。)
すごい年の差だし、かたや四十の手前だけど二人揃って妙に純情なのが可愛かったです。
というか、工藤さん!! おっさんしかっかりしろ! とツッコミを入れたくなるくらいウブというか、人生初の恋に脳内お花畑になりかけてる?っていう感じで…。工藤さん超可愛い人でした。攻めなんだけどね。見た目もクールなイケオジなんだけどね。
同棲、ラブホ、ゴムという単語にひとり赤面してたり、中学生かっていうピュアさが最高でした。ダブルスコアも年が離れていても、こんだけ純なおじさまならむしろ丁度いいのかもしれないですね。
「キャットフード・クラッシュ」
猫のように自由気ままな恋人をもつ男の話。主人公は深海たちの従兄の秀美。
まあ、こういう関係もありなのかもな…。早い話がビッチ受けなんだけど、ビッチというよりは自由奔放といった感じ。この先も苦労しそうだな…。がんばれ秀美。
ライトな萌えを満喫できる一冊でした。こういうテンションのBLもやっぱり必要!面白かったです。
一穂先生の作品を読むのは、この本も合わせて5冊目になります。文章もキャラクター造形もどれを取っても、私の中ではハズレのない作家さんだなと思っています。『ふったらどしゃぶり』もとても良かったです。
読む前はあらすじなどから「これは不倫ものってことかな…?」と少し尻込みしていたのですが、決して変にドロドロした内容にはならず、逆に展開が気になって寝る間を惜しんで一気に読むほどでした。
雨の描写も、音や匂いや湿気が伝わってくるようで素敵でした。
恋人とセックスレスの一顕が、メールの誤送信をきっかけにメル友ができ恋人に関する悩みなどを相談していく。やがてその相手が同僚の整だと分かり…。といったストーリーです。
二人はやがて一線を越えます。でもそこまで泥沼展開はありません。
恋人とセックスレスとはいえ浮気は浮気ですから、書きようによってはもっとシリアスにもできると思います。それをドロっとさせずに、それこそ「ふったらどしゃぶり」といった感じに一つの瞬間的な事件・出来事として書かれているのが余計にリアリティあるなと思います。
溜まりに溜まった相手への不満が決壊して、一夜だけ過ちを犯す。世の浮気とか不倫ってこんな感じに始まるのかもなあ、なんて。
不貞は一夜だけで、次の朝からはまた恋人との生活に戻る。これは恋人との関係を円滑にするために必要なんだ。そう自分に言い聞かせていてもそこは人間、そう簡単にリセットなんてできないですよね。
『ふったらどしゃぶり』でも、一顕と整が一夜の肉体関係でお互いに本気になってしまいました。まあその前から惹かれあってはいたのかもしれないですが。
この辺が登場人物への評価が分かれるところなのだろうなと思います。
例えば整がもし女だったら、普通に不倫です。じゃあ男と男では不倫ではないと? もちろん不倫です。
でも男と女が不倫するのと、ノンケの男と男が不倫するのとではなんかちょっと違いますよね。男女はハナからそういう対象としてスタートできるけど、ノンケの男が男をそういう対象としてみることは滅多にないです。だから結果として不倫してしまった時、そもそも下心あって近づいたか、成り行きでそうなったか、捉えられ方が大きく変わると思います。
もちろんそんな簡単に分類できる話でもないのですが、おそらく赤の他人からしたらそう見えるのではないかな? そしてそれを一顕たちは利用したのだろうなと。男はそういう対象じゃない、だから男と関係を持っても心の浮気にはならないと。
この心理が上手いなと思いました。
男同士であることを利用してストレス発散し、結局お互いの人生を大きく左右する事件になってしまった。一顕たちの行動を厳しく見ればそう書けるのですが、一穂先生の魔法がかかると切なくてほろ苦い、そして萌えるお話になるのがすごいです。誰かに特別感情移入することはなかったのですが、それでも胸がキュンとなりましたし夢中で読みました。
私は一顕たちの無意識な打算に、ジェンダーと不倫についての社会での捉えられ方的なものをなんとなく考えてしまいましたが、読んだ人によって違った問題や主題が見えてくる作品のように思います。
セックスレスについて考える人もいるでしょうし、かおりや和章について掘り下げて考える人もいるでしょうし。色々な角度で楽しめる要素の詰まった、読めば読むほど味わい深くなる作品だと思います。
もうすぐ雨の季節ですし、雨音を聞きながら読むのもいいかもですね。
ちるちるのBLソムリエでおすすめされたことをきっかけに、この作品と出会いました。本当に本当に感謝しています。この作品と出会えて良かった。
1998年に新書版で発売され、2005年に文庫化されたこちら。
最近の出版ではないせいか、あまり知名度の高くない作品に思います。
ですが、間違いなく素晴らしい作品です。個人的にはBLに関係なく名作だと思います。
主人公は小説家をしている太夏志。彼には公私を共にするパートナーに、詩草という青年がいます。
二人が恋人になるきっかけは太夏志の強引な行動によるものでしたが、すぐに二人は良好な恋人関係になり、気付けば付き合って三年。
そんなある日、詩草が親戚の葬儀で高崎の実家へとひとり帰省することに。二、三日で帰ってくると言っていたはずが四日も音信不通になってしまいます。
ようやく太夏志のもとに連絡が入り上野まで迎えにくと、そこにいたのは記憶と精神が11歳に退行した詩草でした。
そうして11歳に戻ってしまった恋人との暮らしがはじまります。
読みはじめてまず、鷺沼やすな先生の言葉選びや穏やかな文章に惹かれました。情景描写もとても美しく、描かれている情景を脳裏に想像しては思わずため息…。
そして、心理描写あるいは人物描写がとても素晴らしいです。
心に傷を負った内気な少年の心の揺れや、主人公をはじめとする周囲の人間の思考と言ったものが、表情の動きや会話の中で繊細に描写されています。
こんなに人の心の繊細さと向き合ったBL作品って、そうあるものではないと私は思います。
やがて少しずつ、なぜ詩草が退行してしまったのか核心に近づくのですが、そこにいたるまでの主人公の一連の動きがまた素敵でした。
詩草に対する深い愛情が、切なくなるほど伝わってくるのです。
はじめ、飄々としいて周囲を煙に巻くような印象を主人公に抱いていたのですが、実はすごく理性的で愛情深く器の大きい人でした。
多少強引だったり振り回されていたりしたとしても、この主人公と出会い恋人になったことは、深いトラウマを抱える詩草にとって一つの救済になったのだろうなと思います。
タイトルの意味もわかり読み終える頃には、温かい気持ちと切ない気持ちとで胸がいっぱいになりました。
この作品は詩草の心をめぐるミステリーではあっても、サスペンスではないのですよね。だから派手な仕掛けはありません。特別すごい悪役とか凄惨な事件とかもない。
だからこそ人間の心そのものが、リアリティを持って浮かび上がってくるようでした。
特別すごい悪役がいなくても、何か胸をえぐるような事件がなくても、人の心は疲弊し時には病んでしまう。その人間の脆さが、悲しいけれど愛しいんだ、そう思わせてくれる作品でした。
私の拙いレビューでは一体何がなんだか?といった感じだと思います。
ですので未読の方はぜひ読んでみてください。
この作品がこの先埋もれてしまうことのないのを、切に願うばかりです。(そしてBLソムリエさんありがとう。)
長編&未完(現時点で)のシリーズと言うことで何となく尻込みしていたのですが、読んで大正解でした。
面白いです。BL的な萌えはまだあまり感じられないのですが、物語そのものが面白いです。冒険譚的な面白さが詰まっていました。
親の仕事の都合でイギリスに住んでいる高校生の海斗が、友人との旅行中にひょんなことからエリザベス朝のイングランドへとタイムスリップしてしまうことから物語は始まります。
当時のヨーロッパはまだまだ白人社会だし、生活様式やら価値観やら何から何まで現代とは違うし…果たして主人公の運命やいかに!?
…心配は無用でした。海斗くん、順応力高いですね。頭の回転も早いし語学力もあるし。年相応のやんちゃな部分もあるので、ちょうどいい押しの強さで生き抜いてくれそうで一安心です。
読み始める前は、日本人の少年が主人公だったとしても異国を舞台にしたタイムスリップモノに感情移入できるかな? なんて心配もしていたのですが、すんなりと作品の世界に入りこむことができました。
主人公が日本人という設定が、変にこじつけのように感じられたりストーリーの足を引っ張ったりするということもなく、自然な感じに作品内で生かされているのがすごいな〜と思います。
当時の衛生事情なんかもちゃんとぼかさず書かれており、タイムスリップという設定により説得力を感じました。水洗トイレに慣れてしまっている現代の日本人にとっては、タイムスリップ先では見過ごせない事情ですからね。ロマンはないけど、やっぱり書かれている方がリアリティあるな〜、なんて思いました。
そう言った設定や時代考証が、しっかりとした物語の軸としてあり、更にそこに登場人物たちの魅力がプラスされています。
年相応にわがままで好奇心旺盛だけど根はナイーブな主人公の海斗を始め、海賊船の船長を務めるジェフリーや、敵対するスペイン海軍の将校ビセンテ…etc.
メインキャラクターみんな素敵です。雪舟薫先生のイラストもより魅力を引き立たてています。個人的にはカラーイラストのビセンテがすごくツボでした。麗しい…。主人公との今後の絡みに期待が膨らみます。
この物語の幕開けの先には何が待っているのか、ワクワクさせてくれる一巻でした。BLとしても冒険活劇としても今後の展開が楽しみです。