原作既読
原作再読でも、CDでも、隣人がオメガだと判明するシーンがとてもいいなと思います。
~らしい、にくくられない2人が、お互いの性別に気付き、驚くところが、ドラマティックです。
阿座上洋平さん演じる宮永龍之介は、がっつりタトゥにばちばちピアスという外見で、強面、おっかながられるのがわかる、という物言いをしているのですが、物語が進むにしたがって、言い方は強くてやや乱暴なままなのだけど、どんどんかわいさが増してくるのがすごいです。
オメガであるがゆえの生活の不都合、差別や困難を乗り越えて強く生きている龍之介の強い、ときに乱暴な物言いが、徐々にかわいさを帯びてきます。アルファではない単なるイチ聴取者ですが、惚れてしまいました。
鈴木崚汰さん演じる江夏晃太は最初から最後まで人の好さが声色ににじみ出ています。振り回されてばかりだった晃太が、途中からどんどんしっかりしてきて、かつ、徐々に龍之介に惹かれていく様子が、とても素敵です。
2人とも、~らしい、があるようでないのがいいと思います。
男らしい、アルファらしい、オメガらしい、というくくりに収まらない2人の良さが、耳からよく伝わってきました。
アルファとオメガの2人が両想いになりますが、2人ともいわゆるアルファらしい、オメガらしい、ところがないので、お互い別のアルファ、オメガ、とだったら、こんな風に素敵な両想いになっていない、絶対的な相手だったのだろうと思わされる素敵な2人でした。
冒頭から言い合いしてて、あれ、前作で両想いになってないっけ?と思ってしまいました。
軽く意地を張りあっている2人がかわいいです。
普通にいちゃいちゃいないで、うだうだ考えているところが、長峰らしい!
そして、心中の重いに強さが表れているサイズ、大文字の堕落、に笑ってしまいました。
恋人に限らず誰かと一緒にいることに居心地の悪さを感じ続けてきた長峰。
周りの人たちだけでなく、親との関わり方もうまくいかないまま、自ら破壊するような発言、思春期だったとはいえ、かなりの拗らせ方だったことがわかります。
諏訪は、長峰の愛情を確信しているから、だと思いますが、けっこうなウザ絡みが多くて、おもしろいんだけど、長峰がちょっとかわいそうになったりもしました。
大学生活は4年間の夏休み、などと昔、言われたりしましたが、就活を控え、先を考えた2人が、いつも通りの意地を張った軽い口論から言ってはいけないことをぶつけあってしまうところは、読んでいて、かなり肝が冷え、しんどくなります。
前作でも思ったけど、若いとはいえ、なんと不安定な2人。
先行きが心配でたまりません。
もう少し年齢を重ねたら落ち着いてお互いにもう少し優しくできるのかな。
前作ラストの10年後のおだやかな2人を思い出して、ようやくほっとできたラストでした。
最後のおまけ?描き下ろし?は2人がまたちょっともめて、それからちょっと素直になるかわいいお話でした。
電子版のおまけは50歳になった2人が眼鏡屋に行くお話。
個人的におじさん、おじいさんになるまで付き合っている将来の様子が大好物なので、とてもうれしいエピソードでした。
続編があるなら、次のおまけは70歳くらいのおじいさんバージョンが読みたいです。
それぞれの愛の形、家族の形が、きれいなラストだった前作。
遠距離恋愛を始めて1年後のお話。
梶さんの呼び方が、行也さんに代わっているのに、まずかなり萌えます。
息子に彼氏に孫に溺愛されている乙女パパがもうかわいくてたまりません。
自分のことにあまりかまわなくて、いまだに店舗の2階の風呂なしの部屋で、ソファベッドで暮らしている行也さん。
彼氏も大事にしているけれど、見かねた息子がまたまた手を出すところも、この3人らしくて萌えました。
あまり変わっていない、いい感じに一緒に時を過ごしてこなれてきた2人に対し、前作でたくさん暴れてかき回した、内に強い怒りを抱いていた息子の変化に驚きます。
こんな風に変化したのは、時間が経ったからだけではない、理由と、家族への想いが素敵でした。
両想いになってからも、仕事のこと、家族のこと、気がかりなことがたくさんあった2人。
神戸の夜景と汽笛、優しく穏やかに見つめあう2人がとても素敵でした。
割と近い将来に老後が見えている梶さんと、梶さんを愛する人たちのその後が幸せいっぱいでありますように、と強く願ったラストでした。
冒頭の喧嘩シーンと別れでまずびっくりします。
諏訪はただただセックスがしたい、という大学生。
人間の三大欲求の一つとはいえ、そこの部分の欲ばかり強いのは、若いとはいえけっこう難儀。
諏訪が彼女に派手にフラれたところをたまたま見ていた長峰と、なんとなくしゃべっているうちに、なんとなくセックスすることになります。
導入もけっこうめちゃくちゃだったけど、展開はもっとめちゃくちゃです。
若くて性欲も体力もあるとはいえ、そんな展開ある!?と驚きます。
初対面の男同士やってみたら、案外良いな、とセフレ関係になっていく、というのがよくわからない思考でした。
ただただお楽しみを繰り返しているような2人でしたが、お互いがお互いのことを、人として認識してその中身に触れていくうちに、ちょっとギクシャクしてきます。その様子がかわいいです。
ちょっともめたり、別からの誘惑があったり、別の交流関係への嫉妬があったりして、スポーツのようなセックスが変化して、お互いに欲情を抱いて色っぽくなっていく様子に萌えました。
交際という関係ではなく始まった2人が、片方が交際を持ち掛け、片方が断るというのもおもしろい展開。
関係性を考え、すり合わせ、仕切りなおし。順番がめちゃくちゃなのが楽しいです。
これまでさんざん、スポーツのようなセックスをしてきた2人が、気持ちを交わしてから、甘くなっていきます。
若くて性欲と体力があるからの一時的な関係で、お互いへの思いやりを表現するのがまだあまり上手ではない若い2人がこれからどうなっていくのか、喧嘩を何度もしながら続いていくのか、環境が変わったら消滅してしまうのか、と、危ぶんだハッピーエンドでした。
が、しかし、描き下ろしが10年後の2人の様子で、すごく落ち着いたいい関係になっているのがわかってうれしく、ほっとしました。
この10年後に至るまでの2人のあれこれも読みたくなりました。
CD聴取からの再読をしました。
久しぶりに読んだけど、何度も読み返しているけれど、そのたびに暮田マキネのどろりと重たい情愛と執念の色に体中が染まっていくような気持ちになります。
2人暮らしの義父と息子、週末だけは恋人関係という背徳関係。
義父がずっと想っているのは、亡くなった息子の実父、息子には父親として深い愛情をかけてきたのに、息子は気づいたら義父を男として愛していて、その義父の愛する相手が自分の実父と知ったことから身代わりの関係を求めるようになります。
2人とも深い愛情があり、執着があるけれど、そのベクトルが違うところを向いているので、きれいに重なることがない歪さがあり、序盤から苦しく感じながら読み進めました。
男、男、女の仲良し3人組で、それぞれの愛情には、それぞれ違いがあったけれど、3人は確かにお互いを大事に思って愛していた関係で、1人欠けた後でも、男女の情愛はないけれど、友愛による温かい家族であったのだろうことが読み取れます。
だからこそ、高校生になった息子と義父の週末だけの関係がとても苦しく感じます。
息子の愛はあまりに重たく盲目的、まっすぐで鋭くてとても切ないです。
義父は相手を大事にして、周りの人たちを大事にして、愛情を注いで幸せにしてきたけれど、息子だけは望む幸せが手に入れられない状況です。
家族としてはいい状態で、息子はまだ親の保護、支援が必要な年齢のなかでの、気持ちの増長が、歪みをどんどん大きくしていきます。
息子の高校卒業が近くなり、それぞれ、未来のために決断したことが、お互いを悲しませることになります。
愛の深さ、重さ、それによる苦しみ、悲しみの深さがとてもつらいです。
母親、友人、親友、という「正」、「明」の立場と考えを持ち続ける母親の存在が、2人の背徳的な関係、歪みをより際立たせているように感じました。
それぞれがそれぞれのことを大事に思っているのに、めでたし、めでたし、とはならない現実が苦しいです。
気軽に読める作品ではありませんが、何度も大事に読みたい作品です。
原作既読。
暮田マキネのどろりと重たい情愛と執念の世界観がよく再現されていると感じました。
メインの2人、義父と息子の2人の対話の温度感と、それ以外の人間の温度感が全く違うのも、すごく印象的でした。
原作を何度も読んでいて、話の展開がわかっているのに、先が気になり、どきどきして、胸が痛くなりながらの聴取でした。
野上翔さん演じる真の、複雑な心境、子どもと大人の間をゆらめく感じ、あまりにも盲目的すぎる強く重たい愛情のこもった声、台詞の数々が聴いていて苦しいほどでした。
山中真尋さん演じる明の、真よりさらに複雑な心境、そして、親友で片想いの相手に、友達に、息子に対する深い愛情、と、愛していた男とその息子へ向ける邪な感情の間で苦しみ、揺れる様子は、さらに苦しく切なく感じました。
母親も友達もそれぞれの立場で、それぞれへの愛情があり、誰もがみんな悪気があるわけではない。
許されない愛と許されない関係に対して、本人たち、家族、友達、それぞれの考えがある。
愛し合ってるだけなのに、とはとても言えない、2人の愛の物語でした。
キャストトークはとても明るくて、ギャップがあり、楽しかったです。
本編のすぐあとではなく時間をおいてきいたほうがいいと思います。
ドラマCDを聴く機会があり10年以上ぶりに再読しました。
立野先生の作品に出会ったのは少女漫画時代、ミッキー&カズヤシリーズ(花とゆめ、アイドルもの)が大好きでした。
今作はバンドで、過去にも今にも苦しみがあり、暗く重たい内容ではありましたが、立野先生の描く芸能ものの、色っぽさと世界観、ライバル関係がミッキー&カズヤシリーズに通じるものがあるように感じ、二重の意味で楽しめた作品でした。
バンド、音楽というものに真剣であり、真剣だったからこその葛藤や苦しみが、切なく描かれています。
天才肌の歌手らしく、傍若無人さがそこかしこに出ているのはとてもかっこいいです。今の時代では、コンプライアンスとか契約とかSNSとかいろいろあって、もうそういう伝説になるようなバンドマンはいないように思います。
2人の天才、世代と時代が異なる伝説のバンドの音楽に向き合う様がとてもかっこいいです。
ヒロヤでなければ、アキラでなければ、許されない、見ていられない時代がかったきざなセリフや、無茶苦茶な言動にも魅入られました。
立野先生の芸能ものはやっぱりいいな、と思わされた作品でもありました。
原作既読
CDが出ているのを知らなくて、原作を読んでから10年以上経ってからの聴取でしたが、脳裏に2人の顔が表情が、鮮やかに浮かんでくる作品でした。
鈴村健一さん演じるアキラは、天才で、小生意気で、まじめで、まっすぐで、というアキラらしさがすごく出ていました。
スターゆえに、元の性質もあり、けっこうわがままな言動があるのですが、それがカリスマ性をもって許容されている感じも、まさにアキラ、でした。
森川智之さん演じるヒロヤは、苦しみを抱え厭世的になっている天才、大人な感じがよく出ていました。個人的にはもう少し若い軽やかな声のイメージだったのですが、ヒロヤが発する、芝居がかった、時代めいた、かっこいい、きざなセリフの数々が、森川さんの声によくマッチしていました。森川さんじゃないと、ちょっと鳥肌立ってたかも、と思いました。
歌唱シーンがどうなるのかなと思っていましたが、かっこいい演奏と観客の歓声でうまい具合に表現していました。
それぞれのカリスマ性のある大人気のバンドなのが伝わりました。
ただ後半の2人のけっこう大事なやり取りのシーン、台詞とBGMがなんだか合っていなくて、そこは残念でした。バンドシーンはかっこよかったのに、急にお昼のメロドラマみたいなBGMが流れてきて、びっくりしました。
フリートークも楽しかったです。
たまに、やっつけ仕事みたいなフリートークの作品に出くわすことがあり、がっかりするのですが、ちゃんと作品に絡めたトークを楽しませてくれました。
CD聴取後に原作を再読しました。
好きなことを好きと言える蒔田と、好きなことを好きというのに周りを気にしてしまう別所のお話。
別所は自分で自分にレッテルを貼ってしまったり、周りの人の目を気にしすぎてしまったり、悪気なく、人を傷つける発言を何度もしていました。
大学生とはいえ、まだ大人になりきれていない不安定さ、未熟さが、言動のあちこちに表れていました。
蒔田くんは、目立つタイプでもなければ、人の輪の中心にいる陽キャでも一軍でもないのですが、とてもフラットで周りの人との距離や影響において、バランスが良い人と感じました。
そんな2人が、授業中の忘れ物の貸し借りを通じて出会い、親しくなり、恋愛関係になっていくお話です。
この世代だと、恋愛感情と性欲と、どっちも同時にあって、どっちのほうが強いのかわからないようなことも多々あると思います。
そんな悩みがけっこう赤裸々に描かれていました。
大人のようでまだまだ未熟な青年たちが、自分の感情を抑えられなくて言葉ばかり使って、人を傷つけ、そのことで自分も傷つく場面が何度かあり、読んでいて苦しくもなりました。
若さゆえの過ち、とでもいうのでしょうか。
そんな時期をとっくに超えている自分の年齢だと、きっとそのまま疎遠になってしまうような強い言葉をぶつけても、この世代だと、まだ傷が治る柔らかさがあるのだろうなと感じたりもしました。
物語のエッセンスとして必要だったとは思いますが、ホモ、という言葉にまつわるあれこれのエピソードは個人的にはあまり好きではありませんでした。このあたりは好みがわかれると思います。
前述の通り、若い恋人同士は、恋愛感情と性欲がセットになっているところが大きいと思っています。
なので、就職して体力、気力をたっぷり削られるようになったり、その結果、性欲が落ちてきたりすると、壊れてしまう関係も少なくないと思います。
卒業を前にした2人が、これからもずっと一緒にいたい、とその想いを形にするプレゼントを選び、その想いを伝えあうラストはとても素敵でした。
難しい時期もあるだろうけれど、乗り越えていってほしい、と思うラストでした。
episode 藤司と久長
藤司と久長、親友同士の2人が、藤司から久長への告白によって、関係がうっすら変化していく、じれったく、むず痒いお話でした。
告白されたほうが多いに迷い、悩む様子が描かれていますが、告白したほうは何年も何年も悩んで悩んで、どう接していくか考えて苦しんだり悲しんだりしてきたであろうことが、回想エピソードや飲み会のエピソードでわかります。
どっちも間違ってないし、どっちも悪くないし、どっちもお互いのことが大好きだし、かなり切ないです。
こういう終わり方をする作品、個人的にはかなり好きでした。
描き下ろしのその後のお話
本編の終わりで1つ、出会いのエピソードからの回収がありましたが、さらにもう1つ、出会いエピソードの回収があり、お見事!でした。
そういう演出、にくい!
かわいくて、萌えて、素敵なその後の2人のお話でした。
原作既読です。
声優おふたりの声のバランスが、原作より2人の人間関係をより深く感じられたように思います。
しかし、それによって個人的には、別所のヘタレ加減、自分勝手加減が際立ったように聞こえて、人目を気にしすぎているところとか、友達にも恋人にもいい顔をしようとしてうまくいかないところとか、体の関係を持つ前の悩んでいるけれど結局かなり自分本位なところとか、途中からイライラしたし、ちょっと嫌いになりかけました。
(そういう性質のある男の子で、発展途上の若者の表現なのだと思いましたが)
対照的に蒔田の懐の深さが際立っていたように感じます。
常に穏やか、控えめ、そして間口が広い、というか、懐が深くて、ふらふらハラダ定まらない別所との距離感や支え方がとてもよかったです。恋愛も体の関係も受け身なのだけど、すべてを受け入れる大きな受け、という感じがしました。
出会いの小道具である、筆記用具、キャラクターグッズが、最後の演出に使われているのが、見事だと思いました。
きれいな回収だと感じました。
結局、恋愛って2人がお互いが良くて好きならばそれでいいんだな、と納得させられました。
その後の2人の様子を知ることができる、素敵な構成の作品でした。