一生懸命だけど失敗してしまう、仲間の為、自分に与えられた使命の為それでも頑張るドジっ子の佳寿が可愛かったです。健気で不器用で、依吹のからかいにも気づかない奥手な鈍感さが大変萌でした。可愛い!
咄嗟の言い訳に口にした嘘の言葉だったのに、依吹の素の一面に触れるにつれ佳寿の中に本物の恋心が芽生えてゆきますが、その心情の変化に悶えました。
受が攻の掌の上で転がされてたはずが、攻が受を溺愛過ぎて甘々になっちゃう感じとか、ちょっと意地悪でクールビューティーな攻とかも、全てツボって感じでした。
だからこその最後の結末部分のストーリーをもう少し掘り下げて読みたかったなぁと思いました。佳寿が依吹のもとから逃げ出し、再会するまでの間のことや、今後の展望や狸一族の反応など。主に会話の中で語られましたが、それぞれの悶々ドタバタをもっと見ていたかったです。
途中までは正直、望の余りのダメんずっぷりにイライラしました。これって所謂DV被害者の共依存よね、なんて思いながら読んでいましたが、後半の望の感情の変化にぐいぐい引き込まれました。
心の内にある寂しさの穴、求めるばかりで周囲から既に与えられていた愛情に気づいていなかったこと、家族との関係の修復。様々な過程を経て成長してゆく望が後半になるにつれどんどん愛おしく思えました。
王道BL的な『ずっと幼馴染に片思いしてたけど、紆余曲折有って、俺だってお前のことが…!なんだ両想いだったのね!からの、ラブラブえっちでハッピーエンド☆』のようなパターンかと思って読み始めたので、個人的には最後の最後まで二人の関係性が恋人に発展しなかったことが僥倖でした。安直に身体の関係にならなかったことで望の愛の深さや芯の強さ、幼馴染の成長に取り残されたようで戸惑う俊一の動揺などがよく伝わって来て、巻末のオマケも含めてきゅんきゅんでした。
これはこれで個人的に満足度の高い結末だったので、続編も大変好評のようですが、この先二人の関係が進展してゆくのは見たいような見たくないような…。
猫実のサトシに対する想いが、ストーリーが進む中で明かされてゆきますが、高校時代から今に至るまでかなりの執着っぷり。それをひとつずつ思い出し気づくサトシ。両者の鈍感無自覚さが可愛く萌でした。
猫実は天才研究者でありながら興味の有無が極端で、自他の感情に疎く幼い一面があります。サトシ、猫実共にそれぞれの感情の推移に不自然さを感じなかったので、突飛なキャラクターでしたがさらっと楽しく読めました。あらすじからの想像を良い意味でも悪い意味でも一切裏切らないストーリー展開でした。
途中出てくるドイツ語の会話は、会話内容がサトシに分からないということで後からストーリーに絡むのかと思いきや、ただの研究所での猫実の人間関係の(あと研究者らしさの?)表現だったようで、伏線かなと思ったけど何事もなく終わってゆく感じは随所にありました。サトシの会社の社長令嬢が多分片思いだったろうに猫実登場後一切ストーリーに絡んで来ないこととか、会社の上司から恋愛事について電話があった後のサトシの会社での様子とか。入院から年末の連休まで仕事の描写がなかったので、社会人ぽさが薄れたかもしれません。
副作用の治療が終わった後、サトシが研究所を訪れた際の猫実のいじらしさが切なかったので、もうひとつ萌。