「刑事」「ヤクザ」「推理小説」なんてキーワードから、なんとなくむさくるしい想像をしてしまい、なかなか手が出せずにいました。
しかし、読み始めて数十分。すっかり山内練(受)の魅力の虜になっていました。悪魔の様な残虐な男かと思えば、弱々しく脆い面を見せたり、アルコールに溺れたり、何かと危なっかしい人物ですが読んでいていい意味でハラハラさせてくれました。
練をはじめとするこの作品の登場人物達は、色々な心の揺れを見せてくれます。「この行動はどんな感情から起こしたのだろう?」と考えて行くと、グッとくるシーンがいくつもあります。
私は時系列的にこの本の後になる「聖母の深き淵」「月神の浅き夢」(RIKOシリーズ)の後に「聖なる黒夜」を読みました(文庫収録の読み切りも含め)。RIKOシリーズには麻生も練も登場しますが、あくまで視点は女刑事・緑子です。彼女の視点から練は悪魔の様に映り、何故麻生は練を愛せるのだろうかと考えますが、この「聖なる黒夜」では練の、麻生曰く天使のような部分を知り納得することが出来ました。
ちなみに、練は「ツンデレ」だとは思いますが、初々しく頬を染めて恥ずかしがったりするタイプのツンデレでは無いようです(笑)。性に対してはかなり奔放で歪んだ変態性も持っていたりするので、王道の分かりやすいツンデレを期待される方にはオススメできないかなと思います。ただ、そんな練が好きな男にだけ見せてしまう「分かりにくいデレ」が最高です。