あのね、何て言ったらいいか……とにかく終始コミカルで明るい作品なので、「シリアスなのはちょっと疲れた」とか「何も考えず読みたい」って気分の時に最適な作品だと思います。
この作品にも、一応シリアスなシーンがあることにはあります。
でもそんなシーンは少しだけだし、主人公であり受の裕也がとにかく元気、強気、精神的にタフなので、シリアスなシーンも結局裕也の心情に引っ張られて、暗くならない。
いやー、ルトの元に落ちた異世界人が、裕也で本当に良かったと思いますよ。
これだけ元気強気タフな裕也だから、超コミュ障であるルトと相性が最高なんですね。
もっとおとなしめの子だったりしたら、ルトを制御出来ないもん。
いや裕也だって完璧に制御出来てる訳ではないけど(H方面で)、裕也が本気で叱るとルトはショボンとなるし。
強気に引っ張っていくタイプの裕也で良かった。
まあそもそも、相性が合うからルトの元に落ちたんですけどね。
攻のルトは、これまた強烈なキャラクターです。
超美形でめちゃくちゃ強くて、魔王ですら瞬殺。
そして超絶倫。
いやもう絶倫ってレベルなのか…?
裕也を抱くことは、ルトにとって食事より大切なライフワークなのではレベル。
頭が悪い訳ではないと思う。
兄・エリクにきちんと教育を受けているし。
ただ育ってきた環境のせいで、精神年齢がものすごく幼い。
なので裕也にベッタリだし、裕也関連のことになるとすぐ泣きます。
普通の大の男がここまで泣くとちょっと微妙ですが、ルトの場合は受け入れられました。
ルトが気持ちを表現する一つの方法だし。
溺愛攻であることは間違いありません。
溺愛というか執着というかもうよくわからないけど重過ぎる愛。
とにかく明るい語り口でコミカルにストーリーが進むので、もっと重厚感がある異世界ものを欲している人には向かないかと思いますが、楽しい作品を読みたいって人にはオススメです。
攻受共にとても魅力的なキャラクターでした。
攻・アシュヴァルド→超美形、護衛騎士より強い、魔道士としても最強レベル。
つまりとんでもなく強い。
護衛騎士より強いという剣術においても、恐らく作中最強なのでは。
オルガと手合わせするシーンはありませんが(オルガを溺愛するアシュヴァルドが手合わせすることは今後もないでしょうが)、アシュヴァルドの底知れぬ力を考えると、オルガより強いのではと思いました。
歴代屈指の賢帝であり、国のことを大切に考えている。
そして何より、オルガのことを大切に考えている。
「私の最愛」と何度も声にするほど。
最愛であるオルガに万が一にも危険が及ばないよう、オルガを守るあらゆる魔法をかけており、それはもはや最強レベルの執着とも言える魔法。
受・オルガ→これまためっちゃ強い。
刺客も一瞬で返り討ち。
アシュヴァルドの護衛騎士・ロベルト曰く「オルガの剣筋は一筋一筋が何とも殺意が高く、毎回すぐ隣に死があった。もし本物の剣で戦っていたら、自分は何回死んでいたことだろう」(ざっと要約)。
ロベルトってアシュヴァルドに護衛騎士に指名されるほど強いんですよ(アシュヴァルドの方が強いけど)。
そのロベルトにそこまで言わしめる…というか、「殺意の高い剣筋」ってすごいな、オルガ。
もちろん手合わせなのでオルガに殺意はないのですが、それほどオルガの剣術は戦慄するレベルで優れているのでしょう。
性格もかなり男前で、アシュヴァルドに可愛く甘えたり…みたいなシーンはあまり…ほとんど?ありません。
あくまで対等。
夫婦であり戦友であり、みたいな雰囲気。
私はこういった男前な受が、攻に対してだけは甘えるのが好きなので、そこがちょっと物足りなかったかな。
もちろんHシーンとかは色っぽいしアシュヴァルドに翻弄されているのですが、もっと甘える所を見たかった。
序盤、横恋慕してくる王女のエピソードなどを読んでいると、何となくこの先はこういう展開だろうなーみたいな憶測を持ってました。
BL小説を読み込んでいる人ほど、そういう憶測を持ってしまうのではないかと思うのですが、この作品は見事に展開を裏切り続けてくれました。
例えば、
・攻ジオが王女を完膚なきまでにフッたけど、きっと王女は諦めないんでしょ?後々何か仕掛けてくるんでしょ?
・受レイルは自己犠牲の塊みたいな性格だから、自分の気持ちにもジオの気持ちにも鈍感で、二人の恋は中々進展しないんでしょ?
・初めて自由に生きる選択肢を得たレイルは、これまで出来なかったことを優先したりするんじゃ…満足行くまでそれをしてから、ジオと身を固めるんじゃ…。
こういうBL小説鉄板みたいな予想を持ってしまったのですが、全部ことごとく完全に裏切られました。
全然違う展開だった。
あとこれもすごく強く予想してたんですけど「レイルはきっと、Hの時、淡白に違いない」と。
淡白というか、ジオに流されて終始照れながら恥ずかしがりながら終わる…みたいなの予想してたんです。
でも実際のレイルは…はい、甘えん坊のえ○ちな男の子でした。
ジオに素直に甘えまくるのね…。
ジオに気持ち良くしてもらうことは大好きなのね…。
そしてジオがまた……甘ーい!!!(っ'ヮ'c)
だってレイルを追い出した王女に「胸糞悪いガキ」と面と向かって罵り、王女との結婚を「苦役」とまで言うんですよ!?
そんな人が、レイルには優しく微笑んで「可愛い」と言いまくるんですよ。
たまらんわい!( ˃ ⌑︎ ˂ )←
溺愛攻大好きで、特に受に対して「可愛い」と言葉にする攻がツボなんですけど、ジオよ……君ほど「可愛い」と言う回数が多い攻も珍しいぞ…。
ദ്ദി 'ω' )グッ
そりゃそこまで言われまくってたら、ジオが言う「可愛い」や「綺麗だ」を、レイルが「好きだ」と言われてると変換するのも無理ないよねぇ。
というかジオって、口は悪いしぶっきらぼうだけど、レイルに気持ちを告げてからはめちゃくちゃ優しいスパダリなんですよ。
そもそもレイルに思いを告げず、そばにいられたらいいと我慢していたのだって、レイルのため。
孤児院をきりもりして、自分のことは二の次で十分に食事も取らず、寝る時間も満足に確保出来ず。
そんな生活をずっと続けているレイルに、これ以上負担をかけようとは思わないと。
ものすごく深い愛なんです。
序盤の攻と受のキャラクター描写からは想像出来ないほど甘々なイチャイチャシーンがたくさんありました。
ちょっとこれは…サブタイトルででも「溺愛」って入れた方が読者の目に留まったのでは…くらいに溺愛甘々な作品でした。
一つだけちょっと気になる点を挙げさせてもらうなら、行間でわかるようなことを、モブキャラが台詞として言っちゃう…みたいなシーンが何回かあり、それが不要だなぁと思いました。
「勇者さんの亭主面がすごい」とか「元勇者一行の本気過ぎる火遊び」みたいなことをモブキャラが呟くシーンがあり、その度に、うん…言わなくてもわかるよ…みたいな気持ちになりました。
むしろジオがレイルの亭主面をしてることは、モブキャラの台詞ではなく、ジオの行動だけで読者に伝えてほしい。
何かいきなりモブキャラが場面説明するように不自然な台詞を言うので、その度にせっかく物語に浸っていても現実に引き戻されました。
けして面白くない訳ではないのですが、受・アルの心情の変化がイマイチ飲み込めませんでした。
序盤どう考えてもノーマルで「女性しか恋愛対象として見られない」みたいなことをアル自身考えているのに、終盤「今にして思うと、きっと性別を超えて惹かれていたのは、俺が先だった」みたいな。
いやちょっとすんなり飲み込めないかなぁ…。
「なぜサイラスに惹かれたのか」ではなく「なぜサイラスへの気持ちを自覚していなかったのか」みたいにポイントがすり替わってるというか。
あと攻・サイラスについてですが、アルにとってスパダリなのは間違いないと思うんです。
容姿端麗て頭脳明晰、経済力も地位もあり、頼りになるし、実家のことも助けてくれる。
ただその手腕を発揮した訳でもない場面でアルが「スパダリ」と何度も思うのが気になりました。
え?今の行動はスパダリなの?みたいな。
あとアルに対しては確かにスパダリですが、アル以外に対しては結構狭量な一面もあって、器が大きいと言い切ることが出来ない。
まあまだ若いから仕方ないかと言えばそれまで。
トラブルも100%綺麗に解決みたいな感じではないので、そこも少しスッキリしないというか、今後二人の生活に危険を脅かす可能性はないのか少し不安になる結果。
やはり心情への共感とか、色んな試練やトラブルを全部乗り越えた安心感とか、そういうのが弱いので、読後の幸せな気持ちみたいなのはあまりありませんでした。
物語は不規則に受視点と攻視点で語られますが、どちらかと言うと攻視点が多く、それがちょっと珍しくて面白かったです。
BLって受視点が大半だし、攻視点は続編とか番外編なら見かけますが。
ここまで攻視点が多い作品は珍しいのではないかと。
特にこの作品は、攻・タールグのキャラクターが結構面白いので、読んでいて楽しかったです。
けしてバカにしている訳じゃありません。
タールグは超美形で政治手腕に長け戦にも強く、最初こそ傲慢な部分もチラッと見えたりしますが、受・レオナに恋してからはそういった傲慢さも消え、もはやワンコ状態の溺愛攻。
題名に『冷酷な覇王』と書かれており、実際政治的な面では冷酷な手段も厭わなかったのでしょう。
でもそれは、自分の国のためであり民のため。
ものすごく優れた治世者です。
そしてレオナは、きっと第六感というか、色んな物事において、普通の人が気づかず通り過ぎてしまう美しさや、逆に歪さに、すぐ気づく青年なのだと思います。
その考え方も少し独特というか、正しいけれどそこに考えが至るまでのプロセスが普通の人とは違って、ぐるぐる回り回るのに、突然ピョンッと飛んで辿り着いちゃう感じ(あくまで私の感想です)。
なので、レオナ視点で最初から最後まで書かれていたら、展開の速さとか状況のわかりやすさが少し違っていたのでは…と思うので、タールグ視点が多かったのはこの作品に合っていると思います。
タールグ視点で語られる場面を読んで、タールグ頭良いな~と感心することが多かったのに、ラスト&番外編よ。
大丈夫か?タールグ!( ゚∀゚)
レオナが人の心情を読むのに直感的に長けているのかと思いきや、単にタールグが心の声漏れてたんかい!笑(無意識に小声で言う)
もうほんと、レオナにメロメロなんだなー。
猜疑心の鎧みたいなのを常に身に着けていたタールグが、レオナに出会えて、心の声が漏れるほど無防備になれて、本当に良かったよ。
レオナの母国での待遇とか、途中あるレオナの母国のいざこざとか、シリアスなシーンが多いものの、ラストはタールグのメロメロ具合に
( ゚∀゚)←こんな顔で読めますので、安心です(褒めてます)。
あまりの面白さに、一気読みしてしまいました。
何か……すごかった!!(語彙)
正直題名だけ読んだ時には、割とコミカルなトーンの話かと思ったんです。
でも実際は真逆で、シリアスなシーンが多いです。
それでも全くしんみり暗い気持ちにならずに読み進められるのは、受・ロクスが底抜けに「脳筋」だから!
いやーすごかった。
THE体育会系、THE脳筋。
人としてとても眩しく尊敬出来るし、きっとロクスと関わった人は皆ロクスに惹かれ(意味は色々あれど)、好きになるだろうな、でも振り回されたりそのフォローはちょっと大変だろうな、と思わせる人柄。
まさにルウが、ロクスに忠誠を誓っているものの、時に呆れたりするように。
でもその猪突猛進さと「脳筋」が、この作品には必要不可欠でした。
普通なら躊躇ったり落ち込んだりする状況でも、ロクスは「考えるのは苦手だから動く!」タイプなので停滞しないため、とりあえず物語は動く笑
ものすっっっごく面白くて迷うことなく神評価だったのですが、唯一不満を挙げさせていただくなら……番になった後の二人のラブラブを見たかったー!!( ´›ω‹`)
くっついた途端物語終わっちゃうんだもの!
本番は!?←
いやH目的で読んでる訳じゃないけど、この二人に関しては心が通じ合って心身共に結ばれるの見たかったよー!
うう…いつか描き下ろしか短編で読みたいです。
最高でした!
表紙を見て、受が何か気弱そうというか流されやすそうに見えるなー…それに子守かぁ…BLに子育て描写は求めてないんだよなぁー…と失礼ながら好みの問題で読むか迷いながら読んでみることに。
読み始めてすぐ、イラストを見て抱いた受へのイメージは完全に間違いだったと察しました。
真面目で正義感が強く、芯のある青年でした。
言動が良い意味で「普通の青年」で、オドオドし過ぎず、かといって無謀な強気でもなく、きちんと弁えている頭の良さもある。
攻・レヴェントはもう文句のつけようがないスパダリ。
容姿端麗で政治にも武芸にも戦法にも優れ、民を思いやる優しさに溢れ、そして何より、妻をものすごく大切にする。
側室を何人も娶るのが当たり前の環境に置かれながら、「生涯たった一人」と心に決めており、平民であり男であるユスフを正室に迎える。
そして何と言っても…ユスフ、閨ではすごいな!
あんなに初心でおぼこいユスフが、いや閨事の知識や経験がないからこそなのかな?
してほしいことはちゃんと言葉にしてねだるんですね…(´,,−ω−,,)
レヴェントよ、よくユスフからねだられて鼻血を出さずスパダリを保ったよ←
これからも色んなおねだりをして、どんどんレヴェントを沼らせていくんだろうなぁ…。
そしてレヴェントの養子(最終的には二人で育てることになる養子)のルウがもうめちゃくちゃ可愛い!
「いっぱいだっこせんか」とか…イーキンゆずりの独特な口調が可愛過ぎてにまにましちゃったよ。
何か読んでてぶん殴りたくなるタイプのクネクネ男悪役が出てきてイライライライラする場面が後半続きますが、ちゃんとそいつは制裁を受けてラストはハッピーエンドだったので溜飲が下がりました。
レヴェントに関してはあれだけ聡明でユスフにぞっこんなので、1ミリたりとも靡かないだろうなとわかってはいましたが。
ストーリーも本当に面白く、甘々で幸せな気持ちになれました。
欲を言えば婚姻後のラブラブ生活をもっとたくさん読みたかったかな!
物語全体としてはとても面白かったです。
受・ヨアンは輪廻転生しており、前世の魂や記憶の一部を引き継いでいますが、ヨアンもそれを良い意味で受け入れています。
攻・ベノアルドも最初は記憶を奪われていたため、ヨアンが自分の愛しい魂の生まれ変わりだということも、そもそも自分に愛しい魂がいたということも忘れている状態で、それでも現世の受に惹かれ始めます。
なので、単に生まれ変わりだから最初から理由もなく惹かれた…という展開ではありません。
輪廻転生ものはそのパターンも多く、そういう作品を読むと「生まれ変わりならどんな人でも愛したんだろうか」と思ってしまう作品も多々あるのですが、この作品はそういったモヤモヤがなく、素直に読めました。
世界観の設定も凝っており、ベノアルドのヨアンに対する執着もとても良かったです。
かといって強引に囲い込もうとする訳でもなく、あくまでヨアンの意思優先。
けれど最終的には自分がそばで守り抜く。
寡黙で飄々とした雰囲気の素敵な攻です。
ただ…!
強いて不満点を挙げるなら、Hシーンかな〜…!
エロさが足りないとか、そういうことではなく。
Hシーンになると、途端にふんわりしたわかりづらい文章が増えるように感じました。
読んでいて「ん?これは今どういう状況…?」と再度読み直し「あ、はいはい、その段階ね」とどうにか理解したり、「ん?これはー…もう挿入したの?え?指?どっち?」とか「イッたの…?あ、イッたのね」みたいな。
多分そうだろうと推測する場面が多かったような…。
完全に私個人の勝手な見解というか考えでしかないのですが、作者さんがHシーンを書くことに対して、ちょっと照れがあるのかなー…?だからふわっとした表現が多くなるのかなー…?みたいな印象を受けました。
ガッツリHが読みたい!という訳ではありませんが、攻と受がくっついてお互いの愛情を伝え合う場面として大事なシーンだとも思っていますので、Hシーンがもっとわかりやすく状況が伝わってくる書き方だったら、多分神評価にしてました。
ストーリーはとても面白かったので。
面白かったです!
攻・ダムディはひたすら紳士で優しくスパダリで、包容力の塊。
頭も良いし武芸にも優れている。
根っからの紳士というか、人を邪険に扱うことはないんだろうなと思わせてくれるキャラクター。
受・ナランは、表紙のイラストからは儚げ美人かと思いきや、とにかく口下手で不器用で可愛らしく、でもきちんと芯のある子でした。
二人が近づいていく様は初々しくもあり、良い意味でやきもきします。
後半のダムディ視点のお話では、ダムディは会う前から肖像画でしか知らないナランを愛しく思い始めていたことがわかり、キュンとしました。
そっか。容姿に自信を持っていないナランだけど、ダムディは最初からシンプルに可愛いと思っていたのかと、なぜかこっちまで嬉しくなってしまいました。
シリアスな展開を予想していましたが、思いの外ほんわかしたストーリーで安心して読めました。
攻・ジェラルドは特に腹黒ではなく、単に民の前では「求められている王子像」を理解して振る舞い、愛する受・ユージンの前では素を見せているだけでした。
腹黒王子ではないですね。
ユージンに対してはどこまでも一途ですし、「腹黒ドS王子」ではなく「俺様執着王子」という感じです。
俺様で強引ではありますが、とにかくユージンを愛し執着していて、行動の根本に必ずユージンの存在がある感じ。
ユージンはちょっと鈍すぎてイラッとする場面もありましたが、良い子です。
ただ、文章で読むユージンとイラストのユージンが結びつかなくて。
ユージンの「普通の男の子」な部分が少しでも表現された容姿の方がしっくり来たかな…。
ユージンのハーレム状態は正直要らなかったかな。
登場する男性キャラクターがほぼ全員ユージンに片思いする展開が謎でした。
とはいえ作品としては十分面白く、楽しく読めました。