小説ばかりで漫画はあまり読まないのですが、インパクトのある表紙をみて思わず購入しました。
表紙もあらすじも本編のマリアボーイについてですが、本自体は同時収録である「好きだよ、秘密だよ」から始まります。マリアボーイの主人公であるヨシキの弟、なおと、と彼の同級生でヨシキと関係を持っている、しゅうちゃんの物語です。
表紙みたいな話を期待して買ったので求めているものとは全然違ったのですが、これが可愛かった!!
高校生らしいというか、なおとを好きなことに悩むしゅうちゃんと、見た目より大人な考えのなおと。お互いに真摯に向き合おうとしている感じが凄くいいです。
ヨシキが介入してきて途端にシリアスになる場面もあるのですが、大筋はたいへんいじらしい青春BLです。
本編のマリアボーイは面白い・・・のですが、私は表紙裏の草稿から漫画で読みたかったです。そこがヨシキの原点というか、ヨシキ自身の苦しみや歪みの発端なので、ここをじっくり堪能してから加藤くんと恋愛して欲しかったなぁと。そこでどうしても星三つかなぁと。
それでも、ヨシキが加藤に惹かれたり、心を許している過程は短い物語の中にとても綺麗に纏められていました。なにより、加藤のペースに巻き込まれていくヨシキの姿がいろいろぶっとぶ位可愛いかったです。それこそ眼がハートになる一コマだけでも買う価値あるってくらい。本当に可愛いです。
バーバラ片桐先生。いつも凄いタイトルのものをお見かけするので、普通?なタイトルが逆に気になって初めて手にしました。
受けの鈴鹿はとにかく愛情に飢えています。
愛されたいあまりにビッチ化してしまっている病み系の受けです。
さて、それを包容攻めとか大人な攻めが受け止めるのかなー、と悠長に構えていたら出てきたのが攻めの工藤。
弁護士を目指す真面目でなんでもこなす青年なのですが・・・。
こいつの独占欲が半端じゃない。
受けが病んでると思ったら攻めも病んでた。
だから二人の行動がとにかく極端です。
モブとか、愛無しのそういうシーンもたくさん出てくるので苦手な方は注意です。
読んでる間は不安でした。病んでる×病んでるとか、上手くいくの?みたいな。
しかし、読み終えるとかまい倒したい独占欲の化身、工藤と、かまい倒されたい愛情不足、鈴鹿のカップルはちょうどいい、って感じです。もうお互いを満足させられるのはお互いしかいない、というか。
病んでる状態を脱却したり、執着心を減らしたり、二人が正常になるような救いはまったく無いお話です。しかし、二人の世界というか、このお互いじゃないと、という愛が最終的にあふれている作品です。決して明るくはないけれど、病み系好きな方にはたまらないんじゃないでしょうか?
不幸受け好きなので、あらすじ見てレジに直行しました。
普段は甘い路線の多い作家さんなのですね。
主人公の狩野は、高1の一ヶ月を共に過ごした同級生を探すために刑事になった男。
彼が捜し求め、執着を寄せるのが今回の受けの青伊。
青伊は双子の妹の死を自分のせいと思い込み、虐待や売春を甘んじて受け入れています。
そんな青伊を救いたかった、救えなかった狩野が12年ぶりに彼を探し当てて、次こそはと奔走する。しかし、青伊は麻薬取引に関わらされていて・・・という
王道といえば王道な不幸受け。
なんというか・・・狩野、落ち着け、って感じの作品でした。
高校生パートは良かったんです。若気の至りってこともあるし、考えや力の及ばないこともたくさんあるだろうと。
しかし、そこから12年経っての狩野の成長の無さには撃沈しました。
本職をないがしろにして青伊優先で動いちゃったり、青伊の気持ちを無視するような暴走も見受けられて・・・。
青伊は不幸な境遇ですから、今までの人間関係を考えると狩野に惹かれても仕方が無いかもしれない・・。けれども、どうしても私は、やめときなよそんなわがままな男・・・と思わずにはいられませんでした。
好きな方には本当に申し訳ないのですが、狩野のキャラをどうしても正当化できず、物語に入り込めなかったかな、というのが正直な感想です。
個人的に、この作品で一番懐の広い男はサブキャラの鷹通さんのような気もしますがどうなんでしょう。
作者さんが、それぞれのキャラにバックグラウンドがあって、いつか披露できたら、と書かれていたので、それは少し楽しみです。
シリアス作品のイメージが強い凪良先生のラブコメ。
感想を一言で言うと、楽しかった。
考えさせられる、とか、感動する、とかそういうことは無いんですが、代わりに頭を使わずサラッと楽しめる。そういう作品です。BLなのであまり無いかも知れませんが、人前では絶対に読まないほうがいいです。笑っちゃうので。
いつもシリアスばっかり買ってしまう私としては、たまにはこういうのもイイネ!って感じです。
あらすじにある通り、主人公の二ノ宮は童貞のまま30になってめでたく?魔法使いになったサラリーマン。
自分が童貞になる原因となった無神経な10年前の元彼、世取と再会したことから物語がスタートします。
設定がもうコメディ以外の何者でもないので、出てくる人たちが全員都合よくホモでも、通行人が「童貞?」って立ち止まっても、温泉に サスペンスの帝王、船○さんがいても全然許せる。楽しめる。
後、エロいシーンが少なめな印象が・・。
なにぶんコメディなので、攻めがおあずけを食らうシーンが多く、短編のほうでは攻めと一緒にこっちまでやきもきしてしまいました。特に新垣くん。彼はかわいそうすぎる。
その代わり、童貞の二ノ宮はウブで大変可愛かったです。コレは世取も頑張るわ。
二ノ宮君が失ったのは童貞ではなくて処女ではないかなって疑問がやはり付きまとうところですが、読後にはそんなことはまぁどうでもいいかな、って感じです。コメディですからね。
前作、「夜明けには優しいキスを」を読んだ当初から、加瀬は凄く気になる存在でした。
誰かこいつを幸せにしてやってくれと。
そんな加瀬難民救済の一作、「お菓子の家」。
待ってました、そんな作品なので、ちょっと最初の期待値が高すぎました。
加瀬のトラウマであるとか、価値観は凄くしっかりしているんです。欲しいものはたいしたものじゃない。でも、自分の手に入らない。もがきながら生活している加瀬は魅力的なキャラクターです。
問題は攻めの阿木さん。なぜ加瀬に惚れたかいまいち分からない!
一応、大切に思っていた弟分、譲に似ているというフォローはありますが、彼は知世さんの旦那さんだったわけで・・・。きっかけとしては頼りない。
おまけに、加瀬ははっきり言ってるんですよね。「俺はあんたを好きだけど、あんたは俺を好きじゃなくてもいい」それに対して、阿木さんも「色恋にはならねぇぞ」と返している。
そういうスタンスだった阿木さんが、物語のどのへんでどのように加瀬にメロメロになっていったのか、それが読み取れないんです。
加瀬は愛されることをすんなり受け入れられるタイプではありませんから、加瀬好きとしてはそんな彼を安心させて、思い切り愛してくれる攻めを期待してました。阿木さんもそんな攻め像を追ってはいるのですが、どうしても加瀬への思いに同情とかがちらついてしまう。
凪良先生は心情変化がをとても丁寧に書かれるイメージがあったので、余計にここが気になってしまいました。
例えるなら、娘が結婚相手を連れてきたのですが、どうもその男が信頼ならないというか、「娘にお前はやれん」という父親の気持ちが少し分かるような読後感です。
阿木さん、君はうちの加瀬を本当に幸せにしてくれるのかね?みたいな。
まぁ、娘が音信普通よりずっとマシなので、結局読んでしまうんですけどね。
うちの加瀬は元気にしとるかね?みたいな。
主人公である基くんの境遇がとにかく不幸まみれです。不憫受け、薄幸受け好きさんにとっては「良くぞ出版してくれました!!」って感じの作品です。いじめとか虐待とかが満遍なく出てくるので、苦手な方は絶対に受け付けない作品だと感じます。
人を選びますね。
私は不憫受けが大好物な人間なので、普通に楽しめました。
私の経験では、不幸受けの作品にはものすごくか弱かったり常に周囲におびえている主人公が多かったので、基くんのキャラクターは新鮮かつ嬉しかったです。
あまりに力ない主人公だと「もうちょっと頑張れよ・・・。」と思ってしまったりするのですが、この境遇にありながら弱さを見せない甘えない、基くんの男らしい性格のおかげで、純粋に那智さんとの関係を応援できました。
と、不憫受けにはありがたい一作なのですが、どうしてもストーリーや表現が過剰な気がしてしまい星は4つです・・・。
確かに私は不幸受けが読みたい、読みたいのですが、主人公の基くんにはそれこそジェットコースターのように不幸が舞い込んでくるんですね。もう、前世で何したんだよ、って突っ込みたくなるレベルです。
元から不幸な境遇なんだからここまで過剰にしなくても良かったというか、悪い言葉で言えば出来すぎ、ご都合主義な不幸があまりにも多く気になってしまいました。
崎谷先生もあとがきに書かれていますが、攻めの那智さんもとにかくトンデモ設定です
BL界広しと言えどもここまで、家柄、見た目、過去に欲張ったキャラは今のところ見たことがないですね。
ところどころオーバー過ぎて引っかかる部分も私にはありましたが、ここまではっきりした不幸受けが商業では出版されにくいのも確かです。不幸受け、薄幸受け好きさんは是非ご一読を。萌える作品だと思います。
凪良先生の作品はもともと大好きでしたが、その中でもトップレベルではまってしまった小説です。
凪良先生は比喩が毎回とても綺麗で、そこが好きな理由のひとつなのですが、そういう凪良節?が満載の作品のようにも感じます。いったいどういう脳みそしてたらこんな綺麗な文章が浮かぶのかな?って感じです。
朔太郎が恋に臆病になる理由、それに答えようと「友達だ」というつぐみ。もともと両思いなのに、簡単にくっつかず、お互いの心を細やかに描写してくださったのが本当に嬉しかったです。過ごした時間を忘れてしまう朔太郎に対し、責めることも無くただそばにいて語りかけてくれるつぐみは本当にベストカップルですね。萌えもドキドキももちろんあるのですが、「もう何でもいいから幸せになってくれ!」ってこんなにも感じたのはこの小説が初めてです。
短編、スイート・リトル・ライフには賛否両論あるようですが、私は好きです。忘れる、ことを許せるようになった生活で、朔太郎はようやく、自分にとっての安心できる場所、半径1メートルをみつけられたのかなと。「症状が進んだら俺を捨ててくれ」という朔太郎と「ずっとそばにいる」というつぐみのペアですから、二人が結ばれた後に「末永く幸せに暮らしました」という終わりじゃ少なくとも私は納得できなかったと思います。この短編があって、ようやく本当に幸せな気分になれるって感じです。もちろん、二人の重ねた年月を考えると随分未来の話になってしまって違和感は残るのですが、読めてよかった、そういう短編でした。
BL小説には、惚れた!エッチ!おしまい!的に心情が薄い気がするものも多いので、そうしたなかで、コレだけ丁寧な恋愛をしてくれる作品は、BLの中でも珠玉の一作として過言ではないと私は思います。