atyanmamaさんのマイページ

レビューした作品

エキスパートレビューアー2022 ソムリエ合格

女性atyanmamaさん

レビュー数3

ポイント数98

今年度182位

通算--位

  • 神3
  • 萌×20
  • 萌0
  • 中立0
  • しゅみじゃない0
  • 絞り込み
条件

指定なし

  • レビューした作品
  • 神作品
  • 萌×2作品
  • 萌作品
  • 中立作品
  • しゅみじゃない作品
  • 出版社別
  • レーベル別
  • 作品詳細
  • レビューした著者別
  • レビューした作画別
  • レビューしたイラスト別
  • レビューした原作別
  • レビューした声優別
媒体

指定なし

  • 指定なし
  • コミック
  • 小説
  • CD
  • DVD
  • ゲーム
  • 小冊子
  • GOODS
発売年月
月 ~
レビュー月
表示モード

火花 コミック

中村明日美子 

描かない美しさを感じさせる一冊

誤解を恐れず言わせてもらえるなら、先生の代表作、「同級生」と背中合わせのような話だと思った。あちらが朝日ならこの作品は黄昏…的な。(因みに中村先生のお話は大体読んでいます。同級生の大ファンです)



(あらすじは既に多くの方が触れていらっしゃるので大体は省かせていただきます)

高校の時の一瞬目があったときに、恋に落ちる。自ら恋に落ちたことことを認められず、ただ湧き起こる激情をどう宥めればいいのかわからなかった場合、その感情の表現の伝手を多く持たないDKだと(しかも既に暴力と親和性を持っていた過去があるなら余計に)こうなってしまうこともあるだろうなぁと思う。勿論暴力を認めているわけではありません。でも誰しも自分の気持ちとすぐにまっすぐ向き合えるわけではないし、間違わず相手に誤解されない言葉を選べるわけではない。
この多感な時期の、このような暴力を介する歪んだ愛情表現を題材に扱った作品は時折見かけます。そのどれも印象的で心に残るお話達です。
だが、この透明感、空気感、表情で読ませる唯一無二感は、さすが中村先生だと思う。

女子BLというけれど、この物語はBLと言うより主役は女子の戸森さんだと思う。
彼女の目の前で散った花火のお話。
高校、大学、社会人と犬飼と三郷の二人が出会うたびに散る花火を、彼女が見つめるお話だと思う。
彼女が見ていないから、読者である私たちも犬飼と三郷の事はあまり分からない。(その分その行間を想像してしまうのだが)
でもその余韻も含めて花火なんだと思う。

そしてやはり結婚するなら、戸森さんがいいと思う。



同時収録作品「英雄と少年」もその描かれない部分に想像を掻き立てられるお話。


描かないところの美しさを感じさせる贅沢な一冊でした。

もう読めないのではないかと思っていた二人に会えた奇跡

新刊出ます
と聞いた時、夢かな?と一瞬思ったのは私だけだったでしょうか?
先生の取り巻く環境が大いに変わったであろうことを思うと、果たしてまだBLを出して頂けるのか、さすがに厳しいのではないだろうかと危惧していましたから。
暗澹たる思いがするたびに、雑誌掲載の平良の暗闇瞑想状況を読んでは、私の知る二人はこのままなのか…こんなキモい平良のままなのかと思っておりました。
と言っても実写からの大きなムーブメントはすさまじく、さすがに出してくださるよね?と一縷の望みに縋り付いてもおりましたので、本当にうれしい一報で、一冊でした。
本が手元に来ただけで泣きたくなるくらいうれしく思う本はそうないと思います。
二人手を握った表紙は宣伝などで既出でしたがやはり手元で見ると胸がいっぱいになりました。
メディアミックス化され、どの分野でも大成功の作品ですけど、私にとっての清居と平良は小説の中の二人で、葛西先生の二人なんだと改めて思いました。

レヴューではないかと思いますが、読後の気持ちを記しておこうと思います。

美しい彼で結ばれた二人を、憎らしい彼、悩ましい彼と大きな岐路を通してより深まっていく二人の関係を見つめてきました。
今回は順番からもタイトルからも平良のターン。
先行していたお話などから予想していた通り、平良が写真とカメラとどう向き合っていくのかというお話だったと思います。
平良にとって清居は絶対者であるけれど、カメラはある意味自分であって、そのカメラを通して平良は世界を見つめて、見上げていました。
そして今作で平良はカメラ・写真=自分だと表現していく道に踏み出しました。
その中で平良はどう変わっていくのか、清居が演技と向き合ったように、写真と向き合う平良がどうなってしまうのか。
清居との関係はどう振動していくのか。
清居の言ではありませんが平良は成功すると信じて読んでおりました。そこの部分は正直まるっきり疑わなかったのですが、平良が普通(?)になってしまった時の「これじゃない…」感が半端なかったです。
キモウザの王様じゃないと黄金の玉座におわしめす清居には釣り合わない…これじゃない…誰だお前…。
頬っぺたぶった叩いて目覚めさせるという手段が通じない平良を前に清居も悩んでしまう。
普通になってくれていいはずなのに…平良が普通って逆に気持ち悪くない?とまで思わせるさすが平良。
清居もなんとか「キモくないとヒラじゃない…」て開き直ってくれて、というか、素直になってくれてよかったです。
清居も平良のいうままのキングでなくていいです。無理に丸くならなくて大人にならなくて、ノブレスオブリージュとか我慢し続けなくて、清居であってくれてよかったです。

もちろん二人はその間に少しずつ大人になり、今回は平良の成功により環境も周囲もまた変わっていきます。

本当の天才とは、才能とは平良の方が持っているんでしょう。
でも振り切れた努力をする人間も天才なのです。だから清居も秀才で天才です。
あら?私たちは天才カップルのお話を読んでるってことになってます???と今更ながらに気が付いたような、気が付かなくてもいいことに気が付いてしまったような気がします。
だって、天才だったり秀才だったり特別な二人という事よりも、キモウザで俺様な二人だけど、でも、二人は互いの前では互いの事しか見えていない、どうしようもない恋をしている二人、という事が一番大事でそれが読みたいのですから。
平良が最後だと思った瞬間に残そうと思った行動が本当に気持ち悪くて、でもとても美しく、尊くて、でもやっぱりキモかった。それがすごくうれしかった。キモすぎる平良に深く愛されすぎる清居も痛い位平良を愛してる、そんな二人をまた読めてよかった。



今作がBL小説レーベルで出版されたことを考えると、やはりこの作品にはエチシーンがないことをは明記しておかなければならないのかもしれません。
腐女子として二人のイチャイチャの実況中継は壁になってでも見ていたいです。ましてや平良と清居のイチャイチャです。30Pあってもおかわりします。
けど、一般小説でも成功され、実写版も大成功し、そこで先生のファンになった方々多くいるだろう現状で、そんな方々にも驚かずにBLを二人の関係を受け入れられる形で、でも二人の深くつながり愛し愛される関係を書いてくださったんだと思います。
以前凪良先生はBL小説のセオリーに苦しまれたと仰っていたと記憶しております。
今回はそのセオリーから解き放たれたようにも思います。



これからも二人はそれぞれの世界で悩んだり、苦しんだりしながらも、成功していくんだろうと思います。
でも、私はふたりの通い合ったようで、まるっきり分かり合えない片思いのままのような関係で、でも一瞬が深く互いに刺さる時間を二人が持つところをまた読みたい。

先生がまた二人のこれからを紡いでくださいますようにと願っております。
今作を読ませていただいた深い感謝をささげるその口で、また強欲を願う一読者ですみません。

清居と平良にまた会えて本当に本当にうれしかったです。
凪良先生、ありがとうございました。

愛は道標である

虫シリーズ10作目、待望の新作は6.7巻に登場したテオと彼の命を守るため彼を保護し自分の家族に引き合わせ育んだフリッツとの19歳年の差カップルのお話。




以下ネタバレを含みます。(本作だけでなく、この登場人物に深くかかわるシリーズ6,7作目についても触れていますので、ご注意下さい)



ハイクラスばかりの国の中で、絶滅危惧種のハイクラスのみを求められる公族に生まれたロウクラスだったテオは、(もともと狂っていた)実母に疎まれ、しまいには殺されそうになってしまった過去を持つ。
実の兄は必至で彼を守ろうとしたが、兄自身も愛を知らず育ったため、テオが求める愛を彼の求める形で与えることができなかった。
だが愛を知らないという兄は確かに弟を愛しており、命を守るために友人フリッツに弟を託し、テオは隣国に亡命させられフリッツの家族に迎えられその後は温かく育てられる。
ハイクラスばかりの国の中で珍しいロウクラスの中、(しかもロウクラスでも珍しいレディバードスパイダーなのだが)人々が自分に興味を持つのは自分が珍しいロウクラスだから、愛玩具のように愛でられているに過ぎないと思っている。そしてそれだけでもありがたいと思っている。
そんな「かわいそうな子」テオ。
不遇な環境で育ったためか、その心の底に、自分だけに唯一注がれる愛がほしい、ただ一人でいいからその人の一番になりたい、その人が一番愛する人になりたいと心の飢えを抱えテオは生きていた。
そしてテオが愛されたいのは自分が愛するフリッツだった。
過保護すぎる兄として、テオを守ってきたフリッツ。その行動はどこからどう見ても過保護の域を超え、溺愛と執着の混合物を含んだ深い愛にしか見えないが、テオは今の関係が変わってしまうのを恐れ告白できない。
そんな中進路に迷うテオに、「人生の中幸せの基盤を決めなさい」と教授が言う。
進路よりも何よりも自分にとって大事なことは、フリッツと共に生き家族になることだと自覚したテオに、フリッツは「その気持ちは勘違いだ」と拒絶する。




前作のレビューでも書いた気がするのですが、樋口作品は恋愛の機微というよりも、愛は人をどう変えるのか、愛は時に人を強くし、時に弱くするかと言うことを描いていらっしゃると思う。
そして人の孤独について描き続けていると思う。
この虫シリーズはその傾向が顕著だし、前作愛の夜明けを待てはシリーズ中もっともその色が強く出ており、BL作品でありながらも、文芸作品に近かったと思う。(それは先生が一般文芸を経たからかとは思うが…)
そして今作は前作よりも少しBLに回帰された感じがする。
加えてここ最近の作品の受ちゃんは以前の運命に翻弄される(部分はもちろんあるが)よりも、運命に立ち向かう力強さというか、勇気をより感じられる気がしている。
今作のテオはもちろん不憫だ。
幼い頃からの状況はいっそ不憫のミルフィーユ状態と言っていいだろう。
テオはただただかわいそうな子だろうか?
もちろん実母からの仕打ちはありえなく、かわいそうの範疇は超えている。
でもテオは愛を自分の中で育てる強さを持っていたと思う。
テオの心の真ん中の本当に柔らかい部分はシオンが必死に守ったからだと思う。(ここら辺は6、7巻参照)
シオンからの不器用な手放すことで彼を守った愛や、フリッツ家族からの無償の愛はテオに孤独を与えたが、共に力を与えていたのだと思う。
その孤独ゆえに「ただ一人、フリッツに愛されたい」と強く願う。それさえあればもう何もいらないと思う位強い願う。
でも注がれた愛がテオに愛する強さも与えたのだと思う。
自分の気持ちに向き合い、フリッツを深く愛し、彼以外を愛することがないと気が付いてしまうほどの強い愛。
テオはそのことに最初絶望する。そしてそのことに喜びも得る。
ただ唯一に愛されたいと願う心は、ただ唯一に愛したいという勇気を持つ事なのだ。
19歳という年の差がある相手を愛するとき、その思いはテオの道標になるに違いない。



虫シリーズ10作品目は力強いお話だったと思う。
樋口作品を読むと、愛とはいろいろあって正解も間違いもないといつも思う。
ただ、愛を手放したくないのなら、そして愛を手放したいのなら、そこには苦しみが伴い、だから強さが勇気が必要なのだとテオ君に教えてもらったような気がする。
愛を知り強くなる、愛を知り弱くなる。愛って難しいです。
このお話を私たちに届けてくださった先生に感謝です。










ちなみに、コミコミ小冊子はフリッツ視線。
友人で未来の義兄になるシオンや葵その息子たちVSフリッツともいえるお話。とても楽しかった。永遠に読んでいられる。
テオは不憫でかわいそうだけど実は強く、フリッツの方がテオに執着し脆さも抱えていると思うので、フリッツ視線で迷走しまくるのも読んでみたい気もしていたので、その部分もちょっと満たされたかな。

これが神でなくしてなんなのだろう

読み終わって自分が息を潜めていたことに気がつきゆっくりと深呼吸しながら読み終えました
素晴らしすぎて窒息しそうでした

一巻でノンケなのに男娼の間男の仕事を始めたアポロと彼の専属になり教育を始めたフィー
二巻でフィーを卒業し別の男娼を相手にするも受け入れがたく思うアポロと他の男を相手にするとアポロを前に心が乱れるフィー
そして三巻アポロとフィーがどうしようもないくらい互いしか見えなくなっていく様を一冊使って贅沢に描かれていました
恋の引力に怖れながらも、ルールに戸惑いながらも、無防備にこの世でたった二人きりでいる様に互いが互いしか見えなくなっていく姿の滴る様な色気に震えました
もう引き返せない、まるで密林の様な分厚い濃密な空気に、じっと息を止めて読みました

物語を構成する全てが上質。読んでて贅沢な時間だとさえ思うお話です。
次がいつかと待つのも楽しみです。

読後感がすごくよかった

M/M初登場の作家様ですが冬斗先生の硬質でエロさ滲み出る翻訳が素敵で、ウイットに富んだ軽妙な会話を堪能していたらあっという間に読み終わってしまいました。
以下ネタバレしています。




シドニーの大手不動産会社のやり手のセールスマンがある夜のバーで出会って5分で自分の部屋に連れて行った男と、お互いの名前も知らない割り切った関係として濃密な一夜を過ごした二人。そしてその一夜が凄すぎて来週も会う約束をする。お互いの名前を聞かない、素性も聞かない体だけの関係として始まった二人がだけど、体を交わすその指先で、視線で、少しの言葉に相手を知っていく。
週一回の夜だったはずが週ニになりあっという間に週三どころじゃ済まなくなる。体を交わさなくてもいいと思う様になる。
ただの割り切った体の関係だった二人が、相手に他の相手がいないかが気になって、自分だけのものでいてほしいと思う様になる。
片方は割り切りたかったから名前を知りたくなかったし、もう片方は名乗りたくない理由があった。
そんな時偶ビジネスの都合で二人が出会い互いが社会的にどんな人間かを知ることになる。
この変化を読んでてすごく楽しかったです。
二人がお互いの名前を知って、関係性のステージを変える勇気を持とうとするところとか、お互いビジネスを尊重しつつ、それ込みで、そしてそれとは違ったところも愛していると自覚して、相手に、相手の周囲にも伝えて、自然に変わっていけたことがとても気持ちがよかったです。

M/Mにしてはそれぞれの家族にオープンだし、ストレートの友人にもカミングアウトしていて理解されてたり、左右固定だったり、ちょっとBLっぽいファンタジーさを感じないこともないですが、そこはアメリカではなくオーストラリアだからかもしれません。やっぱりM/Mらしく男同士のお話だなと思うも十分あって、(というか本当の男になる一歩手前の男とでもいうのか…)その上冬斗先生の翻訳が男の硬さやエロさを十二分に表現してくださってる気がして、読後感がめちゃよかったです。

M/Mはリバに遭遇するのが怖くて…という方にお勧めしたいです。
他の方も書いていらっしゃいますが、二人の距離感の取り方スキンシップがクッソ萌えるので、M/Mの男臭さはちょっとという方にもお勧めしたい恋のお話です!

泥中の蓮の様な

まず続編でもないのに、冒頭に主要キャラクター四人の関係性が人物紹介として書かれている不思議な構成に驚きましたが、読み進めてすぐにその冒頭の人物紹介が必要だったとわかります。何も知らず読むと火傷しそうなのでアナウンスが必要だったのかなと思います。

物語は一人の天真爛漫な男真尋に惹かれる二人の男ともう一人四人の物語をその後「もう一人」を中心に描かれます。つまりサレ側のお話とも言えます。
四人は真尋と真尋の恋人京介、真尋の元恋人で幼馴染亮達。そしてその幼馴染の亮達の恋人理日斗。亮達と真尋は互いに理日斗と京介という恋人がいるにも関わらず浮気をしておりそれを知っていても動けない動かない京介と理日斗の異常な四角関係。それぞれ複雑な家庭に育ち浮気されても何も言えないでいた理日斗と京介がある日一緒に行動することになり、京介は亮達と真尋への憤懣を理日斗に不条理な形でぶつけてしまう。
それまで歪であっても一応は保っていた四角関係が崩れていくのを、それぞれの人物の一人称を経て推移していく物語です。
NTRや浮気心変わりはちょっと苦手で、読み進めるのに苦しめられましたが、読み終わって読んでよかった作品の一つとして心に残ると思いました。
人の心は白黒では決められなくてあいまいなところがあり、相手に合わせすぎて自分がなくなてしまうところがあり、嘘を平気でつき、嘘をつかれているとわかっていても逃げ出せないところもあり、人を傷つけても平気だと自分を丸め込むところ、そんな人間の矮小で臆病で傲慢で、そのすべてを持っていなくても、そのどれかを或いは少しでも持っているのではないかと思います。
このお話はそんな人間のいやらしさをある意味強調するように描いて、あまりの醜悪さに眩暈もしますが、そうだからこそ、読みごたえがあり、どうなっていくのだろうかと読み進めずにはいられなかったのだと思います。
そして彼らの着地点は納得できるものでありました。
あまりネタバレしたくないのでこれ以上は言えませんが、例えクズであろうと人は生きており彼らは彼らなりに幸せになろうとあがいているし、それは決して否定されることではないと思う方はお読みいただけると思います。

物語に出てくる誰もいないプールと、傘がとても印象的でした。まるで泥中の蓮のようだなと思いました。

癒される…

一巻を読んではまってしまい二巻を速攻注文したのは久しぶりでした
一巻は省いてこちらにまとめてレヴューします



推しゲーの世界に推しキャラの義弟として転生した主人公が、推しである義兄の笑顔を守るために萌えを吐き散らしながら必死に生きていくと言うほのぼのbl第二弾。
まだ恋愛とか恋人とかになっている訳ではないのだが、周囲の変化や気持ちのベクトル発生などに一切気が付かず、ひたすらに推し(義兄)への愛を撒き散らす主人公が面白い上に、主人公の気持ちを浴び過ぎて、気づけばヤンデレ執着攻め(或いは受け。ここのところは未確定)になっている(としか思えない)義兄が出来上がっていることはもちろん、主人公のハーレム状態になっているように思えるのだが、全く一ミリもその事態に主人公が気付かず義兄への愛を捧げる事で世界を動かしてしまっているのを見守るのが楽しいとしか言いようがないです。
前作により幼くして命を落とす予定だった主人公が生き延び、若干だれる部分もあるが、ついに登場したゲームの主人公である少女など新しいキャラも登場し、転生した乙女ゲー世界の謎と主人公が持つ魔法の謎などがリンクして、この世界の時系列ではどうすればハピエンのに結びつくのか、主人公の転生自体も謎で、謎解き要素と見えない謎の部分への興味、すっかりヤンデレ執着になっているのに一向に気がついてもらえない前途多難な(義兄視線)義兄との恋への(カタツムリのような速度で進むのは勘弁して欲しいのですが)進展も面白く癒されました。
ハーレム状態というのは個人的にはあまり好きではないのですが、今作の場合、主人公の細胞がほぼ100%義兄への愛で出来上がっているので、周囲からの好意に気が付かないので、そこに嫌味がなく、義兄への愛に悶え苦しむ様もまた可愛らしく、ノーストレスで読めます。

ただ惜しむらくはweb小説あるあるな気もしますが、前述しました通り、展開が若干遅い…。
一巻で一学年上がるって感じなので義兄が高校3年生になるまで後2冊かかるんでは?と思わないわけでもないのですが、3歳離れた義弟君が義兄君と恋人になってくれるんなら頑張って追いかけようかなと思っております。


とても癒されるので、読んでほしいなあと思う作品です。

好きを丁寧な作りで描いているお話

リイド社さんのお話はすごく丁寧なお話が多いなという印象が、このお話でより強くなりました。恋の可愛らしさ一方方向と思う恋の切なさがきちんと描かれていて、せも重すぎない良いお話だと思います。

キャラクター販売の営業でライバル関係の二人。キャラクターを好きな事を過去の男に揶揄された事でコンプレックスになっていた受けちゃんに、ライバルの攻めが発したふとした一言で解消しまう。受けちゃんは距離の縮まった攻めに恋心を抱きますが、同じ職場で気持ちよく働けるようになり、ノンケの彼に告白などできるわけもなく…。そんな思いが鬱屈してしまい酔い潰れてしまった受けちゃんを家に送った時攻めはあるものを見つけてします。
次の日から攻めの態度がよそよそしくなり受けちゃんは自分が酔いつぶれている間に何かしでかしてゲイバレしたのでは?と悩み…。

柔らかい絵柄で、可愛いお話でしたが、双方の相手への気持ちの分岐点を丁寧に描いているのがとても素敵で読み易かったです。
好きという気持ちを丁寧に描いていて、読んでて心地よかったです。
多分何度も読み返すお話になると思います。 人間だけでなく、キャラクターもすごい可愛くて良いなと思います!

切なさもほんわかと可愛い

佐久本先生のお話は恋の切なさを描いても、どこかほんわかしたガーゼに包まれているようでとても好きなのですが、このお話も優しくてとても好きです。

吸血鬼や鬼や狼男など亜人と呼ばれる種と人が共存している社会。
吸血鬼の亜人の莉央はその容姿を駆使してモデルをしている。吸血鬼なので他者の血液や体液を摂取することが大事なのだが、ある日堪らなく良い匂いのする相手廣人と出会う。莉央は廣人に積極的に迫るが田舎から出てきたばかりの彼は亜人の存在にもおどろいて引いてしまう。

二人が種族の違いや生まれのコンプレックスに直面して悩んでも、飛び越える瞬間はヒョイっとジャンプするような軽やかさが佐久本先生らしさが溢れていてとてもかわいかったです。

人生は変化していくものである

あまりに素晴らしかったので一人でも多くの方に読んでいただきたいお話です。
どこでこの気持ちを書けばいいのかと思いこちらに記させていただきます。


まずは題名にあるように、ある世界のある国では竜が人々を守り、生贄を捧げることでその世界の平穏が守られると思われています。
主人公星桂(せいか)は両親を失い生贄候補として育てられ、そして選ばれ、竜と崇められる存在の袂に捧げられるのですが…。

個人的にこのお話は変わる事を描いている様な気がします。
竜神翠は生贄と育てられた星桂に生贄を求めていないこと、これからが自分の人生を生きるように変わるように促します。
ただ流されるのではなく、己で考え変われと言われ、ただ生贄に選ばれる為、ひいては竜に食べられる為、それだけであれは存在を許されていたと思っていた星桂にとっては自分が変わらなければならないと言うことに戸惑います。
竜神の存在自体も彼が願っていたことが時の中で大きく変わっていました。
変わることをを受け入れること、己の意志で変わる事、己の意思を無視して変わってしまった事、変わってしまっていたことを認めることそのどれも勇気が必要だと思います。
主人公星桂は竜神翠との生活や暮らしの中でそれを受け入れ体得していきます。
そして2人に避けがたい大きな変化が訪れるのです。


げそ先生が商業でデビューされて2冊目の作品です。
前作が現代ものであるところからガラッと変わって和風ファンタジー。デヴュー前から存じ上げておりましたが、一読者として偉そうなことを申し上げるようですが、この選択は素晴らしかったと思います。
先生の透明感あふれる筆致がこのファンタジーの世界観に非常にあったものとなっていて、その繊細さが物語の爽やかさ悦びそして悲しみを鮮やかに深く描き出していると思います。
私もこの変化を喜び受け入れる一読者でいれることが嬉しくてなりません。

げそ先生素晴らしいお話をありがとうございました。