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タイトルの伏線回収を見たとき「やられた!」と思う、綿密に作られた切なく美しい作品

1~3巻まで全て読んだ感想です。
とりあえず1巻を1冊だけ買ってみた人間ですが、読んだ当日には続刊を発注していました、お急ぎ便で。
読みだしたら止まらなくなる作品です、気を付けてください。

本作は作者が洋ドラの引きが強いシリーズ構成に憧れ、「続きが待ち遠しくなる事」を目指して書かれたそうですが、まさしくその通りになってしまいました。

はじめは受けが抱える記憶障害の重さに理解が及ばず、ストーリー運びが強引に感じた一瞬もありましたが、
読み進めるほど背負っているものの重さに気が付き、考えを改めました。
作者はとんでもなく壮大なラブストーリーを計画しています。

冒頭、受けは記憶喪失であり、攻めも多くは語らない人物なので、攻めも受けも正体が読み切れない存在として現れます。
特に攻めの中上衛には、そっけない印象すら感じる出だしとなります。
しかし読み進めるたびに、攻めや受けに感じていた第一印象が変わっていきます。

その登場人物に対する「印象の変化」が本作の1~3巻までをつなぐミステリーであり、
やがて愛の深さを知ることになる素晴らしい仕掛けとなっています。

作中でも十分に切ないのですが、
エンディングの先には、作中では描かれることがない「正解のない未来」が待っていて、
読者の受け取り方によっては、さらに切ない想像をしてしまうかもしれません。

それでも二人が幸せであることを願わずにはいられない本作、
ぜひ、1~3巻まで読みふけっても問題がないくらい、時間のゆとりを確保して読んでみてください。
でないと寝不足になります。

過酷な運命の中で、生きる希望になるのはいつも攻めの温もり…という関係が尊い…

こちらの作者さんの小説は初めて読んだのですが、攻めも受けも健気でかわいかったです!
設定もストーリーも重い内容が展開されますが、受けの心は強かであり、
内容も受けの境遇の不幸自慢はしない表現なため、陰鬱さは少ないです。
それでも性奴は気持ちの良い設定ではないので、苦手な方はご注意ください。

受けに育てられた攻めは、ひたむきに愛を伝えてきます。
受けは大切なわが子(攻め)のためなら身を削ってもいいと思う親心を持っていますが、
絶え間なく伝えられる攻めからの愛情に、親心と恋心の間で悩む事になります。
攻めはそんなことも知らず、甘えられるだけ甘え「大好き」を伝えてくるので、受けはもっと悩むことになってしまいます。

暖かくてやわらかいのは攻めの愛情だけで、二人に降りかかる運命は重苦しいです。
過酷な運命の中で生きる希望になるのはいつも攻めの温もり、という関係が尊い…。
↑真面目に言うとこうなりますが、簡単に言うと攻めは「でっかいわんこ」です。

終盤が急ぎ足に感じる部分があり、正体が人外である攻めの生死観の違いをもっと理解できたら、より攻めへの気持ちを深く持てるような気がしました。
さらに言うと、すべてが終わった後の二人の生活をもっとじっくり見ることができたら、なお良かったです。

ここまで二人を見届けた読者なら
「エンディングの向こう側の2人の幸せなストーリーが見たい」と思うでしょうから。

過度に完璧で不自然な活躍をする登場人物たちが合いませんでした

新進気鋭の作家さんなので期待していたのですが、私には合いませんでした。
本作は好き嫌いが分かれます。
作品に「受けはかわいそう」「攻めはお金持ちでかっこいい」を演出するためのバイアスがかかっており、
「過度に完璧で不自然な活躍をする登場人物たちがメアリー・スーを想起させる」と思いました。

本作は「受けはかわいそう」「攻めはお金持ちでかっこいい」を雄弁に語りすぎて、「ありえない」と感じる場面が多くあります。
・受けは天涯孤独で貧乏なので「ゲーセン」という言葉を知らない(高校生です)
・ゲーセンは飲食店だと思っていた
・貧乏なので「美容院」という言葉も知らず、病院だと勘違いする
・飲食店のデリバリーのバイトで商品を落下させるも
 「食べられたら問題ない」と主張し、「配達先が悪人だから怒られた」という展開になる
・ピザ屋やウー〇ーイーツの宅配で落下した商品を渡されたら嫌な気持ちになるのは当然では…

・攻めが受けのボロアパートの部屋に防音工事をする(賃貸では?)
・他の部屋には何もせず、受けだけ恵まれるように振る舞う
・攻めが権力を使って気に入らない相手を家族ごと左遷させることを何度もやっている
・上記にかかる費用はすべて親の金
・それらを見て受けは「攻めは優しい人だ」と思っている

・攻めの美貌をアピールするために「庶民的なハンバーガー店で食事をしたら芸能事務所のスカウトマンにひっきりなしに声を掛けられた」というエピソードがある。
・マッ〇みたいな店のホールに複数の芸能関係者がたむろしている状況が不可解
etc…

攻めがαの富裕層で、Ωの受けが不遇な扱いを受けるというのはよくある事なのですが、
攻めも受けも行動に「品格」というものが伴っておらず、私は愛着が湧きませんでした。

「メアリー・スー」という言葉に苦手を感じる人にはおすすめできません。
ページ数や物量の多さは素晴らしいのですが、読み進める事が苦しくなってしまいました。
「不可解設定が気にならなくなるぐらいの展開が来たら受け入れられるのではないか」と期待をしていたのですが、受けの
「びよういん?知らない!なんでそんな紛らわしい名前を!」
という美容院がわからないセリフを見て限界を感じ、ギブアップをしてしまいました…。

天涯孤独で美容院に縁がないのは仕方ないですが、小学校のひらがなドリルでも「びょういん」と「びよういん」の文字の違いを学ぶことはなかったのだろうか…
番になれませんでした。

友情の延長線上にある関係や恋が好きな人におすすめ

直接的なネタバレはありませんが、踏み込んで語るためネタバレの設定をします。
友としての「好き」なのか、恋としての「好き」なのか、曖昧な関係を描いた青春物語の傑作です。
行き過ぎた友情の延長線上にある関係や恋が好きな人におすすめです。

両刀やらゲイがたくさんいて男同士の恋愛も問題がないなど、BLに都合がいい世界観の作品がたくさん出版される中、本作はマイノリティへの心の拒絶が残されており、生々しさが切なく歯がゆいです。

家が裕福で美人な彼女を持ち、就職も一流企業への内定が決まっている、まさに理想的な人生を送って来た攻めがひょんな事から受けに告白をされてしまいます。

人生で初めてぶつかった壁が「良い友人」だと思っていた男からの恋慕。
友情なのか恋愛なのかわからずとも、受のことを大切に思っている事だけは確かで、恋愛対象でないはずの男性に対しての想いや葛藤、これから先の人生への迷いが描かれていきます。

受けは生来のゲイであることに苦しみを抱えています。
昨今は多様性などと恋愛対象がノーマルでない事への理解を認めようと努力する社会になっていますが、心の内では隔たりがまだまだあります。
さらに社会に多様性が認められたとしても当事者が「自分は普通でない」と理解したときの苦しみがなくなるわけではありません。
ノーマルの相手が自分を愛してくれるようになるわけでもありません。

そんな心の孤独を抱く受けからの愛情を受け入れることができず、
だからと言って大切な相手からの感情を拒絶することもできす、どうする事もできない板挟み攻め。
そのあいまいな関係や、内に秘めた激情を丁寧に描いています。
攻めの葛藤にやきもきしながらも、受けへの確かな愛情を感じて萌えます!

受けを大切に思っているが、その「大切」という感情は今の自分の恵まれた人生を捨てられるほどのモノなのか?
攻めが本当に一番大切に思っているものは何なのか?
長い葛藤の先にたどり着いた答えが尊い…

尊すぎて「エッチシーン要らないんじゃないか」と思うぐらい、
攻めと受けの二人の曖昧な関係は思いやりと真心で出来ています。
あるならありがたくいただきますが、エロがなくても良いと感じるBLは珍しいです…。

一穂ミチ先生の比較的初期の作品ですが、登場する人物の職業や生活などのディテールが細かく、しっかり下調べを行ったであろう作品の土台と、
言葉にできないあいまいな感情をも表現する筆力はこの頃から健在です。
どこまでも青い夏の田舎の情景を想像しながらお楽しみ下さい。