前巻で晶の育ての親である祖父母に付き合っていることをカミングアウトしたあとの決着編。清水が何度も晶のスナップ写真を送ったことなどにより祖母のほうから会いたいと言ってきて付き合いを認めてくれた感じ。その後、両親の墓の前で指輪を交換して愛を誓います。
前巻で清水と晶が付き合っていたことにショックを受け、罵倒を浴びせてバックレていた新人君も屋台でバイトしているところを大地(清水の友達)に見つかって店に戻るように言われて、素直に戻ってきます。新人君は晶たちの独立した店についていくことに。かわりに元の店では大地が働き始めます。
独立した店でオープン前に開店祝いと二人の結婚式が行われました。
クライマックスが前巻で終わっていたので、なんとなくこちらはハピエン後の後日談を読んでる感覚でした。唯一のピンチが店に通り魔の強盗犯が来てナイフを突きつけられ金を出せと脅されるシーですが、新人君が犯人に抗おうとし、それをかばって清水が切りつけられます。犯人は掴まりましたが、怪我をした清水のことをそっちのけで新人君がかつて罵倒を浴びせたことを泣いて謝り、晶も彼を抱きしめて謝罪を受け入れているので、普通は清水のことを心配するほうが先じゃないかな?
メインカプより裕也×大地が気になっていたので、そっちは進展せずに終わってしまったことが残念でした。
好きなシリーズですが、今回はちょっとなーと思う部分が多かったです。
受けの晶が期間限定で派遣されていた店から新人君が異動してきたのですが、その新人君、晶のことを女性だと思っていたそうです。3カ月一緒に働いていてそれはないでしょと思ったのが一つ(晶は自分のこと俺と言ってるし)。他にも、新人君が先輩にタメ口であまりに失礼な態度で、その新人君のミスで客に迷惑をかけたときにも、攻めの清水が客にタメ口で謝っていたのが社会人としてありえないと思いました。普段の接客ならタメ口でいいとしても、もしかしたら数年がかりでケアが必要なほどの迷惑をかけたのだから、謝罪のときくらい敬語を使うのがけじめに思えます。
そして新人君が清水と晶が付き合っていること知ってショックを受け、二人を罵倒して店に出て来なくなります。傷心の中、清水と晶は晶の実家に行き、付き合っていることをカミングアウトします。子供の頃、厄除けのために晶に女の子の格好をさせていた祖母は、晶がゲイになったのは自分のせいだと思い込んで受け入れることができず、理解してもらえないまま東京に帰ることになりました。晶を慰める形で実家でセッするのですが、それはさすがに配慮に欠けているのではと思いました。いくら声を我慢したとしても振動などで気づかれる可能性はあるし、そうなると更に祖母の心を抉ることになるのだから、実家では祖母を気遣って自制して欲しかったです。
そんな感じでメインカプについてはモヤモヤ続きでしたが、おまけの後輩カプ(龍之介×翔太)の話で多少は萌えを補給できました。
バイターと呼ばれる吸血鬼と、そのバイターが好む血の持ち主であるネクターという特別な人の話。二人は幼馴染同士で、バイターであるアンナは子供の頃に幼馴染のみつるの血を舐めたいという欲求を自覚し、みつるがネクターだと大人たちから聞かされています。
みつるにバイター避けのお守りを渡して秘かに他のバイター達から守っていました。タイトルのスモーキーはタバコの煙でマーキングしていたから。
ネットサイトの記者であるみつるが、女性がバイターに殺されたらしい事件を取材していて、その流れで他のバイターに襲われることになります。アンナが助けて、アンナもバイターだったことが発覚します。
助けたあと、みつるの血を見たことでアンナの抑えが効かなくなり、血を吸うついでに一線を越えました(吸血鬼あるあるで血を吸われると催淫効果もあるってやつです)。
女性を殺したのは他の一族のバイターで、その犯人から、バイターとドナーには共生契約という言わば専属契約のような関係があることを聞かされて、みつるが希望し最後は共生契約をします。
みつるのほうは恋愛というより幼馴染の独占欲+吸血鬼の催淫効果で絆された感じでした。吸血衝動に駆られるような相手がずっと身近にいながら、手を出さずに秘かに守り続けてきたアンナには、誠実な愛を感じました。BLでは一番大事なところ(と私は思っている)の最初のエチが前戯の描写のみで事後に飛んでたので、端折られた感じで拍子抜けしたのがちょっと残念でした。
人が殺されるようなシリアスな部分もありますが、みつるが楽観的なのであまりシリアスさはなく、軽く読めます。
年下×年上の同棲カップル。二人はゲイバーで出会っていて、攻めは付き合いで入っただけのノンケでしたが、受けに誘われてワンナイトし、その日のうちに付き合う流れになります。
話は同棲して3年経ったところからスタート。
いわゆるマンネリ期で、仕事が忙しい攻めと記念日をちゃんと祝いたい受けですれ違い、受けに相談なしに攻めが仕事を転職することを決めていたことで、別れ話へと発展します。
別れても住む場所が見つかるまで同棲(同居?)を続けることになり、攻めがなるべく早く帰るようになって、食事をしたり動画配信を見たりしているうちに受けの中で別れたくないという気持ちが大きくなっていきます。
最後は攻めの職場に行ったことで転職というのが独立のことで、そのために遅番を引き受けていたことが判明し、別れたくないと素直に口にできました。
BL抜きで、わかるーと思う部分もあったし、好きならもう少し相手の立場に立って考えない?と思ってしまう部分も多かったです。
攻めの心変わりがあったわけではなく、仕事が忙しいことでのすれ違いで、受けが勝手に攻めも別れたがっていると思い込んでいることは最初からわかるので、無理に切なさを演出している感じになってしまっていたところが残念に思いました。
足場職人の攻め受けの話。
受けは父親が 足場施工会社を経営していて、自身も高卒後、そこで働いていて、今は職場長の立場(現場監督的な感じ?)。子供の頃から鳶職のお兄さんに憧れていて、中学生で恋愛対象が同性だと自覚します。その、受けの会社に攻めが転職してきたところからお話が始まります。
転職してきたのは攻めの希望らしく、受けに対して何やら含むところがありそうな態度なので、なんとなく、以前にどこかで出会っていて、受けに近づくために転職してきたのかな、という雰囲気です。
彼氏にフラれたばかりな上に、攻めの見た目がタイプだった受けは、髪に触れられたり、寝ている間に服をかけられたりしたことで、攻めのことを意識し始めます。
ただ、そこから先は関係が進展せず、攻めが転職したきた理由もわからないままに受けの過去に話が飛びます。個人的には過去の話にページを割きすぎだと思いました。全部で208ページということでしたが、109ページ目から以降が受けが中学生の頃の話で攻めは出てきません。
最初は、丁寧に描かれてるなーと思っていましたが、途中からまだ昔話終わらないの?と思ってイライラし始めて、せっかくのいいシーンも感動できずに終わってしまいました。過去話に入って以降、攻めは最後まで出てきませんでした。
208ページもページ数があるのだから、せめて攻めが転職してきた理由は明かした上で終わってほしかったです。
あと、攻めに彼女がいるのかって話題で、攻めはちゃんと「いないっすよ」と答えているのに職場の人も受けも攻めが彼女いると認識して話が進んでいるのも、作者都合に感じました。
続きは気になりますが、もし自分が余命半年でこの作品を読んで、続巻が出るのが半年以上先だったとしたら、買ったことを後悔していたと思います。
治水に興味を持つ受けと皇帝の攻めの話。古代中国風な世界観(あとがきにて攻めの父のモデルが光武帝とのこと)。
受けは治水の知識を買われて文官として採用され、同時に妹の身代わりとして後宮に入ります。その理由は、治水事業の必要性を感じていた皇帝が受けから治水の知識を得るため、ということになっていますが、攻めと受けはその前にも一度会っていて、皇太子時代に川から身投げした攻めを受けが助けたことで、攻めは受けのことをずっと探していて、恋愛的な意味でも執着していた、というのが真相でした。そのため、「行為の証拠を宦官が確かめるから」という建前で、夜の相手もさせます。
翌日に受けが尻を痛がっているシーンがあるのでてっきり最後までしたのかと思っていたら、二巻を読んで初めてまだ指しか挿れていなかったということを知りました。だとしたら、宦官に確かめさせるためにどんな証拠を残そうとしたのかが謎です。
皇太子が夜に皇宮を抜け出し、川に身投げしたのを受けが助けたのも、皇宮の警備どうなってるの?と思いましたし、当時なら明かりもなく真っ暗闇の中、川に落ちた人を助けるなんて普通の人間には到底無理な話に思えました。
治水工事のリーダーの青年が字が読めず、受けが本人に「字が読めぬのですか?」と尋ねたため、部下たちが「非礼ですぞ」と受けを責め、「私は人の気持ちがわからぬ」と受けが落ち込みますが、さすがに国の大事業をトップとして任される人間が字が読めないなんてことはありえないように思いますし、過去の文献を元に方針を話し合っているのだから、リーダーが字が読めず内容を理解していないのなら、それを確認することは当然ではないかと思いました。
皇帝である攻めの妃嬪が全く出てこないのも気になります。
そんな感じで、ぼかしたりはしょったりしている部分やストーリー都合も多いので、話が面白くてのめり込む、というよりも、細部が気になりながら読み進めた感じでした。治水が上手くいくかが気になるので、そこがわかるまでは追いかけようと思います。
古代中国風の世界観で治水に興味を持つ受けと皇帝の攻めの話の続編。
1巻で治水事業のために妹の身代わりとして後宮に入った受けが、受けに執着している皇帝の「決まりだから」的な言葉に騙されて夜の相手もしていましたが、まだ最後までしていなかったことが2巻で判明。まだ攻めの指しか受け入れたことのない受けは陛下を受け入れるべく閨事の勉強をします。ただ、いざそのときがきて、「臣下ですから陛下のお役に立ちたいのです」と言ってしまったがために、機嫌を損ねた陛下は「ならばいらぬ」と拒絶してしまいます。
関係がこじれたまま、治水事業のために受けは地方に調査に出かけます。治水事業のリーダーに陛下への気持ちを語り、それは恋だと言われたことで受けは恋心を自覚し、陛下から届いた文にも心を動かされて、都に帰ったのちに「陛下をお慕いしております」と思いを告げ、ようやく二人は結ばれます。
受けの告白を受けて皇帝も「お前の他には誰も望まぬ」と気持ちを伝えていますが、元々は治水事業のためと騙す形で受けを後宮に入れ、夜の相手もさせていたのに、受けに「臣下ですからお役に立ちたい」と言われたからと突き放すのは、執着が中途半端に思えました。
受けの心も欲しかったのであれば、先に自分の気持ちを伝えればよかったのではないかと思います。
1巻では他の妃嬪の存在も匂わせてあったのに今回もそこが完全にスルーされていて、モヤモヤが残りました。
むしろBL的なところでは、真単&端正の部下コンビのやりとりのほうが萌えました。
ちょっとだけSっ気のある攻めとちょっとだけMっ気のある受けのお話。
たまたま寮で二人が同室になり、受けが二段ベッドの下の段である攻めのベッドで道具を使って自慰をしていたところ、休講になって帰って来た攻めに見られてしまいます。この時点で受けは攻めに気がありますが、知られたのは特殊性癖のことだけで攻めへの気持ちには気づかれていません。
攻めは引かなかったばかりか、視姦プレイに付き合ってくれるようになります。プレイの後はすぐに部屋からいなくなる攻めが本当は我慢してつきあってくれているんだろうと受けは思っていて、「どう言えばおまえを傷つけずに済むのか、悩んだんだが」と攻めに話を切り出されて、ついにプレイにつきあえなくなったのだろうと思い込み、攻めの話を遮って「恋人ができそうなんだ」と返事をします。
実際は恋人はおらず、専門の出会いサイト知り合ったS気質の男性とホテルに行きますが、それ用の道具を目の当たりにして恐怖心のほうが勝り、シャツにパンツという姿でバッグを手にホテルを飛び出します。そのままの姿では帰れないため、攻めに電話して着替えを持ってきてもらうことになり、事情を説明するために攻めへの気持ちを告白し、実は攻めも同じ気持ちだったと聞かされます。
特殊性癖持ちの主人公の肩身の狭さや人に知られたらと臆病になる気持ちにはすごく切なさを感じましたが、元々ノンケで女子とつきあったこともある攻めが、同性の道具を使った自慰を目撃しSスイッチが入ってしまったところは、うまくいきすぎなように思いました。
第二章ではつきあってからの話が受け視点で綴られていますが、本文にも書いてあるように、「同じ道をぐるぐる回っている話」なので、できれば当て馬が出てくるなど別のパターンの話が読みたかったです。
誰に対しても面倒見のいい攻めも王子様キャラの受けも好感の持てるキャラでしたが、特殊性癖に関する話が大部分を占めているので、キャラに魅力を感じるエピソードは少なかったように思います。
攻めが偶然、受けの自慰を目撃することがなければ、受けに恋愛感情を抱くこともなかったように思えました。
あと、「どう言えばおまえを傷つけずに済むのか、悩んだんだが」という台詞は、告白しようとしている人の台詞としてはかなり不自然で、ちょっと無理があるように思いました。受けを勘違いさせるためのものだとすぐに予想もできるので、できれば読者も感情が揺さぶられるような形で勘違いさせてほしかったです。
β→αに変異したα×α→Ωに変異したΩのオメガバ―スの続編。
前巻で既にお付き合いが始まっているので、今回は結婚回といった感じでした。
強いαにこだわっているっぽい受けのお父さんに結婚の許しをもらいに行きます。お父さんは私塾をしていて、そこに通う子供たちも保護者も息子がαだと思ってるから、α扱いされてチヤホヤされてΩに変異していたことを言い出し辛くなります。攻めがお父さんと一緒にお弁当を作って子供たちと一緒にピクニックに行ったりしたおかげで親子の間の壁が薄れて、最後はΩに変異していたことも言い出せた感じでした。理解のあるお父さんなので、すぐに「今も昔も立派な自慢の息子」と言ってくれて受けの気持ちも軽くなります。
終始、「いい話」な雰囲気でしたが、感情移入されて泣くほどではなかったです。お父さんはΩの妻(受けの母親)を他のαに奪われた過去があり、「αの中でも勝ち負けが生まれる。負けてしまうとそれだけで価値がなくなってしまう」という考えの持ち主で、自虐を含んだ言葉だと思うのですが、それを子供たちにも言ってしまうところは教育者として嫌だなと思ってしまいました。突然変異後も自ら自分の居場所を作り出しそこで輝いている攻めと受けを見て、ヒエラルキーのトップに立つことだけが人の価値や強さじゃないってことを子供たちにも伝えてくれていたら、お父さんの印象がもっとよくなったように思います。
エモさとしても萌え的にも感情の起伏はなかったですが、ハピエン後の番外編としてはこんなもんかなと思います。
会話が足りない系の両片思いかと思ったら、攻めの方はかなり前から受けが自分に気があることに勘付いていたようなので、蓋を開けてみれば受けのこじらせ片思いなお話でした。
攻めの遠藤と受けの昴大は元々、同じヘアサロンに勤める同期でした。遠藤は大学を中退して美容学校に入ったので、昴大より二つ年上。
昴大は子供の頃、両親が不仲で、家庭をギスギスさせないために明るい道化を演じていたような気遣い屋。
一方の遠藤は美容師として腕がよく努力もしていますが、愛想はなく無口で、客や職場の先輩に対しても思ったことは歯に衣着せずに伝える、 昴大とは真逆のタイプ。
昴大の父親が亡くなり、急に仕事を休むことになった際、遠藤がお客さんを引き受けてくれて、普段と違って客の希望も聞いていたという話を聞き、 昴大は遠藤への恋心を自覚します。
その後、美容室を経営していた遠藤の母親が亡くなり、母親の美容室を継ぐためにサロンを辞めることになります。送別会の席で、不愛想な遠藤が一人で美容室をやっていけるのかという冗談から、その場のノリで昴大が遠藤の店で雇ってもらう話になり、 昴大の秘めた恋心を察している先輩の後押しなどもあり、昴大も都内のサロンを辞めて遠藤の地元についていくことになります。
遠藤には地元に家族ぐるみの付き合いの女性の幼馴染がいて、昴大は遠藤がその子と結婚するんだろうと思い込みますが、結果的に彼女が好きなのは昴大の方でした。その子に告白されたことをきっかけに誤解が解け、運転免許を持っていたのに遠藤に送ってもらうために免許を持っていないと嘘を吐いていたことを遠藤に知られてしまった弾みから、昴大が遠藤に告白し、実は遠藤も昴大のことがずっと好きで、かなり前から昴大の自分への気持ちにも気づいていた的なことを言われます。
無愛想で反感を買いやすい遠藤を陰日向にサポートし、地元について行って遠距離恋愛の恋人がいると嘘を吐いてまで傍で支えようとする昴大にはすごく切なさを感じましたが、告白されて、「告白はお前から、キスは俺から」的なことを言う遠藤の心情には頭を悩ませました。恋愛で手痛い経験をして臆病になっていたり、昴大に彼女がいる話を信じていたりしていたのならまだわかるのですが、両想いだと自覚していて、5年もの間、何のアプローチもせずに(地元について来たのも昴大から言い出したことなので)相手の告白を待ち続けるのは、よっぽどの草食系に思えます。それなのに両想いになった途端に性欲的なところではかなりがっつくので、誰コレ?な戸惑いが強かったです。
東京の人気サロンの中堅どころといった安定したポジションを捨ててまで地元についてきてくれて、緩衝材として不愛想な自分をサポートして店を盛り上げてくれていることに感謝しているのなら、もっと早くに気のあるそぶりを見せて昴大を幸せにしてあげてほしかったです。
昴大がすごく健気で一途で好きなキャラだったので、遠藤のほうももう少し誠実さや一途さが垣間見えるキャラならもっと好きな話になったかなとちょっと残念に思いました。