上巻でキスしたところで終わっていて、続きが気になりながらの下巻。
今度は受けが熱を出し、救護室に運ばれます。
その後、攻めの生い立ちが明らかになります。
攻めは大手建設会社の社長の婚外子として生まれて、養育費は母親に使われ、兄が大学の学費を出してくれたという苦労人でした。
既に社長を退いて会長になっている攻めの父親が社長時代に粉飾決算や耐震偽装などの不正をやっていたため、社長である兄と協力して不正を明らかにし、その後は会社を辞めるつもりでした。
受けの見舞いに行った際、そのことを伝え、好きだと告白し、最後まではしませんが性的な関係を持ちます。
受けを巻き込まないために一旦は別れを告げますが、社長のほうが一枚上手で、攻めが会社の不正告発の記者会見を開くのに合わせて社長も動画をアップして耐震偽装を明らかにし、辞任を発表します。
結果的に攻めが事前に動いていて、記者会見の二日後に週刊誌が耐震工事については何年も前から社長が保障を行っていたという記事を出したことで、会長だけが逮捕されて社長は残留することになったようです。
最後は攻めは会社をやめて建設会社を立ち上げ、3年後に弁護士兼税理士として受けも合流することになるのですが、その年の税理士試験や司法試験の予備試験には間に合わなかっただろうから、翌年以降受験し、順調に本試験にも受かったとしても、実務経験や司法修習期間が必要なことを考えると、いくら天才でも3年で両方の資格を取るのは体力的に無理ではないかと思いました。
あと、耐震偽装の公表が記者会見ではなく動画配信というのも、どうかと思います。
当て馬らしい当て馬も出て来ず、恋愛面では物足りなかったですが、骨太のストーリーで攻め受け両方に兄弟の絆があり、BL抜きで読み応えのあるお話でした。
下巻まで読んだ上で書いているので、もしかしたら下巻の内容も含んでいるかもしれません。
攻め34才、受け20才の年齢差のある二人の話。受けが16才の頃に攻めの会社の重役相手に援交しようとし、攻めがそれを阻止した時からの付き合い。受けは清掃員として攻めの会社に潜入し、時給一万円でスパイ活動をするようになります。会社に害を成す人たちを排除するのが目的のようです。
受けは中卒ですが、カメラアイやフラッシュ暗算ができる天才です。援交しようとしていた理由も、弁護士だった父が亡くなり、弟とともに叔父の家に引き取られましたが、叔父からの虐待に遭っていたため、二人で叔父の家を出るための金稼ぎが目的でした。このときに攻めが弁護士を紹介して亡くなった父の遺産を子供らが相続できるようにし、叔父の家を出る手助けをしてくれたので、恩義があります。
最後のほうは常務の娘との見合いを壊してほしいとの、攻めの個人的な依頼でした。この女性、推し活で月に50万もつぎ込んだりしていて、お金目的の結婚でした。それを暴露したところ女性がキレて受けに氷水をぶっかけます。かばった攻めがそれを浴びて風邪を引いてしまいました。見舞いにきた受けに「むしろお前が結婚してくれない?」と攻めが軽口を叩き、キレた受けが告白してキスをしたところで終わっていました。
気になる終わり方で続きが楽しみです。
職場の同僚で経理と営業の二人。プライベートでも仲が良く、営業の神田が経理の上野の家に入り浸っています。上野はゲイであることを職場でも知られていて、神田も知っていますが、神田は過去に上野から「タイプじゃないから」と言われています。
早い段階で上野が本当は神田のことが好きで、過去に恋愛で失敗したからそうならないように線引きしていることはわかります。
神田のほうは、父親にお金を無心されているところを上野に見られていて、そのあと気を使って一緒にいてくれたりしたことで、上野に気を許すようになったようです。
上野は神田の居場所を作るために友達としての距離を保とうとしますが、最後は神田が泣いて告白して、上野が陥落します。
前情報なしに読んでいて、神田が攻めかなと思っていたら、逆でした。
上野は神田と友達以上の関係になる気はなく、マッチングアプリで出会った人を家に招いたりしていました。
個人的には、NLでもBLでも、好きな相手がいながら別の相手と体の関係になるのがあまり好きではないのと、神田が上野がゲイだと知っているのに彼の家で真っ裸でウロウロしたりするところは好きになれませんでした。
それ以外は、二人とも好感のもてるキャラでお互いに惹かれた理由にも躊躇する理由にも納得でき、読みごたえがあり面白かったです。
Ω嫌いのαとβのふりをしている優性Ωのお話。
優性Ωというものに馴染みがなくて、定義がよくわかりませんが、こちらの受けはΩだけどかなり優秀で運動神経がよく、フェロモン臭のないΩでした。
攻めがΩ嫌いなのは、子供の頃に自分を助けて命を落としたΩがいて、その子が自分にとっては唯一の番だと思い込んでいるからです。ちなみに、その攻めを助けたΩというのは受けのことで、攻めには死んだことにしてあるけど実は生きていた、という設定でした。
大人になった受けは兄弟から命を狙われる攻めを助けるために攻めのボディガード兼秘書になり、性奴隷のようにも扱われます。
受けが命懸けで自分を守ってくれていて、死んだと思っていた契りの相手だと知ってからは攻めは心を入れ替えて受けのことを大事にしますが、最初の扱いが酷すぎるし、契りの相手を思っているスタンスを取りながら手当たり次第βを手酷く抱いていて、ちょっと反省して溺愛したくらいでは到底挽回できないレベルでした。この人と結ばれてよかった、というふうにはとても思えませんでした。
受けの部下×攻めの弟のスピンオフのカップルのほうが好きです。
隣人のサラリーマンに一目惚れした大学生の話。
受けの結哉がかなり鈍感で控えめな性格ですが、高校時代に付き合った相手とそれなりに経験を積んでいて、酔うと自分から襲うような積極性はあります。
高校時代の部活の先輩が 結哉の家の近くに所属している劇団の稽古場があるとかで、結哉の家に入り浸っています。隣人への結哉の片思いに気づき、アンケートに協力してもらう名目で親しくなればいい、と嘘のアンケートを作成してくれます。
結哉は先輩の指示通りにアンケートを依頼しに行き、一度では終わらなかったので家に来てもらって食事を振る舞ったりして、距離が縮まります。
その後、先輩がお隣さんに「自分たちは付き合っている」と嘘を吐き、先輩が女の子といちゃいちゃしているところを見かけたお隣さんが、「あんな奴やめたほうがいい」と言い、結哉が「じゃあ和久井さんがもらってくれるの?」という売り言葉に買い言葉から酒の勢いもあり性的な関係になります。
その後、結哉は先輩の家に逃げ込みますが、結哉が先輩に忘れ物を届けに来た際に偶然再会し、先輩と付き合っているというのは誤解で、以前からお隣さんに片思いしていてあのアンケートも嘘だったことを告白し、二人は恋人同士になります。
コミカルな話でさくさく読めますが、上手く行き過ぎに思えました。
スペック高くて性格がよい上に彼女もいなくて、隣人の同性から片思いされたらあっさり陥落してしまう攻めには、こんな人いるかなーと半信半疑な感じでしたし、鈍感な受けにもちょいちょいモヤっとするところがあり、キャラ萌えは薄かったです。
というのも、嘘のアンケートがかなり長いし、一部、下ネタ寄りなんですよね。「他人に知られなければやってみたいプレイは以下のうちどれですか?SM、スカトロ、野外…」といった感じで。
挨拶くらいしかしたことのない隣人からそんなアンケートを頼まれても、隣人だから無碍に断ることもできないだろうことを考えると、いくら先輩が考えたものとはいえ、相手と親しくなりたいがためにそんなアンケートを頼む図々しさは好きになれませんでした。
それ以外にも、先輩と付き合っていると誤解されているにも関わらず、お隣さんと一夜を過ごした翌日から先輩の家に泊まり込んだり、お付き合いが始まった後もお隣さんと二人きりになりたくないからという理由で先輩を家に泊めたりしていて、恋愛対象が同性だと知られているのに家に同性を泊めることについて、付き合っている相手に悪いとか、相手が嫌だと思うかも、という配慮は沸かないのだろうかと思い、モヤっとしてしまいました。
最後まで楽しく読めたので、その点は満足度が高かったです。