「ゼイティーム」って何?
読み始めても特に説明が出てこなかったので調べてみたら、聖書に「オリーブ山(ハル・ハ=ゼイティーム)」が出てくるとのこと。
キリスト教の素養がないので、ピンとこなかったけれど、この山でのイエス・キリストやダビデ王の色々な逸話があり、聖書を知っている人にとっては「祈り」「希望」「贖い」etc. 様々なイメージを想起させる場所なんですね。
この作品の舞台は19世紀のイタリアで、オリーブ畑が広がる丘陵上の村。
アミントレ神父はルチャーノの学費のために金持ちに身体を許したものの、次第に悦楽に身を委ねてゆく。その上、マッティオとカーラを守れず、殺人まで犯してしまい、「私はどこで間違ってしまったのか」と嘆く姿が痛ましい。
そしてその姿は、オリーブ山に登って自分自身の罪深さを嘆いたダビデ王の姿と重なる。
なんとか火事場から逃れた神父とルチャーノ。
役人が「二人もこの状況からすると... まず生きてはいないだろう」
というので、ヨッシャー、これで自由に! と思ったら
「.......... 捜索を続ける」って。
捜索打ち切りじゃないの? 追っかけてくるの?
二人が無事にトスカーナに着けたとしても、売り飛ばされたマッティオたちが幸せに暮らしているとも思えず......。
と、重い結末でしたが、暗い話が好きなので、圷先生のほかの作品も読んでみようと思います。
草間先生の線が好きです。
線に太い細いがあって、なんというか手塚治虫とか昭和の漫画家さんの絵柄のように、線自体が饒舌で。
背景の柱や天井、建物の線も、定規で引いたような直線でなく、よく見ると微妙に曲がった手描きの線。人物の顔も変わったところに影があったりして、画面全体がとても有機的で魅力があります。
今回は葬儀屋さんと理学療法士さんのお話。それぞれのお仕事あるあるトリビアも盛り込まれていて面白かったです。
久慈は「女の人としか付き合ったことない」といいながら、見切り発車w的にグイグイくるのが素敵。
二人とも、人との距離の取り方や考え方や発言が普通の人とはちょっとズレていて、会話がほのぼのと楽しかったです。
こん炉先生の作品は、以前に読んだ『遺骨の旅路』が好きだったので、この作品も読んでみました。
『遺骨の旅路』が超シリアスだったので、『良縁と悪食』のシュールなコメディにびっくりしました。
小田島の。スパダリらしく余裕がありつつも鬼気迫る執着に惚れ惚れしました。
そして設定では奈緒也は冴えない陰キャのオタクということになっていて、たしかにグルグルマイナス思考ではあるけれど、「悪食」だなんてとんでもない、可愛いじゃないですか。
ちょっとしたすれ違いや勘違いを交えつつも、テンポよくお話が進み、小田島の思惑通りにからめとられていく奈緒也。
最後の方で、小田島が彼に執着するようになった過去のエピソードが出てきてなるほど。
あーもぅ、二人でお幸せに! っていう素敵な作品でした。
貴重な特典冊子が、電子で発売されるのに感謝。
本編で無事結ばれた二人がハネムーンの計画を立てるうちに......、というお話で、尉✕奈緒也にハマった読者にとっては短いながらも嬉しい1話です。
奈緒也ほどグルグルしませんが、長く旅行を続けるうちにお互い疲れてきて不機嫌になったら、と心配する気持ちは共感できますね。
BLではないのですが、ちょっと前に『うどんの国の金色蹴鞠』を読んで、中にでてきた名所や「おいり」や「しょうゆ豆」などの伝統的なものに心惹かれました。
すぐに香川に旅行、というわけにはいきませんが、名産品はアンテナショップに行ったりネットでポチったりして味わって、ちょっぴりだけど世界が広がりました。
小冊子ではカップルが温泉に行ってラブラブ、というのが多いけれど、遠くへ旅行に行って名所や特産品を紹介してくれたら、地方応援にもなっていいなと思います。
二人がどこへ行くことになったのか、ほかの単行本の後ろとかにちょっと、でもいいので、つづきが読めたら嬉しいな。
「喪服の人妻」と言えば、AVの人妻ものの中でも圧倒的な人気ジャンルですよね、多分。その上、白い柔肌に赤い緊縛。
本編を読んでいて、番外編のこの表紙を見たら、もう買うしかないでしょう(厳密には表紙は喪服でなく墨色の和服だったと読んでから気づきましたが)。
口元に手を当てて必死に声を抑える根津を、「......」「ちら......」と見てから喘ぐ瀬尾の狡猾さと艶めかしさ!
初心な根津を手球に取って煽りまくっては乱れる奥さんの痴態を堪能させていただきました。
和服に詳しくはないんですが、惜しむらくは紋付きの紋が肩の方にいっちゃってパッツンパツンに見えて(わざと?)シリアスな場面なのに笑いそうになってしまったのと、緊縛が少なかったこと。
あられもなく全開にするよりも、紐一本でもかかっていて隠される方が、エロさが増すと思うんですよね(変態ですみません)。
冬雅先生の圧倒的な画力で、新しい作品が読めるのを楽しみにしています。
シーモアのサイトを開いたら、「あなたにオススメ!」であがっていた作品の中にこの本があり、耽美な表紙に惹かれてススメられるがままに読んでみました。
なんか淫靡そうな本をオススメされて小っ恥ずかしいわと思いながらも、読んでみて大当たり!
冬雅先生は初めてで、素敵な作品を教えてくれたオススメ機能に感謝です。
ツッコミどころは色々。
雪で閉じ込められるくらいの極寒で、タイル貼りの広い浴室に足つきのバスタブは追い焚き機能もなさそうなのに、ずっと洗い場にいて寒くないんかい、とか。
二人の関係を盛り上げていくための濃厚接触が必要とはいえ、銭湯の三助さん的「お背中流しましょうか」は、とか。
60年代のアメリカの教会なら電話はありそうなのに、捜査で来ていて何日も泊まりこんでも電話借りて署に連絡する様子もなく。報連相せんで社会人としてどうなの、とか。
そして障害があるとはいえ何かラブラブなんですけど、その当時のニューヨークにCapital punishment はなかったんかい、と。
AIに聞いてみたら、「1960年代のニューヨーク州には死刑制度がありましたが、この時期はアメリカ全体で死刑執行が減少していた時代でもあります。1967年から1972年にかけて、アメリカでは死刑執行の自主的モラトリアムが実施され、ニューヨーク州を含む多くの州で死刑の適用が停止されました」
とのことだったので、切迫感がないのか。
なるほど、冬雅先生もちゃんと時代背景を調べて描いていらっしゃるんでしょうね。
などなど、ところどころひっかかりながらも、これは濃厚なエロと、二人の魂の救済を描く漫画だから「こまけぇことはいいんだよ」と、数年後の長髪になった麗しいセオドアを見ながらウットリした素敵な漫画でした。
前作の『青と碧』が最高だったので、このスピンオフ作品も読んでみることにしました。
吉田と飯田が互いに相手の言葉尻を鋭く捉えながら、慎重に距離感をはかりながら次第に距離を詰めていく様子は楽しかったですね。グイグイ読ませていく力はすごかった。
ただ、かなり理屈っぽいので一度で意味がわからず二度読み三度読みすることもあり(私の頭が悪いんでしょう)、ちょっと読んでいてしんどかったです。
それから吉田の八重歯が気になりすぎて......w
今作もかなりレベルが高いとは思うのですが、とにかく前作の青の赤ちゃんの破壊力がありすぎて、それと比べると甘さ・楽しさが、個人的には物足りない感じがしてしまいました。
とはいえ、前作でも「かなりいい奴」と思っていた飯田に、こんな過去があったけど、こんな未来が待っていたなんて、素敵なお話でした。