恋人に浮気されたあげく勝手に車を使われて、事故って車まで廃車にされた気の毒な攻めとアパートの隣室に住む動画配信者の受けの話。攻めはゲイで受けはノンケ。
最初は騒音の苦情を言いに攻めが隣室を訪ねたのですが、売り言葉に買い言葉でキスをします。そのキスに骨抜きにされた受けが動画のネタとして経験値を上げるためぐいぐい行くけど、攻めのほうは「ノンケは相手にしない」とガードが堅い。最後は配信中にファンのコメントを鵜呑みにして危険なアプリを入れたり、身バレしそうになる受けを見かねて攻めが陥落した感じでした。
お隣さんで苦情を言いに行ったら…というストーリーはこれまでにも何度か読んだことがあり、個人的には絵に惹かれたわけでもないですが、続きを読ませる牽引力はあったように思います。
鴨ネギを前にして自制する攻めがよかったです。
待望の3巻。感想を書くまでに何度読み返したかわかりません。それほど神回でした。
冒頭、大知君が本郷さんのことを役職呼びではなく「本郷さん」呼びになっています。早速盛り上がる女性陣ww
乙さんの妄想でしたが、ベッドシーン(事後的な)ありがとうございます!!(合掌)
そして年が明け、仕事始めの日に登場した本郷さんが髪を切っていて、イケメンぶりが十割増しになっていました(二度目の合掌)。
仕事のほうでは、事務方の係長が育休に入ったため、大型新人の鳴戸君の仕事が増え、ミスした鳴戸君に大知君がフォローしたことで、懐かれるようになります(本郷さんは面白くなさそうw)。鳴戸君がミスなしで仕事をできるようになり、久々に本郷さんに甘えられるようになったところで、「充電!」と後ろから抱きつく大知君…(三度目の合掌&感涙)
その後、所長が行けなくなったため宿泊券を譲ってもらう形で二人で温泉旅行に行くことになります(温泉エチの妄想、乙さん、ありがとうございますw)。大知君と話をしている女子二人組に「うちのがご迷惑をお掛けしてるんじゃ」と声をかける本郷さん、どう見ても、牽制する彼氏の顔してました(かっこよ……)
しかしながら、この旅行中、実は本郷さんが離婚していて、バツイチだったことが発覚します。
離婚したのは転勤する直前で、そこ一年くらいの話のようです。離婚の原因ははっきりは語られませんが、元妻にはつき合っている人がいるので、相手の浮気か心変わりかな、という雰囲気ではありました。前の職場の同僚が来て、そんな話をしているところを大知君が立ち聞きします。大知君のことを話す本郷さんの台詞や表情にぐっと来て、涙しました。
そんな中、乙さんが札幌に転勤になります。送別会で本郷さんに眼鏡を外した顔を見たいとお願いする乙さん、最後の最後までGJ!でした。そして眼鏡を外した本郷さんにスタンディングオベーション!!
最後は少し時間が経ったところの鳴戸君としずくちゃんの結婚式での話でした。指輪を落とした本郷さんに乙さんが戸惑いの表情を見せ、本郷さんは「結婚はしてないから」という意味深な返事をします。乙さん同様、「って、なにーーーー!?」という気分でエンディングを迎えました。
本郷さんと大知君の関係については、最後まではっきりとは語られませんでしたが、たくさんの匂わせを散りばめていただき、妄想で補完することができました。がっつりBLじゃなくてもこれだけ萌えられるんだなーと目から鱗でした。とにかく、女性キャラも含めて、出てくるキャラ全員が可愛くて優しい人達ばかりで、癒されました。
感情が大きくなりすぎて大宇宙思念体になる乙さんに激同したくなる、大好きな作品です。
1巻が面白かったのでこちらも拝読しましたが、1巻に比べると満足感が薄く、評価を一つ下げました。
お付き合いが始まった二人。なるべく長く一緒にいられるように攻めが受けの近所への引っ越しを考えたところ、たまたま隣室が空いたため、隣室へ引っ越してきます(この辺はちょっとご都合主義すぎる)。
しかし、ただ甘いだけの展開にはならず、攻め以上のライバルとなる大型新人が登場します。1位にこだわる受けは彼に負けまいと今まで以上にワーカーホリックになり体調を崩します。
そのタイミングで1位にこだわる原因となった受けの兄が帰国し、負けず嫌いの理由が明かされるのですが。とにかくこのお兄さんが文武両道に優秀で、模試で全国1位になる上にマラソン大会でも1位を取るような超人で、両親が1位以外には価値がないと考える人たちだったため、両親に褒めてもらうために1位にこだわるようになったようです。
理由としては納得しましたが、お兄さんがあまりに超人だし、1位になった兄だけ褒めて2位以下の弟は価値がないように扱う両親もあまりに極端で、しかも回想シーンでしか出てこず、母親に至っては顔のパーツすら描かれていないモブ状態のため、受けのキャラ設定のためだけに存在しているように思えて、物語の中で生きている人としてのリアリティに欠けました。
攻めが受けに寄り添っていたことで、3位になっても子供の頃のように自分を価値のない存在に思わずにすんだ、というのが話の主旨ですが、家族構成はもう少し普通寄りのほうが感情移入できたように思えます。
最後、攻めが旅行に誘い、浴衣でエチするのはよかったです。
1巻を読んでハマりそうと思いましたが、2巻で評価が急落しました。
攻めのアレックスがバイトで遠方に行くことになり、その間、受けのコールはアレックスの友達のブラッドを家に泊めます。家に泊めたこと自体はアレックスに事後承諾を得ています。
ブラッドは実はコールに気が合ったようです。酔った勢いでキスをし、フェラをされます。無理やりではなく、酒の勢いという感じでした。
酔った勢いで、というのはまだ理解できますが、翌日にブラッドと顔を合わせ、「俺は酔ってなかったけど」と言われたコールは「オレを好きになってくれた人なんて初めてだ」と独り言を言います。
コールの自己肯定感が低いところは嫌いじゃなかったですが、あれだけアレックスも言葉や態度で気持ちを伝えていたのに、そんなふうに思っていたのは酷すぎます。
それなのに、アレックスと再会したら、我慢できずにトイレでがっつくし、「待つ」と言ったブラッドのことも「この先どうなるかわからない」からとキープしておこうとします。
コールのことが本気で嫌いになったし、「お前と別れたくない」と言ったアレックスが可哀相で、絶対にもっと他にいい人いるよーと思ってしまいました。
顔と体が好みで自分を求めてくれる人なら誰でもいいのかと思ってしまいます。
結局、酔った勢いでブラッドとキスしたことだけはアレックスに話して(フェラされたことは伏せてキスしたことのみ)、アレックスはブラッドと喧嘩して、手荒にコールを抱いて、なんとなく仲直りした感じになりました。
自己肯定感の低いキャラが自分への自信のなさから寄せられる愛情を信じられないという心情は理解できますが、相手に対しては一途であってほしいと思います。
気持ちの上では「趣味じゃない」寄りですが、アレックスのことは最後まで好感をもてたので、評価は「中立」にします。3巻には手を出さず、今巻で離脱することにしました。
前巻に続き、今回もメインはリディルとグシオンの冒険譚でした。そこに、リディルの兄である第二王子ステラディアースとその傍使えの騎士ゼプト、リディルとグシオンの養子であるヤエルが絡んできます。
兄のステラディアースは生まれつき体が病弱すぎて、第一王子のロシェレディアの作った繭の中でしか生きられません。その繭が壊れかかっていて、永久に壊れない繭を作るためには『神の心臓』なるものが必要でした。また、刺客に狙われたグシオンが呪いを復活させる呪いをかけられて、満月のときにだけ化け物になる呪いが復活したため、『神の心臓』の呪いの力によりそれを抑えつける必要も生じます。そのため、グシオンとリディル、ゼプトの三人で『神の心臓』があるとされる虹の谷に向かいました。グシオンが呪いを受けた際に梟のキュリもそれを受けていて、復活した過去の呪いによりキュリとヤエルの中身が入れ替わっていたため、実際はキュリの体を借りてヤエルも同行していたことになります。
「四人分の勇気を見せてみよ」というのが、神様が提示した、石を持ち帰るための条件だったので、結果的にヤエルがいて助かります。
四人がそれぞれ勇気を見せたため、無事に神の許しを得て『神の心臓』を持ち帰ることができました。繭ではなく、ステラディアースの体を作ったので、彼は部屋の外にも出られるようになります。
今回もハラハラドキドキが連続する展開でお話は面白く読ませていただきましたが、ステラディアースとゼプトの関係は恋愛よりも主従の絆という感じで、グシオンとリディルにも、特に恋愛面での波乱はなかったので、萌えや切なさとしては少し物足りなかったです。
グシオンが刺客に襲われたのも、国を乱して戦を仕掛けようという感じでもなさそうで、グシオンの呪いを復活させるためだけに刺客がポッと出た感じだったので、ストーリー都合に思えてしまいました。
キュリが過去に入れ替わりの呪いをかけられていて、それが復活したせいでヤエルと入れ替わったという推測も、それを疑うエピソードやどうやってその呪いが解かれたのかは書いてなかったので、唐突に思えました。
個人的には、中身がキュリのヤエルに側近コンビのイドとカルカが振り回されているのが、今回の一番の萌えポイントでした。
モテメンの攻めを好きな受けが攻めのこと好きすぎて闇落ちしてしまうお話。闇落ち系は苦手ですが、お勧めで見かけてなんとなく読み始めたら続きが気になって止まらなくなりました。
受けがかなり卑屈で、酔った勢いで隣に住む片思いの相手に告白し、そのときはスルーされたけど、翌日、「なんで告白したのに無視するんだよ」と泣いて迫って、「だったらヤッてみる?」という軽いノリで一夜を共にします。受けは初めてでしたが、道具を使って自慰をしていたので、最後までできました。
セッの相性がよく、攻めが受けのオッドアイを気に入ったことで、付き合う流れになります。
つきあうまではとんとん拍子にいくのですが、そこからの展開が面白かったです。受けは攻めと付き合いはじめたことを周囲に隠そうとし、付き合うといっても、デートをするでもなく体の関係だけ。付き合っている意味がないと言われて不安になり、「俺に何かしてほしいことないの?」と訊かれて、どうしてそういう思考回路になったのかは理解不能ですが、「俺以外のやつと付き合ってもいいよ」と言ってしまいます。
これに対して攻めは拗ねたふりをし、旅先で会った女の子が一緒に飲んだ流れで二人が泊まっていた部屋で一夜を明かし、受けは寝落ちしていたことから、「昨日無事にヤりました」という女の子の言葉を真に受けて浮気を疑います。
あげく、攻めに銃を突きつけます(弾は入っていなかったっぽい)。攻めのことを信用できなくて、このままではいつか本当に撃ってしまいそうという理由で自分から別れを切り出し、攻めもそれを了承して引っ越ししました。
それからしばらくして旅先で会った女の子と再会し、あのとき二人はヤッてなかったことを聞かされて、攻めがちゃんと自分のことを好きだったことを実感します。
受けは攻めに会いに行き、今度は自分の頭に銃を突きつけ、攻めに止められます。「お前か自分に銃を向ける以外、お前を手に入れる方法がわからない」と泣き崩れる受けに心を動かされる形で、元サヤに戻りました。
受けが卑屈すぎて、意地悪したくなる攻めの気持ちもわかるし、意地悪を真に受けて不安になる受けが可愛くて、更に深みにハマってしまうのもすごく共感できました。
好き嫌いは分かれそうですが、個人的には中毒性のあるお話でした。
前巻に続き読み応えのあるスケールの大きな話でした。
前巻で受けのリディルは傷の瘢痕で途切れていた魔法円に傷をつけることで魔法円を繋ぎ、一時的に魔力を取り戻すができましたが、傷が完全に治癒すれば、また魔力が無くなります。そんな中、リディルの兄の嫁ぎ先であるアイデースに負けたはずのガルイエトがイルジャーナに攻めてきます。ガルイエトの狙いは大魔法使いとして名前が知れ渡り始めたリディルでした。イルジャーナの王でリディルの伴侶であるグシオンはリディルを助け重傷を負います。リディルも落馬して子供の頃以降の記憶を失くしてしまいました。
魔力を失いかけているリディルに王を癒す力はなく、このままでは国がガルイエトに滅ぼされてしまう状況の中、重傷を負いながら自分を気遣う王の姿を見て、彼を助け記憶を取り戻すために、リディルは単身で城を抜け出し、アイデースに向かいます。
アイデースに行けば兄が魔法円を完成してくれる目算でしたが、アイデースは雪と氷に閉ざされていて、普通の人なら到底城まで辿り着けない状態でした。
呪いに蝕まれた体を治してもらうためにアイデース王妃に会いに行こうとしていた大魔法使いと遭遇し、旅の途中で魔法円を完成させてもらったことで、リディルの魔力が回復し、「飛び地」というワープ機能で城に辿り着くことができました。
しかし、城の周囲も城の中も生き物は全て氷で固められて時間が止まっている状態でした。それはガルイエトに勝った先勝祝いの宴で、王妃を狙ってガルイエトの刺客が放った呪いの矢が、王妃をかばったアイデース王を射抜き、その人の持つ力を増幅させる呪いを持った矢であったため、炎の使い手である王の力が暴走しないよう、王妃が全てを凍らせたのでした。
いずれ王妃が魔力を使い果たせば、伴侶を失った王は無尽蔵に力を使うことはできないため、民への被害を最小限に食い止められると咄嗟に判断したようです。
リディルが大魔法使いになっていたため、リディルの力を借りて氷を維持しながら王に刺さったままの呪いの矢を抜くことができ、王の呪いも、国中の氷も解けました。
アイデースが援軍を出してくれて、「飛び地」で陥落間近のイルジャーナに駆けつけ、ガルイエト軍を追い払うことができ、グシオンの傷を治すこともできました。
記憶を失くしてもグシオンとリディルの間には確固たる絆があり、恋愛面では大きな揺らぎはなかったので、どちらかというと冒険ファンタジーの色合いが強かったです。互いを思い合う気持ちは、そこかしこから伝わってきました。
息をつかせぬ展開で、映像を思い浮かべながらストーリーも楽しむことができました。
ただ、一つだけ気になったのが、戦が落ち着き、王家の親戚筋である小国から養子をもらったことです。四歳の皇子で、赤ん坊の頃から養子に迎えることを検討していたようですが、その子の境遇については詳しくは語られていません。グシオンのことを「父王様」、リディルのことを「お母様」と呼ばせているので、自分たちの子どもとして育てているようです。
「母親が産後すぐに亡くなり、父からも疎まれている」などの事情があれば、四歳の子を引き取って育てるのもわかりますが、もし、実の両親が生きていて、両親から引き離して連れてきたのなら、実親も子も可哀相だなと思いました。自分に置き換えて考えると、母親が実は男で、両親とは血の繋がりがなかったと大きくなってから知らされるのは、かなりショックです。
グシオンもリディルも、結果的に幸せになったとは言え、王族に生まれてきただけで生まれながらに重すぎる責任を背負わされてきた人達なので、王族でもない四歳の子に同じ重荷を背負わせることにはもう少し葛藤があってほしかったです。
個人的に、今回での一番の萌えポイントは、側近コンビのイドとカルカが、口では喧嘩しながらも阿吽の呼吸で動き、お互いを信頼し合っているところでした。
同じ会社の営業でライバル同士。
攻めも受けも仕事ができますが、受けはかなり負けず嫌いで努力家です。人間関係を円滑にするために下調べを欠かしません。
受けが元取引相手からゲイ専門の出会い系アプリのサクラを頼まれて、登録したところ、好きなものが似ていて話が合う相手が一人いて、実際に会う流れになります。
待ち合わせ場所に現れたのが、同僚でライバルである攻めでした。
攻めはゲイですが、これまで誰にも本気になったことがなく、受けはノンケ。攻めがゲイだったことを知ってしまい、サクラとしてアプリに登録していたことを言えずに体の関係になります。
相性がよく、受けもその関係にハマることになります。仕事でも新規プロジェクトを二人で任され、相性の良さを実感します。
攻めが受けに他にも相手がいるかどうかを気にするようになり、受けも本当のことを言ってないことに罪悪感を感じてサクラをやめたいと依頼元に電話していたところ、その会話を攻めに聞かれてしまいます。
受けは安易に同性同士の関係に踏み込んで開発されてハマったと言ったら軽蔑されると思って、取引相手に頼まれて仕事の一環として行為込みのサクラをやっていた、と嘘をつき、攻めとの関係も一旦解消されます。
その後、受けが仕事でトラブルがあり忙しくなった際に攻めが手伝ってくれて、受けを励ますために、以前、受けが笑った猫の絵(画伯的なw)を書類につけて渡してくれたので、それをきっかけに攻めへの気持ちを自覚し、「仕事の一環でサクラをしていた」というのは嘘だったことを伝え、攻めのことが好きだから軽蔑されるのが怖くて言えなかったと告白します。
その告白を聞いて攻めも受けへの恋愛感情を自覚し、気持ちを通じ合わせることができました。
感情の起伏に乏しい攻めも負けず嫌いの受けも好きなキャラで、キャラのバランスが絶妙でした。絵も綺麗で、ストーリーも楽しむことができました。
ただ、開発されてハマったと言ったら軽蔑されると思って嘘をついたことについては、異性愛者だったのに仕事の一環で男に抱かれていると知られたほうが軽蔑されるのではないかと思ったので、そこだけが腑に落ちなかったです。
なんとなくでキスをしてしまう攻めとクールな受けの再会もの。
百貨店で働く攻めが高校時代につるんでいた受けと再会したところから話がはじまります。
高校時代は恋愛という自覚はありませんでしたが、綺麗系で物静かな受けに対し居心地のよさを感じていて、「なんとなく」でキスするようになり、受けも嫌がらないので、「キスをする友達」のような関係になっていました。高校卒業と同時に攻めが地元を離れて、自然と疎遠になります。大学に入り飲み会の流れで女の子に誘われてエッチしたことで、高校時代の受けへの気持ちが恋愛感情だったと自覚しました。
再会後、すぐに二人で飲みに行って、そのまま受けの家に行き、受けのほうから目を瞑ってきたので、流れでキスをします。ただ、このときは、「なんとなくでキスすんのってかなり特殊だからやめたほうがいいんじゃない」と受けに言われて、高校時代のやり直しをしようという話になります。
水族館デートをして昔に戻った感覚になりますが、受けの家に帰ってから寝ぼけてベロチューしてしまい、そのまま先に進もうとして理性を取り戻します。
気まずい雰囲気になり、その日は攻めが家に帰りました。それからしばらくしてその時の話をしようとしたところ、夏祭りに誘われ、話はその時に、と言われます。
夏祭りの帰りに攻めのほうから告白し、受けも以前から攻めのことが好きだったことを伝えて、その日のうちに結ばれました。
好きな系統のイラストで二人とも可愛いキャラでしたが、個人的には、「なんとなく」で同性同士キスをする関係というのが理解しづらく、どちらも感情や態度が熱量に欠ける感じがして、あまり気持ちが盛り上がる場面がないまま読み終えてしまいました。
想像力に乏しくファンタジーは苦手なほうですが、こちらは最初からお話の世界にすっと入り込めて読みやすかったです。
武力は持たないが魔力の力で栄える国に生まれた王子と、隣国の武強国に生まれ父の業による呪いを背負わされた王の話。攻めの父は戦で死んでいて、攻めが隣国の若い王です。
武強国は自力では魔力を精製できないため、受けの国から王女を王妃に迎え、魔力を供給してもらうことで王の力を維持してきました。元々、隣国である攻めの国とは、第一王女を嫁がせる盟約が交わされていましたが、更に強大な国が攻め入って来たため、第一王女をそちらに差し出さざるをえなくなりました。第二王女は体が弱いため、王子である受けが攻めの国に嫁ぐことが子供の頃から決まっていました。王位は弟王子が継ぐことになっています。ちなみに後でわかりますが、実は上の二人も男で、四人兄弟でした。受けが隣国に嫁ぐことになったのは、攻めと年齢が近いからでもありますが、子どもの頃に怪我をして背中の魔法円に傷を負ったせいで、魔力がほとんどないことも理由の一つでした。
受けは自分の命をもって父王と国民の命を救ってもらうよう嘆願するつもりで嫁ぎますが、実は梟を使って長年偵察されていて(その目に映るものを水鏡に映すことができる)、受けが王子であることも知られていました。
攻めのほうにも事情があり、父王が隣国を滅ぼした際に降伏した相手を惨殺したことで恨みを買い、王子である攻めに呪いがかけられていて、子が生まれればその子にも呪いが移るため、子を成すつもりはなかったようです。よって、嫁いできたのが王子であることは了承していたようですが、王子であっても契れば魔力を得られると期待していたようです。
受けに魔力がほとんどないことを聞かされても、攻めはそれもまた呪いのせいだろうと受け入れ、盟約通り受けを王妃とし、優しく接します。
攻めの呪いというのは、満月を見ると化け物に変身し人としての自我を失ってしまうというもので、それを知った隣国が攻め入って来て、魔法で月の満ち欠けをコントロールし、王を化け物化させます。それを見た受けは変身が解けた王にも怯えてしまい、王もそれに気づいて受けを避けるようになります。
偵察のためのトカゲ(梟と同じで見た者を水鏡に送ることができる)が城内で見つかったことで、王の呪いや受けに魔力がないことを隣国に知られていたことが発覚します。王の呪いの空白部分を埋めるための呪具を壊すために、隣国の城に奇襲をかけることになり、受けも同行します。以前、隣国が攻め入ってきた際に受けは自ら自身の魔法円を刀で傷つけ、傷によって魔法円が正しい形になったため、魔力が増加していました。受けが近くにいると、攻めはその魔力を遠隔で吸収することができ、属性の雷の力を発揮することができます。
再び魔法で満月が現れ、王が化け物化しそうになりますが、その前に城内に侵入した受けが呪具を真っ二つにして、王の呪いは解けました。
身代わりで嫁ぐ話は受けが親から虐げられていたり、嫁ぎ先で無体を働かれたりして不憫なことが多く苦手でしたが、こちらは家族も城内の人達も皆、王子を大切に思っていて、王子も、民を守るという覚悟をもって嫁いできたところがよかったです。受けの、王妃としてなにもできないことへの辛さや、王のために生きたいと思う気持ちに心を揺さぶられました。
親の業を背負わされながら、国を守るために戦の前線に立ち、王子の魔力がないとわかってからも常に誠実であり続けた攻めも、とても魅力的なキャラでした。
話としては一冊できれいにまとまっていましたが、続巻もあるようなので読んでみたいと思います。