2023年刊。
いや~、待っていた甲斐があった、1巻から10年もの間があいたものの続編を出していただいた事に感謝します。
全くの無自覚、しかしくっつく前から新婚臭半端なかったとはいえ、昴之と史央の進展をきちんと確認できたのは良かった。
個人的には観察眼鋭い最強もっふんぬいぐるみ・たろうさんと再会できたのが一番嬉しかったりする(笑)
とはいえ、昴之ってなんで過去に女性関係との付き合い(結婚)につまずいたんだっけ?って忘れてしまって1巻も再読したけれど、この手の事情は匂わせで読み手にお察し下さいって雰囲気ではあったかな。
昴之も史央も、お互い好きって意識が芽生えた事に辛抱できず、これ以上のすれ違いを食い止めたい気持ちの強さで占められていた。
史央ってば男の子なのに新妻らしすぎるのだけど、オカンの域にまでグレードアップしているのにも笑った。
これからも万年初々しさを漂わせていて欲しい二人だけど、昴之は洗濯ものの出し方にずっと小言を言われっぱなしなんだろうな(笑)
2013年刊、ようやく発売された2巻と一緒にこちらも再読。
初っぱなから(当初から)史央に洗濯ものを出すのに表向きで!!って怒られている昴之には笑った。
いつ読んでもこの可愛さに頬が緩んでしまう。
昴之の兄と史央の母親が結婚した関係で叔父・甥となった二人だが、独身貴族を謳歌して家事・自炊スキルゼロの昴之に全くの遠慮がない史央。
昴之相手にコロコロ表情が変わる史央が楽しいし、始終コミカルで見ていて飽きない。
日々の会話はコントだし、その手の意識が全くないのに新婚ホヤホヤなカップルに見られているという非情に珍しいお二人さんだ。
史央の弟・千裕(長身イケメンでクール)も、兄からの尽きない昴之ばなしをノロケとして受け止めているし。
更にスゴいのが特大のいぬのぬいぐるみ・たろうさん。
話の合間に"たろうさんが見てる"的なエピソードがいくつか盛り込まれているのだけど、もふもふされながらも二人への観察眼が鋭すぎるのだ。
たろうさん、もしかして自分が知る限りの最強のモブキャラかも知れない。
2021年刊。
う~ん、海外の王族攻めが日本人青年を見初める展開って好きなシチュエーションのはずなのにな。
どうもキラキラした雰囲気が噛み合わず王道のラグジュアリーBLを楽しめなかった。
大抵は王族貴族攻めだと俺様系だったり受けが常識的な健気系だったりするが、この話では攻め・ジェフリーが健気なスパダリ、受け・春輝がおおらかとガサツ紙一重な庶民派って印象で終わってしまった。
口説いてくる相手がVIPクラスの男だろうが動じる事ない春輝の態度は大したものだが。
しかし、全部ジェフリーの奢りだからと遠慮なく飲み食いしたり、その時の様子を友人とサシで飲んでいる時に酒の肴のようにガハハと話題にしているのにはドン引きした。
ジェフリーはムードもデリカシーも無い春輝を見て、物怖じせず裏表がないと感動していたけれど、ポジティブな見方が出来ているのはむしろ彼自身のほうなのだが。
あと、ジェフリーと春輝にはどちらも母親が正妻ではなく、二人いる義兄とも折り合いが良くないという共通点がある。
ジェフリーの義兄達についてはじっくり時間をかけた結果、お互いが過去に至らなかった点を反省したうえで無事に歩み寄ったのを見届けられたのが良かった。
一方、春輝のほうは義兄も母親も何か変だよ?って印象が拭えなかった。
父親が他所で愛人と義弟を囲ったのを快く思っていないにしても、その恨みがまだ元気な春輝母に向かず、春輝だけが被るのは気の毒だ。
春輝は財界パーティーで箏の発表の度に女装を強要されている状況を快く受け止めていないのに、箏の流派(片山流)の存続と活躍の場の為に、家元の叔母も母親もわざとスルーしているのかしらね?
春輝側の親族間はどうも相変わらずっぽくて、攻め側と受け側の周囲の人間性の落差が気になった。
2015年刊。
ラスベガス・カジノビジネスで成功を納めている世界的経営者の御曹司攻め×ギャンブルを毛嫌いしている国家公務員の堅物美人受け。
日本からカジノ招致目的で訪れている視察団の一人である十樹(とおき)は、偶然出逢ったカジノのディーラー・顕成(けんせい)に心奪われ、何かにつけて彼を思い出す。
それは相手の顕成も同じで、初対面からの十樹へのアプローチは口説きが甘ったるく押しが強い。
短期間で距離を縮めようとする中、途中であらぬ誤解が生じるが、巻き込まれたトラブルが上手く解決したうえで意地を張っていた十樹が告白、めでたしめでたしといった流れだ。
エッチシーンは多めで、十樹に思いがけないスパイの疑いが掛かっての取り調べエッチなんてのもある。
話全体は甘々なのでサクサク読めたが、もの足りない点もあったかな。
ギャンブルを毛嫌いする十樹の考え方の軟化よりも、とにかく顕成の華やかな描写が目立った。
容姿の端麗さ、父親の元でホテル・ゴールドで総支配人を務めつつディーラーとしての腕も超一流、またラスベガスの影・悪い噂を払拭したいと父親と共に頑張る姿はまるで王子さまのようだった。
一方、そんな彼に見初められた十樹だが、顔立ちが整っているとはいってもか細い容姿にメガネというキャラがか弱い女子のようだ。
慣れないラスベガスの地とはいえ、何かと顕成に手助けしてもらわないとならない描写が歯痒かったかな。
十樹には父親がギャンブルにのめり込んだ末に母親に借金を肩代わりさせた過去の怒りがある故に、嫌悪感の軟化は厳しいのは仕方がないかもね。
ただ、カジノゲームでの場面での、彼の名前にちなんでのルーレットの"黒・10"ジンクスは結構洒落ているなと思った。
2016年刊。
伏見パパは本来の探偵稼業(浮気調査や人捜し)に加えて、便利屋っぽい仕事も快く請け負っているらしい。
どうやらペット探しの依頼がよく舞い込むようだが、その捜索率がべらぼうに高いし、他の依頼も途切れずに生活できているとなると腕は確かなのだろう。
そんな男やもめな伏見・健父子の元に、人捜しの依頼を持ち込んだ彰人(アッキー)。
彰人が二人の食事の世話を申し出たきっかけから、家事能力の高さを発揮して面倒を見るうちに上手い具合に家族として打ち解けていく様子にはほっこりする。
猫探しも手伝ったりする中、しっかり者で賢い健とも早々に仲良くなるし、銀次様(ボス猫)、野菜王子(商店街の八百屋さん)とも息が合っていい味出している。
それにしても、人探しの依頼が解決したからもう距離を置かなきゃと思っていた彰人に対して、
「もう来ないんだ…食生活もインスタントに戻れるかな…」(寂しいからこれからも変わらず来て欲しいな)って父子の息の合ったダメ出しには笑ってしまった。
伏見父子ってばアッキーのおかん的優しさに始終メロメロだもんな(笑)
アッキーの世話焼きな性格を『ウザい』と煙たがる男もいれば、伏見父子のように『助かる、ありがとう』と喜ぶ人もいる。
伏見の「世の中需要と供給があるのだからアッキーはそのままでいい」って慰めにはぐっとくるのだ。
伏見ってば彰人には誠実な性格に魅了されるし健には自慢の父ちゃんだと常々誇りに思っもらっているし、マジで素敵すぎる。
アットホームBLとして大いに癒やされた一冊だった。
2016年刊。
受けキャラがホストってあらすじと、陵さんの挿絵につられて『読みたい本』にチェックしてあった一冊。
無愛想なパティシエ・葛原(くずはら)に人当たりの良い話術を指導してやって欲しいとの頼まれ事を快諾したアパレルショップ店員の颯季(さつき)。
日頃から女性客を惹き付けている颯季だが、指導者として見込まれただけあって言葉にしての教え方が大いに参考になる。
ファッションに無頓着な葛原のイメチェンも兼ねて幾つか店を回る辺りも含めて、何だか初心者カップルのデート指南っぽいところもある。
そんなふうにして優しく教えてもらう颯季に対して、葛原が好意を抱く訳だ。
颯季に関してはアパレルショップ店員らしいソツのなさや仕事ぶりが上手く書かれていて、”元ホスト”と言わない限り分からないであろう爽やかさだ。
最初、葛原に対しては年上の余裕でリードしていたのに、颯季も彼に惚れた弱みで気弱な一面も出てくる。
しかし、颯季の元彼だった男年上男性がちょこっと出てくるのは蛇足気味だったかも。
彼の登場で葛原に揺さぶりをかけなくとも、彼らしい古風な男気できっちり颯季を射止められたからね。
葛原のイメチェンぶりを通して、攻めキャラの"好きな人ができた事によって垢抜けた"感がほっこりした話だった。
パティシエの葛原が常に颯季好みのスイーツを作るばかりでなく、当の二人も甘々なカップルになって良き♡
2008年7月に刊行された3冊のうちの一冊。
毎月の新刊小説数が低迷している現在からすると、当時は恵まれていた時代だったのが伺える。
ちなみに同月刊行3冊の中ではこの話の堂島が一番情のある男だった。
まだ19歳の主人公・瑞希は母親を亡くして途方に暮れていたところに、彼女の昔の日記を見つけたきっかけで父親かも知れない?堂島を探そうと思いつく。
しかし、会いに行った早々予期しないヤバい状況に巻き込まれて雲隠れする羽目になるというサスペンス展開は面白かった。
最初だけは瑞希にブチ切れての強引な性行為だが、密かに練っていた計画をぶち壊されてとっさに逃げる羽目になったあの状況では…ねぇ。
ただ、読んで早々堂島は父親じゃない!!って直感のおかげで実の父子かもという禁忌感は湧かなかったけれどね。
『周囲に人辺りが良くて若い頃から羨望の眼差しを集めていた』という堂島は正に"イケおじ"で、DV攻めがデフォな水原さん作品(初期)で読めたのが意外だった。
回数を重ねてのセックスも無理な強制じゃないせいか、爛れたひとときといった風体なのに何故だか安心して読める(ん(-_-)?)
お互いが伏せていた言えない秘密って空気もあっさり目だ。
堂島も過去に対して既に吹っ切れた感があるし、瑞希も状況が落ち着けば不憫ながらも芯の強い一面は伺える。
歳の差設定も活きていて、事実が明らかになる経緯のバランスもいいと思う。
しかし安心するのはまだ早い、きっちりと地雷も埋め込まれている。
この二人、さすがにヤクザを敵に回しただけあってクライマックスの修羅場にはガッツリモブ姦に遭っている。
まだ水原さん作品初期のバイオレンスラブは建材なので、痛いのが苦手な人はご注意を。
2008年7月に刊行された3冊のうちの一冊。
この物語は水原さんのもう一つの得意分野でもある芸術系の話だ。
花鳥画を描く為に広大な庭で様々な鳥を飼っているって設定もあって鳥類の蘊蓄も満載だ。
が、個人的なアピールポイントはこの話の攻めキャラの年齢が62歳だという点だと思う。
ネタばれを出すとこの話、画家の卵である主人公が庇護者の元で方向性の違いに気付いた末に愛情を受け入れる事も叶わず、外の世界の新たな可能性に惹かれて飛び立つ…といったものだ。
だから攻めキャラが二人いる。
一人は主人公・紗希を自身の元に囲っている日本画家界の重鎮・合田柳燕氏、もう一人は紗希と同じ芸大の出身者で空間プロデューサーとして成功を収めている今村だ。
表紙の攻めは今村だが、紗希の中で大部分を占めるのは内弟子として内外を支えて閨を共にしている柳燕氏との生活だし、話の中身も彼の存在感が大きい。
だから、この話のメインの攻めキャラは柳燕氏じゃね?と思うのだが、どうでしょうかね。
但し、親子以上に歳が離れているし歴代のDV攻めとは違う変態全開でドン引きものだが。
何せ柳燕氏が紗希に向ける愛情ってのは囲い込みと束縛だからなぁ。
おまけに性欲も衰え知らずで縄・張り型・乳首の金輪にこだわるねちっこさに、紗希が悶えている卑猥な姿も絵に描いて残すというムッツリぶり。
(今時のスマホ写真とかじゃないんだ…否、感心するのソコじゃないってば)
そんな折り、二人の前に現れた新鋭の空間デザイナーの今村の気さくさ、感性の鋭さ、物怖じしないおおらかさにたちまちに惹かれる紗希を留める事は出来なかった。
紗希も柳燕氏を尊敬しきっていたのに、関係を昇華出来なかったのが別れの原因…
…歳の離れた伴侶というには抵抗が強いだろうが、愛情が芽生える可能性なきにしもあらずなんて思ってしまったのだけどね。
この話って世界的に名を馳せる画家達の愛人エピソードを彷彿とさせるものがあるね。
きっと彼女達と別れた巨匠の晩年を参考に起こした内容かも知れない気もするんですがどうでしょうかね。
2008年7月に刊行された3冊のうちの一冊。
う~ん…
BLを読んだという満足感とは程遠い。
異母兄弟の攻め受けって格好のシチュエーションだというのに、肝心の愼一郎と志乃に対してタブー萌えって気持ちが湧かなかった。
何だか『愛人の子を受け入れざるを得ない心の闇』って切り口で感じ入るところが大きかったかな。
作中では政治家の妻として表向き賢くとも、愛人の子(受け・志乃)には正直に葛藤や憎しみをぶつける昭江(攻め・愼一郎の母)の苦悩に惹かれた。
決して意地悪な継母なんかじゃなかったし、彼女なりに精一杯だったと伺える。
一番アカンのは当人は責任を負っているつもりでいて、現実は亡くなった愛人の子の面倒を本妻に丸投げしているのに気付かない父親だけどさ。
何だか愼一郎も父親そっくりに、政治家として表向きは家庭を持ちつつ、志乃とは離れたくないから愛人に据えるって人生を歩みそうな気がする。
水原さん作品のDV・陵辱攻めって、大抵荒んだ生い立ちや辛辣な過去が背景にあるパターンが多いが、愼一郎の場合は親の期待通りに跡を継ぐ重荷はあっても愛情も境遇も恵まれている。
そんな歴代の不遇攻め達と比べると彼の不満自体"生ぬるい”気がしてならない。
志乃を無理矢理押し倒したのも不満の吐け口って意味合いが大きいし、互いに高校生ってのもあっていじめを彷彿させられて嫌な気分だった。
志乃にしか見せない愼一郎の我儘、身勝手さも子供っぽいし、志乃を手離したくない為の周囲への言い分や囲い込み方も姑息で苛ついた。
ただ、志乃が愛人の子として始終萎縮しつつもひ弱一辺倒じゃなかったのは救いだった。
昭江の憎しみ・やり切れなさを受け止めた姿勢は、彼自身にはどうしようもないのに健気さを感じた。
とかく気弱な性格で義兄と分かっていても愼一郎に絆されていく様子には不安があったが、彼の反対を振り切って一定期間離れて暮らす選択にはほっとしたのに…
自分はBL読んでいても稀に『いっその事くっつかなくてもいいのに』と思ってしまう事があるが、久々にそんな気分になってしまった。
くっつきたいならば、愼一郎のほうが激変するであろう境遇を受け止める覚悟が必要だと思うのだけどな。
1999年刊、電子書籍にて購入。
挿絵も見たかったが無かったのは残念。
ルビー文庫でも2000年以前ともなってくると電子書籍化されていない作品もある状況からすれば、読めるだけでも御の字なのかな。
『カラダ貸します』『妄根』『怨念の彼方』短編3本が収録されている。
タイトルに"霊感探偵"とある通り、霊感が強すぎる主人公・道与(みちのぶ)が助手兼恋人の健(*注・きちんとタケルと呼んでやって下さい)との蜜月を満喫したい為に、独流で数多の浄霊をこなす日々が書かれている。
…つーか、隙あらばエッチばかりしているバカップルだけど。
何せ道与は計り知れない霊力を持つが、絶○レベルのスキモノでもあるのだ。
エッチシーンが多い割にはパンパンと済ませるばかりで、ねっとりさはない。
道与が心底惚れ抜いている健はというと、いくら17歳といっても素が相当トロい性格なのだが、異様に霊に取り憑かれやすい体質が逆に彼のサポートになっている。
ホント言うと活躍しているのは、色事大好きの花魁・浮舟大夫と禁欲的すぎる武士・弦之進といった健のご先祖さまでもある守護霊だけどね。
始終霊に憑かれているせいで健自身が"人形"状態だったのが残念かな。
ただ、バブル期を経た平成前期の作品だというのに、それ以前の昭和感を強く感じた。
イマドキのノリとは違うけれど、ドタバタしていても結構面白かったしキャラクターもいい味出しているので、昔の作品ならではの懐かしさはあった。