表紙とタイトルと帯とあらすじを見ても特に魅かれなかったのですが(ヒドイ、失礼な)、試し読みでおもしろそうだったのと、子供たちがかわいくて買う気になりました。
ほんとにチビっ子2人がなんともかわいくて、それだけでもよかったと思うくらい。
サンタの国からソリの不具合で生徒のピーター、トーマスと共に地上に落ちてきた発情期のトナカイ、アクセルは、やもめの長池機長宅に居候させてもらうことになります。
長池氏に誘いをかけるのですが、“鋼鉄のノンケ”なのでまったく気がついてもらえません。
その後アクセルは長池氏をサンタ候補にスカウトしてアカデミーに連れていきます。
二人のちょっとズレたやり取りや、トーマスとピーターのコンビ、長池氏曰く「今日は前髪どうしますか」とか言いそうな、サンタコスプレみたいな格好のアカデミーのイケメン校長、現サンタと専属トナカイのイェス、他のサンタ候補と担当トナカイなど、楽しく読めて、キラッキラな絵も美しく、ひざポンッの感動するセリフもありました。
終盤、お互い想いを認め合ってからはガラッと変わってエロいです。いきなり手首まで入っててびっくり。さすがトナカイ。
修正も白線が1本だけで、よく他の作品で真っ白でひどいというのを見聞きしてたので、これ、いいの?って思っちゃいました。
アクセルはトナカイ姿はありません。ずっと人間です。
口絵がエロいです。
やっぱりチビちゃんたちがかわいいのが一番だったなー♪
ここんとこシリアスでないお話が続いているかわい先生ですが、これはその中でも楽しく読めるものでした。
受けの柳井に辛い過去があったりしますが、あまり深くは触れず、終始沖と柳井の甘くかわいらしいやり取りで進みます。
一人称は沖が「私」柳井は「僕」で、言葉遣いも行動もエッチもジェントリーです。大人の甘さを楽しめました。
最後の最後に、“オオカミの言い分“の末國先生が一瞬、カメオ出演しています。二人に絡んでいませんしお話も関連していないので、“オオカミの言い分”を読んでいれば「あら、こんなところに突然末國先生が」とクスッとするくらいです。かわい先生の遊び心が感じられました(^^)
後半は絵がいっこもありません。
愛憎の因縁ある男女をそれぞれ前世に持つ洲脇義国と有田英一。
輪廻転生、生まれ変わり、前世という設定ですが、それについて語るものではないしオカルトめいてもいません。
普通の大学生のちょっと普通じゃないお話ですが。
洲脇は自分の中に宮澤という前世がいることをわかっています。対話もできて体を貸すことも出来ます。
英一の前世は、宮澤が一方的に恋い焦がれる友人の恋人の文(あや)ですがその存在はまったく知りません。
洲脇は前世宮澤の強い未練に振り回され、やがては宮澤と自分の精神が同化したように栄一に執着し、英一はさらわれるように洲脇のもとへ連れて行かれ、家からも籍を抜かれてしまい洲脇と共にいるしかなくなってしまいます。
その一連が、『恋愛時間』で兄が同性に好かれることに怯えていた詳しい理由です。
前世とは知らず文の人生を夢に見て苦しむ英一ですが、文が死ぬ間際、宮澤に対し少しだけ愛情があったことを思い出したのが救いではありました。
英一はその少しの愛情をよすがに洲脇を受け入れます。のち、英一は、文の夢を洲脇に話しますが、洲脇は自分が宮澤だったことはうちあけず、ただ謝ることしかできません。
洲脇が宮澤だと知ったら英一はどうしたでしょうか。そこまでは書かれていません。憎むのか、許すのか。答えはもう英一のみぞ知る、でいいです。
そして、『eternal』で突然登場して去って行った感のある船橋助教授。
この船橋助教授と、有田兄弟の余命わずかな叔父さん・和久の高校時代の関わりを書いたものが、同時収録の『F』です。
英一も洲脇も出てきませんが、あとがきによれば、書いたはいいもののどこにも行き場のなかったお話で、有田の系列ということでここにもぐりこませたのだそうです。
『恋愛時間』で兄有田に、弟のことはそのままにしておいてやれと言ったことや、洲脇を恋人だと紹介した英一を自然に認めてあげたことの背景がわかります。
でも叔父さんはノーマルで、船橋と恋人だったというわけではありません。むしろそれほど親しくはなかったのにお互い30年以上経ってもいつも頭の隅に存在を意識して、人生にも影響をうけたのではと思えるぐらい印象強い高校時代の1年足らずの出来事です。
叔父さんは最期、船橋に「お前が好きだよ」と言います。船橋の答えはありません。
このあとに『eternal』を読み返すと、「好きだということに気づけないということは不幸なことだろうか」と言った栄一の言葉を深く考えてしまいます。
叔父さんの魂もどこかで生まれ変わっていつか船橋の答えを聞くでしょうか。
いろいろ考えて悲しくて泣けてきます。
どれもはっきりと結果のない、こちらが考えこんでしまうような終わり方で、しばらく抜け出せませんでした。
スーツの蓮池さん(受け)はアッチの人で、市役所に勤めていましたが関係を持った上司の家庭を乱してしまい、左遷の形で役所の管理する公園事務所に異動して来ます。
公園の植物の世話をしている嘱託職員の平岸くん(攻め)は、異動の理由もわからない、いつも無表情でスーツのまま草むしりをするような蓮池さんが気になってだんだん好きになり、話しかけたりお茶に誘ったり一緒に帰ったりと近づこうとします。
蓮池さんもそんな平岸くんに心を開いてゆき、めでたくお付き合いの運びとなるわけです。
絵もきれいで、表情もすごくいい。蓮池さんのうっすら笑顔や心情を打ち明ける場面や、ただ抱きしめるだけの場面にドキドキします。
描き下ろしは、平岸くんちにお泊まりした蓮池さんが、自分のオールバック用のワックスを忘れて借りますが固まらず、「一緒に住んでたらそんなこともないのにな」とさりげなくプロポーズ!イヤ〜(≧∇≦)蓮池さんたらー!
いつもきっちりオールバックがラフに前髪下ろしてるのはいいですねぇ。
平岸くんは、キャッスルマンゴーの若い頃の十亀さんと万くんをmixした感じ。
同録の「白紙」「紙風」は、書けなくなった作家がどこかの島に逃避して、そこで出会った作家志望の少年の原稿を見てあげているうちに気持ちが救われていくというようなどこかスピリチュアルなところもあるお話です。
エッチはなく(表題作もほぼ無い)、事件が起こったりもしませんが(台風はあった)、短くてもしっかり読めて大満足。
そして、蓮池さんはmy好きなリーマン顔上位に躍り出ました!
語シスコさん、初めて読みました。
あらすじを読んだ時は「カリスマ語」を操る「シスコ」さんなのかと思っていました。
おもしろかったー。
絵もオシャレでカッコいい。読み心地さわやか。
4人のゲイ友達のそれぞれの恋愛事情が1話ずつになってます。
重くはないけど、でも薄っぺらくなく、笑えるところもあって、各話ごと短くてもしっかり読めました。
4人のうち、琢磨と康平が大学からの友人で、一番遊んでる風な弁護士の琢磨が、実は学生時代から康平をずっと想い続けているという、一途でけなげなのでした。
続けて読み返しても飽きません。楽しい。
エロスもふんだんでございます。
シスコさんの他の作品も読んでみたくなりました。
カバー下には本編とあまり関連がなさそうな傑作クロスワードパズルがあります。
帯に、〝カタリンがこれから描くらしい〟〝おもしろいに違いない〟描き下ろしペーパー応募付きです。
妹さんが同人誌(小説)を作っていて、そこにイラストを描いてあげているそうです。