「交渉人は休めない」+100冊記念別冊のセット本です。
久しぶりに読めて嬉しい交渉人…本編も楽しくて面白かったですし、
別冊の書き下ろし短編で「夏の塩/夏の子供」の久留米×魚住のその後が描かれていたのも
個人的には涙が出るほど嬉しかった…買って良かった!!と思いました。
本編は皆さんが書いて下さってるので、あえて別冊に重点をおいてレビューします。
◆【本編】◆
「~愛される」までで大きなヤマを越えてきた兵頭&芽吹とゆかいな仲間達。
ヤマは越えてるので今までのようなディープな深刻さはなく、
その後の彼らを描いた番外編的な雰囲気。エンタメ度が高く、安心して楽しく読めます。
なかなか甘々バカップルには落ち着けない兵頭&芽吹は、物語の随所でちまちまと痴話喧嘩。
でもいつの間にか水に流してたり、しょっちゅう膝枕したりされたりしてるらしかったりwと
なんだかんだで幸せそうなバカップル…というよりもう夫婦w
二人ともここまで頑張ってきて良かったね…とじんわりしました。
胸にジンとくる場面、ふと笑ってしまうような日常は勿論健在で、
いつものメンツが生き生きとそこに存在してる。読んでいてすごく幸せになれる一冊でした。
…幸せなんだけど、ふっと芽吹の闇の深さが垣間見える無人島の場面、好きだなあ。
兵頭の想いの深さも伝わってきて、ぞくぞくしました。
◆【別冊】◆
200Pとけっこうなボリューム。まず過去作品の挿絵を担当された絵師さんたちの寄稿が半分。
残り90ページ余が書き下ろしの短編です。
絵師さん達の寄稿は、人によっては短編漫画数ページだったりして思ったより大分豪華…!
物語のその後や印象的な場面を漫画にされている方もいらして、
微笑ましかったりグっときたり…。特にヨネダコウさんの「聖夜」短編は秀逸。
「吾妻×伊万里」「普通のひと」の短編漫画も嬉しかった!おばかで可愛かった~~
そして楽しみにしていた書き下ろし短編は、「魚住くんシリーズ(夏の塩/夏の子供)」「犬ほど素敵な商売はない」「Love&Trust」シリーズ、計三作品から4カプが登場。
彼ら全員がちゃんと歳をとっていて、現代に生きていて、
同じ場所で息をしている…というなんとも粋な演出。
(久留米がスマホ使ってる!とか、いちいち感慨深い…)
本編『交渉人は休めない』と舞台がリンクしてるので、本編読了後に読むことをおすすめします。
4カプ登場ですが、メインは久留米×魚住のお話。
魚住くんシリーズの大ファンとしては、これが本当に嬉しかった。
特別ラブラブイチャイチャや濡れ場はないのですが、
これが読みたかったんだよ~~と嬉しくて涙ぐんでしまった。
あのシリーズの終わり方は、秀逸だったし、あれが一番いい形なのだと思っているけれど、
でも大好きな作品だけにやっぱり寂しいし、ちょっと久留米が切ない…
と感じてもいたので、これを読めて本当に良かった。
人によっては蛇足と感じることもあるかもしれませんが、
12年後のお話としてこれが読めたこと、私はとても幸せでした。
他のカプはゲスト的な登場なので、
2位・3位カプに期待されてる方はちょっと物足りないかも。
それでも、その後の幸せな様子が垣間見えて微笑ましかったです。
切ない、シリアスなイメージが強い凪良ゆうさんですが、
こちらはドタバタ系ラブコメ。
デビュー作の「花嫁はマリッジブルー」に近いテイストです。
金持ち×庶民、世間知らずのお貴族様…というベタな設定に、
ちょっと前の少女漫画みたいなドタバタ展開。お姫様のように美しい受。
言ってみれば一昔前のBLっぽい設定です。
ベタベタなの嫌いじゃないよ!という方は、楽しく読めると思います。
「花嫁~」もそうでしたが、
ちょっと食傷気味になるくらいのドタバタぶりのわりに、
切ないシーンはきっちり読ませるあたりはさすが凪良さん。
「お姫様のように育てられた」という受ですが、
おっとりと世間知らずではあっても
よくあるセレブキャラのように我が儘で金を湯水のように使う…なんてことはなく、
格式の高い家の子としてきちんと躾はされているタイプ。
読み進めるほどに素直さや賢さ、芯の強さが見えてくるので、鼻につきません。
特に自分の辛さを相手に押しつけまい、見せるまいと振る舞う場面は
凛として切なく、外見に反した男らしさが伝わってきてとても良かった。
じゃあなんで高評価つけないかというと、
「そこまでドタバタさせなくてもいいんじゃない…?」と感じてしまったから。
これはもう単に好みの問題かもしれませんが、
キャラ設定がぶっ飛んでるからって、文章までそんなにぶっ飛ばなくても…よくない?
って思ってしまうんですよね…。終始、テンションが、高い。
日常を丁寧に自然に描ける作家さんだと思うので、コメディでももうちょっとこう、
日常的な、共感しやすい範囲でドタバタしてくれたらもっといいな、と。
あえて展開もベタベタにしてるのかなあと思うんですが、
いつももっと意外な設定や展開を見せてくれるだけに…何故?と思っちゃう。
花時雨が良いキャラなので萌評価と迷いましたが、
「突飛なキャラを扱いつつ、いつもの凪良節」というのも読んでみたい…
という期待も込めて中立です。
人情派のノンケ攻×トンチンカンなゲイ受。
正反対な二人のやり取りに思わずふっと笑ってしまう。
ノンケの外村が次第に碓氷に惹かれ始め、
だんだんと暴走気味になっていく過程が楽しい。
冷静だった碓氷の感情が波立ってきて、
そのことに自分で戸惑う様子が本当に可愛い。
小さなキュン!がたくさん積み重ねられていて、
それぞれの恋心が育っていく過程をじっくり楽しめます。
ちなみに初めて読んだ砂原作品がこの本で、
クセがなく読みやすい文章、感情移入しやすいキャラと丁寧な心理描写に、
久々に安心してハマれそうな作家さんに出会った!と思った記憶があります。
(以下ちょいネタバレ)
個人的に、高架下の長屋住まいという外村家の描写が、すごく魅力的に感じました。
(単に高架下とか貧乏萌えの気があるからかもしれませんが…)
ちょっと不便で貧しいけれど温かい家から、
外村の人柄や度量の深さが伝わってくる気がします。
小さなことですが、二人の名前がすごくしっくり来てたのも良かった。
そのせいかお互いの下の名前を呼ぶシーン、妙にどきどきしました。
碓氷が「たいち」とたどたどしく言うのが可愛くて、読みながら足をジタバタ。
唯一気になったのは、タイトルがしっくりこないこと。
レビュー見て、皆さんやっぱり気になってたのね…と思いました笑。
セラピスト~のくだりは確かにお話の重要ポイントに繋がるキーワードなんだけど、
メインの二人に関するキーワードではないんですよね…。
その点でタイトルとしてはやっぱり違和感を感じてしまいました。
甘くて可愛いラブコメ、でも二人の過去はけっこうヘビー。
砂原作品はぶっとんだコメディもあれば、シリアスものもありますが、
この作品はそれらを6:4でミックスしたくらいのテイスト。
思わず噴き出して、にやにやして、でもちょっと泣けて、しっかりBL。
「あーBL読みたいなー」って時に、安心して読める良作だと思いました。
「世間知らずの御曹司」なんてBLの王道中の王道設定ですが、
今作の攻・杏藤は、砂原さんらしい味付けと、日常のエピソードがもういちいち可愛くて!
一見よくある設定でも、使い古された感じがせず新鮮でした。
コンビニでのやり取りには思わず声を出して笑ってしまった。
受の珠希も「生い立ち故にスレている美形高校生」と、これまた王道タイプ。
でも本質的には賢く、容姿を利用して上手く立ち回ることはしていても、
それに甘えてただ享楽的に生きていたら未来がないことはちゃんとわかっている。
そのあたりが苦労人ゆえというか、地に足がついてるというか…
過剰にひねくれたり露悪的にならないところが、かえってリアルに感じました。
書き下ろしの後半も、前半に比べると一見地味ですが私はとても好きです。
付き合ってからひっかかりそうなトゲや、過去のトゲを丁寧に拾ってる印象。
母親とのぎこちないやり取りも好きでした。
この人はすごく愚かで身勝手だったけれど、でもずっと女一人で稼いで、
周囲に対しても突っ張って生きていて、考える余裕もなかったんだろうという気がします。
もちろん親として許されることではないけれど。
たぶん彼女にも、珠希にとっての杏藤みたいな出会いがあったんじゃないのかな。
まともな結婚相手ができて初めて余裕ができて、急にぎこちなく母親になろうと振る舞う…
その行動は勝手かもしれませんが、心情としてはリアルに思えます。
惜しいのは、杏藤の仕事や過去に触れるエピソードが少ないこと。
それゆえにタイトルがちょっとこじつけっぽく感じてしまう。
そこまで拾うにはページが足りないだろうけど、杏藤視点の短編とかも読んでみたかった。
その点でちょっと迷ったけど、でも何度も読み返したくなる可愛さだったので、神評価で。
読み始めた時は、ひょっとしてありがちなシンデレラストーリー?などと思ったのですが、
散りばめた定番ネタをひちわさんらしく料理してらして、予想外に楽しめました。
エロ多め、濃いめ。ひちわさんお得意の言葉責め。
でもそれだけの作品ではなく、ちゃんと切なかったり可愛かったり。面白かったです。
受…根暗男・京一。友人に裏切られ、半ば身投げを考えていた失意の男。
攻…俺様男・梶本。京一に復讐をそそのかす、謎の金持ち男。
序盤、TPO関係なくギャンギャン吠える京一(受)に若干イラっとしましたが、
それについては梶本(攻)が「おまえは本当にしちめんどくさいな!イライラする!」と
ガンガン気持ちを代弁してくれるので笑、しんどくならずに読めました。
どちらのキャラも、最初は苛ついたり理解しにくかったりするけれど、
読み進めるうちにじわじわ本質と可愛さが見えてくるタイプです。
(序盤の京一は社会人としてコミュ能力低すぎないか、とは思いますが笑。)
特に梶本は素が見えてくると子供のようで、ふっと頬がゆるんでしまう。
ひちわさんはこういうガキ大将みたいな可愛い男を書くのがつくづく上手いなあ…。
「セレブな攻が受をトータルコーディネートして飾り立てる」
というシンデレラ演出はBLの定番中の定番ですが、
梶本は単に京一を自分好みに仕立てたかっただけではなく、
何を狙いどこまで見越していたのか…に気がつくと俄然楽しくなります。
そういう仕掛けがちょこちょこ散りばめられているので、
全部読み終わってからもう一度読むと、裏の心理が透けて見えて二度楽しい。
新装版の書き下ろしは47ページとけっこうボリュームあり。
出会いから半年経った二人のやり取りと、出会いの回想が、梶本視点で書かれてます。
京一にメロメロになってる梶本の内心にかなりニヤニヤ。
出会いの詳しい経緯や、梶本から見た京一の分析に、
本編を思い返してなるほどなぁと感じる部分が多く、楽しめました。
いくつかの謎と、
花咲き乱れる美しい庭に流れる、ゆっくりした時間の流れ。
ちょっと耽美な雰囲気のあるお話でした。
みろくことこさんのキャラデザは設定に合ってるとは思うのですが、
このお話なら、マンガらしいショタっぽい絵柄より、
絵画っぽい画風の絵師さんでも良かったんじゃないかなと…
(みろくさんは決して嫌いではないし、ショタなスズナも可愛いのですが)
たとえば小椋ムクさんや井上ナヲさんのような水彩系の雰囲気で演出されていたら、
随分雰囲気が違って感じられたんじゃないかな…と思ったりします。
初めて読む作家さんでしたが、軽いミステリー風に仕立てられ、
軽めで奇をてらわない文章も読みやすかったです。
たださらっと読みやすいせいか、
登場人物がわりあいヘビーな過去を背負ってるわりに、
疑惑を感じたり思い悩んだりする場面でもさらさらと読み進めてしまって、
悩みに深く同調する前にコトが解決してしまう印象もありました。
もう一歩突っ込んで共感させてくれたら、と勿体なく感じます。
キャラは脇役含めけっこう好き。
ちょっと「悪い大人」な攻と、子猫のような受。
ショタっぽい受は苦手なことも多いのですが、
本当の子猫のように庭でくつろぐ姿にはうっかりなごんでしまう。
ついつい愛でずにいられなくなる攻の気持ちがよくわかりました笑。
そんな二人の濡れ場は特別濃くはないけどなんだかエロイ。
九条が急に悪い大人っぷりを発揮するからかな…笑。
漫画家シリーズ1作目。
シリーズと言っても「攻受のどちらかが漫画家」という共通点があるだけで、
1作ずつ完結してますので、どれから読んでも大丈夫。
(※5作目の「きみがいるなら世界の果てでも」だけは、この作品の続編)
シリーズのどれも、基本的に軽いテイストでさくさくと読めるラブコメです。
ラブコメだけど、榎田さんらしく、どこかに寂しさを抱えたキャラが魅力的。
またその「隠れた寂しさ」が、
作中作の「漫画」の中に描かれるのがこのシリーズの特徴かもしれません。
どれも面白かったけど、この1作目がやっぱり一番好き。
生活能力皆無、まるで幼い子供のような、売れない漫画家・仁木。
その仁木に対し、まるで母親のように世話を焼き続けてきた友人・東海林。
どこか、共依存のようにも感じられる二人の関係。
しかし仁木の漫画が注目され始めたことがきっかけで、その関係に変化が訪れる…。
こういうストーリーだと、どうしても甘える側のキャラにイライラすることが多いのですが、
仁木にはあまりそれを感じませんでした。(勿論人によると思いますが…)
「ガキっぽい」のではなく、本当に子供のまま育ってしまった人間だからかな。
親を慕う子供のように、主人を信頼しきっている仔犬のように、
ひたむきに東海林を慕う様子に、ぎゅっと胸が締め付けられます。
一方で、長い間甘やかし自分に依存させ続けてきた仁木を
自分の腕から逃がしてやろうとする東海林も、なかなかに切ない。
読み手が仁木のダメっぷりに本気で苛つかないで済むのは、なんだかんだ言っても
東海林が仁木の世話を本心では楽しんでいたのがわかるから、じゃないかと。
だからこそ、手を離す選択のつらさも伝わってくる。
東海林が突き放した仁木の様子をこっそり見に行く場面は、もうもう…
どちらも見ていられないくらい可哀想で、いじらしくて、たまらなかった。
つらいけど、一番好きな場面です。すっごく榎田さんらしい表現だと思う。
共依存というと病的でダークなイメージがありますが、
この二人の関係については、それが自然なあるべき姿だという気がします。
もう家族でも恋人でもなんでもいいから君たちはずっと一緒にいなさい、
離れてるの見るとこっちが辛いんだから… と、
なんだか保護者のような気持ちで読んでいました。笑
気に入った方は、続編の「きみがいるなら世界の果てでも」もおすすめ。
今作は仁木のために東海林が手を離そうとしますが、続編はその逆。
仁木に手を離されると東海林はどうなるか…というのが見所です。
でも、なんだかんだで可愛いラブコメです。
お話の主題が二人の性癖(SとM)に関する葛藤なので、
エロが多い、濃い!でもそれだけではないです。
上杉(S)は、「Sっ気がある」とかではなく、その世界に両足突っ込んでる「ご主人様」。
匠(M)は、自分の性的な願望を必死に隠し、否定し続けてきたM。
そんな二人なので、プレイ内容もそこそこ本気のSM度。
とは言っても、痛い描写は殆どないです。羞恥&放置による精神的な責めが基本。
徹底的に苛めたあとは、よく我慢したね、いい子だね…とメロメロに甘やかす。
Mの匠がなよなよしていないところが好き。
柔和そうに見えても、仕事はきっちり、したたかな「出来る男」。
本心や弱みを人に見せるタイプではなく、プライドもある。
だからこそ自分のM願望をなかなか受け入れられなくて、葛藤するわけです。
「ご主人様と奴隷」から始まった関係に、恋心が生まれるとどうなるか?
主人の恋、奴隷の恋、それぞれに普通とはちょっと違ったジレンマがあって、
なかなか上手くいかなくて切ない、けど、どちらもすごく懸命で可愛い。
なかなか面白かっただけに、短編構成なのがちょっと勿体なく感じました。
表題作の短編が2本 + 全く別の話として上杉(兄)×高校生の短編1本
…の3本で構成されていて、色々読めてお得感はあるんですが、
個人的には1冊全部使って表題作を更に突き詰めたのも読んでみたかったなあと。
(上杉兄の短編も、これはこれでライトなSMラブコメとして楽しかったのですが…)
でもなんだかんだでとても楽しかったし、きっとまた読むと思うので、萌×2で。
シリアスサイドの砂原作品。
テーマが重いので、萌えやBLらしい話が読みたい時にはオススメしません;
へらへらと軽くて腹が読めない攻、上木原。不眠症。
表情も言葉も少なく感情が読めない受、倉知。ナルコレプシー。
ちょっとサスペンス的な要素をベースに置きつつ話が展開していきますが、
たぶんメインテーマは二人が自分自身の気持ちにじりじりと向き合っていくところ。
真逆のようで似ている二人。
相手の気持ちが読めない。それ以上に、自分の気持ちが多分一番わからない。
重いテーマも悲壮感溢れる書き方ではなく、
辛いことも、恋心も、日常も、同等に、淡々と描いている印象でした。
淡々とした雰囲気ではあっても、謎の多い展開なので飽きずに読みやすいのでは。
個人的には、サスペンス要素についてはおおよそ読めていたものの、
メイン二人の関係は全く先が見えなかったので、萎えることなく集中して読めました。
読後感も良いです。
また、シリアスでも濡れ場はちゃんと砂原さんクオリティでした。愛があって、たっぷりと可愛い。
陽の感情で発作が起きやすいと言うカタプレキシーを患ってて、
果たしてセックスは可能なのか…?という疑問は感じたものの、
この病気は人によって症状・度合いが千差万別、
作中では精神的なものも絡んでいるという設定なので…
そこはある程度、本の中のお話と割り切って読みました。
ところで高井戸あけみさんが挿絵って珍しい気がするのですが、読んで納得。
キャラや作品の雰囲気が、高井戸さんのマンガの雰囲気とすごく通じるものがある。
ブレックファースト・クラブシリーズなんかを思い出しました。
高井戸作品が好きな人はこのお話、好きなんじゃないかな。
砂原さんの作品大好きなのですが、これは、文章が…古い…。
読み終えてから、2001年(デビュー直後)の作品の新装版と知って納得しました。
そうと知らずに読み始めたので、これほんとに砂原さんの本…?と驚いてしまいました。
端々で妙に大げさな言い回しが目に付くというか、悪い意味でラノベ感が強いというか。
後の方は新装版書き下ろしなのでいつもの文体なんですが…その差が一目瞭然。
現在の砂原さんの文体は読みやすく感情移入しやすくて大好きなだけに、
どうしても違和感を感じてしまいました。
内容的にも、最初は千野の乙女思考と不器用さがかわいい!と思ったものの、
読み進めるうちに、
その思い込みはちょっと無理がないか?とか、
朋巳の存在は結局なんなの?とか、色々とすっきりしなかった…。
(旧版は朋巳含めた3人が表紙だったところを見ると、三角関係ぽくしたかったのかな…?)
本来は「デカイ男が乙女思考&不器用」なんて、大好物な設定なんです。
でもこれは端々で「ん?」と引っかかってしまって、残念ながらあまり楽しめず…。
他の砂原作品が好きなだけに、見方が辛くなってしまったかもしれません。
今の砂原さんが書いたらきっともっと面白い話になっただろうなあ…
などと、益体もないことを思ってしまいました。