まさか、この小説が漫画で読めるとは!
鹿住槇 先生の、角川ルビー文庫2005年の小説のコミカライズです。
浪人生とエリート社長の、王道の身代わり花嫁もので、あっさりと読みやすいです。攻めの性格がわかりずらい上に、強引で姑息でそのくせヘタレで、あまり感情移入できなかったのですが、秘密がばれた時の捨て身の”謝罪”が、萌えました。このシーンが好きで、ずっと小説を手放せずに本棚に残してあります。
コミックの方は、独特の癖がありますが透明感のある絵で、20年も前の原作の、時代の古さを感じさせない、奇麗なお話になっています。
鹿住槇 先生、山鳩るか先生はじめ、コミカライズにたずさわったすべての皆さま、ありがとうございます!
こちらはCDではなく、AmazonAudibleで視聴する、朗読音声です。
手軽に聞けて便利ですね。
朗読なので最初は違和感を感じていたのですが、すぐになれました。
原作をうまく纏めてあり、展開に無理がありません。朗読なので行動がナレーションされるんですが、これが具体的なので状況がよくわかって、ストーリに入りこめます。(ただ、原作は読んでいた方がよりスムーズです)
受けの敬介役の竹内栄治さんは、明るく爽やかな聞きやすい声です。
恥ずかしがる声やあえぐ声は、可愛いながらもエロいです。
緒形の前では、乙女のようになってしまう敬介にぴったりです。
攻めの緒形役の竹内良太さんは、落ち着いた色っぽいお声です。
通常の会話やナレーションでは、ちょっともったいぶった印象をうけるのですが、
啓介への執着ゆえに”キレた”、時の声がいいです。
啓介を追い詰める嫉妬まじりの声や、低い掠れ声、せっぱつまった声、煽る声、などの使い分けが上手くて、”敬語攻め”には、ぴったりのお声です。
とくに「それは私の質問でしょう・・」の一言には、原作とは違ったニュアンスの感情があふれ出ていて、個人的にはこの方が良い!、と思ってしまいました。
朗読だからこそ、敬語攻めの醍醐味をたっぷり堪能させていただきました。
ぜひ、1作目も朗読を作って欲しいです。
続きも読みたいです!
大企業の御曹司で大学で働く受け、瑞穂。
小さな自動車修理工場で働く、高校中退の攻め、航平。
このお話は、”身分差”になるのでしょうか?
こういう話の場合、格下の攻めが受けを手に入れるため、金持ちやスパダリになり上がっていく、下剋上パターンが多いのですが、この二人の立場は最後までそのままです。
二人は苦労してさまざまな紆余曲折の後、結ばれます。ハッピ―エンドのその後も、二人の立場は変わらないのですが、けっしてお金持ちではない航平が、自分の持てるすべてもって、瑞穂を愛しむ様子が丁重に書かれています。航平は派手にお金を使ったり、高価なプレゼントはできませんが、どれほど瑞穂を大切にしているかと、少しの苦労もさせたくないという、航平の気持ちが、
毎日の生活の積み重ねの中でひしひしと伝わってきます。心理描写が丁寧で、読んでいて引き込まれました。プレイも、どきつい描写ではありません。
愛する人を守って愛おしんで、暮らしていく。というのはこういう事なんだな、と優しい気持ちになりました。二人を取り巻く人々も丁寧に書かれているのが、良いです。
智ははずるいなぁ。
二股がばれると、”あいつが本命”とはっきりと言うのです。
そんな残酷な言葉をクゥを甘く抱きながら。
”本命”という言葉がずるいです。遊びやワンナイトではなく、”本命”と言いきるので、まるで智の二股が正当化されてしまいそうです。
智とは最初から身体で押し切られ、夢中になってしまったクゥ。
それからクゥは嫉妬と快楽を同時に味う事になり、それが麻薬のように身体に染み込んでします。
嫉妬に泣きながらも智にすがりつく、クゥ。
そんなクゥのことを、大好きといいながら抱きしめる智。
そして『俺、どうしよう?どうしたらいい?』
ずるいなぁ。こうやって決断を相手任せにするのって、本当にずるい。
智は、時にはクゥに嫉妬して抱きつぶしたかと思うと、別れを切り出したりもします。クゥの嫉妬を自由自裁に操りながら、身体の快楽にはめ落おとす、智。
いや、こんな抱かれ方したら、智から逃げられませんって。
智の”クズ系色悪”の危険な魅了と、”浮気されても好きは好き”、というクゥの心理が痛いほど伝ってきます。
残念なところは、絵に白い部分が多すぎです。
もう少し、背景まで丁寧に描いてほしかったなと思います。
他の方が書かれているように、攻めのカリスマプランナーの加納さん、バブル臭がすごいんです。キザでナルシストで、蘊蓄も長い々。
加納さんは色恋の手練手管を尽くして、貴之を落としにかかります。さすがは伝説のプランナー、どうやったら貴之が落ちるか、良くわかってらっしゃる。芝居がかった甘いセリフ、さりげないスキンシップなど、とにかくムード作りが上手くて、相手を”酔わされて、ほだされて、拒めない”モードに持ち込むテクニックはさすがです。優しく甘く大切にされて、貴之があまりの幸福感に泣いちゃうほどです。手慣れた加納さんは執着攻めや無理やりな事はしませんが、時には嫉妬心をみせて、貴之を嬉しがらせる事も忘れません。
貴之は最初から加納さんに憧れていたので、ひとたまりもありません。
仕事も恋も加納さんの言う事を素直に吸収して、思うがままに染められていきます。二人は相思相愛で幸せなカップルになったはずなのでが、ある出来事から二人の関係がすれちがってしまいます。
ここから加納さんの巻き返しがはじまるのですが、姑息な手段を使わず、ひたすら謝ろうとします。心憎いサプライズなどしますが、決して貴之の前に現れません。どんなに無視されても諦めず、貴之がほだされそうなタイミングを見計らい、ここ一番という時にBMWに乗って現れます・・・。
この”連れ去り”シーン、バブル時代のトレンディドラマのようです。
貴之のせつない心情もいいです。加納さんからの電話を着信拒否にすることも出来ず、応える事も出来ず、携帯の画面をただ見つめるだけ。
『つながっていたい。まだ、つながっていたい』
そのせつない恋心を抑え込み、涙をこらえて必死に仕事に取組くんでいきます。
貴之を応援する当て馬君も登場しますが、この彼も当て馬で終わらせるには惜しい男前です。
残念なところは、加納さんが貴之に本気になっていく過程が、もう少し丁寧に描かれていれば、なおよかったと思います。
この作品を”神”にしたのは、ひとえに加納さんの口説テクニックと歯のうくような甘いセリフ、気障な蘊蓄、ナルシストなバブル臭キャラ、バブリーなモードが、最初から最後までぶれずに変わらないところでした。
お仕事BLとしても完成度が高いので、萌えの要素を抜きにしても良い作品だと思います。
復讐のため近づいたのに、陵辱されて、好きになってしまう話。
王道のテンプレものです。
それはいいのですが、攻め、受けともにのキャラクターが描き切れてないので、あまり魅力が感じられません。攻めは”雄臭さ”が薄いです。陵辱シーンが多いですが、”鬼畜!凌辱!”というより、”やたらと、ご奉仕”させたがる根暗なヘタレ”、という感じです。
受けは、社長の息子にしては幼すぎて、”どうしよう、どうしよう”と、
大きなお目目をきらきらさせて、泣いてばかりの子猫社長です。
こんなんじゃ、会社経営はどう考えても無理でしょう・・・
もっと攻めの漢臭さや激情とか、受けの素直で優しい子が頑張る、という感じが書かれていたら、良かったかなと思います。
ただ、”彼シャツ”のシーンや、受けの”玄関までお見送り”にデレる攻めは、良かったです。
次作の「束縛は焔よりも熱く」に少し登場しますが、この数ページの方が良く描かれていると思います。
『男性専用出張ホスト』のホストと客として出会った二人。実は同じ会社の同じ会社のエリート先輩・菅野と、後輩の奈良でした。
奈良は百戦錬磨な菅野の手練手管に溶かされて、とろけるような初体験を迎えます。その後、「“大人のおつきあい”を続けよう」と、菅野に誘われ「セフレ」の関係がはじまります。奈良はSEXに溺れていき、そして菅野に恋心を持ってしまう、それを自覚しながらもセフレという立場を逸脱しないよう、必死に自分に言い聞かせる心情がせつないです。
攻めの菅野が『色悪』です。初体験でがちがちに緊張している奈良に、
「俺じゃ気に入らなかった?」「ちゃんと優しくしてあげるよ」と、指にキスをする。そこから、何から何まで初めての奈良に教え込んでいきます。乱暴な事はせず、丁寧に根気よく奈良の性感をじっくりと攻めあげていきます。奈良の恋心を知りながらも、知らない顔で優しく髪をなぜ、「おいで」甘くベットに誘います。週末は恋人同士のように過ごし、奈良の気分がのらない時は「無理しなくていい」と気遣います。
そのくせ奈良に、菅野にとって自分はどんな存在かと聞かれれば、抱きながら優しい表情で「セフレだろう」と言い切ります。極めつけは、奈良に他のセフレとシテいている現場をみられても、奈良と目が合うとニヤッと笑って見せつけて、行為を続行するという、悪党ぶり。その後も何ごともなかったように、奈良をセックスに誘い、キスして愛撫します。奈良が抵抗できずに、嫉妬を呑み込みながら喘ぎはじめると、「俺意外の男と、やってみたいと思わないか?」と囁きます。
上手いセリフですねー、自分の行為の言い訳などせず、その斜め上をいくセリフで、奈良の嫉妬を封じ官能を煽ります。そして、他の男とするのがいやなら「俺を楽しませろ」と傲慢に腰を突き上げ「嫉妬した?」、「俺をもっと欲しがれ。」さらに煽って嬲る。まさに「色の悪」です。こんな手連手管にひっかかったら、未経験な奈良は一たまりもないです。
内容に説明不足な箇所が多過ぎるし、ご都合主義の展開なのですが、菅野の色悪ぶりが、見事でした。
連児は受けで高校生ながら、ものすごく男前。それでいて、自分の外見が攻めの好みじゃない、と思い悩んだり、ライバルにもウジウジと嫉妬心を持つのでなく、素直に美貌をみとめて、困っている時には手をさしのべて、清く正しい乙女心の持ち主です。
一方攻めの夏目は10歳くらい年上の教師です。受けの事を真剣に思っているのですが、余裕のあるふりをして受けをからかってばかり。そのくせ受けの気持ちに甘えていて、蔑ろな行動をとって受けを悩ませます。
受けは、攻めがライバルに乗り換えたと誤解して(実際そう思われてもしたがない)別れ話を切り出しますが、その時もヒステリーを起こしたり、攻めを罵ったり卑屈になったりしません。自分の気持ちをはっきり口にして
「今までありがとう」
このセリフで、目頭が熱くなりました。年下の高校生のこんな事を言わせるなんて、たいがいにしろよ、攻め!と言いたい。
攻めを含めた大人達があまりもいい加減にかかれていて、そこが展開に無理があるかな、と思いました。
とはいえ、受けが高校生らしく恋に悩んでるけなげさが、可愛くって、いじらしくって、なんども読みかえしています。
極道の次男・勝輝(高校生)が、復讐の為に美人検事・佐納を強姦します。
BLによくある「愛しているが故のレイプ」ではなく、愛情など一かけらもない、相手を侮辱し貶めための、強姦です。佐納は暴力をふるわれ、言葉で嘲られ、道具は使われ、写真はとられるは体は傷つけられるはで、半死半生の目にあいます。身体は回復しても、婚約破談になり同僚や上司にも知られてしまい、精神崩壊ギリギリまで追い詰められます。
こんな状態で、どうしたら攻めに愛情をもつようになるのか、はなはだ疑問でしたが、”身体が攻めを求める”という、受けの”さが”のようなものなのでしょうか、最終的には二人は結ばれます。
文章の上手い作家さんなので、攻めの鬼畜外道ぶり、横暴、残忍さ、冷酷さ、それと比例して受けの同性にい犯された苦しみ、絶望、気が狂いそうな恐怖が、胸が苦しくなるくらい伝わってきました。
私は勝輝からは、年下の可愛らしさなどはみじんも感じられず、育った環境にも同情できませんでした。そして攻めにも受けにも、感情移入できませんでした。
最終的に検事・佐納が、勝輝をうけいれたのは、そうでもしないと、自分が崩壊してしまういう、一種の自己防衛本能からくるものではないか、と考えさえられました。もしかしらすでに、検事・佐納は壊れてしまっているのかもしれません。
この小説の、エロさも官能性もない暴力的な強姦シーンはグロテスクで、まるでホラー小説を読んでいるようです。特徴のある小説なので、そういうジャンルがお好きな方には、向いてるかと思います。