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『黒衣の公爵』シリーズのファンブック

シリーズ4作品はすでに読破していたので
1作目とタイトルと同じこの本がどういう内容なのか
新しいものがどの程度入っているのか
気になりつつも結局購入しました。

結果。シリーズのファンブック的な本ですね。
まず綴じ込みページに2、3作目、次のページに4作目のカラー絵があります。
当然従来の表紙よりも大きめサイズで
珠黎皐夕さんの美麗イラストを充分堪能出来ます。
そして次に、珠黎先生による『黒衣の公爵』のコミカライズ。
これに関しては、ページ数が限られていたためか
原作を知っているものにはちょっと物足りなかったかも。。。
もっとたっぷり珠黎さんの絵を楽しみたかったです。

次に、シリーズの登場人物の相関図と
各作品のあらすじが実際に使われていたイラストとともに載せられています。
てか、あらすじと言うより「いいとこ取り」って感じなので
未読の人はこれを読んで是非本編も手にとって欲しいですね~。

そして、この本の一番のオススメポイントが
剛しいらさん書き下ろしのSS3作品です。
『真紅の兄弟』は、南紅大国の王・天人の弟・論人のお話。
『紫の帝王』は、北青王国の新国王で、天人の正妃・シオンの異母兄・レナードのお話。
『緑の新王』は、西緑神国の国王だと名乗る男・アスマが登場します。
この中で良かったのは『紫の帝王』
『紫』じゃなくて『エロの帝王』と呼びたいほど下半身に節操のないレナードの
士官学校時代のお話が中心に描かれているのですが
誰とでも寝る、という彼の真意や
いままでのシリーズでは明かされなかった真実がわかって
ちょっとだけレナードに対する印象が変わりました。
まあ、変わっている人、という認識は相変わらずですがw
シリーズ既読の方には
あのレナードの両脇に常に付き従っている屈強な男2人が何者なのか
この作品で明らかになります。

他に、アンソロジー的な4コマ漫画が3人の漫画家によって描かれていて
こちらは本編とは打って変わってギャグです。
何気ない日常が描かれていて微笑ましかったです。

このシリーズが好きな人にとっては買いの1冊だと思います。
強いて言えば
仁とアンディのSSとかもあったらよかったかな、というのと
珠黎さんの漫画がもっとページ数が多ければ良かったのに、ってことかな。

上質なSFファンタジーBLを楽しむきっかけの本になると思いますよ!

一(いち)の運命を決定づけた『甘い』との出会いと別れ

『愛と混乱のレストラン』シリーズで
ル・ジャルダン・デ・レーヴのパティシエをやっている樫崎一と
彼の高校時代の担任で、現在の同居人・湯原“先生”とのお話です。

『愛と混乱のレストラン』の書き下ろしで
彼らのある日のひとコマが描かれていたので
彼らがどういう経緯で
小学生の女の子・海(うみ)を含めた3人暮らしをする事になったのか
とても気になっていたのですが
物語は、一が高校生の時のお話から始まっています。
子供に暴力をふるう事でしか子育てができなかった母親のせいで
すべての感情を押し殺すようになってしまった一に
「甘いものは人を幸せに出来る」と教えてくれた
アパートの隣りの住人・ゆきの存在は
悲しい結果を生んだものの
その後一が進むべき方向を決める大きなキッカケになったと思います。

それは、あることがキッカケで始まった湯原とワケアリの赤ん坊・海(うみ)との生活で
さらに確実なものとなっていくんですが
そんな2人が、海の子育てを一から協力してやっていくことで
本当の家族になっていくのは微笑ましく
彼らだけではなく、この幸せがずっと続くように祈らずにはいられませんでした。

湯原も、海を育てる事になった経緯はとても悲しく
それだけでも自分を責めてしまうようなことなのですが
そんな湯原を立ち直らせたのも、赤ちゃんの海だったわけで
この小さな女の子は
一のことも湯原の事も救った救世主だったんだと思います。

それだけに、その後に待っていた別れは
湯原も一も、そして海も誰も悪くないのに
避ける事が出来ない別れで
3人それぞれの気持ちを考えると涙が止まりませんでした。

しかし、海がいなくなって関係がギクシャクしてしまっていた湯原と一が
再びきちんと向き合えるようになったのも海のおかげだったんですよね。
海が、他人のことを思いやれる優しい子供に育ってて本当に良かった!

ラストは、この3人にとってこれ以上ない幸せなものだったと思います。

最後に収録されていた「チョコレート・ホリック」では
一の年相応の部分も垣間見れたし
湯原が、戸惑いつつも
自分と一の気持ちを受け入れていくのが可愛くて(オジサンだけどw)
タイトルとは別の意味の「甘さ」を堪能出来てとても満足でした。
そして、最後のギリギリまで湯原の事を「先生」と呼んでいたのも結構萌えましたw

1巻目の書き下ろしも含めて
BLとか恋愛とかだけじゃなく、さまざまな人間模様を見せられ
考えさせられる事も多かったですが
その分読み応えもある作品でした。

いままでのストーリーはその一言にたどり着くためのプロローグだったのかも

関係がこじれたままだった修司と理人。
読者は2人がいったいどうなったのかが知りたくて
この完結巻を手に取ったはずなのに
冒頭は修司のフランス時代の出来事が綴られています。
でもおかげで、修司という人となりが
このフランス時代に形成されたんだと言う事が良くわかりました。

で、肝心の本編の方は壮大な一大ドラマのよう。
ル・ジャルダン・デ・レーヴの親会社・ヤガミコーポレーションの経営危機や
それに伴う内部クーデター。
さらには、理人がずっと望み続けていた
フランス料理の老舗・ゴルドにまつわる話など
次から次へとお話が展開していって
修司と理人の恋愛模様と同じ位、先が気になって仕方ありませんでした。

でも、さまざまなドラマが繰り広げられていたのは
すべてこの先のこの場面を描くためだったのでは?と思うような
このシリーズの最大のヤマ場はやはり
理人が足の赴くままにル・ジャルダン・デ・レーヴに行き
客として足を踏み入れ
かつての仲間たちに支えられながら
修司の作った極上のフレンチを口にして
心の底から「おいしい」と言う場面だったと思います。

レストランの面々が
理人が帰って来た事を喜んでくれている場面は
彼らひとりひとりの想いが溢れていて
それだけでも涙を誘うんですが
アペリティフから始まって、前菜・スープ・メイン・デザートと
理人がひとつひとつ思いをめぐらせながら口に運ぶ様子が
これでもか、というほど丁寧に描かれていく場面では
その時の理人の気持ちにこちらもリンクして
涙が次から次へと溢れて止まりませんでした。
いままで何度も辛い思いをして来た理人がやっと救われたんだ、と。。。

最後の最後に、粋な種明かしも用意されていて
まさに大団円!という感じでした。

久しぶりに、読み応えのある素敵な作品に出会えた気持ちでいっぱいです。

怒涛の展開

前作でやっとスタートラインに立ったかな
と思われる修司と理人でしたが
今作で少しは関係が進むのかな?と期待して読み始めましたが。。。
理人は相変わらず壁を作ってて
ある一線より内側に修司を、というか他人を入れようとしないし
修司も、イロコイというより
“美味しい”という感覚を理解出来ないと言う理人に
心から「美味しい」と言わせようと必死になっているだけみたいだし。。。
なかなか一筋縄ではいかないようです。

しかし!
そんな彼らを引っ掻き回す「美女」、修司の元カノ・サラの登場で
理人の感情に変化が!!
理人の態度はどう見ても「嫉妬」なんですが。。。自覚なし。。。
修司の方は、そんな理人を可愛いと思っちゃって
やっと自分の気持ちがどういう種類のものなのか自覚するんですが。。。

それでも、理人の方も
料理に対する気持ちや、『ル・ジャルダン・デ・レーヴ』への思いに
少しずつ変化が現れて来ていたのに。。。

あんな衝撃の展開が待っていたとは!
理人にとってはすべての原動力だったことが崩れていったわけで
痛々しくて見ていられませんでした。
修司も同じ気持ちだったはずなのに。。。

今作では、ここで続いてしまって
理人が修司の取った行動を本当はどう感じていたのかわからないのですが
せっかくここまで積み上げてきた2人の関係が
ややこしくなってしまった事は間違いなさそう。。。

美女と野獣と紳士に翻弄されてボロボロになっている理人ですが
読者はそんな彼らに翻弄されまくりで心が悲鳴を上げそうです。
早く先を読まなければ!

3部作のプロローグ的お話。。。なのに充分萌えます!

近所の書店のおすすめコーナーにいつ行っても並べてあったこの作品。
あまりに毎回目に付くので試しにこの1冊目を購入したまま
半年近く積み本になっていたのですが。。。
すごい面白かった!!もっと早く読めばよかった!!

シェフが不在になって客足が遠のいて休業状態だったフレンチレストランを立て直す為
雇われ支配人としてやって来た鷺沼と
彼に見込まれて新たなシェフとしてやってきた久我修司。
俺様っぷり全開の久我と、レストランの再建を最優先する鷺沼は
出会いの当初からまるで水と油。
そんな2人が、どうやってお互いを認め近づいていくのか。。。

こういう「最初は大嫌いだったのに。。。」的なお話、大好きですw
しかしこの2人、そう簡単には仲良くはなってくれなさそう。
それでも、久我はなぜか鷺沼から目が離せないし
鷺沼は、いままで誰も触れてこなかった自分の心の奥に
ずけずけと踏み込んでくる久我に振り回されながら
少しずつ心の壁を崩していくのがいいんです。

結局、この1作目では
やっと2人がお互いのもやもやした気持ちの根っこにあるものが
お互いの事を意識しているからこそ、である、と気付くところまでで
やっとスタートラインに立ったって感じなんですが
それでも充分萌えさせていただきました。

脇を固める、レストランの面々もみんな個性的で魅力的だし
鷺沼が慕っている、本社の本部長・叶も
優しげな雰囲気でありつつも
久我より先に、久我の鷺沼に対する感情を読み取って
意味深な発言をしてみたりして、あなどれない存在だし
ますます今後の展開が気になります。

書き下ろしは、久我と一緒にパティシエとしてやってきた樫崎一(いち)のお話。
一の高校時代の担任教師・湯原とその娘・海。
一がどういう経緯で彼らと同居する事になったのかは書かれていないのですが
とても幸せそうな彼らの一コマと
一が抱えている不安な気持ちが何とも切なくて
もっと彼らのことを知りたい、と思わせるお話でした。

BL的なシーンは殆どなく、しかも誰も何も始まってないのに
充分いろんな感情を刺激してくれた作品でした。

だんだんBL臭が薄れていく。。。OTL

RPG風BL(?)ファンタジー作品の第2巻。
しかし、さらにBLっぽさが薄れて行ってる気が。。。

相変わらず、さまざまな街へ行って情報を集め
怪しい奴に拉致られたり
ネコミミな月猫族のクーンとキムリックが協力魔法を使ったり
扉を開ける為のアイテムを集めなければならなくなったり、と
RPG要素はぎっしり詰まっているのに
肝心のBLっぽいシーンが少ない。
メインのイクストとリュカに至ってはキスしかしてねーーーしw

しかし、その分
今回表紙を飾った2人
1巻でパーティーに加わったアルディンと呪いをかけられ普段は馬の姿なラルが
終始甘い雰囲気を醸し出していました。
(それさえも肝心な所で未遂に終わるんですけどw)

そんなハチャメチャな雰囲気も
ラスト近くになってアルディンの兄の登場で
ちょっとシリアスムードが漂ってきました。
さらに、アルディンの従者のジィ(←名前ですw)の謎の行動など
ギャグ以外の要素も入ってきて、ますます続きが気になります!

個人的には、前巻でちょっとしか登場しなかった
暴走して大きくになったネコミミ・クーンが
なんとカラーの扉絵で拝めて小躍りしました!
しかも、同じく大きくなったキムリックといちゃついてるし!!
本編にはそんな場面は全くないんですが。。。いろいろ想像して萌えましたw

RPG風BL(?)ファンタジー、でもギャグ

富士山さんの漫画が好きで色々読みましたが
こんなコテコテのファンタジー(でギャグw)も書くとは知りませんでした!

ある日、女性に振られて落ち込み
伝説の丘(ここで願いを口にすると叶う、という)で
月の精だという胡散臭い(笑)男と出逢って
あれよあれよと言ううちにヤられて呪いをかけられる。
その呪いのせいで、姿を消した月の精を探す旅に出ることになる。。。
というハチャメチャなスタートw

でもちゃんとRPGになってて
途中でパーティーメンバーが増えて行ったり
クエスト(これも結構コテコテw)をこなして行ったりと
ニヤニヤしながら楽しむ事が出来ます。

タイトルと表紙絵から「シリアスなお話?」と思ってたのに
ふたを開けたら無理やりな展開のRPG風味で
しかもBLっぽいシーンは申し訳程度、という
いろいろと裏切られてしまいましたが、それでも充分楽しめましたw

あと、ケモミミスキーにはタマラナイ、お供のネコ耳・クーン。
語尾に必ず「にゃんv」って付けるのも可愛いのですが
途中、一回だけ暴走しちゃって。。。これがかなり萌えましたw
もっと見たかったw

こんな調子で2巻以降も続くんでしょうが
それでも、このコテコテな展開をもっと読み続けたい
という気持ちにさせられました。

ピュアな高校生の甘酸っぱい恋

ドラマCDでは一穂さんの作品は聴いた事はあったのですが
読むのはこれが初めてでした。
ドラマCDでは、割で淡々とした印象の作風なのかな、と思ってましたが
実際に読んでみると。。。ずっとキュンキュンさせられっぱなしでした!

高校生同士の甘酸っぱいピュアな恋愛模様を描いたBLって
どうしてもあっさりした印象になりがちな気がしますが
この作品は、あっさり風味ながらも
等身大の高校生の揺れ動く心や子供っぽさ
そして同時に持つ大人びた雰囲気のアンバランスさがよく出てて
読後に、心揺さぶられる何かを残して行ってくれました。

本編でも書き下ろしでも、私が注目したのは「子供」。
両親の離婚を機に母親と2人きりで暮らすことになった流星が
星空に興味を持つようになったキッカケ。
それを聞いた、まだ子供だった太陽が感じた流星の本当の孤独。
難しいことなんてまだわからない年齢でも
そのときそう感じた太陽のその後の行動の原点がそこにあるような気がしました。

そして思わぬ刺客(笑)が書き下ろしに潜んでいました。
母の死後、父親の新しい妻と子供たちと暮らす事になった流星。
その流星の義理の弟妹です。
まだ5歳と3歳ながら
流星の母が病気で亡くなった、と聞いた途端号泣するんです。
そして、流星の部屋に飾ってある母の写真に
毎日お花を飾ってくれてるという。。。泣かされました。。。

全体的に静かな印象のお話なのに、読後は二人の熱がちゃんと伝わってる
素敵なお話を読ませて頂きました!

正直、本編が霞むほどの番外編でした

前作「白銀の麗人」で大団円を迎えたこのシリーズ。
今作は、イブが完全に無力化された2年後のお話です。

メインは、そのイブとアダムを作ったアーサー・ビノシュのクローンであるアーサーと
かつて南紅大国のメインコンピューターだったアダムの持つ情報をコピーして作られた
ロボット・アダムとのお話。

アーサーの育ての親の元国王・高原卿は
アーサーのボディーガードとしてアダムを与えたのですが
アーサーが本当に欲しかったものは別のもの、決して手に入らないもの。
そんな理不尽な事実にアーサーの心は歪んでいったのでしょうか。。。
アーサーは、ロボットであるアダムに生殖器を与え
自分の愛人となるよう命令するんです。

アーサーは、自分がやっていることが間違っている事だ、とわかっていながらも
だんだんとアダムの事を本当に愛するようになり
アダムも、アーサーの命令で彼の愛人を務めながらも
少しずつ人間らしい感情を身に付けていくんですよ。
それが、他のどのカップルよりも純粋で、そして報われなくて切ないんです。

そんなアダムが、自ら判断してある行動に出るんですが
その寸前にアーサーにかけた言葉が
まさにアダムの本心を表していて、一気に涙が溢れてきました。

ロボットが心を持つ、ということに違和感がないわけではないけど
それでもこの2人の事は素直に喜んであげなければ、と思いました。

今作では、懸案(?)だった仁とアンディのお話も載ってますが
こちらは、まさに大団円!

本編としては前作が大団円でしたが
すべてをひっくるめて、やっとすべてが未来に向けて進みだした!って感じで
この作品が一番まとまっていて読後の満足感が大きかったです。
ってことで、迷わず神評価です。

そして、これを読んだおかげで
シリーズ通しての評価も「神」ってことになりそうです。

いちおうの大団円

前作でイブの機能を破壊し
新しく人間が統治する国家へと進み始めるかのように見えた北青王国でしたが
前作のラストで匂わせていた「イブはまだ生きている」という危惧が現実のもに。。。

再びイブに立ち向かっていく天人とシオン。
しかし、2人の絆が強固なものである、とわかっているので
さまざまな妨害に見舞われても
「彼らなら大丈夫!」と安心して物語の中に入り込めました。

途中、回想という形で
シオンが士官学校で体験した黒い過去が語られているのですが
最初「何故今さらこんな回想が挟まれてるのか?」と思ったんですが
最終的にはこのトラウマを越える事で
シオンが本当の意味で「黒衣の公爵」という汚名を晴らすことが出来る
ということを示したかったのかな、と思いました。
(他にもこの後のお話の伏線みたいなものも含まれていましたが)

最後には、イブも倒し、レナードが北青王国の王に即位して
一応の大団円、と言った所なのでしょうが
この1冊に、天人とシオン、仁とアンディ、そしてアーサーの事まで盛り込んだためか
そつなくまとまってしまった印象になったのはちょっと残念だったかな?

でも、満を持して登場したアダムの頭脳を移したロボットとアーサーのことや
うまくいったっぽいのになんだかまだまだすっきりしない仁とアンディの関係など
先が気になる展開を残してくれたので
番外編といいつつも、次作への期待もより膨らんだっていうのもあります。

そして、全作通して上質のファンタジーを味わわせてもらって
さらには、珠黎さんの美麗イラストによって
ため息の出るような登場人物たちにうっとりさせてもらって
とても素敵な作品にめぐり合えてよかったな、と思いました。