以前から、ちょっと気になっていた作家さんでした。今回、初読みです。
主人公の藍くん、たまたまスカウトされてデリヘルのバイトを始めちゃったんですが、特にお金に困ってる訳ではない。見た目は可愛いんだけど愛想は良くないので、客商売に向いてるタイプでもないし、どうやらゲイというわけでもないらしい。
かといって、そういう仕事をしていることに罪悪感を覚えるでもなく。。。
イマドキの男の子と言ってしまえばそれまでなのかもしれませんが、生い立ちやなんかのバックボーンが希薄なので掴みどころがありません。
いや、複雑な家庭事情というのがあって、それでコンプレックス(というかトラウマ)を抱えているんだということについては書かれているんですが、なんか、薄い、というか、弱いんだな。
ある日、そんな藍を指名してきたお客はちょっと変わった人でした。
白シャツにハイソックスというコスプレ希望。(笑)
だけど、「ただ一緒に居てくれればいいから」とハグする程度で他には何にもしてこない。
幾度か接していくうちに、いつのまにか藍の中で成瀬の存在が大きくなっていき ―― と、まあ、こんな感じです。
不幸な生い立ちや過去を抱えた主人公が愛する人に巡り会って変わっていく、というある意味『王道』的なストーリー。
心理描写も繊細で、やたらエロに走ってしまうという力技を繰り出すこともなく読ませてくれますから、力量のある作家さんだとは思います。
ただ、なんか、弱い…というか、物足りないかな?
デリヘルの客については、結構エグい描写もありますし、信頼していた相手からの裏切られるというショッキングな場面もあります。
なんだけど、いまひとつ、気分的に盛り上がらぬまま読み終えてしまいました。
きっと、私自身ある程度年喰ってるんで、「逆境」という設定には適度なリアルさを求めてしまうんでしょう。
キャラに共感できなかったのも要因のひとつかな。
どんなに「かわいそう」な主人公であったとしても、そこに直向きさがあれば、感情移入もできるのですが…。
とは言っても、この作品だけを取って判断してしまうのは早計かもしれません。コバルトの方で活躍なさってる方らしいので、若干のスタンスの違いは否めないかもしれません。
現に、特典小冊子のほうのお話(後日談)は、アマアマですが良い感じでした。
もっと違うシチュエーション、違ったタイプのキャラでの作品を読んでみたい気もします。
久しぶりに、ガッツリと明日美子さんの世界を堪能した気がします。
とは言っても、ダークサイドの方ですけれど。
表題作は、みつお(市川光央)とミツオ(壱河光夫)という同姓同名の二人の男達が主人公。
かなり痛い描写も出てくるので、「同級生」テイストの作品がお好きな方にはおススメできません。
ある日突然、ミツオのもとに一本の電話が掛かってくる。
「すぐこっちに来い。女を殺してしまった」
電話の主は、高校を卒業して以来会うこともなかったみつおだった。
名前が同じでも、中身はまるで正反対のような二人。
しかも高校時代、ミツオはみつおの「犬」だったのです。
予期せぬ再会は過ぎ去ったはずの二人の時間を引き戻し、『共犯者』という新たな関係を築きます。
そして、忘れてしまったはずの、タチの悪い熱情がまた頸をもたげる。
表面上は「みつおの方がSでミツオはM」のようですが、精神的にはむしろ逆かもしれない。
作中、ミツオの台詞でふたりは「一つだったものが二つに分かれてしまった」という場面があります。
半身というか、片割れですね。
過去の経緯や、再会のきっかけからして、ふたりの間には明るい展望がありません。
非常に刹那的で、そこには明日美子さん独特の退廃的な薫りさえ充満して、とても濃密です。
(実は、拙はこの独特な雰囲気がけっこう好きなのですが、合う合わないはあるかも)
けれど、このふたりには全く救いがないわけではありません。
思いがけないみつおの言葉に泣いちゃうミツオの表情が、なんかとっても愛おしい。
書き下ろしの後日談にもホッとさせられました。
同時収録の「温室の果実」は、ある政治家とその秘書とデリヘル・ボーイのおはなし。
こちらもわりとヘヴィな内容なんですが、コミカルであまり重さは感じさせません。
それにしても、明日美子さんの絵って、不思議です。
淡々とした描写なのにすごくエロティック。
能面のような貌なのに眼がハンパなく色っぽい。
かと思えば、泣き顔さえイキイキとして可愛らしかったり。
はじめは抵抗あったのが、まるで嘘のようです。
いやぁ、なんと申し上げれば良いのやら…。
白状致しますと、まだスキルの低い私にはついてゆけない世界でした…orz
禁忌テンコ盛りの主人公総受というトンでもない代物。
とは言え、イマドキのものとは異なり絡みのシーンでのSEは無く、その分BGMで雰囲気を盛り上げるという手法で、生々しさは感じられず「ここから先はお見せ出来ません」とばかりにフェードアウト。むしろ、物足りないくらいに(笑)上品にまとまっています。
これぞ耽美(なのか?)。
三木さんの可憐な受、森川さんの荒削りな攻、そして飛田さんの鬼気迫る演技。そう、飛田さんといえば今度、あの木原音瀬原作「NOWHERE]で仁賀奈をお演りになるそうですが、この作品ではホントに怖かったです。
いえ、決して暴力的だとかそういう怖さではなくて、ヘンタイちっくと言うんでしょうか(^^;
堀内賢雄さん初攻ご出演作にして超豪華キャスト(原作者自らのご指名らしい)。
なにより、塩沢兼人さまの美声を聞くことが出来る一枚として貴重な作品ではないかと思います。
榎田さんの「きみがいなけりゃ息もできない」の番外編です。
『マンガ家シリーズ』が完結しちゃった(残念…)ので、その記念の全サ企画。
いつもの東海林&ルコちゃんの、とある日常+仔猫ちゃん。
東海林のモノローグでのストーリー進行。
「明日はきっと筋肉痛…とくに股関節がヤバそう…」(by.ルコちゃん)
なシーンもきっちり有ります(笑)
あいかわらず、福山さん、小西さんともにホントに原作のルコちゃんと東海林そのまんまで嬉しい。
そして、キャストトークのテンションが高い(笑)
小西さん×福山さん、息ぴったり!だと思ったら、このおふたりは“いちばん抱いてる(抱かれてる)関係” なんだそうです。
フリトのお題は『これがなくては生きていけない』。
小西さんはゲーム(笑)、福山さんはお金とお仕事(シビアだな)。
遊佐さんは、「とにかく、今はのど飴!!」
ドラマの中では、ひたすら「ミィ~、ミィ~」鳴いている生まれたての
メスの仔猫ちゃん(しかも弱ってる)、熱演でしたものね!
あの高くてか細い声を出すのがすんごいタイヘンだったらしい。
本編「きみがいなけりゃ息もできない」では、マンガ家のアシさん役で出演されてる遊佐さん。猫の役なら経験あるけど、まさか仔猫だとは思ってなかったらしい。
ルコちゃん、2ndアルバムドラマCD「きみがいるなら世界の果てでも」は2010年初春発売決定 だそうで、まだずいぶん先の話ですけど、とっても楽しみです。
崎谷さんのシリーズものの中でも、絶大な人気を誇る『慈英&臣』の番外編です。原作では「しなやかな熱情」に同時収録されていますが、CD化にあたり小説版から一部のシーンとニュアンスを抽出し、崎谷さんがシナリオを書き下ろしたというオリジナルシーンが全体の三分の二以上で一部、展開も原作とは違っています。
原作をご存じない方は「しなやかな熱情」と「ひめやかな殉情」そして出来れば「あざやかな恋情」の三冊ともお読みになってからの方が楽しめるんではないかなと思います。
刑事と画家、まるで接点のないはずの二人が出会い、ある事件を通じて結ばれることになるのですが、躯ばかりが先行し、気持ちがちゃんと追いついていかないまま、一旦は離れ離れになります。
自分と違ってストレートだった慈英が本気になってくれるわけはないとあきらめていた臣ですが、なんと突然、慈英は引っ越して来ちゃいます(笑)
本当は、もうとっくに両思いで、離れたくないと想う気持ちも同じなのに、お互いが臆病なものでなかなかスムースにはいかない。
あれっ?慈英ってこんなにヘタレた奴だったっけ?!
あ~もう、じれったいナ!
さんざん焦らされますが、その分クライマックスが感動的でした。
神谷さんの「受けの気持ちを汲み取ってくれない、優しいけど鈍感な攻め」に対しての「抑えに抑えた感情が爆発して、感極まって泣いちゃったじゃんかヨ!バカやろ~!」な演技が、本当にお上手です。
さらさら と 心はこぼれていった
さらさら と 掴みどころのないままだった男の背中を
躊躇いもなく抱き締めることが ゆるされた
不器用だけれども、でも、確かに時をつみ重ねて、心を寄り添わせていった二人の恋は、ここから、本当の意味で始まったのでしょうね。
ああ、そういえば、「さらさら。」って砂時計の砂の音にも聞こえるかも。
あとは まっすぐ続いていく道を 手を離さずに 歩いていくだけだ
慈英のこの言葉を聞いた時、二人に対して「よかったね」という思いと同時に、「ああ、もうこの二人の物語はこれ以上は語られないのかもしれない」と思えて、とても寂しくなってしまいました。
この独特な世界観には ちょっと圧倒されます。
好き嫌いという以前に、受け入れられるかどうかというくらい特異な世界観かもしれません。原作未読だと、音だけではややわかりにくい場面も。
けれどそれらを差っ引いても、ある意味『神』ではないかと。
ここは下手なレビューを読んでいただくよりも、実際に聴いて感じていただくのがなによりかと思いますので、サラ~ッとご紹介程度に。
『僕は天使ぢゃないよ。』
高校生もの。暴力的で、退廃的。
三木さん×緑川さんでリバあり。
『花』
第二次大戦末期の敗戦色の濃くなりつつある日本が舞台。
森川さんは脚が不自由で心のすさんだお坊ちゃん役。
こういう暗い感じの森川さんヴォイスは初めて耳にしました。
櫻井さんはお屋敷の使用人の孫でドイツ人との混血青年という役どころ。
切なくて、哀しい物語。
言葉少なに、ぶっきらぼうに旭(櫻井さん)に花を手渡す透(森川さん) ― このシーンがとてもイイ。
『LOGOS』
ナリケンの中学生。チャレンジャーなキャスティングですがややしんどいかな。
ストーリーはかなりショッキングな内容なんだけど、妙な明るさもある。
『セルロイドパラダイス』
ガソリンが切れるまでという条件付で、男に誘拐されることを承諾したアツ。アツと男の奇妙な期限付き逃避行が始まる ――
これはかなり重いエピソード。誘拐とか強姦とかも出てきますが、神谷さんの演技の素晴しさも手伝って、胸にズシッとくるものがあります。
「この罪深き夜に」「夜ごと密は滴りて」「せつなさは夜の媚薬」
前3作の折々に現れては強烈なインパクトをチラつかせながらも、依然として謎に包まれていた義康と冬貴のCP。シリーズ4作目にして遂にそのベールを脱ぐ!というわけで、二人の出会いから蜜月に至るまでの長きに渡る物語。
三枚組み、時間にしておよそ4時間。かなりの大作です。
この作品が時系列的には一番古いので、これだけを聞いても話しが繋がらないなんて事はありません。
まず主役お二人の演技が素晴しい。
遊佐さんは台詞だけでなく、義康視点での大量のモノローグも最後までクオリティを落とさずにこなされてます。
俗世からスポイルされて育った冬貴に本を読むことを教え、手懐ける義康。
そうして無垢な冬貴に閨事を教え「おまえは俺(義康)が相手だから気持ちが良いんだ」と吹き込む。
「囁けば それは真実になるだろうか。俺しか知らないこの躰を いっそ 孕ませてやりたい 」この義康のモノローグ、その内なる激しさにドキッ!遊佐さん、エロいです OTZ
神谷さんはDISC1.では無垢な少年を、2.では妖艶な毒婦のように、そして3.では直向きに一途な恋情を吐露する冬貴を演じ切っている。
特に2.での冬貴の内なる魔性が覚醒する場面、このシーンは聞いていて毛穴がゾワッとしました!そして3.での、冬貴が義康に自らの心情を激白するシーンは痛いほど胸に迫ります。
とにかく濡れ場が多いし、内容も濃いんですが、演じる側としては、これだけの長丁場であのテンションを保つのは相当大変なんじゃなかろうかと思います。
愛する事を知らない、あるいは愛される事を知らない、そんな二人の切ないほどに不器用な愛の軌跡を神谷さん、遊佐さんのお二方が熱演して下さいました。
DISC3.のトラック5からは番外編「罪の褥を濡らす愛」。
熱を出して寝込む義康を看病する冬貴、若干、成長しています(笑。
だって、お粥作ったりするんだもの、もうビックリです。
そしてやはり本編に負けず劣らずエロエロでしたね。
でも、愛あるエロはやっぱり胸に響きます。
誰にも頼らず 一人で事件の核心へと迫っていく真行寺。
「覚悟を決めた聖人なんか くそくらえだ ! 人間なんて 生きてなんぼのもんだ」
(亜久利のこの台詞が好きです)
だが彼を案じる片岡亜久利の言葉さえ もはや真行寺には届かなかった ― 。
切実に 由利という男を欲しながらも 一度として 愛の言葉を返すことも叶わない自分に見返りを期待しない優しさで愛情を注ぐ由利。
「これは裏切りなのだろうか…」と真行寺は苦悩する。
いくら躰を重ねても 決して本心を明かそうとはしない真行寺に 不安を募らせ 真相を探る由利。
全てが明らかになった時 真っ向から対峙するふたり。
自分を遠ざけようとする真行寺に 由利は 一歩も引こうとしません。
そのまっすぐな想いが 頑なだった真行寺の重い心の扉を開かせます。
『 僕達の未来は … 現在( いま )から 始まるんだよ 』
そう 二人の未来は いま始まったばかりで ここから 続いていくはずだったのに――。
「あなたが選んで下さい
『はじめまして』と『またお会いしましたね』と、どっちがいいですか?」
これは『Ⅰ』の冒頭で 初めて二人が出会うシーンで交わされる会話です。
そしてまた『Ⅲ』のラストシーンで交わされる会話でもあります。
ブックレットには後日談としてサイドストーリーの書き下ろしがありますがこのエンディングは切なすぎる!
「つらくなんか、ないよぉ…」って、由利さん!よけいに辛いから(泣)
なまじ、希望的観測もできるがゆえに辛いです。
久能先生が、このふたりの本当のハッピーエンドを書いてくださるのはいつになるのか……。その暁には是非(!)またこのスタッフとキャストでCDを作っていただきたいなあと切望します。
同僚の久保田が起こした事件 そして自殺。真行寺佳也は友人だった男の死に疑問を抱き調査を始めた。
その中で佳也は 久保田が以前に担当していた事件で 捜査の終わり方のおかしい事件があることに気づく。―――政治家、暴力団、警察幹部の癒着 。
証拠はない。理論的な説明もできない。それでも「何か」があると感じた佳也は 独自に捜査を進め るうち、とんでもない真実を知ることになる。
その衝撃に崩れ落ちそうになった佳也は 由利潤一郎の差し伸べる手を自ら取るのだが―――。
知り得てしまった事件の全容に 為す術のない無力感と 途方もない憤りをおぼえながら、泣き叫びたいような心の痛みをも 全てひとりで背負い込んでしまおうとする真行寺。
その心の内の葛藤を 鳥海浩輔さんが余すところなく表現してくれています。
いよいよ物語は佳境に突入。
運命の歯車は 軋みながらもそのスピードを増していきます。
『Ⅰ』とは打って変わって 俄然シリアスタッチな展開になっていくのですが 『Ⅱ』では、由利と真行寺のセックスシーンも描かれています。
これが 本当にいい。
「泣かせてあげる … 躰も心も根こそぎ奪って空っぽにしてあげるから」
このシーンでも 鳥海さんが またスゴい。(もちろん三木さんも!!)
その色っぽさと艶っぽさは 一体どこから … いろんな意味でハンパないな(汗)
主役を演じるお二方の熱演はもちろんですが この作品ではBGMに至るまで 演出の素晴しさに脱帽です。もはやドラマCDの枠を超えたクオリティ。
『グレイ・ゾーン』という作品のスピンオフ。
前作では脇を固めていた 由利 が本編の主人公です。
制作・企画・発売元のインターさんの「どーやっても二枚に詰め込めません!」とのひとことでⅠ・Ⅱ・Ⅲの三枚構成となったのですが 実に英断です。(インターさん ありがとう!)
これほど原作に忠実で 尚且つ 原作を凌駕するほどの作品は そんなに多くはないでしょう。
ストーリー・キャスティング・演出・脚本 すべてにおいてのこのクオリティの高さ!そして3Dサウンド。(※イイ大人は 部屋を暗くして ヘッドフォンで聞いてネ !!)
『Ⅰ』では 由利と真行寺の出会いから これから彼らが 否応なしに巻き込まれていく事件の発端までがややコミカルに描かれています。
由利は 容姿端麗ながら 尋常ではないファッションセンスと掴み処のないキャラクターの自称・悪徳弁護士。
一方の真行寺(佳也)はといえば 真面目で人を寄せ付けない雰囲気の堅物な刑事。凛としていながら どこか危うげな繊細さをも併せ持つ。
初対面からして佳也の由利に対する印象は最悪なのに 由利本人はそんな事お構いなしに押せ押せ(笑)佳也が、どんどんと由利のペースにのせられていくさまが微笑ましい。
トラック10では 元同僚の自殺に落ち込む佳也と 彼を追ってきた由利が ショットバーで会話するシーンがあるのですが なんといっても(!)ココが聴きどころ。
僕だけが知っている 佳也さんをみつけたい
佳也さんの知らない佳也さんまで 僕の指は 届くよ … ―
呼んで … 佳也さん 僕を …… 呼んで … !
ベッドシーンでもないのに こんなに心拍数が上がるなんて 前代未聞!
よくぞ“音(声)”にしてくれたものです。
いまだかつてないほどの酩酊感に 酔いしれること請け合い。
ミキシンファンの私が自信を持ってお薦め致します。
三木眞一郎さんファンには 是が非でも聴いて頂きたいドラマCDです。