「パルトネール法」という語感につられて思わず手に取りました。
「◯◯法」というのは、妊娠法なんかのやり方なのかと思っていたのですが
ズバリ法律でした。
出生率の低下に伴う人口減少等、現代日本における様々な問題を解決するために定められた法律『パルトネール法』。
データによりマッチングされた2人は、同居する義務があるのです。
「一緒に笑う」
「ハグをする」
「一緒に寝る」
集団結婚、合同結婚の少しスマートな感じの結婚スタイルといっていいかもしれません。
BLなのに、出だしはなんというSF!ディストピアっぽいスタートです。
しかしこの法律に反するとどうなるか?
SF世界なら「市中引き回しの上、張り付け獄門」が相場ですが
3年以下の懲役、300万円以下の罰金、という罰則が妙にほのぼのする現実世界感です。
さてそんな設定のなか、お役所の間違いで、男同士がパートナーとなる黒髪メガネの小高嗣久と遊び人イケメンの棚木国善。
とりあえず確認がとれるまでいっしょに住んでね!ということになってしました。
人がいると落ち着かない小高ですがなんとか、棚木に馴染もうと奮闘します。
そんな小高の姿を見てからかいたくなる棚木さん。
棚木の軽い冗談を小高はなんとそのまま真に受けてしまいます…
そのツンデレ健気っぷりが涙を誘います。
女好きな棚木ですがもともとバイの気があるようで、そんな純粋な小高のことが気になり始めます。
そしてふとしたきっかけで、落ちる時は一気にくるものです。
1回目では未遂に終わるのですが、2度目はなんと、小高がパジャマ姿で馬乗り騎乗位で棚木に乗り上がります。なんという積極性でしょうか。
途中いろいろあるのは端折りますが
健気なのに小悪魔すぎる小高の術中にはまった棚木は最後ついに
「俺もお前を抱きたかったからだ」
と叫びます。
しかしこのパルトネール法、実際に施行されたらどうなるんでしょうか。ぜったいに幸福で終わらなそうな素材を、ほのぼのハッピーにする菊屋きく子先生に拍手を贈りたいと思います。
縞々さんの「なにかが惜しい」という意見に賛成です。
山中先生はモチーフはすばらしいけど、いろいろ残念なラストを迎えると思います。
私はBL的な良し悪しとは関係なく、山中先生から感じられる脱BL志向を目指したBLという観点からレビューしたいです。
「カレー味のウンコ」か「ウンコ味のカレー」どっちを選ぶ?という議題がありますが
「500年の営み」は、すくなからずそうした疑問に挑戦しようとしていると思います。
「思い出の中の恋人」か「現実のちょっと足りないそっくりアンドロイド」どっちを選ぶ?
さらには
「現実のちょっと足りないそっくりアンドロイド」と「完璧コピーのアンドロイド」どっちを選ぶ?という問題に繋げた発想がすばらしいのです。
突き詰めると、では「現実の恋人」と「ちょっと足りないアンドロイド」だったら、「ちょっと足りないアンドロイド」を選んじゃうんだよね! それって以前の二人の関係はなんだったの?
という葛藤がしかるべきなのに逃げてしまった。
討ち死にしても、もっとその問題にぶつかっていけなかったかのだろうか。
最後は、山中先生のオサレ志向がなせる技なのか、有耶無耶なキレイ事で終わってしまいました。
賛否が別れる作品はそれなりの力を持っているのです。
が、私はこの作品を読んで山中先生のどうにも変えられない根本的な、設定提示だけして敵前逃亡する姿勢が本当に残念でなりません。縞々さんとちがって、山中先生はもう化けないだろうと思ってしまった1作です。
しゅ×3さんらしい、その場の勢いだけで描いている(笑)ようなノリの漫画です。
ヤクザの道場をのっとられた八千代丸は、道場を奪回するために、伝説の用心棒・無頼庵にヤクザを追っ払ってくれ!と依頼します。
一時は用心棒を廃業していた無頼庵ですが、八千代丸の泣き顔を見て、復活することを決意します。
普通であれば、ここまで来るのに物語の大半を使うのですが、いきなりすっとばします。
しゅしゅしゅさんにしてみれば、この展開はもう読者の皆さんもお分かりだろうから、軽く流すよ、ということでしょう。
そして黒澤監督の「用心棒」のごとく威勢良く乗り込んだ2人ですが、見事に返り討ちに遭います。
ここで普通の作家さんなら、作戦を変えてなんとかヤクザに立ち向かおうと画策するところですが、
しゅ×3さんは、無頼庵を山篭りさせるのです。
いや、この力技、不条理はまったく衰えていませんです。
そして普通に山篭りでLOVEするのか思いきや、超絶なアニマルファンタジーがそこから繰り広げられるのです。
さすがにこの展開が許されるのは、ごくわずかな漫画家さんしかいないのでは…
昔のしゅ×3さんはギャグとエロが濃密に絡み合って世界観を作り上げていましたが、今はギャグとエロが分離しているかもしれないです。
最後は、ハッピーエンドで終わりますが、無頼庵と八千代丸のキャラは、ほかにもいろいろ使い道がありそうなので、さらに奇想天外な続作を期待します。
「命に代えても守る」かつてそう誓った少年は、冷徹な鎧を身にまとい、敵となっていた—。
三国志を思わせる3国三つ巴のなかで、描かれる戦国ロマンです。
最初は名前の覚えづらさと国の名前と知らない役職が出てくるので、ちょっと苦労です^_^;
でも、敵国を攻めるとき、その隙に第3国に攻められないよう、なかば人質として要職の人間を自国に向かい入れるという戦略など、読み物としてかなり本格的。
戦にあけくれる諸国が、あらゆる知略を使って、相手国の抜け駆けをしようという物語は、戦国ファンの私は大好きです。
主人公・子遙は「手を貸してほしい」という名目のもと、脩の太子・朱奎に迎え入れられます。
朱奎は、かつて子遙の父を師として仰いだ人間でした。そして師の息子が子遥だったのです。
朱奎はまだ若い子遙に出会ったときから、お互いに他人に抱く感情とは違う何かを感じていましたが、不幸が彼らを一瞬で引き裂きます。
子遙の父は、敵の策略に落ち、無実の罪で処刑されてしまいます。師の息子である子遥たけでもなんとか助けようとするのですが、それさえもかなわず、あっけなく拉致され陵辱されてしまいます。
物語は過去の思い出とクロスしながら、進行していき、次第に二人の関係が明らかになっていきます。
過去のくだりを読むと、冒頭の子遥の朱奎に対する、冷たい態度がよく理解できるのです。
やはり、過去のわだかまりと、今仕えている国の事情が、以前のような関係を許さないのでしょう。
朱奎は、子遙が成長して軍師になり、今、人質として脩に迎え入れるまで、子遥が消えたあとに、いったい彼の身にどんなひどいことがおこったか知りませんでした。
その事実を知ったとき、朱奎はどれだけ自分のふがいなさを死ぬほど悔やんだでのではないしょうか。最初は頑なに心を閉ざしていた子遥も、次第に昔の自分を取り戻していくかのように見えました。
そして物語は、朱奎の友人も絡んで、怒涛のラストに突き進んでいきます。
ここから先は、小説で読んでみてください。ラブ以外も、ストーリーとして楽しませてくれます。