この本は短編集になっています。
短編集と聞けばやはり少し内容が薄いのかな…なんて思ってしまいますが一つ一つが物凄く重く、読了後は長い夢から醒めたような感覚になります。
これより下ややネタバレ注意
表題作の「聞こえぬ悲鳴」
一番胸に刺さりました。
人気者の青年入江と一見地味で真面目に見えるけど煙草を吸ったりと以外と隠れ不良な青年、中原。
ひょんな事から交流を持った二人。
ここまではよくあるBL展開。
しかし、入江が学校を休むようになります。
クラスの皆は誰1人心配していない。
それに見兼ねた中原は入江を見舞いに行きます。
しかし、入江は仮病でした。
誰かが来てくれるのを待っていたのです。
彼の両親は既に他界しており、実質一人暮らしの入江。忘れられるのが怖いという彼を中原は励まします。
すると、入江は突然中原にキスをしました。
入江に憧れ以上の感情を抱いていた中原はこのまま衝動に任せると戻れなくなると思い、入江を押し退け「男同士だろ」と拒みます。
そして、そのまま中原は入江の家を出ていきました。
残された入江は呆然と座り込んだ後、ベランダに出て中原と同じ銘柄の煙草を吸います。
「噛んでも噛んでも歯跡もつかぬ それはいつまで噛んではゐたら しらジラジラと夜は明けた」
そう言うと彼はベランダから飛び降りたのです。
翌日、彼の訃報を聞いた中原は自分が入江を殺したと泣きながら崩れ落ちます。
彼の耳には「絶対に俺の事忘れないでね」という入江の声が木霊していた。
入江が読んだ詩は「中原中也」の詩でした。