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大人になるってそういうことだよね

・しるされしアイ
要領のいい坊主のミナミ×ツンツンヤンキー桜田の話。

え、こいつらいつお互いのとこ好きになったの?みたいなまま終わってしまう話があまり好きじゃないので、その辺がたなとさん作品を好きになった理由なんだな、と改めて気づいた作品。
ゲイの自覚があるミナミに勢いで告白された桜田は、応えこそしないものの特にその後避けたりすることなく、色々あった後、高校進学後にまだ俺のこと好きなの?とミナミに聞き、それから付き合うことになります。
どうして桜田がミナミを拒絶しなかったのか、後々付き合おうという気になったのか、それは物語後半で語られます。ああ、なるほどなぁと納得させられる理由だったのでストンと自分の中に落ちました。これがあるかないかで私の商業BLに対する評価は結構変わってきます。
高校生ならではのすれ違いや、進学と就職で進路が別れてしまった恋人に対して感じる寂しさといったああ、青春だなぁと思える部分もとてもよかったです。

ちなみに桜田くんは所謂ツンデレ系なので、萌え要素もきっちり補填。笑
おっこちまえ、と、さびしかった、の破壊力たるや…!


・ヤングアンドラブリー
楽観的なノンケの勇×神経質なゲイの大樹の同棲カップルの話。
コミュニティの狭い片田舎で関係がバレることを神経質なまでに恐れている大樹の気持ちはわかりすぎて胸が痛い。
もともとノンケだった勇からすると、周りの友達もきっと受け入れてくれらだろうという潜在意識があるのかもしれない。それに対して学生時代からゲイの自覚がある大樹からすると、"ノンケ"は自分と全く違う生き物で、同性愛を理解してくれないだろう、拒絶するだろうという恐怖があるんでしょうね。

大樹は勇が一番大切で、その理論でいくと

周りに関係を隠し通せる<勇と一緒にいられる

であるはずなのに、皮肉にも大樹にとっては

周りに関係を隠し通せる=勇と一緒にいられる

なんですよね…。
これに対して大樹自身は、自分は何も諦められてない、腹くくれてない、みたいなことを泣きながら吐露しますが、それは仕方ないよ!と言いたくなる。
小さい頃から住み慣れた町で、学生時代からの仲良しの友達がたくさんいて、安定した職場もある。それを失いたくないと思うのは、人間として、大人として正しいことだと思う。若さだけで突っ走れる10代とは違う。
二人がしっかり想いをぶつけ合って和解できてよかった。ほろ苦いお話だけど後味はすっきり。

比較的読みやすいタイプのたなとさん作品

スニーキーレッドの主人公の職場仲間二人のスピンオフ作品です。

スニーキーレッドを1巻2巻ともに読了した数ヶ月後、本屋でこの表紙を見て思わず「えっ!?」っと声を出しかけてしまいました。
作中の登場人物たちが全員ホモでそれぞれカップルになる、いわゆる割り算BL(と今は言うらしいですね)があまり好きではなかったので、スニーキーレッドの脇役二人がくっつく、というのには多少の抵抗がありました。
ですがスニーキーレッドがとてもよかったのと、単純にこの二人のキャラクターには若干の愛着もあるし、どんな感じでくっつくのかが気になり購入しました。

高身長イケメンで性格も良くて、後々大手企業に就職する攻めの本多は、いわゆるハイスペスパダリというやつではあるんですが、流石たなとさん、そこはありきたりのステレオタイプでは終わらず、妙な人間臭さが溢れてます。
腹黒かったり、好きな相手に頑張ってモーションかけてみたり、情事中に泣かれてオロオロしたり、調子に乗った発言して受けに叩かれたり…。
受けの鈴木も元ヤンお調子者ぽくて前作ではあまり好きな感じのキャラではなかったのですが、モーションかけられて本多の思惑通り相手を意識してしまい、なんだかんだ流されていく姿に段々愛おしくなっていきます。

たなとさん特有のアクが少し抜け、割と読みやすい作品だと思うので暴力が苦手でスニーキーレッドが読めないって人はこの作品単体だけでも全然読めるので挑戦してみて、たなとさんの描く個性的で愛おしいキャラクターたちを味わって見てほしいと思いました。
人間を描くのが上手な作家さんだな〜と改めて思いました。今後もキャラ属性やビジュアルで食わず嫌いせずに作者買いしていこうかと思います。

愛とはなんぞや

もともと暴力やSM系が好きで前作を読みました。
暴力男とドM男のカップル、ある意味相性抜群かと思いきやそう上手くも行かない…
最初は因縁をつけ喧嘩になりミサキを殴っていたハルですが、ハルが暴力を振るうのはムカつく相手や殴りたい相手に対してなので、恋人になったミサキのことを殴りたくない、でもドMのミサキは殴られるのを期待している、というジレンマに前作の終盤悩まされていました。が、そこはコミカルなオチに濁され第1巻は終了。

そのジレンマやすれ違いが2巻ではさらに掘り下げられていたかと思います。
弟の幻覚を見る程度には、ハルは自分の暴力性や性格を嫌悪していたのではないかと思います。暴力を振るいたくない、まともな人間になりたい。
しかし就活や就職での中で、自分のどうしようもない部分を嫌でも見せつけられるかのような出来事が起きていく。

さまざまなストレスで偏頭痛を起こして寝込んでるハルのもとにやってきてあれこれ面倒を見ようとするミサキ、もう殴ってやらないって言ってるのになんできたんだよ、というハルに対してのミサキの、

「なんで?そんなに駄目かよ好きな奴のこと気にかけちゃ」

このセリフで涙ぐんでしまいました。
そう、そうだよね、愛ってそういうことだよね…!

始まり方が歪だった故に複雑に考えていたハルに対する、シンプルに好きだから大切にしたい助けたいと思うミサキのこの言葉でハルは救われたのではないかなと思います。

結局暴力振るわずにミサキを満足させるために本やネットでSMについて調べてプレイしてあげるハル、なかなかミサキにぞっこんで可愛いなと思いました笑

1巻だけで読むのをやめず、ぜひ2巻を読んで愛とはなんぞやを再確認して欲しいなと思いました。