上巻はヒリヒリしたところで終わっていたので
下巻を開くときはちょっぴり重たい気持ちでした。
タイトルはハッピーエンドとなっているけれど
麻矢のあの涙を見てしまったら
交わらない結末になる可能性を拭い去れなかったからです。
でも。それはまったくの杞憂で、想像もしていなかった幸せがたくさん待っている展開に驚き&感動。
気持ちが通じ合った後の未来までも描かれていて、大きくなった颯太郎の姿にもまたグッときました。
長く一緒に居ても麻矢への想いは色褪せること無く、全身から愛を放出しまくっている榛名の姿にものすごくほっこり。
そしてそれをなんだかんだ言いつつもしっかり受け取り、自分なりのペースで榛名へと伝えていく麻矢の不器用な愛の表現もとても良かったです。
そして。15歳になった颯太郎がこれまた立派な子になっていて、それを見れたのも本当に嬉しかった…!
たくさんツラい思いをした颯太郎だけれど
彼がスレたりしなかったのはきっと榛名と麻矢がそばにいてくれたからだよな、と。
色々な思いを持ちながら一緒に過ごした日々を、3人それぞれが大事に心に留めているというのが本当に素敵でした。
上巻と下巻の帯に書かれている言葉を回収するシーンにも心揺さぶられ、
ふたりが辿り着いた『MARRY MERRY』なハッピーエンドを改めて祝福したいなと思わせてくれました。
上巻から色々と考えさせられる部分も多かったですが、そういうところも含めて読み応えがあってすごく満たされました。
3人で仲良く台所に立っている表紙はとても微笑ましいですが、お話はかなり切なめな展開となっていました。
榛名も麻矢もそれぞれに抱えている迷いや葛藤があり、そしてまだ幼い颯太郎はとても不憫な思いをしていて。
3人で過ごす時間は明るく楽しいモノが多いだけに
その内側の部分がより際立ってしまって、
何とも言えない気持ちになる場面がいくつもありました。
理由もわからないまま母親がいなくなった颯太郎の悲しみと、榛名と麻矢の複雑に絡んだ感情とが同時進行していくので
誰の気持ちを知っても胸がぎゅっと苦しくなって。
終盤にかけて畳み掛けるようにそれが濃くなっていくのでものすごくツラいけれど、
この状況が今後どうなるかわからないところにこそ引き込まれて、ツラさも含めて読み応えがありました。
榛名が麻矢への想いを自覚して、それを伝えても
関係は好転しないところで終わっている上巻。
素直にぶつかれば解決する問題ではないところに差し掛かったふたりは今後どうするのか…
下巻でそれをしっかり見届けたいと思います。
「嫌いな男」での登場シーンはほんの少しだったけれど、なんだかとても気になる存在だった伊崎。
そんな彼がメインのお話ということで、どんな展開になるか楽しみに読みました。
前作でも不毛な恋に傷付いているシーンがあり、
その相手である年上の男の影は引き続きチラついていて、傷も未だ癒えぬまま。
どうやって負のループから抜け出すのだろうかと思っていたら…
偶然でものすごく庶民的な出会いから彼の日々が変わっていくことになって本当に驚かされました。
わりと華やかな生活の中にいる伊崎が、安原と過ごす"普通"を心から楽しんで大切にしていくうちに安原自身にも惹かれて…という、気持ちの移り変わりが見えたのがすごく良かったです。
周りからどう見られているのかわかっていて
自分に自信もある伊崎なので、
どうしても強気な部分が目立ってしまうけれど
弱さや脆さ、寂しがり屋な一面を隠した心ごと
温かく包んでくれた安原の存在に読み手としても救われたなと思います。
それを何の計算もなくやってのける安原だからこそ、身も心も預けられたのでしょうね。
飾らない安原の性格が本当に心地よかったです。
偶然の出会いって運命に変わることもあるんだな…と、しみじみ思ってしまうようなお話でした。
単なるリーマン同士の色恋を描いたものではなく
そこに至るまでの心理戦や密やかな攻防がものすごく面白かったです。
ゲイとノンケの考え方の違いやマイノリティの捉え方など、切なくなるところはたくさんあって
交わるのはなかなか難しいのかな…と、思ってしまうふたりでしたが。
同僚の距離から少し離れて冷静になり、拗れてしまったその仲を時間が解決してくれる"大人の恋愛"感がすごくツボでした。
自分自身を見つめ直したことで気持ちに変化が訪れた千裕の素直さが良かったし、
スマートなようでいてその言動の端々に『惚れた弱み』が見えまくりな向居にも好感が持てました。
仕事をしているときの向居は自信家のように映りますが、いざ千裕のこととなるとめちゃくちゃ後ろ向きなのが一周回って可愛く見える不思議。
リードしているようで実は引っ張り上げられているみたいな、そんな関係になったふたりが本当に微笑ましくて幸せを感じました。
存在感のあった伊崎のお話もあるようですね。
スピンオフも楽しみです…!
恋人にフラれて沈みきっている乃英の危うい雰囲気にハラハラし、そこに現れたパワー全開な松璃にちょっぴり驚いて。
そしてそこからお試しのお付き合いまで…と一気に進んでいくので、冒頭数ページでかなり怒涛の展開にはなっていますが。
その勢いのまま流れていくのではなく、それぞれの気持ちがしっかり伝わる丁寧なストーリーとなっていたのがものすごく素敵でした…!
喜びを全身で表現する子犬みたいな可愛らしさと、後輩キャラから脱するため一生懸命に想いを伝えてくれる優しさと愛情たっぷりな松璃のキャラ、最高すぎました…。
自分らしく乃英を大切にしたいと考える松璃の真っ直ぐな愛を浴びて、乃英の心が解けていくのも納得。
一緒に過ごす時間が増えるほどにふたりの間にある空気も変化して、気持ちが交わるまでのドキドキ感もたまらなく良かったです。
乃英の元カレ・恭悟はやっぱりとても大きな存在で、ふたりがすれ違ってしまうキッカケにもなるけれど。
恭悟がまた乃英の前に現れたからこそ、ふたりが前に進めたところもあったのかな、と。
自分の不安を拭うために乃英にツラい思いをさせたことは許したくないけれど、本気で乃英のことを好きだったのはしっかり伝わってきたので、
不器用すぎた恭悟にもいつか幸せが訪れてほしいなと思いました。
恋人同士の甘さや、そこにたどり着いて感動して涙している姿など。
心が温かくなるような場面がたくさんで、ものすごく満たされた作品でした。
同じ会社の同期で同部署、さらには社員寮まで同室。という、
何も起こらないわけがないと断言してもいいほどの好条件(?)の中進んでいくストーリー。
でもそこに『ケモ化する』という設定が盛り込まれているので、単なるリーマンものではない展開にわくわくしました。
佐々木に片想いしているけれども彼を前にすると上手に振る舞えなくて、ついついからかっているような態度をとってしまう相澤。
ただ不器用なだけのその言動を佐々木は正しく「嫌味」と受け取っているので、ものすごく近くに居るのにまったく距離が近付かないわけです。
そんなふたりが相澤の『ケモ化』をキッカケに関係が変わり、相澤が素直になるだけではなく佐々木の気持ちにまで変化が表れる様子にドキドキ。
絶対に交わりそうもなかった彼らが同じ気持ちになり、甘い時間を過ごすまでを見守れて本当に嬉しかったです。
話の流れはややあっさりしているところもありますが、物足りなさはなく可愛さと切なさのバランスも絶妙で良かったです。
そして。クールイケメンな相澤の狐姿、最高に可愛くて萌えました…!
幼なじみ同士の近すぎる距離感で、気持ちだけがなかなか交わらない…
そんな彼らのもどかしい日々をハラハラしたり切なくなったりしながら見守って読み進めました。
翔平の気持ちを知ってから、初めて自分の中にある感情と向き合うことになった岳。
翔平とずっと一緒にいたいしむしろ翔平以外要らないと思ってはいても
それが翔平と同じ『好き』なのかはわからなくて
その答えまで翔平に委ねてしまうという、
あまちゃんすぎる岳には何とも言えぬモヤモヤは募りましたが。
でもずっとそうなわけではなく少しずつ変化していく様子がわかるので、モヤモヤしたところもきちんと消化できたかなと思います。
ただ岳の母親エピソードは結構胸クソで、
子供の心に傷を残しておいて自分の幸せはアピールしてしまえる神経がわからん。と思ってしまいました。
岳父の反応も軽いのでもしかしたら離婚の理由は深刻ではなかったのかもしれませんが、
トラウマになっている岳の心をもっとわかってあげてほしかったです。
なので、岳のそばに翔平がいてくれて本当に良かったなと改めて思ったのでした。
まだまだ精神的な面での差があるふたりですが、これから一緒に成長していくのだろうな思うとほっこり。
淡々と進むストーリーの中にしっかりドラマがある作品だったなと思いました。
大学生同士の甘酸っぱくて可愛らしい恋のお話…かと思いきや。
前に進んでいくことへの迷いやそれぞれの葛藤以外のところにもハラハラする種があって、
メリハリのあるストーリーとなっていました。
"人違い"をキッカケに始まった新たな友情は大学生活を鮮やかに彩るモノになって、
タイプは違うけれどその息の合った掛け合いを見ているだけで彼ら自身が日々を楽しんでいるのが伝わります。
でも『ヒカリ』のことをずっと気にしている塁は槙士との距離感を測れなくなっていき、いつしか空回りするように。
槙士のことを思って『ヒカリ』に再会させてあげたいという気持ちと、それとは別に自分の中に生まれた行き場のない感情の答えが欲しくて周りに探りを入れてしまう様子がとても独りよがりに映ってしまってモヤモヤ。
槙士への想いや塁自身の迷いが表れていた結果なのはわかるけれど、本人にぶつかる前に母親に聞くのは絶対違うよなぁと思ってしまった。
ただ。そういう未熟さも含めて成り立つストーリーだったようにも思います。
幼さの抜けきらないふたりが、お互いの存在によって少しずつ成長していくこと。
その部分を見守れてとても嬉しかったなと思いました。
2巻は甘々な雰囲気全開だったので、
その流れのまま進んでいくのかなーと思っていたのですが。
幸せたっぷりなシーンはあっても明仁の家族に関するエピソードが不穏な空気しかなくて、正直甘々どころではないな…と感じた3巻でした。
これまではそれぞれの気持ちだったり恋模様だったり、という部分がメインになっていたけれど
そこに家族のことも絡むようになってきて
関係がまたひとつ次の段階に進んだのがわかります。
これだけ想い合っていたら離れることなんて考えられないだろうし、そうなったら"親への挨拶"というのは避けられないイベントになってくるので
ふたりの仲もついにそこまで深くなったのか…なんて思っていました。
でも。想像したよりずっと重たい展開となっていて、それに悩む明仁がなんだか痛々しくて心配になってしまいます。
彼自身も不安でいっぱいなのだろうなと思うと、
継母の底意地悪い笑顔はより恐ろしく映ったのでした。
甘くて幸せなシーンから、気持ちが沈み込むようなところまで。
わりと振り幅が大きいですがそのおかげでメリハリのついたストーリーになっていて、ものすごく引き込まれました。
今後どうなるのかはまだわかりませんが、もっとツラいことが起きるのだろうことを覚悟しつつ
次巻もまた楽しみに待ちたいと思います。
帯に偽りなし。
本当に『全ページ顔が良い』…!
キラキライケメンたちの眩しさを摂取させてもらいながら、気持ちが交わるまでのドキドキの日々を見守ることができてものすごく心が潤いました。
長谷川先輩は見た目も良ければ中身も良し。という正統派(?)イケメンで、これは誰でも惚れるわ…。と納得しかないです。
一方の橘はというと中身は結構ガサツというか
わりと雄みがあって、外見からのギャップが好みでした。
橘が先輩に片想いしている状態から始まりますが
関係がステップアップしていく過程に障害はなく、苦しさやツラい場面もありません。
明るい雰囲気のまま進んでいくので、肩の力を抜いて楽しめる感じがすごく良かったなと思います。
一つひとつのエピソードが短いので読みやすく、さらにその中に萌えもキュンもあるので読み応えもしっかり。
もっともっとふたりを見ていたい…!と思わせるような中毒性もあって、今後のふたりもぜひまた続編として読めたらいいなと思いました。