玲の綺麗な泣き顔に惹かれて。
表紙にひとめぼれでした。
同じ小学校の同級生だったふたりが高校で再会し、
そこから仲良くなって気持ちも変化していくわけですが…
彼らが恋愛感情を持って"惹かれ合う"ことが無いので、よくある再会ラブと違う深さがあり
恋の楽しさを伝えるだけではないストーリーに
ぐいぐい引き込まれました。
燦吏の気持ちはとてもわかりやすく、
玲に惹かれてただ真っ直ぐ進んでいきますが
玲は燦吏が育んだ想いを同じように受け取ることはできなくて。
それが性的指向の問題だけならばいわゆる『BLっぽい』感じの展開になっていけば
ある程度解決していくと思うんですが
恋愛的指向が、となるとお互いの感情だけではない部分が大きく関わってくるので
燦吏の恋の始まりの喜びもうっすら切なさに覆われるような、ちょっぴり寂しい空気が漂っているんですよね…。
ですが、それぞれ違う恋愛的指向を持っていて
同じように交わることはできないとわかった上で、
それでも1番そばに居たいという考えにふたりは行き着いてくれるんです。
お互いがお互いを思い遣って、『好き』という言葉で言い表される部分をこえて。
ふたりが笑顔になってくれたことに本当に救われました。
『アロマンティック』という指向についてたくさん悩んで傷ついてきた玲が
自分の中にある燦吏への特別な感情にふと気付いたような表情にグッときて、
あえて答えを出さないままの結末もふたりらしくてすごく良かったなと思いました。
作品タイトルにもなっている曲がどんな歌なのかも気になります。
ロマンチストを自称する燦吏なので、きっとすごく素敵な恋の歌なんだろうなぁ。
さそり座の星座言葉を調べてみたらとても興味深いことが書かれてあったので、
そういうのを織り交ぜているのかな、などと妄想しつつ…
読み返してまたこの世界観に浸りたいと思います。
"雇い主と家政婦"という
表向きの関係だけではない設定があって
そこがこの作品らしさなのだな思って読み進めましたが…
香の抱える痛みはもちろん、
自ら『ペット』になることを望む心情は
スッと飲み込めるようなものではなく、
理解するために立ち止まり振り返り、いったりきたりしているうちに大混乱。
ストーリー自体はそれほど複雑ではなかったと思うんですが、
読み進めるのにものすごく苦労しました。
一つひとつ噛み砕いていけば香が
特殊な条件をつけて家政婦をしていることとか
人肌を恋しく思う気持ちも理解できたけれど
それが家政婦兼ペットでいることにこだわる理由としては弱かったかな、と。
あと所長や園子が香を大切に思っているのはわかりますが
大事にする方法がチグハグでは?と感じました。
契約上いくら条件を付けたところで危ない目には遭っていたのに
彼のしたいようにさせていたのはなぜなのか疑問
です。
香自身がどういう子なのか知っているならもう少し違うやり方があった気がしてかなりモヤモヤしました。
でも一番引っかかったのは香の喋り方です。
相手の出方をうかがっているからなのか、区切った話し方が気になって気になって…。
内容が入ってこなくて何度読み返したことか。
恋愛部分はうまくいって良かったなと心から思えたけれど、それ以外に気になるところがありすぎて
私には刺さりませんでした。
パートナーとの付き合いが長くなると
ぶち当たる人も多いであろう"倦怠期"。
いくら悩んでも答えは出なくて、
ぐるぐるしているうちにスッと気持ちが冷めたり
考えていることすらバカバカしく思えたり…
そんな言い表しようのないモヤモヤが
すごくリアルに描かれていたお話でした。
最初は堂々巡りを繰り返す藤島の思考を
同情半分呆れ半分な気持ちで
眺めていたところがあったけれど、
なぜ藤島がそんなに面倒くさくなっているのか?
という部分が見えてくると
面倒くさいところも丸ごと愛おしく思えてくる不思議。
15年も付き合っているのに愛を伝え慣れていないとか
むしろ美味しすぎる展開では…?と、
妙にソワソワしてしまいました(笑)
一心も藤島を通して見ているとハチャメチャな人っぽく映ったけれど、
どの言動にもしっかり藤島への愛があふれていて
彼の気持ちは昔と変わらぬままなんですよね。
藤島のことをどれだけ想っているのかがわかるたびにその深刻さは薄れて、
『犬も食わない夫夫喧嘩』を見せつけられているだけなんだな、となんだかほっこりしてしまったのでした。
言わなくても伝わるだろうとか
少しくらいのことなら許してくれるだろうとか
付き合いが長くなったゆえの安心感が
心の綻びに繋がると知ったふたりは
きっともう無敵だろうなと感じます。
何度ぶつかりあっても今回のことを思い出して
また絆を深めていくふたりの未来までが
見えるようでした。
モヤモヤぐるぐるするところがたくさんありましたが、
ものすごくスッキリした気持ちで読み終えることができました。
表向き『親友』としてそばにいるけれど
身体の関係があって、
七生は本当の気持ちを明かす気もないまま、
佐倉の本心はどこまでもわからないまま…
そんな状態で長い時間を過ごしているふたり。
でも恐らくは同じ想いを抱えているのだろうなと
予想しながら読み進めましたが
気持ちの面が見えてくるより先に
倫理観がぶっ壊れた一面が見えたり
ものすごく苦しい過去を抱えているのがわかったりと
とにかく佐倉に驚かされっぱなしでした。
でもどこか掴みどころがなかったのは
そういうバックボーンがあったからなんだなと
わかると彼への印象も変わったし、
色々なことが少しずつわかってきて
謎だった人物像が完成していくと、
自然と七生への想いも明かされていって。
当て馬的存在の工藤が登場するとわかりやすく嫉妬心剥き出しで、そんなところからも七生への愛を感じてキュン。
恋人になるまでヘタレっぽさは拭えなかったけれど、
そういうところも彼の良さだったなと思います。
健気さと少しのズルさが共存する七生の性格もすごく良かったです。
偽装結婚のあたりはかなりモヤモヤしたけれど
現実を見て悩むふたりはとてもリアルで、
即答できない部分にこそ愛を感じられたな、と。
たくさんの葛藤の中で一緒に人生を選択していくふたりを見守れて幸せでした。
大学生の同級生同士の恋。ですが、
恋愛感情を持って関わり合うよりも
"友達として""同じサークルの仲間として"
という部分が多いので
ライトなお話という印象でした。
でも周りを巻き込んで(巻き込まれて?)
進んでいく展開はとてもテンポが良いので
明るく楽しい気持ちになれて良かったです。
ただ…
『ノー』と言えない性格で自分の意思よりも相手を優先し、頼み事が断れないだけでなく
どんなことにも流されまくりな睦月に
幾度となく「うーん…?」という気持ちになり、
優柔不断すぎるキャラにどうしてもハマれず。
あわあわしているのは可愛かったし、
優しさも彼の良いところとして映ったのですが
もう少し成長が見たかったかなと思いました。
川久保は睦月の良いところをうまい具合に拾い上げていて、そんなところからもふたりの相性が良いのが伝わるし
睦月もすごく良い子なのでふたりの恋模様には
しっかり萌え。
ミコちゃん先輩たちの恋もすごく素敵でした。
元恋人同士の再会ラブ、
ものすごく良かった…!
再会してからの空気感で
ふたりの気持ちははっきり伝わってくるので
お互い相手をどう思ってるんだろう?みたいな
ドキドキはないんですが、
同じ気持ちだからといって
簡単に元通りにはなれない葛藤とか
過去に縋っても仕方ないとわかりながらも
振り切れないでいる様子とか。
そんな大人ゆえの面倒くささが
本当にツボでした。
別れてからもお互いにずっと好きでいたので
佳史の気持ちを真っ直ぐ受け取れば
遠回りせずに恋人になることだってできるのに
あえて距離を取り、過去も現在も混ぜ合わせて
ぐるぐる悩むミチの思考がとてもリアルで。
そういうやり取りを繰り返していくうちに
自分の気持ちと少しずつ向き合えていく感じ、
人間くさくてとっても沁みました。
一目惚れから惹かれ合って、
楽しいことばかりではなく
好きだからこそ激しくぶつかり合ったりもした当時を
懐かしんだり胸を痛めたりしながら。
10年という決して短くない時間を、
それぞれに相手を想って過ごした佳史とミチ。
そんなふたりの時間がまた交わってくれて
本当に良かったと心から思います。
優しくしたり思い遣ったりするだけでなく
言いたいことを言い合える関係っていいですよね。
そんなふたりにじんわり心を温めてもらえた作品でした。
長く片想いをしていた者同士の再会ラブですが
再会の喜びがあふれるだけではなく
静かに進むストーリーのなかに胸が痛む場面がかなりあって、
抉られるところもたくさん。
でもそんなところにもぐいぐい引き込まれるような展開でした。
一緒に過ごした時間より離ればなれになってからのほうが長かったふたりですが
再会してからの気持ちの昂りを見ていると
彼らが抱えてきた恋心は
何年経っても色褪せることも揺らぐこともない
想いだったと伝わります。
自己肯定感が低すぎる芙蓉は
西澤の気持ちをストレートに受け取ることができなくて
その度に遠回りしたりすれ違ったりするけれども
彼が"そうなってしまった"理由ごと
西澤は柔らかく包みこんでくれていて
その優しさがとっても沁みました。
芙蓉の重たくてツラい過去のなかでも
西澤の存在に救われた気持ちは輝いていて
悲しいことばかりだった幼少期が
苦しいだけの記憶で埋まらずに済んだからこそ
芙蓉はこんなにも真っ直ぐ美しい大人に
なったのでしょう。
自分がいかに愛されているかを知った彼は
これからもっと魅力的になっていくのだろうなと
感じました。
西澤との恋模様だけではなく
祖母との関係の変化を見ることができたのも
嬉しかったです。
温かくて優しくて、でもぎゅっと切なくなるところもあって。
淡い初恋の思い出と現実とを繋ぐ瑞々しいストーリーがとても美しい作品でした。
自分よりも大人な大学生に恋をする高校生という、
ある程度先が見えるような始まりでしたが
なんだかんだありつつふたりの気持ちが
スルッと交わるような簡単な展開ではなく。
それぞれの気持ちがわかっていくほどに
行く末はわからなくなっていくような
引き込まれる要素満載なストーリーでした。
日々育っていく優太郎の恋心を
本田が正しく受け取っていないにしても
"普通のバイト仲間"の域なんてとうに超えているのに
なぜか気持ちは交わらず、
距離は近付いているのにすれ違い続けてしまう
言葉足らずで不器用なふたりに
ずーっとヤキモキさせられました。
でも。真正面からぶつかれない理由を
それぞれ抱えているのもわかるので
そのヤキモキにもふたりらしさがあふれていて
最後まで盛大にすれ違い続けてくれて
逆に良かったとすら思いました。
精神的な幼さと大人な振る舞いで優太郎を振り回し続けた本田は
『悪い男』のようにも映ったけれど
なぜ彼がそんな風になっているのか?という
部分こそが重要で、
そしてそれはふたりだけがわかっていればいい事実で。
愛しい気持ちは前向きで明るいモノだけではなく
たくさんの負の感情も巻き込まれているのだと
改めて教えてもらえたような作品でした。
そして。『可惜夜』という美しい言葉に出会えたのも
本当に幸せでした!
同じ仕事をしているわけではないけれど
『創り出す』ことを生業にしている者同士なので
共通の認識や思考があって、
細かな部分で刺激を与えあっているうちに恋が生まれるという流れ、すごく良かったです。
普通とは言い難い出会い方ではあるけれど、
"普通"ではなかったからこそそれぞれの気持ちが噛み合っていったようなところがあったかな、と。
何もかもを晒して明かしていく楡崎と
どこまでも謎な駿との対照的な関係も
すべてがふたりらしいなと感じるんですよね。
普通とか常識とか関係なしに
心が求めるものを選択していく潔さに
とても心地よく引き込まれて。
恋に落ちたことには意味も理由もなくて
お互いに自然と惹かれ合ったのも
すごく素敵なふたりでした。
基本、完璧な紳士なんですが
天然という言葉では片付けられないくらい
様子のおかしいところがあって
ものすごく真面目に危ない発言をしたり
春真を溺愛するあまり周りが見えなくなったりする
慧吾のキャラ、本当に面白かったです。
彼の言動を見ていると、
どれだけ優秀でも容姿端麗だったとしても
これはヤバい人認定されるよね…?みたいな部分がかなりありましたが(笑)
そんなところがあってもなお、素敵な人に思えてしまう不思議。
すごく絶妙なバランスで組み立てられた
ストーリーなのだろうなと感じました。
18歳らしからぬしっかり者っぷりを
見せてくれる春真も
脳内では常に妄想ストーリーを生み出していて
そのチグハグな感じも面白かったけれど
ひと息にまくしてるような物言いが苦手に感じてしまって、彼のキャラにはハマれず…。
慧吾が春真のどこに「可愛さ」を見出したのか知りたかったんですが
なかなか伝わってこなかったのは残念でした。
でも、ずーっと明るく楽しい雰囲気で進んでいくので
読んでいて元気になれる感じは貴重だったと思います。