てんてん
koukyu wo tobidashita toaru sokushitsu no hanashi
本品は『後宮を飛び出したとある側室の話』の
コミコミスタジオ限定特典小冊子です。
アローロ王の息子マクシミリアン視点で
ラウルとの過去等が語られるお話です。
アローロの最高学府であるリッテラでは
3年間で最も優秀だと評価された学生に
「賢者の石」が贈られます。
「賢者の石」自体は
それほど希少価値のある石ではなく
これを得たという名誉が
その人物の価値を高めるのです。
これまでの試験では常に首位を取り
品行方正ですべてに完璧と言われる
マクシミリアンでしたが
マクシミリアンが学院長から
それを受け取った時に覚えたのは
高揚感よりも安堵の念でした。
歴代の授与者の名前は
メインホールのボードに刻まれており
マクシミリアンは朝夕に通るたび
そこにある父・リケルメの名が
秘かにプレッシャーだったのです。
「賢者の石」は授与者が
愛する人や大切な人に渡す事が
慣例となっています。
マクシミリアンは授与されたら
石と同じ翠の瞳を持つ人に
渡したいと思っていましたが
彼の人に渡す事は叶わないと
わかってもいたのです。
そんなマクシミリアンですが
そんな想いを同い年の従兄弟にだけ
話していました。
彼はマクシミリアンが想う相手が
アローロ王である父の寵姫だとしても
「叔父上なら不足がない相手だな」と
言うほど剛毅な男なのです。
しかも彼は
叔父や従兄弟が夢中になる相手に
興味津々な様で一度会ってみたい
とまで言い出すのです。
彼の人に会ったら絶対従兄弟も
「好きになるからダメだ」と言う
マクシミリアンに
彼は笑いつつも真摯な瞳で
「お前は会いに行けるのだから」
渡してこいとマクシミリアンの
背中を押してくれます。
それから数年が経ち…
A5判カラー表紙(文庫カバー同イラスト)、
2段組12頁とボリューミーなお話は
本編では語られない幕間的なお話です♪
大聖堂へと向かうアローロ側の人間と
別れたマクシミリアンは1人、
サンモルテの長い廊下を歩いていました。
向かった部屋の中にいるのは
従兄弟であり本日の主役の1人である
王太子・ラウルでした。
マクシミリアンの登場に
ラウルはひどく慌てたようですが
マクシミリアンはラウルと
ぜひとも式の前に話をしたかったのです。
言葉を探すようなラウルに
マクシミリアンが話を切り出します。
「だから言っただろ?
絶対君も好きになるって」
マクシミリアンの恋を知るウラルは
苦い表情のままですが
マクシミリアンはウラルの良さを
誰よりも知っているつもりであり
ウラルが相手なら認めざるを得ない
と思っていたのです。
何よりも再会したリードが
幸せそうな笑顔を浮かべていたのは
ラウルだったのですから。
マクシミリアンが
ラウルの憂いを取り除き
心からの祝福を告げる幕引きまで
少し切なくも優しいお話でした。
本編ではマクシミリアンから
「賢者の石」をもらったリードが
アローロ王の独占欲に晒されて
スッタモンダしていますが
渡す側にもいろいろあったのだと
いうことが知れて面白かったです。
本編に絡まないアレコレも
作者の中ではいろいろあったのかな♪
と物語をより膨らませた感じで
楽しかったですが
男の友情的な要素のみで
萌えは無いので評価としては
「中立」とさせて頂きます。