まりぽん812
parasitic soul
ホープタウンから中央都市に移り住んだミアとスタンリーの結婚式に招待された、娼館“猫の館”の女主人・杏子と、可憐。式の当日、身支度を終え、店の奥の控室で迎えのエアバスを待っています。
「クソ女の結婚式なんて行きたくなーい」と愚痴る可憐に、杏子が「嫌だ、嫌だと言いながら、最上級におめかししているじゃないか」とツッコミます。
可憐の淡い紫色のドレスは、なんと彼女の給料一か月分。でも、張り切っておめかししたなんて知られたくなくて、可憐はドレスの値段を杏子には明かしません。
そこに、ジョンが入ってきて、ドレスアップした彼女らに「お出かけですか?」とたずねます。ジョンは、以前勤めていたバーの店主が死んだため、“猫の館”に再就職していました。店の女たちは、最初、黒髪イケメンのジョンに色めき立ちましたが、ゲイで同性の恋人と住んでいると(多分噂で)知り、がっかり。本当はジョンはゲイではないし、同居のニコラスも恋人ではないのですが、一度立った噂はなかなか消えないのですね(笑)。
「どうしてミアばかり幸運なの」、と腹を立てる可憐に、杏子は、「中央都市での結婚式に招待されるなんてこれきりだし、楽しめばいいのさ、まだまだ美人のお前は、誰かお偉いさんに気に入られたら町から出られるかもしれないよ」、となだめます。
「分かってるけど、ミアの子どもも無事に生まれておめでたいって思うけど、悔しいのよっ!」という可憐の本音に、杏子は腹を抱えて笑い、「悔しけりゃ、頑張っていい男を捕まえてごらん」、とはっぱをかけます。
杏子は可憐の母親みたいですね。もし可憐がホープタウンを出ていくことになったら、きっと寂しく思うのでしょう。
本編で、ミアは、自分の子どものようにかわいがっていたラビをさらって売り払ったヨンジュに復讐しようとして返り討ちにあい、可憐に命を助けられていました。そして、スタンリーへの気持ちが恋であると気づかせてくれたのも可憐でした。ミアは、その時のことに感謝して、可憐を結婚式に招待したのでした。
幸せいっぱいのミアに会うのは少し怖いけれど、その倍くらい会うのが楽しみ…そう思いながら、可憐は杏子とエアバスに乗り込み、ジョンに見送られながら中央都市に向かいます。
気が強いけれど面倒見がよく情の深い可憐。彼女にも素敵な出会いがあるといいな。いつかそうなりそうな予感のする、温かな雰囲気に満ちたショートストーリーでした。