まりぽん812
futtara doshaburi
片面は本編表紙イラストの二人の全体像、もう片面はショートストーリーになっています。
全身が見えると、印象がまた変わりますね。アップだと二人の顔がすごく近づいて見えたのですが、立ち位置から見ると、実は少し離れていたみたいです。
おそらく、「ふったらどしゃぶり」の最後で整が差し掛けた傘を、一顕が開く場面なのでしょうね。二人の視線が合わさっていないのが、そのときの二人のぎこちなさをうまく表している気がします。
ショートストーリーの感想を。
夜、一顕と整がソファでくつろいでいると、一顕の携帯に仕事のLINEの通知が入ります。
もう、今って皆LINEだな。
あの時、メールが廃れてたら、自分たち、何も知ないままだったかな。
二人はそんな会話を交わします。
メールの良さは、自分の考えを静かにまとめる時間を持てること、返信を待つ間、既読未読に関係なく相手の状況に思いを巡らせることができること、ではないかと思います。そして、LINEより相手と心理的な距離がある気がします。
一顕と整が、互いの悩みを打ち合う関係になるには、メールのその時間と距離感が必要だったのでしょうね。
雨の季節のあの時のやり取りに想いをはせる二人。お互いにメールのデータをマイクロSDに保存していることを初めて知ります。
恋人同士になっても、まだ知らなかったことがある。タイトルの「旅の途中」には、そういう新鮮な発見と、もっと互いを知りたい、一緒にワクワクしたい、そんな二人の気持ちが込められているように感じます。
髪の毛を擦り付けて懐く整の頭をなでる一顕。二人はこれからも、こうやって並んで歩んでいくのでしょうね。
最後の一文が深いです。一顕が思い浮かべる「裸の魂だけになる日」という言葉から、二人の人生の終わりを感じてドキリとしたり、二人の魂が触れ合うような深い交わりの到達点のことかなと思ったり…。どちらにしても、一顕はこれからもずっと整と一緒にいると決めていると伝わってきて、胸が熱くなります。
もっと、ずっと、二人の旅の話を聞いていたいです。