Krovopizza
sayounara traumerei
少年時代の鉄真視点の話。
弓削に淡い恋心を抱く鉄真が大変可愛らしく、この先二人に待ち受ける運命を思うと何とも切ない気持ちに。
弓削は登場しませんが、当時の鉄真の弓削に対する想いはひしひしと伝わってくる内容です。
本編読後に読むことをお薦めします。
内容:
宗方家で昔から飼っている、ベニコンゴウインコという大型の鸚鵡。
鉄真はこの鸚鵡に、最近やって来た執事見習いの少年・弓削のことを話してしまい…
鸚鵡にすっかり弓削の名前を覚えられてしまい、途方に暮れる鉄真。
弓削に知られてはまずいと慌てる姿が大変微笑ましいです。
弓削が訪ねて来る日を楽しみに待ち、彼に出すおやつのことを考え、将来彼が家令になることを望む鉄真。
純粋に恋をし、将来を夢見る無邪気な姿は、この先彼の身に起こる様々な出来事を思うとただただ切ないです。
鉄真の父が母にこの鸚鵡を送った、という一節にも、何とも言えない悲しさが。
本編では無残な最期を遂げた先代当主ですが、かつては良き夫であり良き父であったことが想像されます。
そうした幸せだった頃の思い出も含め、宗方家の歴史にこの先も立ち会い続けるであろう鸚鵡。
本編にも登場するこの鸚鵡は、鉄真の秘密を知る存在というだけでなく、宗方家自体の「トロイメライ」の象徴なのかもしれません。
切なさと甘酸っぱさとノスタルジーがギュッと凝縮された、再び本編を読み返したくなる一篇です。