江名
shounen wa kami no ikenie ni naru
A5サイズの紙に、4段書きで2P分書かれた両面印刷のSSペーパーです。
紀伊国屋書店限定の特典で、
タイトルは、《理性と衝動》 ランスロット編
本編中では樹里視点で書かれていたある夜の出来事を、
ランスロットの視点で振り返り、心中を吐露する内容になっています。
なので、本編を読む前にこちらを読んでしまうと、
盛大にネタバレになってしまうので、
本編を最後まで読む前にコチラを見るのは、お控えください m(__)m
■ ■ ■
アーサー王率いる騎士団を相手に闘う前夜、
ランスロットは重い足どりで自分の部屋に戻ると、
外した具足を壁に叩きつけ、激しい音を響かせます。
思い起こされるのは、
先ほどまで腕の中にいた、愛しい樹里の顔、そして、
「ランスロット……ごめん、俺……アーサーが……(自粛)」
かすれた声で呟かれた、ランスロットの胸を深くえぐる告白。
分かっていたことなのに、
苦しくて胸が痛くて、息をするのも困難なほどの残酷な言葉。
「身体だけでいいなら…」と言われて、
一瞬、本当は激しい衝動がランスロットの中に起きていました。
腕の中にいる樹里をめちゃくちゃにしてやりたい、
力ずくで押さえつけ、自分の精液を注ぎ込み、凌辱したいという衝動が。
だけど、それはほんの一瞬のこと。
すぐに己の醜い感情を恥じ、理性を総動員して樹里の前を去ったのです。
どうせ死ぬなら、
樹里には誇り高い自分を覚えていてほしかったから。
しかしそれでも、振り返ると自分の行為は醜態にしか思えず、
ベッドに転がり、荒く息を吐きながら心の痛みに耐えるばかり。
寝つけずに天井を見上げていると、ふっと妖精の剣に目が向きます。
5年ほど前に、その妖精の剣をもらった時のことが思い出されます。
「騎士団の中でもっとも強く高潔な真実の騎士だけが、
この剣を抜くことができる」と神々しい光の中で妖精王は言い、
ランスロットだけが剣を鞘から抜くことができたのでした。
「人としての肉体を捨て、高潔なる騎士として生きねばならぬ。
もし、そなたの矜持が地に堕ちし時は、剣を抜くことは叶わぬであろう」
そう言われて授けられた妖精の剣。
今でも、自分はこの剣を抜く資格があるのだろうか?
わずかに恐怖を感じながら、ランスロットは剣に手を掛けます。
すると、剣はするりと抜けて、あたりを白い光で照らしました。
その光を見ているうちに、
ランスロットは徐々に己をとり戻していきます…
自分が欲しいのは、樹里の体ではなく、心。
そして、自分には大切は領地の民や部下たちがいる…
強く、高潔でありたい
騎士として、誰にも恥じぬ自分でいたい
そう願いながら、ランスロットは翌日の決戦に備え、
再びベッドに横たわって、わずかな眠りを貪るのでした…
■ ■ ■
このペーパーを読んでいると、
決戦後に樹里とアーサーの逢瀬を手引きしたランスロットの、
辛い胸の内と心の強靭さがより一層リアルに感じられました。