Krovopizza
asu wa kimi to warau shalalala
A4サイズの紙に裏表印刷のペーパー。
広川視点のエピソードです。
七月二十五日。
片山の誕生日の一ヶ月前ということで、
「おめでとうございます」
と、律儀に片山を祝う広川。
「月命日か!」
とノリよくツッコむ片山ですが、あまり誕生日を祝われたくない様子。
「失くすものの方が多いねんから、誕生日なんろくなもんちゃうわ」と。
命の尊さをよく知る片山がなぜ、と不思議に思いつつも、お互い仕事で忙しく過ごすうち七月が過ぎ、八月も半ばに。
ある日の早朝、
仕事終わりの片山から電話がかかってきて、
細い声で『……会いたい』と。
「十五分で行きます!」
と自転車を走らせながら、ふと見たガソリンスタンドの電光掲示板で、広川は今日が何の日か思い出します。
八月二十日。片山の相方の命日だと……
ろくに言葉も交わさず抱き合って、寝ている片山に朝食を作り出勤して。
その夜、帰宅した広川は、広川の部屋で一日中ネタを書いていた片山に、書店で買ってきた大量のガイドブックを見せます。
広川からの誕生日プレゼント。
旅行がプレゼントということではなく、冬は一緒に雪を見て、次の夏は海へ行こうという、ずっと続く"約束"をプレゼントしたいのだと……。
広川の優しさに、それを笑顔で受け入れ
「メッチャ嬉しい。完璧。好き」
と抱きつく片山に、
とても温かい気持ちになれるお話でした。
大切な人を失った悲しい思い出は、ふとした瞬間何度でも蘇ってしまうものですが、広川がいればきっと片山は大丈夫。
二人の穏やかな未来を暗示するような、素敵な後日談でした。